低く、サンジ君が言葉を紡ぐ。それは、私には絶望を呼び起こす序曲にしか聞こえなかったけれど。
「ナミさんの事だから〝1人〟……と、ルフィだけだと言われると思ってました。ですがそれなら、3人目に俺を加えて貰ってもいいですよね」
「っ……や、嫌よっ!」
「こんなに身体を熱くして……性欲を溜め過ぎるのは良くないですよ。素直に、気持ちよくなりましょう」
そもそも性欲なんてものは、溜めていたからって身体に悪影響は無い。その証拠に、精液は放置すれば再び身体に吸収される。
そうでなければ、子宮や陰嚢が破裂するのは間違いない。そんな風に思考だけでもと逃げていたら、再び合わさる唇。
唇から歯列へと順繰りに奥へとなぞり、口蓋の上の方へと辿っていく。そうして気が付いた時には、舌を絡め取られ吸われていた。
「ふっ……ぅ……」
鼻から抜けて行く息は、それが自分のものだと思いたくない程に、甘ったるい。嫌だと本気で思っているのに、恐怖の直後に与えられた快楽に、身体は反応し熱を持つ。
合わさった唇の間から響いて来る粘性の高い隠微な音を、三半規管へ直に伝えてこようとでも言う勢いで頬の内側辺りをたっぷりと舐められる。惚れてる相手では無いけど、間違いなく仲間としては信頼し愛している相手だ。
それが理由なのか、抗うだけ無駄と思うからか、身体は受け入れ態勢に入ってしまう。それでも、執拗に口腔を蠢き回る感触が、陶酔感を煽って来ても、夢中にはなりきれない。
「もっ……やっ……!」
キスの隙間で小さく紡ぐ抵抗の声に、サンジ君は薄く笑う。突然何があったのかと思う私はおかしくない筈なのに、その答えは貰えないままにサンジ君の手は私の胸へと移動していた。
ワンピースは簡単に脱がされていたから、今あるのはその下に身に付けていたビキニだけ。そのビキニは紐タイプだから簡単に取り除かれてしまったので、今は素肌がお目見えしている訳である。
胸全体を撫で回していた指先が、爪の先に僅かに引っかかる程度にしか出ていなかったピンクの粒を捕らえる。そして指の腹で、押したり揉んだりと、執拗に弄り始めた。
それに加えて爪で摘んで、ちょっとだけ荒っぽい刺激を送られると、ひくと勝手に身体が痙攣する。この身体は、いくらなんでも敏感過ぎると思うのよ。
「イヤイヤと言う割には感じるんですね」
「それは、赤い場所は皮膚が薄くて血の色が透けてる訳だから、敏感で当然でし「その人体解剖的な説明、やめて貰えませんか?流石に、萎えそうです」」
溜息混じりに言われるけど、それならいくらでも萎えて欲しい。なので私はこれ幸いと、その辺の話を選んで語り出す。
でも、サンジ君は弄る事を辞めずに、話を聞き流すからタチが悪い。喘がないように気を付けつつ語る私を、楽しそうに眺めているのが気に入らないわ。
「声を耐えて、平然を装って……なのに身体は淫乱に俺を求めてる……ナミさんは本当に、可愛いですよ」
「求めて、ないっ!」
「なら、濡れてなんていないですよね?」
「え?」
何を言われたのか、分からなかった。その為に思わず凝視してしまうけど、そこにあるのは何処か陰を纏った微笑みだけ。
襲われている被害者も、嫌がっているのも私なのに。なのに、どうして……サンジ君の方が辛そうな顔をするのだろう。
「確認して、濡れてなければ辞めてあげます。ですが、濡れてたら……嘘つきなその言葉はもう信じない。好きに、抱きます」
「やっ……!」
本能的な恐怖から必死でその胸を押すけど、ビクともしない。泣きそうになるのを自覚して、でも抵抗の手段さえ見付からない。
でも、涙なんか流してやるもんかっ!サンジ君をこれ以上増長させたりしないんだからっ!と心に決めたものの、涙を流さないのが精一杯。私は、サンジ君を傷付けるのも、自分が傷付くのも、怖いのだ。
