手の中にあった温もりが消えて、驚いて目を開き顔を上げればホットミルクをサイドテーブルに置いたサンジ君が私の頬にキスをした。その動きから、私が泣いていると気付くのに時間はかからない。
何故、泣いているのか。自分で自分が分からなくなる。
「……もっと、泣いてください」
甘やかすような優しい声が、降って来る。泣かないでなんて言わない、優しくて意地悪なその言葉が涙腺を更に崩壊させようとしている事に、きっと賢い彼は気付いているのだろう。
だからなのか、そのまま優しく抱き締めて来る。それを拒めずにいれば、慣れた煙草の臭いが私を包む。
「サンジ君……甘やかさない、で……」
「俺は、ナミさんを沢山傷付けましたし、たまには甘やかせてください。俺の生き甲斐なんですよ」
身体だけでは無く、声も……心さえも震えてしまう。この優しさは、既に毒とさえ思える程。
それでも……必死に紡いだ筈の言葉が、サンジ君には別な言葉として届いたらしい。だって、不思議な返事が返されてしまったもの。
だからこそ、サンジ君を見詰めて首を傾げた。そんな私にサンジ君は優しく笑うから、語彙力を完全に奪われてしまう。
「え?」
「レディに優しくするのは、俺の存在意義で、その中でも特にナミさんを甘やかすのは俺の生き甲斐なんです」
「……変な人ばっかり」
私を甘やかすのが趣味だから、甘やかさないでなんて言う事が趣味を奪う行為だと言うベックと似てる。なんか、私の周りには変な人が多い気がするわ。
ノジコもベルメールさんも、私に温かい飲み物と一緒に甘いお菓子を出してやったらティータイムをしようと誘うし、頭を撫で回してくるのだ。そうして考えると、ルフィでさえやたらと私の頭を撫でるし、赤髪海賊団の皆や、マルコ、空島のおじいちゃん達を含めて、そう言えば皆私の頭を妙に撫でて来たわね。
「……私の頭って、撫でやすいのかしら?」
原作のナミちゃんは明らかに猫属性だけど、私は違うもの。あんなに可愛い性格してないし、何よりも、前向きじゃない。
だとしたらどうして撫でるのかしら?
……子供っぽいのかな。私、もしかして。
「……私って、幼い?」
「質問の趣旨が見えないんですけど……?とりあえず〝大人〟過ぎる傾向はありますね。自分にだけ、厳し過ぎたり」
「ならなんで、皆頭撫でるの?」
「……少し、休んで欲しいからでしょうかね。後は……頑張ってるから、褒めてるのかも知れません」
私は、頑張っているのだろうか。ただ、何も考えずに、突き進む形で生きてるだけのような気がするのに……。
でも、そうね。グダグダ考えてても解決しない事だけは確かだもの、明日に備えてちゃんと休まなきゃ……。
そうは思うのに、身体が動こうとしない。油断すると涙が溢れてきそうになって、心が摩耗してるのが自分でもわかってしまう。
「ナミさん」
「なぁに?」
「今は何も考えないで、俺に……泣かされてください」
「へ?」
言葉を理解できなくて顔を上げたら、微笑むサンジ君の顔が見えた。動揺する間もなくそのままベッドに押し倒されて、カプリとサンジ君は私の耳たぶを食む。
抵抗するとか、拒絶するとか以前に思考が止まる。何が起きてる……の?
「サン「柔らかくて、美味しいですよ。ナミさん……。ここも、サクランボみたいですね」」
名前を呼ぶ間もなく、サンジ君は妙な事を言いながら唇を甘噛みして、甘やかな蜜をたっぷりと味わうように重ねて来る。言葉を奪われて、その間に寝間着がわりに着ていたシャツを勝手に開いてビキニを剥ぎ取ると、漸く唇から唇が離れた。
静止しようと唇を開いた筈なのに、呼吸してる間に胸の飾りを咥えられて、もう片方も爪を立てながらグリグリと押し潰す。それにより声が言葉にならなくなってしまえば、それは抵抗の形をしていても、単なる甘える声でしかない。
乳輪も含めてたっぷり舌を絡めて舐めまわし、先端を押し潰し、唇で挟んで吸いまくる。フルフルと歓喜に震える身体を抱き締め、小さな粒に歯を立てられた。
思考が停止してる今を逃すものかと言わんばかりに、サンジ君は攻めてくる。それに対して思わずルフィの名を呼びそうになった時、サンジ君が妙な事を言い出した。
「ああ……堪らない。この感触、ブルーベリーやラズベリーのようですね。どちらよりも甘酸っぱい最高の木の実ですけど。……ほら、沢山弄ったからか、熟れて真っ赤になって来ましたよ」
食べ物に例えるのは、料理人だからなのか、サンジ君が変態なのか。どちらにしても辞めて貰わなければ。
そう思うのに、身体は快楽故に力が入らなくなっている。そんな私の耳元で、サンジ君は言葉を続けた。
「俺のせいにしてください。今は、泣いても問題ありません。……その証拠に食べ頃になったこれは、俺が摘み取ってしまいますね」
意地悪く囁くと、双方のポイントをいっぺんに摘み、ギュウッと引っ張った。その痛みを伴う快楽に、小刻みに身体が震えるけど、そんな訳に行くかと睨んだらネクタイを外したサンジ君が私の手首を縛ってベッドに繋いでしまう。
私がルフィの女だと知っていて、こんな事をするなんて。確かに遠慮しないとか言ってたけど、私の気持ちはどうなるのよっ!
