頬へ、耳朶へ、首筋へとキスの雨を降らせながら、服の中へ手を滑り込ませる。そうしてその肌をまさぐられても、強がる事を出来なくなった今、快楽に流される他の選択肢をナミは持たない。
本当はナミも分かっている。流されるべきではない事は。
それでも、シャンクスは間違いなくナミの初恋であり、信頼できる師でもあるのだ。己の想いを自覚してしまったナミに、それに抗う術はない。
シャンクスの指先だと思うだけで、全身の神経がそこへ集中し、ナミはビクビクと身を震わせる。いつの間にか、神業的な動きで衣類を下着も含めて取り払われ、ベッドに座らされてしまっていた。
「あ、れ?」
「ん?」
「なんで、私、シャツだけ……?」
「脱がせたからな」
そうやって当然のように言いながらも、シャンクスの手はナミの背中から尻へと移動して、背後から割れ目へと侵入する。怖いくらいに敏感になった肌は、その熱を今や遅しと待ちわびていた。
それが分かるからこそ、誤魔化したくて言葉を紡ぐ。身体が揺れ動く度に、シャツが素肌を刺激するのがまた切なさを呼んでしまう。
「んっ……!でも、このシャツ……シャンクスの、よね?」
「ああ。俺のだ。……似合うぞ」
「ああっ!シャンクス……!」
似合うとか、似合わないの話じゃないのよ。そう言いたいのに、割れ目に沿って動き刺激して来るシャンクスの動きがそんな言葉を紡がせてくれない。
逞しい身体にしがみつき、ナミは喘ぐ。強気で男慣れした女の演技なんて、もうしている余裕は皆無。
剥ぎ取られてしまった仮面は、その瞬間に破壊されてしまっている。甘く、臆病で、賢いのに無知な少女が、不安に瞳を揺らすばかり。
「……っ!ルフィ……」
「……ナミ、そんなに俺に壊されたいか?」
「違う!けど、だって……私……!」
「ナミは元々、俺のモノだ。ナミが俺に逆らえる筈ねェんだよ。…………まだ、覇気も安定してねェのに、俺に対抗できてたまるか」
後半のシャンクスの言葉は、当人にさえ聞こえない程度の呟き。だからこそ、ナミに届く筈も無い。
そんな言葉を紡ぎながらも、シャンクスは怒る様子も見せずにナミの胸に唇を寄せる。そして白い肌に色付く小さなアクセントを、舌先でクリクリとくすぐれば柔らかかったそれが固くなっていく。
その固さが増すに従いナミの唇からは、甘やかな吐息が漏れる。目の縁がほんのりと朱を帯びるのを見て、シャンクスは甘く微笑みを向けた。
シャンクスにとって、ナミを言葉で壊すのは容易い。長年の付き合いで、弱い所も泣き所も全て知り尽くしている上に、長年海賊として生きてきた人生経験が違い過ぎるのだ。
壊すのも癒すのも、容易くできる。だが、そんな計算した付き合いではなく……何気無い日常の中で共に並び立つ事を願い、演技でも計算でも無い自分を見せてきた。
そうしてやっと、ナミは覇気を発してしまう程に成長し、それ故に不安定になったタイミングで、目の前にいた男を受け入れようとしている。覇王色の覇気は、誰もが使えるものでは無い。
その素質を持った者が、極端な程に偏った経験をして育つ事でその素質は高まる。時に極端な偏りの無い生き方をしていた者もいるが、その場合も感情の爆発が引き金となり、その能力が発現する事が多い。
自然と扱えるようになるのは、ほんの僅か。ナミは己を抑え込み過ぎて、演じる事に慣れてしまい、演じてる姿もまたホンモノになってしまった。
それ故に、覇王色の覇気は意識して女王のように振舞った時のみ発現するようになったのだろう。そうと分かれば、素の幼い部分から攻めて己の色に染めてしまおうとするのは、悪い大人特有の狡さであり正当な戦い方。
スルスルと逃げ回り、やっと掴んでもツルリと鰻のように逃げ回る女を追い詰めるには、この位の卑怯さは無ければ実質無理な話だろう。この世界を総べる王の1人とは言えど、普通の人間の男だ。
惚れてる女の、素の姿に愛されたいと願う事に何の罪があろうか。幼い頃から大切に守り、育て、愛でてきたのだ。
同じ年頃の少年に奪われる事を良しとするならば、海賊なんぞやっている筈も無い。自らの心の揺れを許せずに、ナミがいくら自責の念に囚われようとも、経験値が違い過ぎるのだから勝ち目などある筈も無いのである。
だからこその余裕。だからこその、微笑みであったと言えよう。
「ナミは、俺を愛してる」
「シャンクス……」
「ほら、何が欲しい?」
もはや既にこれは洗脳の域かも知れないが、ナミは導かれるように甘えた声を出す。それにより、惑わされたのはシャンクスの方かも知れない。
その存在そのものに、シャンクスはいつも酔わされている。そこへ来てこの甘やかな言葉なのだから。
「全部、欲しい」
半分脱げていたシャツに手を伸ばして、そっと脱がし始める。どこか幼さを残す顔立ちに、妖艶過ぎる色香を纏い、あどけなく笑うナミに背徳感を刺激されたシャンクスが息を飲むのは当然の事。
