刺激を受けて、引き付けを起こしたようにビクビクと下肢が小刻みに震え、ヌメリのある体液がゾロの指をふやかす勢いで濡らす。それをペロリと舐めると、ゾロは身体を起こし、愛しさを隠そうともしない眼差しで、官能に染まる私の身体を見下ろした。
その時、何故か幼い頃の記憶が脳裏に蘇ってきた。シャンクスに打ちのめされて、倒れたまま見上げた時シャンクスも似たような瞳で私を見ていたから。
これから起こる悲劇に怯えて、誰も信用出来ないと言いながら、シャンクス達に甘えていた矛盾の塊。我儘で、強欲な私の過去。
でも、あの日々の中で私は学んでしまったのだ。剣は、嘘をつかないと。
身体の全てを用いて、頭をフル活動させて、そうして人は剣をふるう。そうしなければ、勝てるものも勝てなくなる。
頭だけでは身体がついてこない。頭を空っぽにして戦うと言う人もいるけど、それはつまり知識や経験により培われた多くのそれに本能的に従い、思考を止める事で脳の指示を的確に身体へと伝える行為だと言う事。
言葉で説明できなくても、行動で示す事ができるのと同じ原理。だからこそ、剣はその人の性質を如実に表して丸裸にしてしまうのだ。
元々敏感な身体は、人の心の機微も感じ取りやすいのだろうとベックは笑ってたけど、きっとそれは間違いじゃない。どれ程言葉を偽ろうと、瞳まで演じられる役者だろうと、表情を誤魔化してみたとしても、心の内の微妙な動揺までも全て私の前にひけらかしてくれる。
剣を打ち合えば、キスをすれば、その表情なんて見なくても、隠している想いさえ雄弁に物語る。それは、これ迄に触れ合ってきたほぼ全員がそうだった。
ゾロとあの日甲板で戦った時、確かに私は感じ取っていたのだ。だからこそ私は、瞬きもせずに受け止めた。
何度も打ち合い、薙ぎ払い、また止める。それが語る言葉を聞く為に。
ねじ伏せたい。打ち負かしたい。
勝つ事にしか執着できない。肉を切らせて骨を断つ、正に諸刃の剣。
誰とも馴れ合わず、一撃で相手を倒し、累々と築いてきた屍の上に立っているのだとひと目でわかる程の孤独を抱えた剣。それはでも、悲壮なまでの嘆きを滲ませていた。
誰か、誰か……受け止めてくれ……と。この孤独を終わらせてくれ……と。
咽び泣いていた。それを……言葉の通じる眠れる獣を人へと変えたのは、ルフィだわ。
強さや勝ちを得る意味が己の為から、他人の為へと変化した。奪う為から、守る為へと変化した優しい野獣。
それでも満たされない渇き、欲望、飢えに苦しむ。そうして今、真っ直ぐに自分へと突き付けられているのは、目もくらむ程の激情。
「ゾロ……キスして」
言葉にした瞬間、ゾロの顔が驚きとも喜びともつかない表情に歪んだ。そうして唇が触れ合う。
ここにいる、俺は、ここにいるよ……。だから誰か、俺を、見てくれ……。
そう言って泣いていた感情が、キスの途中で変化する。私もまた、その感情を受け止めようとゾロの背に腕を回した。
ゾロの抱える孤独も、憎しみも、悲しみも、怒りも、何もかも受け止める。柔らかく、温かく、心地好いものを望むなら、それを渡す事に躊躇いは無いの。
唇が離れた時、そっと言葉を向ける。大切な仲間へ向けて。
「大丈夫。私は傍にいるわ。でも良かった……ゾロの心は、もう泣いてないわね」
私の口元には、自然と笑みが浮かぶ。優しい気持ちが、込み上げてくる。
ゾロが泣くくらい辛いと言うなら、吐き出させてあげたい。問題は、何をそんなに悲しんでるのかが分からないところにあとは思う。
