日が傾き始めた頃に目を覚ませば、ロビンは本を数冊読み終えていた。当然のように、見付けた誤字や脱字にはチェックを入れてくれている様子。
「うぅ~ん……」
久しぶりに良く眠れたわ。そう思って伸びをした時、ロビンから示された誤字脱字の量にげんなりしつつ、ありがとうと言って受け取ろうとした所で、動きを止める。
そんな私を見て、ロビンは本をそっと自分の方へ戻す。私はただ無言で阿呆達の方へと歩いて行く。
土俵の中で声を揃えて決着をつけようとか言ってる。これは危険。
「〝ギア3〟」
「上等だァ!いくぞォ!!」
「うおおお!!」
「フランキー!!」
「〝ゴムゴムのォ〟」
「「うおおおおお!!横綱は、俺のもんだーがはっ」」
私はその行為が土俵割りになるとか、そんな事に構っていられなかった。土俵の中で遊ぶだけなら好きにしてと思ったけど、この二人がこの威力でやり合えば自動的にサニーが危険になるわ。
嫌そうな、えェ~……なんて声が他の男達から聞こえたけど、それは無視させて貰う。サニーを守る為の判断である以上、私の行動は当然の事である。
「フフッ……」
ロビンの笑い声が聞こえる。つまり、私は正義。
私が間違ってればロビンだって突っ込むもの。ロビンが私に激甘な事実は、この際公然と無視させて頂く。
本当に、馬鹿ばっかりなんだからっ!なんでこう、問題ばっかり起こすのかしらっ!?
「毎度毎度何やってんのよ、あんたらは!!船が壊れるわ!!」
「横綱はナミ~」
「え……!?」
チョッパーの声に暫し硬直する。だって、横綱って何。
いや、お相撲さんのランクなのは分かってるけど。……まさか、この二人、あんな意味の分からない事やってて相撲のつもりだったの!?
「勝者の証、横綱はあなたのものですよ」
スススッと近寄りながら、ブルックが言う。その間にも、ズイズイと差し出される縄の塊。
「ささっ!着けましょう、ナミさん。はい、足をあげてェ~。はい……ふがっ!!!!星になれ~」
お望み通り足を上げる形で、膝を使いその顎を攻撃すれば、空高く舞い上がるブルック。空に舞い上がってから、何か言ってたけどそんなのはどうでも宜しい。
とりあえず私は、空に向かって叫ぶ。心の底から思った事を。
「いらんわぁ!そんなもん!!」
「そうか?ナミ、似合うと思うぞ」
ルフィの言葉につい、殺気を込めて睨んでしまう。ルフィは食べた分をその瞬間に消費するけど、私はできないから太ったと……そう言いたいの?
毎日望まぬ運動をさせられるか、何も無い日はロビンとヨガやストレッチに励んでいるのに。ルフィが特異体質なだけで、私達は普通なのよ!!