そう思って縄抜けしようとしたら、簡単にそれを阻止されてしまう。流石に抜けるよりは抑える方が早いのは当然の話。
「解いて欲しければ、俺を満足させるしかありませんよ?……挿れられたくないなら、上のお口でも構いませんが?」
「お断りよ」
「なら、このまま俺にイタズラされ続けますか?ナミさんがそれを望むなら、堪能させて頂きますね」
「嫌っ!サンジ君のバカ!馬鹿馬鹿っ!もう、サンジ君なんか……困ってても助けないんだからっ!!」
ナミはそう言って、ウルウルと両目を潤ませる。そんな猟師に狙われるバンビちゃんの如き涙目は、余計に男の嗜虐心を刺激するだけ。
その結果サンジがそっと股間から取り出したモノは、既に鎌首を持ち上げ、しとどに溢れた先走りに濡れている。それをナミの前に晒す。
普通にしていれば端正というか綺麗系なその顔とは不釣り合いな程に、ぬらぬらと照り光るグロテスクな男の証。色々なそれを見てきたナミだが、だからと言って望んでないそれが逃げられもしないのに目の前に現れた時の、不快感は変わる筈もない。
「さて、ソースのかかってるソーセージを下のお口で味わって貰いま「待って!お願い……挿れ、ないで……奉仕、するから」」
泣きそうな顔で言われたサンジはそれだけで発射しそうになったのを必死で耐えて、ニンマリと笑う。そして目の前に突き出すと、言葉を落とした。
愚かな生贄に、逃げ場などない。どれ程気安い相手でも、海賊である事実に変わりは無いのだと言う事をナミは失念している。
「覚悟してください。食べても食べても、再生しますよ。それが嫌なら……早く、満足させてください」
「……ぅ……」
「さァ……先っぽも裏も、たっぷり舐めてくださいね」
言われるままに舌を絡ませるナミだが、忘れてはならない。彼女はドフラミンゴを満足させられる技術を持ち、それをレイリーに鍛えられたのである。
本来ならば強引に唇を割って押し入れようとしていただろうサンジよりも先に、それを口に自ら含み喉の奥まで咥え込んでしまう。そのまま吸ったり舐めたりと上手く刺激して、腰を揺らす隙さえ与えずに快楽の中に沈めてしまった。
その証拠にサンジの腰がブルっと大きく波打つように揺れたかと思うと、ナミの口の中で熱い飛沫が弾け飛んだ。けれども体制が悪く、上手く飲み下せなかった為に、半分以上がナミの唇の端から滴り落ちていく。
その余りにも扇情的な姿を前に、たった今吐精したばかりのサンジの雄は、更なる欲望に目覚め、再び硬度を増してくる。それにより、再び口でと動こうとしたナミの足を掴んで、サンジは身体を遠ざけた。
「俺だけ楽しむのは、不公平ですからね。大丈夫、優しくします」
そう言ってサンジ君は私の足を肩に掲げ、あろう事か挿れないでと願ったその場所にヌメリの感触を与えて来た。何人もの男に無理に使われたその入口は、それでも筋肉の多さが理由なのか狭い。
そこに指先を差込みいっぱいに開くと、尖らせた舌先を遠慮も無く中に押し込んだ。丹念に、容赦無く、下拵えを丁寧にやるコックらしさを全面に押し出して。
ピチャピチャと音を立て、また奥まで差し込む。そうして熱い息を吐きかける。
「ああ、ナミさんは甘味を好むから……体液まで甘い……。正に甘露ですね」
とんでもない所で喋られたお陰で、高く差上げられていた私の両足は、助けを求めるように虚しく空を切った。逃げようと必死に身を捩ると、突然伸びて来た指先が、女の子なら誰でも弱い下肢にある実を悪戯する。
意地悪な指先が、感じやすいその場所に爪を立てて抵抗の力を奪ってしまう。そうして力の抜けた瞬間に、熱い先端が舌の入っていたその場所に押し当てられた。
「やっ……挿れないって……!」
「満足、させられたら……ですよね?」
その瞬間、ゾクリと全身を貫く甘い痺れ。真っ赤に充血したその場所へ、ズッと先端をめり込ませる。
挿入時の抵抗として、身体が一瞬強ばるけど、サンジ君は私の胸の飾りを弄る事で緊張を解してしまう。一瞬の弛緩を見落とさず、サンジ君は腰を進めて行く。
「ヒッ……や……!」
