勝手なものだと思う。心と身体が、驚く程に正反対の答えを弾き出しているのだから。
心は嫌だと叫び嘆く。ルフィじゃ無ければ嫌だと。
身体は悦び、もっともっとと、貪欲に熱を求める。相手など誰でもいいから、早く熱を感じさせて、放出させてと……。
明らかに矛盾だらけな自分の存在に打ちのめされながら、どうにもならない程に離れた仲間と家族を想う。それに、連日男達に好きにされている身体は、熱を求めるのと同時に恐ろしく疲弊しもしている。
そう、私は疲れている。心身共にクタクタだわ。
だからこそ、胸の中に沈殿している鬱憤を晴らしてしまえと身体は訴える。考え事なんてやめて、凄まじく熱い鮮烈な快楽に溺れてしまえ……と。
なのに、諦めきれない。この世界は酷い事も多いけど、前に生きてた世界よりも不便で生命の価値も軽いけど、それでも……私はこの世界が愛しいのだ。
この世界の全てをこの目で見たい……と、そう願った時から、私はきっと〝生きたい〟と、この世界そのものを信じたいと願っている。諦める方がずっと楽なのに、それでも疲れきった身体に鞭打ってまで走り続けるのは、千分の一、いいえ……万分の一の確率であろうと、運命は気紛れに人にチャンスを与えてくれる事を知っているから。
そして、もう疲れたと走るのを辞めた時に……その為に何も出来ないままに大切な人を喪う事は、したくない。私はもう二度と、誰も喪いたくはないのだ。
今ここでサンジ君を突き放して、逃げ出して……そうなったらサンジ君の心はどうなるの?
身体はまぁ、冷水でも浴びれば落ち着くかも知れないけど、心はそうはいかない。こんなにも慟哭をあげている大切な仲間を見捨てて、私は自分を許せるのだろうか。
……それと同時に、自分の心は嫌だと言う。ルフィにしか触れないで欲しいと泣いているのだ。
心優しく、我慢する事に慣れた青年は……けれども少年時代の心の傷をまだ癒す事も出来ずに苦しんでいる。歳下の女に、敬愛する男が命懸けで愛していると知っている女に、甘えて縋ってしまう程に心が孤独になった男の子。
その心の中にどんな気持ちがあろうと、欲する気持ちは嘘ではない。隠しようのない欲望が私に押し付けられているのが、その証拠。
……それにしても、なんでこの世界の男達は無駄にデカいのよ。そりゃ、皆体格もいいし、ここだけ小さかったらおかしいんだと分かってるけど……!!
ベッタリと額に張り付いている毛先が目にかかり、視界を塞ぐのが邪魔。私はもっとしっかり、見ておかなくてはいけないのだから。
サンジ君の真実を、見定めなければ。何を欲して、何を願い、何を奪おうとしているのかを。
普段軽々と多くの食材や重い鍋を振り回すからか、見た目よりもずっと筋肉質な腕。それは当然、掌……握力もそれに付随している。
その腕で抑え込まれていたけど、今、その力強い手で片足を持ち上げられている。そうして、いっぱいに広げられたそこは、もう待てなんて言う事さえ許されない程に濡れて隠微にサンジ君を惑わす。
「嫌だと言いながら、クソマリモや可愛いローちゃんとは致してたじゃないですか」
「サンジ君?」
どうして、知ってるの。あの時サンジ君は近くに居なかったのに。
そう思ったけど、それを質問するより早く、サンジ君は本当に知っていると分かる事を言葉にして来た。私はそれに、何と答えるべきなのか。
「クソマリモに至っては、外でしたよね。パンクハザードで、気付かないと思ってましたか?」
「それは……」
「なら、俺が抱いた所で問題ありませんね」
言葉と共に、ずるりと埋め込まれていた指を乱暴に引き抜かれる。身長差を調整する為に、軽く膝を折ったサンジ君が内腿の間に差し込んで来たモノの硬度と熱、そして脈動とを、疼く柔肌がじかに感じ取り、ビクッと全身が戦慄いた。
逃げ場を失い、目の前に迫る熱源に心が竦む。熱い……サンジ君の身体が、燃えてるみたい。
なのにその瞳には、絶望が見える。泣いている少年の影が見え隠れしているのに、気付いてしまう。
サンジ君とお風呂場の熱に煽られて、体温が上がる。そのせいか、降り注ぐシャワーの湯がさっきよりぬるくなったような気がするわ。
酷く敏感になった肌は、水滴の1雫までもを愛撫として受け取り、更に水やお湯ではない粘りのある水分で濡れた入口が、宛てがわれたものを受け入れようと浅ましく伸縮する。それが自分の身体であるが故に分かってしまい、羞恥に顔が熱を持つ。
