困った子供を見る母親のような慈愛に満ちた瞳に、何故かそれにはそぐわない熱を乗せて見てくる。それは、この鷹を思わせる瞳を鑑みた時不自然以外の何物でもないのに、何故かベックと重なるのだ。
「……その瞳は、好きよ」
「抉るか?」
「馬鹿言わないで。そんな趣味ないわ」
だから辞めて、とは願っても無駄らしい。ここで諦めてしまえたらきっと楽になれる。
それはわかるけど、肌に触れる指が、身体を包む香りが、耳朶を掠める声が……私の愛する男とは違う。その事に心が耐えられないと悲鳴をあげるから、最後まで足掻こうと決めた。
それでも、この男が……私のハジメテの男。感謝する気は欠片もないけど、アレがなければ流石に直後にドフィからされた事を思えば、壊れていたかも知れないと思う。
だからと言って、受け入れる気は更々ない。私の男は、
それを感じ取ったのか、ミホークは愉し気に嗤うと噛み付くようなキスをしながら私の下肢へと手を伸ばす。そこでクチュリと音がすれば唇を合わせたままで、器用に笑ってみせる。
この男は、苦手よ。どうしても絆されてしまいそうになるから。
何だかんだ言っても、シャンクスの友達で、ゾロの師匠。なのに……何かの時はちゃんと私を守ってくれる、自由すぎる人。
そんな事を考えながら、キスの合間に笑う不届き者から逃げる手段を模索する。その間もミホークの指が、私の秘部へと侵入して行くのだから困ったもの。
膣にも歯があれば噛み付いてやるのに。残念ながら普通の人間である為に、そんなものは存在しない。
ならばと膝に覇気を纏って股間を蹴れば、僅かに身体に隙間が出来た。その隙に逃げようとしたのに、指が中でグイッと曲げられて弱い所を刺激されてしまえば力が抜けてしまう。
「やぁ……っ!」
「ただ簡単に手に入る女ならば、求めたりはせぬ」
その言葉にハッとして、私は視線でミホークを誘う。自ら求める者に飽きて興味が無いなら、そうして見せれば途中で萎える筈よね!
離れていた唇にそっと掠める程度のキスをして、耳元で囁く。コレで萎えて解放して貰える筈と確信を抱きながら。
「ミホーク……挿れて……」
その瞬間、ミホークの喉が鳴った。そして私の肩を掴んで私から少し上半身を離して、じっと見詰めて……驚いた顔をする。
それから破顔して、頷く。……待て、頷くのはおかしかろう。
「素直になったな。……悦くしてやる」
「待って……!」
「ん?」
「迫られるとか、求められるの、嫌なんじゃないの?」
期待を込めて見詰める。けど、そんな私にミホークは声を出して笑いだした。
その顔は本気で楽しそう。でも、さっき……迫られるのヤダって……。
「愚かだな。……どうでもいい女に誘われても萎えるだけだが、愛しい女に求められれば嘘でも滾る」
「た……滾るなー!!萎えさせる為に誘ったのにっ!」
「安心しろ。愛らしかった」
「違うの!愛らしくなくていいの!……もう、取り消すわ!!」
「今更、取消しは効かぬ」
ミホークはニマリとほくそ笑むと、私の両足を抱え上げその場所を熱っぽく見詰めてくる。必死で逃げようとするけど、圧倒的な力の差を前に両足はこれ以上出来ないほど大きく割開かれていた。
「言葉通り、ヒクヒクと期待に打ち震えている」
「ち……違うっ!!」
「違わぬ。なんといやらしい眺めか。俺を狂わせる妖花としか思えぬな」
「いやぁぁぁ!!」
叫んでも虚しいばかりで、力の及ばない抵抗はミホークを煽るだけ。抵抗もできないままに恥ずかしい場所を視線で犯され、屈辱に耐えるしかできない。
けれどもそれが、ミホークの嗜虐心を燃え上がらせているとは当人気付かない。気付けるような賢さを持っていれば、もっと上手く逃げていただろう。
この系統の話については思考が壊死しているナミに、百戦錬磨なミホークから逃げる事は難しい。それも大切な兄と重ねて見てしまうような甘ったれには、どうにもできないだろう。