そもそも男と女では同じ食生活をした時、女の方が8倍太りやすいのである。これは生物学的と言うか、ホルモンバランスの影響と言うかで決定づけられている悲しい現実。
「どう言う意味よ。それ。……私が関取のように太ってると言いたいの!?」
「まァ確かに、ナミとロビンは胸だけ横綱級だと思……ごふっ」
妙な事を言っていたウソップの言葉が、途中で途切れた。にこやかに微笑むロビンが何かしたらしいけど、よく分からない。
ロビンが笑ってるから、とりあえずいいや。そう思った時ルフィが言い訳のように何かを言う。
「いや、そんな訳じゃねェんだけどよ」
「なら何なの!?酷い!ルフィのばーか!」
「待てよっ!ナミっ!!」
「待たないもんっ!!」
駆け抜ける私に、必死で追いかけて来るルフィ。月歩と剃を用いて逃げ惑う私を、ルフィは伸縮自在なゴムゴムの実の力で追い詰めてくる。
向かう先にぐるりと文字通り手が回り、それを避けようとしたらその手が追いかけて来ながら、別方向からはルフィ本体が迫る。それを下に逃げれば小さく舌打ちが聞こえたけど、他の皆は楽しげに笑うばかり。
サンジ君が料理のひとつでも作ってくれたら、私は逃げ切れるのにそんな素振りはない。それどころかロビンに珈琲を差出して、他の皆にも何やら飲み物を配り始めている。
皆は我関せずと言うか、完全に傍観体制。それどころか、ショーを眺める人達の様相である。
「余所見してるのに、その速度で逃げるとか……二年の間に逃げ足育ち過ぎだろ!?」
「育ったのは、逃げ足だけじゃないもん!他にも鍛えたもん!ルフィのばぁか!ばぁーか!!」
ルフィがまたしても暴言を吐くから、私はいじけモード全開で悪口を言いつつ逃げる。でもルフィはそんな私に対して挑発的な発言をして来た。
「なら、挑んで来いよ!ほらっ!」
「やだっ!ルフィの事大好きだから、傷付けるなんてできないもんっ!」
「……っ!?卑怯だぞ!?」
「何が!?」
ルフィは顔を真っ赤にして追いかけて来るけど、そんなに怒る事無いじゃない。確かにさっきはフランキー共々殴ったけど!
そう思った時、ルフィの動きが変わった。これは、セカンド。
内心で舌打ちするけど、予備動作無しにセカンドを使えるような成長を遂げたルフィに、私は次第に追い詰められる。何より、逃げ回るにはサニーは狭く、更にはルフィが私の動きを予測できる位に知りすぎてるのが原因。
蜜柑の樹を巻き込まないように避けて移動しようとした時、先回りされてその腕に閉じ込められてしまえばもう、私の負けである。既に何の為に逃げていたのか、追い掛けていたのか、最後には互いに分からなくはなっていた。
ただ逃げる事、追いかける事に夢中になる。だからどれ程そうやって駆け回っていたのかは、既に不明。
「ルフィはすげェな~!ナミの事捕まえられるなんて!」
「おう!ナミだからな!」
チョッパーの言葉に、理解不能な返事をするルフィ。それに小さく笑ったら、ルフィが耳元で囁く。
「……もう、逃がさねェぞ」
「ルフィが、虐めないなら逃げたりしないわ」
「それは、約束できねェよ」
「……いじめるの?」
ルフィは人を虐めたりしないと思ってたのに。……二年で変わっちゃったのかな?
もしも変わっていても、嫌いになんてなれないけど。でも、何されるんだろう。
「……ナミ、お前、時々物凄く馬鹿だよな」
「馬鹿!?なんて事言うのよ!私が誇れるのは顔と頭だけなのよ!?」
「胸も腰も誇っていいと思うぞ?」
「ルフィ!?」
ルフィからのまさかの変態発言に耳を疑う。何故そんな事を言うようになってしまったのか。
可愛いルフィはどこへ。そんな事を思ってる間に、ルフィの纏う空気が少しずつ変化し始める。
「……髪も、香りも、航海術や歌だってある。知識も多くて、真面目だ。ナミは誇れる所沢山あるだろ」
言いながら、逃げられないように腰を抱く腕に力が込められる。その空いている手が私の髪の毛を弄る。