「凄い……綺麗ですね。ちゃんと、もっと堪能しながら抱くようにしないと、勿体ないですね」
揶揄うように言葉を紡ぐサンジ君だけど、実際その声に余裕は無い。もしも夢中になった挙句に、いちいち言葉にしているのだとするならば、常からのリップサービスとしか思えない美辞麗句も、サンジ君の本質という事だろう。
堅い先端で入口のすぐ脇を突っつかれ、ビリッと下腹部が痙攣する。身体はサンジ君の熱を求め、私はけれどもそれを良しとはしない。
「今辞めるなら、許すわ。もう、辞めなさい」
「……前から教えておこうと思ってたんですけどね、ナミさん」
「なに?」
「こういう時に理性的な態度で、命令口調は辞めた方がいい。……余計に、鳴かせたくなります。俺達は海賊、狩猟本能や征服欲が強いんですよ」
その言葉と同時に、逞しい熱塊が濡れてひくつく私の秘所へと押し当てられる。片足で何とか立っている現状で、逃げる手段も拒む手段もありはしない。
最初は目標を定めるように先端だけを僅かに、けれども次の瞬間には身体がジャッキか何かで持ち上げられたような気持ちにさせられる。入口の皮膚や肉が、内側に押し込まれるような感覚と共に侵入を開始すると、ゾクゾクと背筋がそそけ立つのを感じた。
バランスを崩したのもあるけど、思わず目の前にあるサンジ君の首に取すがる。逞しく躍動する肩甲骨の隆起を感じながら、グッショリと濡れたシャツを握り込む。
愛する男のモノでは無いからと、心が抵抗するからか、中はどうしても狭まっているらしい。その隘路を広げるように、強引な突きを食らって私は喉を大きく仰け反らせた。
あまりに強圧な感覚に、目の前が真っ白に発光した。何かが煌めいていると思ったら、それは顔に降り注ぐシャワーの湯だったらしい。
「……っ……ああぁ……!!」
爪先に精一杯力を込めるものの、濡れた床ではただでさえ滑りやすく、到底私の体重を支える役には立たない。粘膜を巻取りながら沈みこんで来るものの圧迫感に、全身の筋肉が緊縮する。
異物を入れまいと勝手に内部が狭まって、サンジ君の性器はギッチリと締め上げられている。それなのにも関わらず、強引に最奥を穿たれて、半端でない衝撃に私はサンジ君の背にギリギリと爪を立てて耐えてみるけど、声が勝手にもれてしまう。
「っ……!!少し、緩めろっ」
興奮を漲らせたそれの凄まじい量感が、充足と言うには激しすぎる痛みにも似た快感となって私の中を満たす。命じるサンジ君の声も、少々ではなく辛いのだと訴えている。
くっ……!と、荒い息が耳元で響く。腰を緩やかに回して、何とか和らげようとしているが、根本に強烈な締め付けを食らっては、身動き出来ないと言うのが正直な所だろう。
「何が……不満なの?」
「ナミ……?」
「……サンジ君は、私に、何を求めてるの?」
真っ直ぐに、見詰める。その眼差しから逃げるように、サンジ君は強く目を瞑って首を横に振った。
それは、何も求めてないと言う意味では無い。それくらいは分かるから、サンジ君が自ら口を開くのを黙って待つ。
すると僅かな時を置いて、サンジ君は苦しそうに言葉を口にした。その時に見せた眼差しは、どこか迷子を思わせるような揺れる瞳による、縋るような空気を纏っているように思えて……。
「っ……俺は、ただっ!」
「うん」
聞いてるよ。サンジ君の心にある闇を、出口の見えない闇の中で泣いてる少年が、ちゃんと見えてる。
皆、図体ばっかり大きくなって、その心は傷付いた少年のまま時を止めてる。ううん、その少年を癒すのではなく隠そうとするから、少年の傷が悪化して腐敗しそうになってるのよね。
「ナミが、欲しい……」
「そっか……」
いいよ……なんて言えない。でも、今ここで拒絶する事も出来ない。
だから私は、細く息を吐いて心を決める。無駄に抵抗しても、何も解決はしないから。
傷付いている少年をその心に見付けてしまえば、私に他の選択肢はない。だって、私は……サンジ君の事も、大切だもの。
「サンジ君……も、動いて」
間近にある双眸を覗き込み、そこに自分を穿つ男を甘やかそうとする駄目な女を見る。こんな中途半端な状態では、どちらにしてもつらいだけでしょ?