イヤイヤと足掻くナミを四つ這いにさせて、顔が見えないから大丈夫だろうと誘導して挿入してしまう。ミホークは間違いなく海賊であった。
世界に認められ、海賊とは呼べないような状態にあっても、彼は間違いなく獣である。その二つ名の鷹を思わせるのは、その言動も含んでのものたと思い知らされてしまう。
残忍で、獰猛で、狡猾で、それでいて優雅な獣。鳥は本来獣とは違う筈なのに、彼は狩られる側ではなく、狩る側であると明確に伝えられる。
体位を変える際は寧ろ奥深くにまで繋がった状態で、けれども体位を変える度に抜き差しを幾度も繰り返して、哀願するナミの声を愛らしい歌声だと言いつつミホークは聞き流す。今は、ナミを自分の太ももに座らせた状態で深々と繋がり、ベッドのスプリングを利用して上下に激しく揺さぶっている。
「あっ……ひいっ!やっ……も、ミホーク……!!そこ、は、いやぁぁぁ……!!」
嫌と叫べば叫ぶ程、ミホークはその場所を中心に攻める。だが、ナミは既に自分が何を口走っているかさえ分からない。
いつもと同じように、恥ずかしい程淫らに、体格を考えれば随分巨大なモノを飲み込んでしまっている現実。最奥への一突きで、全身を愉悦に震わせてイッてしまった瞬間、静かに涙が零れ落ちた。それを真正面から見詰め、唇で拭う。
ミホークは揺さぶっている女を眺めながら、腰を動かし続ける。ウエスト部分だけキュウッと引き締まっていて、たわわに実った胸が動きに合わせて揺れていた。
既に何度も嬲られ、可哀想な程赤く充血した乳首はミホークの舌を誘うように立ち上がっている。それを両脇から揉みあげるようにしながら、親指の腹で乳首を押し潰す。
「いやぁぁぁ……!!」
「誘い続けるナミの身体が悪い」
もうそれは、快感なのか痛みなのか判断できない。楽しげに言葉を口にした直後、ミホークが小さな突起から指を離して咥え、吸い上げる。
空いた手は倒れないようにか、逃げられないようにか、腰に回されている。それにより開放される筈も無いのに、ただ夢中で頭を振った。
「許し……て……!!もう、許し……ああっ!!」
明らかに感じているのにも関わらず、声を抑え反応も極力耐えるその姿が男の劣情を刺激する事を当人は理解していない。あえてそれは指摘しなかったレイリーは、快楽に溺れて楽しめるようになればと思っていたようだが、はてさてそれ迄この身体と心が持つかは定かではなかった。
もしこうして襲われる事で、ナミが耐えきれず壊れたとして、それはそれで構わないと思う程度にはレイリーも海賊である。つまり、レイリーもまたナミを一人前の海賊として認め、それなり以上に気に入ってはいるのだ。
試練や苦痛の中で人は成長する。その為ならば、例え壊れてもそれもまた経験であるとしか思っていない事を意味していた。
「あっ……はっ……ああっんぅ……!!も、やめっ……!!」
懇願するそばから湧き上がる愉悦の波。ギッチリと咥えこんでる穴は、既にグッショリとミホークの精を滴らせているのに、それでもまだ、更なる刺激を求めて蠢いている。
鼓膜をくすぐる辱めの言葉にさえ、感じてしまう。終わりの見えない妖しい饗宴は、まだ続いている。
「いやぁぁぁ……!!」
自分の声を聞きながら、意識が遠くに消え行くのを感じていた。それでも、身体が突き上げられているのは変わらなかった。
……瞼が重たい。身体は気だるくて、ずっとこうして微睡んでいたいと半濁した意識の中で思った所で、突然意識が覚醒した。
目の前には精悍な男の顔がある。それに驚いて上体を起こした途端、異常な鈍痛が腰に走った。
「こんの……変態親父っ!」
「その変態に悦がっていたのはナミだろう」
「なっんですって!?」
「中も含め、身体は清めておいた。安心していい」
「なっ……!?」
何を真顔で言っているのか。変態なだけだと言ってたけど、変質者と呼ぶに十分値するだろう。
どうしてくれよう。憎たらしいこの髭オヤジ……!