当人は望んじゃいなかっただろうが、経験を全て糧とし、技術をわざわざ念入りに磨かれた、極上の身体を持つ女がそれを遺憾無く発揮した時、手玉に取られない男など存在しうる訳も無い。それも、元々その極上の女に心を奪われているのだから、余計に。
そんな事とは知らないナミは、露になっていく逞しい肌に夢中で口付け、肌の感触を味わう。胸に、腹筋に、たっぷりと舌を這わせながら、ズボンの前を撫でさする。
そこは既に質量を増し、パンパンに張り詰めている。そっと布を下ろせば、シャンクスの欲望をそのままに、熱い楔が勢いよく頭を擡げて飛び出して来た。
「これが、欲しい……」
「……ちょっと待て、ナミ、この技巧誰に習った?」
「なぁい、しょっ!」
細く美しい指先で軽く突っつきながら笑うその様子は、何も知らない無垢な少女を思わせる。それに気を取られている間に、指を絡められバックリと咥え込む。
「……ぅ……」
感極まった呻きが、シャンクスの口から漏れる。だがそれも仕方ない事だろう。
シャンクスにしてみれば、お久しぶりの快感であり……同時にナミからの奉仕など初めての事である。それに、愛しい人の舌が、自分の持ち物とはいえ、グロテスクな肉棒に絡まり、舐めまわしている映像は、余りに扇情的で目の毒だ。
情熱的に両手で扱き上げ、どうあっても全部を含む事のできない巨根を喉の奥まで咥えこもうとする姿には、正に魔性の名に相応しい。だが、想定を上回る技巧を身に付けたナミに、シャンクスは情けなくも声を出す。
「ナミ……ちょっと、まてっ!持たないっ……!」
シャンクスは慌てて蜜柑色の髪に手をかけるが、髪を強引に掴む事もできない。そんな事をすれば、ナミが怪我をする可能性もある事をわかっているから。
結果、シャンクスは困ったように頭を撫でるだけ。無論ナミは、今後の為に1度イかせておきたいのだから、放す筈もない。
レイリーに教えられた事の中にあったのは、可愛いだけの人形でいてはならないというもの。人形であれば壊れるまで弄ばれようと、その意思は尊重されない。
主導権を簡単に明け渡してはならないのだ。だからこそナミは、これ迄の経験で学んだあらゆるテクニックを駆使し、シャンクスを悦ばせようと尽くす。
逞しく育った幹の細部まで舌を絡め、感じやすい先端は得に丹念に擽り、再び口いっぱいに頬張って吸いまくる。その刹那、小さく呻いたシャンクスの下腹部が大きく波打ったかと思うと、ナミの口の中に熱い迸りが放たれた。
それを見せつけるように喉を鳴らして呑み下すと、ナミは妖艶な微笑みを浮かべてから再び顔を落とす。幹からまろみへと流れ落ちていく滴りを、丹念にすくって舐めとっていく。
その刺激のせいか、精を放ったばかりだと言うのに、シャンクスのモノは衰えるどころか更に逞しく反り返る。そのまま血管を浮き立たせていくのを、ナミは内心小さく舌打ちしながら見詰めた。
そんなナミの
「欲しいのは、俺もだ。……もう、良いだろ」
その言葉にナミは何を思ったのか。抵抗するだけ無駄と諦めたのか、愛する男を求めたのか、ナミは自ら膝を抱え胸につくほど高く持ち上げると、見ろと言わんばかりに恥ずかしい部分をシャンクスの前に差し出した。
どれほど淫らな体位をしたとしても、決して損なわれる事の無い美貌。貶める事のできない尊厳に、シャンクスの喉がゴクリと大きく上下する。
太腿の間にある、普段は隠され守られているその谷間の奥で、二人を繋ぐ為の入口が誘うように伸縮している。次の瞬間、我を忘れたシャンクスは夢中でソコにむしゃぶりついていた。
「ああっ……!」
甘やかな悲鳴と共にナミの喉が仰け反り、高く掲げられた両足が宙を舞う。甘美すぎる仕返しに、ナミの理性は1気に弾け飛ぶ。
「はっ……あ……!そんな、とこ……」
イヤイヤと頭を振りながらも、ナミは両手でシャンクスの髪を掴む。そうする事で更なる刺激を求めていると伝えてしまえば、シャンクスが止まる筈もない。
その状況下で、ナミはシャンクスの頭を強く引き寄せてしまう。そうなれば望みを叶えようと、力強い指が、まだ微かに怖張りを残した入口を掻き分けながらグイグイとくい込んで来る。
剣士特有の、大きくて節くれ立った指が、快感のポイントを擦り上げる度、ナミの腰が淫らに揺れる。敏感になっている内壁は、蠢き回る舌や指の存在を恥ずかしいほどリアルに感じ取ってしまう。
私の中にシャンクスがいる。これは、背徳行為だとわかっているのに、望んでしまう。
男らしい指が、貪欲な舌が、私を味わっている。そう思うだけで、泣きたくなる程に感じてしまう自分を自覚して消えたくなるのに、まだ渇望するように求めてしまう自分を認識していた。
本当は、もっと欲しいモノがある。でも、それを言う訳には……っ!