「ナミは、世界一恐ろしい果実だな」
「そう言えば、麻薬みたいだって……言われる事が多いわ」
「正しいかもな」
言葉と同時に、伸し掛って来るゾロの重み。割開かれた両足は、閉じる事は不可能だろう。
見下ろす双眸に、妖しい情念が揺らめいている。狭い入口に押し当てられた肉棒の、あまりの熱さに火傷でもするんじゃないかと錯覚させられる程。
快楽に震える声音となり響く事で震える喉元に、熱い唇が押し付けられたと思うと、狭い内壁をいっぱいに広げながら、雄々しい剣が新たな戦いに挑むかのように押し入ってきた。異物感はあるけど、痛みは無い。
恐ろしい程に感じるのは、ゾロの熱。灼熱の塊が、感じやすい粘膜を擦り、内臓を押し上げながら、迫り上がって来る。
瞬きさえも忘れ、宙を泳いでいる私の瞳。困惑と驚愕と官能が、交錯する。
イヤイヤと食指を刺激する蜜柑色の髪を振り乱しながら、私はいつの間にかゾロの背中に爪を立ててしがみついていた。心を引き裂く痛みさえ凌駕する、その感覚に流されない為に。
私の中に、私じゃない存在がいる。激しく脈打つ体温が、喘ぎが、情念が、感じやすい秘肉を通してダイレクトに身の内に伝わって来た。
「このまま……閉じ込めたくなるな」
「ひっ……や、やぁぁぁっ!!」
閉じ込められたくないと言う拒絶なのか、快楽を拒絶しているのか、自分でもわからない。ただ、激しい快楽が襲いかかる度に、同じくらい激しい罪悪感が胸を焦がす。
いっぱいに埋め込まれたソレが、動きを開始する。激しく奥を穿ち、脳天まで痺れるような衝撃を与えたかと思うと、次の瞬間には敏感な粘膜を擦りながら、愉悦の波と共に引いていく。
濡れた粘膜が、去って行く楔を推し留めようとして淫らに絡み付いていく。そして、ポッカリと空いてしまったその場所を目指して、再び堅く、太く、逞しい情熱の塊が突き上げてきた時、高く掲げられていた私の両足は爪先までピンと仰け反り、押し寄せる愉悦の波に打ち震えた。
「はっ……あぁっ!!ゾロ、そこ、やめ……」
「ここだな」
「やっ……やだぁ!!やめてぇ……!!」
「今更、辞められるかっ!!」
ギシギシとベッドを軋ませながら引き抜かれて、また貫かれる度に私の唇からあられもない喘ぎが漏れる。羞恥に染まる肌からは、玉のような汗が滴り落ちた。
荒く上下する胸の頂上にある飾りは、その快楽の激しさを物語るように、プクリと立ち上がっている。ゾロは唸るような声を出したかと思うと、睨んでいたその飾りにむしゃぶりついて来て、私は必死で悲鳴を押し殺す。
けれども真っ赤に充血し、痛い程に感じやすくなっている突起に歯を立てられれば、その衝撃で全身がびくりと引き攣る。そうして中に埋め込まれたゾロのモノを、自分の意志とは関係無くキュウッと締め付けてしまう。
その圧迫感から逃れる為に、ゾロは大きく腰をグラインドさせながら激しく前後に揺さぶる。目一杯狭くなった内壁を無理矢理押し広げられ、掻き回されるそれは拷問に近い。
「やっあ……いやぁぁ!!」
「何処が嫌なんだよ。悦くてたまらねェって認めちまえ。その証拠にっ……!下の口から、涎が垂れてんじゃねェか」
「んっ……ぁ……ちが……ぅ……」
「何が違うんだ。素直に認められるまで、この蜜がたれ流されないように栓をしておいてやらないとな」
言葉と同時にごぷりと粘着質な音を立てながら、ゾロの太い楔が内壁を押し込むようにして中へ奥へと埋まって行く。潮のように押し寄せる法楽の波にゆらされながら、私にはもう声を抑える事さえ出来なくなっている。