「俺が出したのだ。責任もって掻き出し、濡れタオルで隅々まで綺麗に拭いておいた。……水もある。必要ならば薬を飲めば良い。無論……俺の子が欲しいならそのままでも構わぬがな?」
こんのクソッタレがぁー!!……とは、心中で。
とりあえず動けない私はその場でへにょんと倒れそうになる身体を必死で起こして、薬を水で流し込む。すると突然毛布を被せられて、身体が硬直するのを自覚した直後に人が部屋に入った来た。
いい匂いがして来たと思ったら、部屋から人が出て行ったのに気付く。そうして毛布から顔を出せば、何やら魚をつまみつつ酒を呑み始めたミホークに呆れてしまった。
けれども当然のように私へと箸で摘んだその魚を差し出すから、つい食べてしまう。……あ、美味しい。
なんだっけ、この魚。モグモグと咀嚼しながら少し考えていたら、声を
「この後はどうする」
「買い物して帰るわ」
「……俺から逃げられると思うのか」
「え?やだありがとう!買い物に付き合ってくれるなんて助かるわ!でも荷物持ちお願いできるなら助かるけど違うなら「待て」」
言葉と同時に魚をまたもや口に放り込まれた事で、魚の名前を思い出した。……うん、これはボラね。
このホテルの料理人、やっぱりいい腕だわ。サンジ君のそれとは違うけど、なんか食べやすい。
あ、少し塩が強いのかも。だとしたら、汗かいたから美味しく感じるのかもしれないわね。
もう少し貰っちゃダメかな。そう思ってボラを見詰めていたら、ミホークが妙な言葉を口にした。
「ナミ、そのボケは天然か」
「え……?これはボラよ。最近は養殖もあるって聞くけど、船だし天然物だと思うわ」
ミホークは私にまたボラを差し出して、それをパクリと口にしたら一人で頷いた。その後口を開くまでに何度か食べさせてもらったけど、何故か沈黙したまま。
やがて、感心したように呟いた。真顔を私に向けた状態で。
「天然なのだと再認識した。凄まじいものがあるな」
「うん、天然物は美味しいわよね」
「うむ。美味かった」
「過去形って事は、ボラの残り貰っていい?」
「……ああ、とりあえずは満足した。好きにしろ」
「ありがとう」
わーい、ボラ食べたの久しぶり。懐かしい味がするわ。
ミホークが食べてくれたから、毒の心配も無いし。塩分補給できて助かっちゃった。
そうして天然のボラを食べた後で、着替えて部屋を出ようとしたらミホークが何故か笑い出した。何がおかしいのかと思って見ていたら、小袋を投げ渡されてしまう。
「先日の舞台も良い物であった。先程は良い思いもさせて貰ったからな。……最低金額にはなっているだろう。持って行け」
二年前に手を出すなら金払えって言ったそれによるものだと理解して、肩から力が抜ける。でも、正直ありがたい。
スリなどで集めようと思っていたから。それに……コレで離れてた時間の言い訳になるわ。
「変な人」
「主には、敵わぬ」
「どういう意味よ」
「そのままの意味だ」
そんな会話の後、結局一人で外に出ると少し焦った様子で駆け回るルフィの姿があった。それを見送ってから近くのお店に入って買い物をしていたら、軽く肩を叩かれて振り向く。
するとそこにはサンジ君がいて、どうしたのかと言おうとしたらその前に教えてくれる。焦った様子を見て脳内で首を傾げたのだけは、理解して欲しい。
「やっと見つけましたよ。カリーナちゃんがナミさんを探して来いって叫んでいますので、戻りましょう」
「あれ?手紙は……読まなかった?」
「ありましたか?」
「……軽く稼いでくるって書いたつもりだったけど、書くの忘れたかしら?」