指が少し動くと、ルフィを求めるように、甘えるように髪の毛がルフィの指に絡まって行く。私の代わりとでも言わんばかりに甘える髪の毛に、なんか恥ずかしくなってきた。
「優しくて、可愛くて、無防備で、危なっかしい」
「ルフィ……それ、褒めてる?」
「どうだろうな?……ナミ、会いたかった」
褒められてるのか貶されてるのか、そんな事よりも私は素直に会いたかったと同じように伝える権利が無い事実に愕然とする。だって、私は……。
「ルフィ……」
「ナミ?」
「私、ルフィを裏切るような事を……」
「……ナミが自分から求めたんだとしても、結局俺の所に戻るんだし、離れてた俺に責任があ「そんな事ない!私、シャンクスに……!」」
その瞬間、重なる唇。話していたが為に、開いていた唇の隙間をルフィの舌が当然のように通る。
歯列を飛び越えて口腔内に押し入って来たルフィの舌が、感じやすい粘膜を舐めまわす。そのまま舌を絡めるように吸われれば、こんなのどこで覚えて来たと罵りたくなるのも当然。
けれども文句も言い訳も許さないとばかりに、何度も角度を変え、合わせ方を変えて重ねられる。より深く、より熱く、ほんの僅かの隙間も無い程に重なった唇の中で、ルフィの舌が縦横無尽に蠢き回っていた。
あまりにも巧みになったルフィのキスは、現実を忘れさせようとしてくる。蕩けるような陶酔の中へ、引き込んで行く。
焦がれ続けた恋人が腕の中にいる。それに喜んでいるのが、ルフィの腕や胸から伝わって来た。
唇が離れると、熱く激しいのに、どこか労わるような優しさをその瞳に宿して、ルフィは私を見詰める。その眼差しから逃げるなんて、私にはできない。
「ナミは甘くて優しいから、色んな奴が集まる。それにいちいち心を砕くから、隙だらけのナミは簡単に丸呑みされちまうんだ」
「今度こそ、褒めてる?」
「いや、褒めてねェ。でも、俺はそんなナミが好きだから、取られたくないなら守るしない。なのに、守れないで襲われちまってんだから、ナミが心を揺さぶられても仕方ねェんだよ。……ナミはさ、自分が宝なんだって、奪い合う奴らが沢山いるんだって覚えとけよ」
「無理よ。私に、価値なんてないもの」
価値があるのは、ナミちゃんであって、私では無い。今はもう、ナミちゃんの代わりにいるのだと、麦藁の1味の中では必要な存在だと分かってるけど、自信なんて欠片も無いわ。
「ナミは、自己評価が低過ぎる。ナミは〝俺の航海士〟なんだぞ」
その言葉に私は大きく頷くと、ルフィの首に両腕を回して、自らの意思でルフィに口付けた。されるから受け入れるのではなく、自分からもしたいのだと伝える為に。
蜜柑の樹が皆からの影になるかもしれない。でも、つい先程まで皆は私とルフィを見学していたのだ。
チョッパーだって、声を掛けてきていた。なのに、見られるかも知れないなんて事さえ、どうでも良いと思えてしまったの。
熱く唇を合わせ、舌を絡ませる。貪るキスの間から、ルフィが言う。
「愛してる……」
耳元に囁きかけながら、そっと私を押し倒す。辺りはすっかり夜の帳が落ちてはいても、皆のいる船の上。
「ここ……で……?」
「だめか?」
「恥ずかしいから……やだ……」
「……そうだな。こんなに可愛いナミを〝他の誰か〟には、見せたくねェな」
そう言って私を抱き上げたルフィは、そのまま部屋へと私を連れて行く。その途中、何故か誰にも会わなくて、部屋の中にロビンはいなかった。
どこに行ったんだろうかと首を傾げてる間に、ベッドに降ろされてしまう。それもルフィが先に座っていたのだから、正確ではない気がする。
ルフィの膝の上に座らされて、首筋に夢中で唇を押し当てられる。それだけで身体が勝手に震えてしまう。
「あっ……ルフィ……!お願い、待って……」
「待てるかよ」
言いながらビキニの紐を解かれて、大切な場所を隠していたそれが消え失せる。そうなって初めて、自分の姿を自覚した。
羞恥で身を震わせている私に、ルフィは何故か嬉しそうに笑う。その顔が雄の香りを漂わせていて、胸が大きくときめく。
でも、私は……。自らの意思でシャンクスを愛して、求めた。