激しく前後する動きに合わせて、腰を揺らすばかり。やがて私の最奥が、限界を超えたゾロの熱い迸りで濡らされた時、それに呼応するように私自身もビクビクと身を震わせ限界へと到達した。
ルフィを愛していると言いながら、こうして誰にでも反応してしまう。それをどれ程否定したくても、現実が変わる筈も無い。
私の内部は達した直後であるのに、痛みすら凌駕する快楽を求めて、淫らに、貪欲に蠢き続けている。これでは、現実から逃げる事も、見ないフリする事も許されない。
その瞬間、私の顔に走った戸惑いと陰りの色をゾロは見逃してはくれなかった。それまで散々な事を言いながら犯して来たのに、口元には苦い自嘲の笑みが浮かぶ。
「可哀想にな。望んでもいない相手から、こんなにも求められて……なのに、その甘さ故に逃げる事も傷付ける事もできないなんてよ」
すまなそうな顔で言葉を揺らしても、瞳に宿る強固な意志は消えない。その熱が消える事はないのだ。
「だけどな、俺はもう諦めてやれねェ。どれ程傷付けようが苦しめようが、俺は生涯ナミから離れてやるつもりはねェ……!」
「ゾロ……」
「許せとは言わねェ。こんな男に見込まれたのが不運だったと、諦めるんだな」
不運……と、言えばそうなのかも知れない。でも、間違いなく言える事があるの。
それは、他人の評価。私の中にそんな考えは存在してない。
「私は、不幸なんかじゃない」
「……あ?」
「確かに望んでない事は多いけど、望んでないことを人にされるから不運だなんて、そんな事は無いわ。別人なんだから意見や行動に違いがあって当然。食い違いがあるから、自分の思い通りに相手が行動しないから不幸だなんて……私には思えない」
過去の事を曖昧にしか思い出せてなかった頃から、ずっと探していた。私を独りにしない存在。
誰かに愛して欲しいと願う事の罪深さを知りながら、愛される喜びを知ってしまった。私は得てしまったの。
心までも通じ合い、何の疑いも無く、無償の愛を注ぐ事のできる存在を。でもだからこそ、道は分かたれてしまった。
私は過去の生で、絶望と言う物を知ってしまった。愛する者を二度と取り戻す事ができない、その癒し難い喪失感から這い上がる術を私は持たないから……。
あの絶望を繰り返さない為にも、私自身が犠牲になるしかないと思っていたの。夢を追いかける事も、大切な人と会話をする事も許されない中、心は渇いていった。
でも、ルフィ達に助けられて、守られて、愛されるようになって……。かつてない幸福感が、身体と心を隅々まで満たしていくのを感じる。
勿論ルフィ以外との行為は望んではいない……とも、言いきれないのよね。ベックには私から縋ったし、シャンクスの事も私は……。
それはさておき、どちらにしても、誰が相手でも、かなりの羞恥を伴うものだと言う事に変わりは無い。私の常識の中では淫らで許されない範囲の事だけど、それでも断言出来る。
「私は、幸福よ」
寧ろ、私の事を諦められないからと、ルフィを裏切る行為をしているゾロの方が辛いのかもしれない。だって、心で悲鳴をあげて泣いてる少年が見えてしまうから。
両腕を伸ばして、大切な仲間をしかと抱き締める。いつも自分の居場所を見失って、目的地とは似ても似つかぬ場所へと彷徨いでて、独りで迷子になってしまう、素直に泣く事もできない少年が、目の前にいるのは間違いないもの。
「ナミ……!」
身の内に熱の塊があるのに、特上の微笑みで囁くように言われて、狂わない男がいるだろうか。愛してるとか、好きだとか、そんな言葉は求める事さえ無意味と知っている男が、当人は無自覚と分かっていても……魅せられるのは止めようも無い。