「いいんで、すか?……キツい、ですよ?」
「分かってるわ。……サンジ君、敬語に戻ってるわよ?」
痛みはあるけど、だからこそ理性を保てる。1つ大きく深呼吸して、言葉を紡ぐ。
「こんな、無理矢理ぶち込んで……。さっさと動きなさい!気持ちよくさせる自信もないの!?」
強く、高飛車に言葉を放てば、それにより身体の強張りがとれる。これで何とか、サンジ君も動けるでしょ。
つい先程、命令口調を辞めるように言われたのに、学習しないわね、私も……。ああ、そう言えば……レイリーからも同じような指導をされたわ。
その時ふっと目の前で、獰猛な様子を隠せもせずに襲いかかって来た男が、苦笑いを浮かべた。それは、妙に弱々しい。
「仰せのままに、俺の……女王陛下」
言葉の直後、纏う空気を変えてペロリと舌舐めずりすると、そのまま顔を寄せて私の輪郭を擽るようになぞる。更に食むような動きでもって、徐々に深くなっていく口付けが甘やかな官能で肌をザワめかせる。
口腔の粘膜を柔らかく撫でられ、舌を絡め取られ、互いの吐息と蜜を分け合う。甘怠く酔わせるような口付けの為か、身体の奥の方もまたじんわりと緩んで来る。
その隙を狙って、サンジ君が酷く乱暴に上下運動を開始する。お風呂場に反響する肉の打ち合う音と連動して、ふっと足が床から浮き上がった。
「んっ……あっ……あっ!!」
その度に自らの体重で、みっちりと中を満たしたモノをより深く呑み込んで、意志とは無縁の乱れた嬌声が高く低く喉を震わせる。背中を壁に押し付け、両腕をしっかりとサンジ君の首に回し、なんとか体重を分散させようとしてみた。
けれど、絶え間ない律動にそれもままならず、結局は咥えてる場所ばかりで、すべて受け止めてしまう。耳朶を食まれながら囁かれ、嬲られている。
「つらいですか?……すみません、止まりません」
「最初かっら……!止まる気なんっ……て、無かったぁ……でしょ?」
切れ切れの喘ぎの中から訴える。苦痛の中でも、愉悦の中でも、それに溺れきる事無く、尚も矜恃を残した瞳で語れば敵わないなとばかりに苦笑するサンジ君が見えた。
そこからサンジ君は元々なかった遠慮を完全に投げ捨て、激しい抽挿で迎えきれぬ欲望を叩き付けてくる。こんな最低の状況で、最高に興奮してるのを自覚してしまう。
アップダウンを繰り返したこの夜。ギリギリまで引き上げられた昂りの余韻だけは、火種となって残りそうだと内心で自嘲する。
この様子では、官能の中でどろどろに溶けて、溺れて、気絶するように眠りにつくしかないかな。そんな事を思った時、サンジ君の勝手な言葉が耳に届く。
「生は……やっぱり、良いですねっ!ナミさんの中は、それだけじゃなく、最高ですけどっ!!」
勝手な事を……!と怒りたいのに、大きく広がる笠の形やそれが脈動するさま、入口付近をチクチクと刺激する下生えの感触なんかを感じ取ってしまい声が出せない。
生々しく肉欲を示すそれらを、敏感になり過ぎた身体が拾ってしまう。羞恥と快楽で頭が沸騰しそう……!