これは明確なるルフィへの裏切り。ルフィからの愛情を受け取る権利なんて……私には、無い。
「ごめん、なさい」
「……馬鹿ナミ」
「ルフィ……」
「シャンクスと副船長の場合は、ナミ元々好きだったんだから仕方ねェだろ。それと、レイリーは何においても師匠なんだから、弟子である俺がまだ勝てなくても当然だ。だから、ごめんな」
「え?」
「俺が繋ぎ止められないでいるのが悪い。こんな風に、泣かせるつもりなんて無かったのにな」
その言葉で、私は漸く自分が泣いている事を初めて自覚した。慌てて涙を腕で拭えば、困ったように笑ったルフィが突然ビキニの布越しに突起を摘み上げる。
「ひゃっ……!」
「ナミは、全身が弱い。特に俺にされると」
そう言いながら肩紐を解いてしまうから、胸が顕になってしまう。後ろはまだ縛られているので、身体に装着はされてるけど、これでは既になんの意味もない。
ならばせめて、シャワーをと思うのに、それを言葉にする前にルフィが色気を垂れ流す。いつの間にそんなもの身に付けたのか。
「ナミが俺に悪いと思うなら、俺を求めて……慰めてくれよ」
「ルフィ……」
「俺は、ナミに会いたかった。ナミが、欲しい」
その声に、眼差しに、抵抗力なんて消え失せる。どうしたら良いのかも分からずに、ただルフィを見詰めていたらルフィが笑う。
「そのままでいい。戸惑ってる今のナミが、きっと素なんだって分かるから」
「ルフィッ」
名を呼ぶ声が変に揺れた。だってルフィが片方のそれを口に含み舌を絡ませ、更にカリッと甘噛みしたから。
必死で声を抑えても、私の背は仰け反ってしまう。そうなれば胸を突き出す形になるのは当然で、ルフィはそれを待ってましたとばかりに反対側にも指を伸ばす。
そちらは指の腹で押し潰したり、摘んで引っ張ったり、捻ったりされる。私はイヤイヤするように首を振るけど、漏れる声は明らかに艶めいていた。
「やっ……あっ……!やめっ……ふぁ……んっ……!!」
舌先で突起を擽りながら視線を落としたルフィが、揶揄うように言う。ルフィの膝の上で足を広げる形で座っているから、期待に濡れるそれをルフィは感じ取ってしまっているのだと分かる。
下腹部への直接的な愛部や刺激はない。なのに、情けない程に求めているのが自分でも分かってしまう。
「乳首だけで、こんなになって……。恥ずかしいな?」
「ルフィー……」
私は恨めしげにルフィを睨むしかできない。それでもルフィは、嬉しそうに笑ってるんだけど。
「ナミが淫乱でも、聖女でも、構わねェ。どんなナミでも、ナミの全てが俺のものだ」
「な、にを……」
「だけどよ、ナミがこんなに淫乱なら……」
「なら?」
「俺じゃないと、満足できねェだろ。サイズも好きに変えられるし、速度も色々できる。小さい頃から現在まで、1番多くのナミを見て来た俺だから……満足させてやれる」
ルフィは言葉と共に、ゆるりと左手を双丘に滑らせる。掌でまろやかな尻の感触を味わいながら、その中心に指を這わせた。
「やっ……!ルフィ、後ろは……!」
「経験、あんだろ?……そのまま突っ込んだりしねェよ。ちゃんと解してやる。前に俺のをいっぱいにして、後ろは指でいっぱいにしてやるからな。乳首を舐めながら、空いてる手でもう片方もちゃんと弄って、ナミがイッても辞めないでずっと続けて……意識が飛んでも、呼び戻す」
「あっ……ルフィ!そんな、の……」
羞恥と期待に身体が沸騰する。そんな私を真っ直ぐに見詰めて、ルフィは言った。
「ナミを、俺無しじゃいられねェ身体にしてやるから……安心しろよ」
「ルフィ?」
「他の誰かに抱かれても、俺じゃないならそんなの数に含まないって思えるくらいにしてやる。だから、自分を責めんな。……怯えなくていい。守ってやるから」
「……私が、ルフィを守りたい」
「なら、まずは俺を誘って……満足させてみろよ」
この世の誰よりも、色気とは無縁そうだったルフィが男の色気を醸し出す。それに息を飲まされて、私は呼吸さえ忘れてルフィに魅入られていた。