「やだ……意地悪、しないで……」
「……わざと、じゃない、所がヤバいですよね」
「え?」
「大切に、可愛がってあげますよ。俺はコックなので、下準備は丁寧にやる派です」
意味が分からない。サンジ君、変な物でも食べたのかな。
そう思った直後に下肢へと移動する手が、私の割れ目に挿入される。当然そこは濡れている訳で、ヤダヤダと首を横に振ってみても現実は変わらない。
「濡れてますね……」
「やっ、ちがっ……!」
「これは、濡れてる訳じゃないんですか?なら、もっと熟してもらいましょうか」
そう言ってサンジ君は秘部に唇を寄せる。抵抗しようとしても、力では勝てる筈もなくて、でも位置的には殴りやすいからと、どうせ殴ってもダメージなんて無いのだからと思い拳を作り頭を殴ってみた。
サンジ君の頭がそれにより、ボコッと小気味よい音を立てる。どうやら、中身がスカスカになったとかではないらしい。
それを理解した上で、私は両手でもって太鼓を叩くようにぼこぼこと殴ってみる。これなら辞めてくれないだろうかと、仄かな期待を胸に宿して。
「ナミさん!?痛いんですけど?」
「痛くしてるのー!ヤダって言ってるじゃない!」
「バカになったらどうしてくれるんですか」
「心配いらないわ。これ以上バカになりようがないもの。人が辞めてと言ってるのを聞かないなんて、本当にバカよ!」
バカバカバカバカ!サンジ君のバーカと言う言葉と共に拳を振り下ろし続けていれば、溜息を落とした直後にクリトリスがねろりと濡れた感触に包まれた。その瞬間、声を出す事もできなくなってしまう。
突然の官能に、対応できない。こんなの、狡い。
「やっ……ぁ……」
「俺は馬鹿なもんで、何が嫌なのかサッパリ分かりません」
ちゅっと濡れた音を響かせながら、喋る声の吐息さえ刺激としてくる。そうして舐めたり吸ったりして、刺激を与え続けてくるのだからたまらない。
これ以上罵倒しては、きっと余計に意地悪をされてしまう。ならばと、できるだけ静かにサンジ君の髪に両手を絡ませ、引き剥がそうとする。
結局それは快楽により力の抜けている腕では叶う訳もなく、悔しさに舌打ちするとサンジ君は上目遣いに私を見た。その挑発的な表情は、妙な色香を放っている。
「んっ……!……ぁ……っ」
「妖艶で、素敵ですよ。ナミさんも良い匂いになって来ましたし、食べ頃ですかね?」
「やっ……たべ、ないでぇ……!」
「熱せられた料理が香り立つように、ナミさんも良い香りがするようになる。やはり、ナミさんは俺に調理される為に存在してるんですよ」
僅かに離れた唇と、濡れるクリトリスの間を、細い銀糸が繋ぐ。その淫猥な光景に、羞恥で頭が煮えそうになる。
違う!嫌っ!
幾度繰り返しても、サンジ君は私の言葉を聞き入れてくれない。元々力で適う筈も無いのに、力が抜けてしまっていてはどうにもなりはしないと頭では理解しているのよ。
「いやっ!ルフィッ!!」
思わず助けを求めて口にした名前は、サンジ君の動きを止めるには充分だったようでそっと身体が離れて行く。それにホッと息を吐き出すとそのまま抱き上げられて、私の抜け殻のようになった衣服を残して梯子を登ってしまう。
そのまま風呂場に連行されてしまえば、多少ならば声を出せるけど、ある意味個室に連れ込まれた事になってしまう。ピンチになったのか、救いができたのか。
突然行為が止むなんて、気が削がれて辞めてくれる気になったのかしら?……うーん、サンジ君の考えが、全く読めないわ。
開放されたのでは無く、泳がされている感じがするのよね。それともまさか、何も着てないから私が逃げられる筈ないとでも思ってるのかしら?