記憶が曖昧で首を傾げたら、何故かサンジ君が溜息を落として上着をかけてくれる。何事かと思って見上げれば、軽く自分の鎖骨の辺りを指で叩いた。
まさかと下を見れば、そこには跡があって……慌ててかけても貰った上着に袖を通した。そんな私にサンジ君は困ったように笑う。
「……俺は、見聞色の覇気が得意です」
「知ってるわ」
「ナミさんが、どこにいたのか位は、把握してます。……無理を続けるなら、言い付けますよ」
「ごめんなさい」
即座に謝った私に、サンジ君は笑った。その笑顔が優しくて、私は少し毒気を抜かれてしまう程。
なのでそう言えば……と思って先程のボラ養殖について話をしたら、空を仰いだきり何も答えてくれなくて何が起きてるのかと思ってしまう。けれど、帰りましょうかと微笑まれればそれ以上追求するのもはばかられて、私はサンジ君と並んで借りている部屋へと帰って行った。
部屋に帰り着くと同時に手を洗い、待たせていたらしいカリーナに声をかければ半泣きで叱られてしまったけど、何も悪い事はしてないつもりである。……ルフィ以外には。
「捕まったとか、拐われたとか、売られたとか、色々考えちゃったでしょ!?」
「ロビンやカリーナじゃあるまいし、そんな事にはならないわよ」
「あんた、自分が可愛い顔と、ヨダレ級の体型だって自覚しなさいよっ!」
「それは、わかってるけど……」
何せ、原作者様の理想の女である。この世界の美女は全員ナミちゃんをモデルに描かれているのだから、可愛くて当然。
でも、拐われても殺される事は無い。それはヒロインだからではなくて……。
「私、生け捕りのみだし、バックに赤髪海賊団と、元王下七武海数人と、冥王レイリー……何より、麦藁の一味がいるのよ?手を出す馬鹿はいないと思うわ」
「……白髭海賊団の残党も、って、聞いた事あるわ」
「うん。弟が所属してたからね」
笑う私に、カリーナは呆れを隠さずに溜息を落として、そんな私達に飲み物とケーキを提供してくれたサンジ君が言った。いつものように。
「レディ達にはアップルパイとバニラアイス、それと飲み物です。野郎共にはパイを積んであるから勝手に食え!……それと、先程ナミさんから聞いたのですが」
その言葉が途中で切れると、皆がサンジ君を見詰めた。そこで困ったように笑ってから、言う。
「ナミさんはお金を稼ぎつつ、休憩していた所で会った人に『そのボケは天然か』と聞かれて『このボラは天然だと思うわ』と答えたそうです。……諦めも肝心ですよ、カリーナちゃん」
「ふふっ、ナミらしい。本当に可愛いわ」
何故か笑い出すロビンと、硬直するカリーナ。頷くチョッパーと項垂れるフランキーとウソップ。
天を仰ぐように天井を見上げるブルックと、アップルパイを食べ続けるルフィがいる。……ってあれ?
「ルフィ、いつ帰ったの?」
「ついさっきだ。美味そうな匂いがしたからな!……ナミは、変われねェからそのままで良いぞ。……そのボラ、美味かったか?」
「ええ、走った後だったから塩分が美味しかったのよね。『天然物は美味しいわね』って話したら、美味かったってその人も言ってたから私だけの判断じゃないわよ」
「……ナミ、今夜は寝かせねェから覚悟しろよ」
「明日作戦決行日なのに、何言ってるの。駄目よ」
その額を軽く弾いて叱れば、ルフィの目が細くなった。どうやら子供扱いされたのが気に入らないらしい。
「……天然物が美味かった……って時点で、分かるに決まってんだろ」
「ほぇ?」
「……後でな」
ルフィの言葉に首を傾げてから、私は固まったままのカリーナに声をかけて石化を解除する。そうして埒のあかない会話は中断して、明日の作戦に向けて、皆で衣装合わせ等を開始した。