「初めて犯したあの時、もっとじっくり楽しむべきでした。勿体無い事をしました……!」
「やっ……んんっ……!」
「甘くて、良い香りと声ですね。もっと、堪能させてください」
しがみつく手の力さえも抜けそうだと言うのに、容赦無く上下に揺さぶられ、その度毎に畝る内壁のさらに奥まで抉られる。まだ知らぬ未踏の地に送り込まれるかのような、刺激の凄まじさに喘ぎが止まらなくなってしまう。
「あっ……ふ、かいっ……ひっ……ぁ……ああっ……!」
舌は縺れて、掠れた声が喉に絡んで、まともな言葉にならない。既に完全に床から浮いてしまった両足は、覚束なく空を切っている。
情欲に火照った身体は、もはや背中にあたる硬質なタイルとサンジ君の強靭な腕、そして、繋がっている1点のみで支えられているだけ。否応なしに漏れる甘ったるい喘ぎと、結合部分が奏でる卑猥な音が、タイルの壁に反響して鼓膜に突き刺さってくる。
この場所で、ルフィとも繋がった……。シキの所から逃げ出した直後に……。
そんな事をふと思い出した時、サンジ君の動きが変わる。それにより流れた涙も、今はシャワーが隠してくれる筈。
「本当に、残酷な
そう呟いた俺の声が、ナミさんの耳に届いたのかは定かではない。それくらいに酷く、容赦無く扱った自覚と認識はある。
時折ふと、俺に穿かれているのにも関わらず、ルフィを思い描いている事に気付いてしまう。ルフィに向ける慈愛の表情で、その瞳だけ悲しそうに揺らすからわかりやすい。
それなのに、ナミさんは俺の心を慮り困った人ねとその瞳で伝えて来るのだ。甘やかしてくるその行動に、溺れるなと言う方が無理な話。
今だけ、この時だけ、他の邪魔者が居ない今だけでも……ナミさんの恋人として、愛して欲しいと願ってしまう。そんな、叶う筈も無い事を願ってしまうくらいには、惚れているんですよ。
同時に無理なのだとも分かっている。ナミさんが、俺をそういう意味では愛してないと分かっているんだ。
もしもそんな時が来るとしたならば、それはルフィがナミさんを捨てた時、もしくは手放した時だろう。そうでなければ、ナミさんはルフィから離れない。
だからこそ、もっと熱く、もっと強く、もっと激しく。細胞の中にまで感触と快楽が、染み込む程の情動を叩き込みたい。
別れの時が……いや、ナミさんが誰かと結ばれる時が来ようとも、笑って送り出してやれるように。甘い吐息も、溢れる蜜も、全部呑み込んで……明日を生きる糧としよう。
それでも今だけ、消える事さえできない恋を泣こう。本気で泣けなければ、いつまでも引きずり……その度に俺はナミさんを泣かせちまう。
だから、愛しい女を穿つ事ができる今こそ、可哀想な恋の為に泣こう。どうせ眦から零れる涙も、シャワーの湯に紛れてしまうのだから。
そして、万が一にも気付かれたならば……この女性は俺を、優しく抱き締めて、慰めてくれちまうのだ。そうして俺は、永遠に抜け出せない恋の沼に溺れ続けるのだろう。
「サンジ、く……」
「ナミさん?」
「泣いて、る?」
涙なのかお湯なのか、分からないけど……でも、何でかな、泣いてる気がする。犯してるのはサンジ君なのに、本当に狡いんだから。
だから私は、いつも許してしまう。サンジ君の心が、悲痛な声で泣いているのがわかるから。
「大丈夫、すべて、シャワーよ」
空島に行く直前に、ロビンに言われた言葉を今、私はサンジ君に返す。あの時、私はそのおかげで泣く事ができて、少しだけだけど、心が軽くなったのは事実だから。
私を抱く腕に力が入る。その直後、胸に顔を埋めたサンジ君が、小さく謝ったかと思った直後……激し過ぎる抽挿が始まり、私の意識は完全に失われてしまった。