その時ポンと投げ渡されたのは1本の酒。どうやら瓶麦酒らしいと分かれば、出口側にサンジ君が居る限りどうにもならないからと、その目的を聞き出す為にも浴槽の縁に座ってそれに口を付ける。
「サンジ君は、何を目的としているの?」
「俺はただ、ナミさんが欲しいだけですよ。でも、ナミさんはあの場でルフィを呼んだ」
「……そりゃ、そーよ。私、ルフィの女だもの」
「それで理性が切れて、大声で泣かせちまいそうだったんで、こっちに連れてきたんですよ」
「身勝手ね」
私は抱かれるつもりなんてない。そう思って睨むけど、サンジ君はニコニコと笑うばかり。
……埒が明かないわ。これ呑んだら、さっさと戻って寝てしまおう。
そう考えて再び瓶に口をつけて、残りを1気に飲み干す勢いで流し込む。それにより唇の端から溢れた分が、冷たい流れになって喉を伝い落ちて行く。
「本当に、色っぽいですね」
低く呟いたサンジ君が、煙草を放り出して私の腕を掴む。強引に引き寄せるようにされてしまえば、手にしていた瓶がバスタブに落ちたのは必然。
バシャっと派手な水音を立てながら、湯を跳ね上げる。まだ残ってたのに勿体ない!とか、何を?と言う暇も無かった。
覆い被さってくる身体を、押し返す隙もなかった。急に腰を引き寄せられて、唇を塞がれていたから。
濃厚な口付けが、今喉を通って行ったばかりのアルコールが合わさり、意識を酩酊状態に落として行く。でも、麦酒だけでこんな事になる筈ないわ。
それを問い掛けたくても、唇は塞がれている。そのまま、背後のタイルに叩き付けられた。
その時唇は離れたけど、細く見えていたのに、実際は驚く程に逞しい両腕に囚われて、もう右にも左にも逃げられない。夜を映したかのように暗く輝く双眸が、けれども夜の空に星が煌めくように欲望を灯らせている。
今まで見た事がないような情念を滾らせ、私の瞳を縫い止めてしまう。吠えるようなサンジ君の声が、お風呂場の壁に鋭く反響して、鼓膜を刺激した。
「俺はナミさんに惚れてるんだ!全てをかけても構わないと思える男が全力で愛してる女だと分かっていて、それでも諦められないくらいに……俺はナミが欲しい!」
「私は、ルフィの「分かってる。でも今、ルフィは居ない。今は、俺が船長だ」」
「サンジ君……」
「抱かせろ、ナミ」
普段は紳士の皮を被ってる青年が、獣の本性を剥き出しにしている。身の内がザワっとそれに反応した。
まずい、呑まれる。そう思ってしまう程の熱。
「挿れさせろ。ナミの中で感じさせろ。……船長、命令だ」
いつもの馬鹿みたいに丁寧な口調でも、戦いの時のような中途半端な敬語でも無い。恐らく他の仲間達に向けるような、ともすれば敵に向けるような劣情を感じてしまう。
答えを聞く気もないのか、そのまま覆い被さってくるサンジ君の身体は、発熱しているかのように思えた。幾度目か分からないくらいに、繰り返された口付け。
重なる唇も、押し入って来る舌も、抱き締める腕の強さも、激しい鼓動を刻む胸も、伝えて来る事はたったひとつ。その中でも特に、下腹部に当たる堅く張り詰めた情熱が、私を欲しくて欲しくて堪らないのだと伝えて来る。
「ふっ……ぅんっ!」
情動と劣情を漲らせているサンジ君の髪を両手の指で掻きむしりながら、与えられる蜜や吐息を貪らされる。何度も触れては離し、食み合うようにして、その度に深くなっていく口付け。