ゾロは僅かに残っていた理性を綺麗さっぱり手放すと、欲望に忠実な1匹の雄へと変貌し、再びナミに挑んで行った。おの甘ったるい女が、必ず自分を受け止めてくれると、この男は分かっているのだ。
静かに流れる時の中、二匹の獣は絡み合う。例えそれが禁忌でも、誰にも言えない蜜事でも、その愛情の形が違っていても、手放せない事だけは間違いようのない事実なのだ。
汗を弾かせ、身を焦がし、より深く、より強く、淫らに絡む。女が慈しむように、その腕を伸ばしてくれる限り。
「も、信じらんない……なんなの、この体力馬鹿……」
「お前が体力無さすぎんだ」
「馬鹿……本当に馬鹿ね!私は世間的に見たら相当体力あるわよ!!」
ヤレヤレと言う様子でゾロは私を見るけど、流石にそれには反論させて頂く。そんな訳で、毛を逆立てた猫状態の私を落ち着かせる為なのか、お風呂をすすめられてしまえば、それに乗せられた私はのんびりバスタイムを楽しみ出していた。
浴槽の近くにある壁に取っ手があったので開けてみると、何故かアヒルと入浴剤があって、とりあえず入浴剤を入れつつアヒルを浮かばせてる。……なんだろう、可愛いわ。
アヒルの嘴を指先で突っついていたら、浴室のドアがドカンという音と共に開かれた。驚いて視線を向ければルフィが焦った顔で私を見て、それから1人で頷くと振り向きざまにゾロの頬を殴る。
それを避けようともせずに受けたゾロは、当然のように吹き飛ぶけど、何が起きてるのか私には理解出来ない。突然始まった喧嘩は、けれどもその先に発展する様子も無いから私は咄嗟に掴んだアヒルをそのままに、その成り行きを見守っていた。
「ナミの同意を得てからにしろって言ったろ」
「ンな事、無理に決まってんだろ。ルフィしか見てねェんだから」
「なら、諦めろよ」
「……っ!巫山戯んなっ!!……諦められるなら、惚れ抜いた男が本気で愛してる女に手を出すかっ!!」
そのまま二人は睨み合い、それから同時に私の方へと振り向く。思わずアヒルを胸の前で抱くけど、そんな私にルフィは困ったように笑って見せるだけ。
リラックス効果があるって書いてある入浴剤も、その効果は見せてくれない。ルフィが、何故か遠くに感じてしまう。
「ちゃんと、暖まって来いよ」
「……うん、あの」
「ん?」
何か言わなきゃ。そうしないと、何かを失ってしまう気がする。
そう思って必死に言葉を紡げば、ルフィはいつものように笑った。太陽を思わせる笑顔に、身体から力が抜けてアヒルがお湯の上に着地して妙な角度で身体の一部を沈ませてしまう。
「ルフィも、入る?遊んで来て、汚れてるでしょ?」
「いや……今は辞めとく。壊しちまいそうだし」
お風呂壊しそうなくらい興奮してるのかな。だとしたら困るわね。
そう思って頷けば、静かにドアが閉められた。ドアの外からゾロと喧嘩するような物音は聞こえなくて、ホッと胸を撫で下ろす。
胸の前で握り締めていた為か、アヒルが少し歪んでいたので、そっと指先で形を整えてからまた浮かばせる。すると今度は問題なく浮かんでくれたので、私は暫くの間アヒルとの入浴を楽しませて貰った。
ただ、体力が落ちていた為に思いがけない早さで逆上せ上がり、気が付いた時にはチョッパーとロビンに心配されつつも叱られていたのはご愛嬌。その頃にはルフィとゾロはいつも通りの様子に戻っていて、よく分からないけど解決したなら良かったわと心から思う。