「ナミ、俺を求めろ」
王者の命令。それに、逆らう術は、私には無い。
熱に浮かされ、夢に誘われるように、その声に従い唇が開かれる。そして、恥も外聞もない欲求が唇をついて飛び出してしまう。
「ああっ……!もっと……!もっと、いっぱいにして……っ!」
更なる快楽への欲求。もっと深く繋がりたい。
隙間も無いほどひとつになって、互いの想いを確かめたいの。罪に濡れて、地獄に落ちろと言うなら……何処まででも堕ちると誓うから。
「いやらしいな、ナミのココは。俺を俺と認識した上で、誘惑して来る」
「やぁ……いわ、ないでぇ……!」
新たな結合の為に指が引き抜かれ、その1瞬の喪失に不満の声が漏れる。でも、代わりに押し付けられたモノの熱さに、ゴクリと息を飲み声を失った。
「痛みは、与えねェ……。だが、苦しかったらゴメンな」
謝ってもしょうがない事を、それでも言い訳のように口にして、シャンクスはゆっくりと腰を沈めた。それに合わせるようにナミの喉が、快感とも痛みとも知れぬ悲鳴に震える。
押し入ってくるモノを歓喜の蠕動で呑み込みなからも、何処か怖張ったような抵抗を残す。これが、ナミがルフィへと抱く罪悪感と溢れて止まらない愛情の証。
「流石に、妬けるな」
「シャン……クス?」
半分程入った所でシャンクスは動きを止めて、自嘲を含んだ声を落とす。それに涙に滲む瞳で、意味が分からないと言わんばかりに見詰めるナミの姿。
だが、男に慣れている筈のナミのこの狭さが、痛いほどの締め付けが、他のなんだと言うのか。シャンクスよりも巨大な体躯の男達さえ虜として、幾度と無く犯されてきて、この狭さは通常考えられない。
「そんなに、ルフィが愛しいか」
「あ……たりまえ、でしょっ!?私を……私の大切な人達を、助けてくれたのよ。生きる意味を知らなかった私に、生きていいんだって、存在していいんだって教えてくれたのは……ルフィなの!」
弾かれたように理性を覚醒させて、残酷な言葉を涙ながらに吐き出すナミに、シャンクスはけれど怒りさえわかない。それ程に、涙を落とす姿は神聖に見えた。
だが、続いた言葉にシャンクスは動きどころか呼吸も止める事となる。ナミは、自らの言葉がどれ程力を持つのかを知らないのだ。
「なのに……っ!シャンクスの事も、同じ位愛してるのよ!私が大切な人を守る為の力を、道を与えてくれたのは、間違いなくシャンクスで……!私が最初に船長と慕ったのは、シャンクスなんだものっ」
シャンクスが求めていた言葉。どれ程望んでいても、ナミが心でどれ程想ってくれているのかを分かっていても、聞く事は無いと諦めていた言葉が、その唇から放たれる。
「好きなのよ。私は、二人とも愛してる。どちらかなんて嫌だと、そう思ってしまうくらい、我儘に、貪欲に、強欲に、求めてるのっ!」
その、目も眩む程の激情。海賊でありながら、何かを追い求め、手に入れた物を失いたくないと願うそれを罪と捉える純粋で馬鹿な女。
だからと言って、色目と笑顔の大安売りをして寄ってくる男達を食い物にしようとはしない。ただ、傷付けたくないと逃げ回り、それが不可能だと気付くや否や手玉に取る術を学び身に付ける柔軟さ。
我儘いっぱいの女王様として、恋に、冒険に、ベリーにと意識を移しながら、常人では有り得ない程の知識と行動力でその名を世界に轟かせる。誰よりも海賊らしく、けれども知識人として、その生命の価値を高めながら。
そうして人生を謳歌しているように見えながら、でも、その心の奥に秘められているのはそんな目に見えるものじゃない。……愛する者を求める切ない程の純情。
愛情深い女が、強く、深く愛してしまった存在が複数いたとして……誰が責められるだろう。選べない程に、平等に愛してしまうのは、創造主の慈愛に近い。
母親でさえ、自分の子供を均等に愛そうとしても、それでも差を無意識でつけてしまう中において、真実均等に愛せるのがどれ程の奇跡か。誰にでも平等に愛を振り撒くのは、誰も愛していないから……とはよく言うが、それは愛情が足りないからだ。
己の全てをかけて、目に映る全てを愛するナミのそれは、疑いようもない。だからこそ、涙目で訴えるナミの髪をシャンクスは優しく撫でる。
「ありがとう、ナミ」
瞼に、頬に、首筋に、乳首に、小さなキスを落としながら、再び侵入を開始する。傷付けないようにゆっくりと、それ以上に、愛しい慈愛の女神の感触を隅々まで味わい尽くす為に。