ぴしゃりと濡れた音を響かせる中心では、熱い舌が絡まる。サンジ君はどうやら、キスが好きらしい。
せめてもの抵抗として出したシャワーは、自らが発する音をかき消して欲しくてした物。自分の声や、自分から聞こえる水音が耐えられなかった。
漸く離れたかと思えば、頬へ、耳朶へ、首筋へと執拗に舌を這わせて来る。自分だけ服を着ていたから、サンジ君は今濡れて肌にへばりついたシャツから皮膚が透けている。
それが妙に艶めかしくて、スっと視線を逸らしてしまう。そんな私の胸にある突起を指で弄り倒し、僅かに落ち着いていた筈のそこが芯をもって膨らんでいく。
「はっ……んんっ……」
真っ赤に熟れた乳首は、私がいくら否定しても間違いなくサンジ君を求めていると分かる。それでも逃げようと身を捩れば、獲物を見付けた肉食獣のように、胸の尖りへとサンジ君はむしゃぶりついて来た。
「く……んっ……!」
既に名を呼ぶ事さえ、できない。歯噛みをして堪えようにも、漏れる声さえ抑えきれないのだ。
崩れ落ちないように必死で耐えている間に、両手でむんずと太腿を捕まれ、広げられたかと思うと身体は準備万端にじわりと熱を持って疼く。ヒクヒクと何かを求めて収縮する入口に、サンジ君の指先が触れたかと思うといきなり根元まで押し入ってきた。
背筋を1気に這い上がって、項の後れ毛までそそけ立たせた痺れ。シャワーでたっぷりと濡れた肌が粟立ち、仰け反った喉から甘ったるい喘ぎが飛び出して行く。
くちゅくちゅと狭い場所を掻き回す音など、シャワーの音に紛れて聞こえる筈も無いのに、体内からの音であるが故にその響きを身体がじかに拾ってしまう。高鳴る鼓動と共に耳奥に響くそれは、シャワーの無意味さを教えて来るばかり。
「もっ……やめ、て……」
「そんなに早く、俺が欲しい?」
「ちがっ……ぁ……!」
拒むように言葉を紡いだからか、サンジ君は酷く性急に、乱暴に、秘所を暴こうと入り込んで来た。二本目、三本目の指がそれぞれ勝手に蠢いて、気怠い疲れの中で鈍化していた粘膜に新たな刺激を与えて来る。
切れ切れの嗚咽は、本当に自分が発しているのか。認めたくなくてもそれは事実自分の声で、吐き出される度により密度を増して艶めいていく。
「いい声ですよ。……もっと、聞かせてください」
いつもよりトーンを落とした甘い低音に、ビブラートのおまけ付き。唇が触れる程の距離から名を呼ばれた時、濡れた音と共に何度も呼ばれるそれに、ぞくぞくと身体の中枢が反応していく。
ベルメールさんがくれた、私の名前。愛されて育った、今の私を形成させる大切な贈り物。
それが愛しさを伴い紡がれる。それだけで、身体は歓喜に震えてしまう。
その間も休む事無く、でも多分精一杯傷付けないように努力しているのだと伝わる指使い。そうでなければ、迷いなく押し込んでいるだろう。
それくらいに今のサンジ君には、余裕が無い。敬語と命令口調が交互に出ているのが、何よりもわかりやすいその証拠。
ぐちゅぐちゅと、急くように広げようとしている指使いに時折痛みを感じる。けれども抵抗や拒絶の声を出そうとする度に、それを防ぐ為にと重ねられる唇がそれを無効化してしまう。
口腔内を舐る舌が与えて来る痺れにも似た官能の中では、下肢へと与えられる痛みすら刺激となる。それによりひくつく粘膜が、もっと……訴えるようにうねっている。