暖かく、柔らかく、心地好く。そして何よりも、素晴らしい締め付けで自分を迎えてくれるその場所を求めて、サンジは突き進む。
一度経験したら忘れられないような快楽を、当人の意志とは関係無しに与えてしまうのはある意味悲劇なのかもしれない。そんな事が脳裏を掠めたが、ついに最奥まで達するとサンジはその感触を楽しむように大きく腰をグラインドさせた。
ナミの細腰がビクビクと身悶え、下腹部が大きくうねり、入って来たモノの質量に驚いた内壁が、キュウッと締まる。だがサンジは、そんなキツささえも嬉しいと言わんばかりに腰を使い始めるのだ。
「ああ……こんなに締め付けて、これが……ナミさん流の仕返しですか?」
「いや……いゃ……!う、ごな……ぃ……でぇ……!」
「それは聞いてあげられません。丸呑みだなんて、お行儀の悪い事……ナミさんにはできないでしょう?しっかり、咀嚼して、味わってください」
ズルリと引き出し、突き上げ、小刻みな蠕動でもってフルフルと揺らす。それに甘い声が出てしまえば、サンジ君は喜ぶばかり。
涙が零れ落ちると、それでいいんですよなんて言ってるけど、私を泣かせる意味はどこにあるのか。サンジ君は、私がルフィにしかされたくないと知ってる筈なのに、どうして……?
「素敵ですよ、ナミさん。こんなに涎を垂らして、締めたり開いたりして……美味しそうに俺のを味わってますね」
「や……ルフィ……」
「ナミさんが、そんなに虐められるのが趣味とは……知りませんでした。理解不足を、謝罪します」
私の涙は武器にもなるとレイリーは言ってたのに、サンジ君の動きは止まらない。それどころか激しくなってしまうから、本気で涙が止まらなくなってしまう。
うっとりとしたら眼差しで私を見て、抱き締めたかと思うと頬を伝う涙を優しく舌で拭う。なのに腰は激しく振りながら、荒い息に紛れて時に言葉を向けて来るのだ。
「今は……俺だけの……可愛い蜜柑でいたらいい。他の男の事なんて、考えるなよ……ナミ……」
汗の粒を弾かせながら、ズンッと一際深く突いた瞬間、サンジ君の顔が悦楽に染まった。だけど、いつの間にか口調が変わってるサンジ君に気付く余裕も無いままに、私は首を横に振るしかできない。
サンジ君はそんな私を全身でもって揺さぶり、甘やかに囁き続ける。それに悪魔と似た何かを感じたのは、何故だろうか。
「いくらでもイッてください。もっと俺を感じて、可愛い声で鳴いて……俺を、受け止めてくれ。ナミ……愛してる」
心がどれ程拒絶しても、身体は歓喜に打ち震える。窓の向こうはすっかり闇に覆われているべき時間なのに、宝石のように輝くネオンが、昼間と勘違いさせそうな程に煌めいていた。
でも、そんな状況の中でも、何処かチグハグなサンジ君の言動に、心配してしまうのは仕方ない事。だって、サンジ君は大切な人だから。
手が縛られていなければ、きっと私はサンジ君を抱きしめていた。孤独になんてしないと……かつて自分が言われたように、伝えていただろう。
世界はあくまで何気無く、そこにある。刻一刻と表情を変えながら。
闘争、謀略、裏切り、駆け引き。そんな物が当たり前で、汚い事しかないのでは無いかと思うような虚しい日々を過ごして来た私達。
花を見て美しいと思う余裕さえなく、足の早さを競い勝ち負けに一喜一憂する事の大切さを教えてくれたのは……仲間達。そんな事が本来当たり前なのだと、教えてくれたのはルフィの笑顔。
だからこそ、私はサンジ君を大切に想ってるのと同時に、受け入れられない。傷付ける未来しか無い事を知っているから。
「サンジ君は、私の大切な仲間よ。恋人には、なれないわ」
その直後、動きを乱暴に激しく変えたサンジ君に翻弄されて、ルフィの事もゾロの事も、考える余裕を奪われて意識が途切れる。それ程の衝撃を、快楽を、私の身体は感じてしまったのだった。
「誰よりも愛しくて、誰よりも……憎いですよ。ナミさんは、本当に天使のように……残酷だ」
そんな言葉を聞いたのは、夢だったのか現実だったのか。その答えを知る日が来る事は、きっとない。