食事を終えて、それぞれが夜の作業に入る。ルフィはゾロに連れられてシャワーと言う名の水浴びをしに行き、チョッパーは確認した資料を纏める為にチョッパーの部屋……じゃなくて、診察室へ向かう。
フランキーは故障してる部位が無いかの点検に向かい、ウソップは食堂の片付けを手伝う。ブルックは楽器の点検や調律を行い、サンジ君は明日の為に仕込みをしつつウソップの持って来る食器等を洗い始めていた。
私とロビンは共に
「……ねェ、この本借りてもいいかしら?」
「ん?……ああ、コブラ王から貰った本ね。いいわよー。今部屋にあるのと入れ替える?」
ロビンの問い掛けに応えると、ロビンはそうねと頷いて、その能力で本を移動させてきた。本棚の本をそうやって綺麗に入れ替えて、ロビンは満足そうである。
大量の手が本の配置を器用に変えて行く。新刊が入って本棚の中身を入れ替え直さないと行けない時、本当にこの数の腕は羨ましい。
「いいなー、その能力。新刊が出た時の本の入れ替えとか並び替えを含めた整理の時、本当に羨ましい」
「それくらいなら気軽に言って。やるから」
「一人でやらせるのは悪いじゃない」
「手は沢山あるから大丈夫よ」
クスクスと笑うロビンは、文字通り沢山の手を出して千手観音にコスプレし始める。残念ながら、手に持ってるべき物が全て本に置き換えられてるけど。
でも、そんなお茶目な様子に笑ってしまう。ロビンは、本当に明るくなった気がするわ。
「それじゃ……聞かせて」
「何を?」
本気でロビンの言葉が分からなくて、首を傾げる。するとロビンは悪戯に笑った。
私を追い詰めるように距離を詰めるロビンの背後では、手だけが仕事をしている。なんだか、妙にシュールだわ。
「テゾーロを嵌めた直後、何を見たの?」
「ほぇっ!?」
「後で……聞くって、言ったわよね?まさか……忘れたのかしら?」
「わ、忘れ「たのなら、今から……じっくり、思い出すまで〝お話〟しましょうね」てないわ!」
慌てて、覚えてた事にしたらキッチリあの時見たもの……つまりテゾーロの過去についてを吐かされてしまう。こんな時のロビンは怖い。
誤魔化そうとしても許して貰えなくて、でも、他人の過去を勝手に話すなんて……と言ったのに結局許しては貰えなかった。それは、私の表情が泣きそうに歪んでいたから……だと、言われたのは覚えているけど、ずっとお小言が続いていたので、どれについてのお小言なのか既に混乱して分からなくなってきていたりする。
話が終わるのと同時に、ションボリしつつお風呂に向かえばロビンが一緒にと言うので、頷いて女部屋まで着替えを取りに歩き出す。その途中でチョッパーを見掛けたので、二人同時に足を止めた。
「チョッパーも、お風呂入る?」
「そうだな……入ろうかな」
「なら、これからナミと入るつもりだったから、一緒にどうかしら?」
ロビンは悪魔の実の能力者なので、お湯に浸かりたい時は恋人のフランキーか私と入る事になっている。チョッパーは悪魔の実の能力者でさえ無ければ、誰でも良いので一緒に入る事が必要。
その結果、私は本来一人で勝手にシャワーやお風呂を使えるけど、そのタイミングでルフィ、チョッパー、ロビンを見掛けたら声をかける事になっている。……ルフィはオマケだけど。
それと同じ理由で、ゾロ、サンジ君、ウソップ、フランキーは、他の悪魔の実メンバーであるルフィ、チョッパー、ブルックに声をかけつつお風呂に入る事になっているのだ。特に、ルフィは気を付ける必要ながある。
「ルフィは……シャワーだけって言ってたのを信じたら、水没してた事があるのよね……」
「あれは……大騒ぎだったな……」
「あれ以来、ルフィ担当にナミも入ったのよね」
それまでは〝恋人〟は、お風呂担当では無かったけど、悪魔の実の能力者を一人で入れない為の候補者として人数確保を目的に増やされたのだ。勿論、サンジ君が泣いて嫌がっては居たけど。
ロビンはフランキー、私はルフィだから、サンジ君としては悲しい事になったらしい。そう言えば、同じエロ担当なのにブルックは騒がなかったわね。
そんな事を話しながらお風呂に向かえば、楽しい入浴タイム。私とロビンはそれぞれ自分の為に合わせて作ったシャンプー類を使って、チョッパーには皆用に作ってある物を使う。
個別にシャンプー等を細かく作り替えているのは、私とロビンの他にはサンジ君のみである。香りや効能が少しずつ異なるので、ただ汗や皮脂を落としやすいだけの物とは違うのだ。
例えばシャンプー等の髪の毛用の物では、ロビンはうねりにくいのを優先してるし、私は艶を優先してる。サンジ君は油汚れに強い物を優先していて、皆拘ってるのだ。
ボディソープもそれぞれ違う。ロビンはニキビやシミ予防を優先してるし、私はツルスベ肌優先で、サンジ君は傷等があっても滲みにくいのを優先してる。
海の上で、自分の仕事をするとなるとどうしても気になる事が変わるのだ。そして、譲れない何かをそれぞれが優先して作っていく。
サンジ君は、油を使う事が多い。ロビンは、髪が傷んだ事でうねるのが嫌だと言っていた。
私は、ナミちゃんの頭に天使の輪が無いのを許せない。それに、どうやらナミちゃんの髪の毛は元々がうねってるらしくて、うねりを抑える物を使っても効果が無かったのだ。
「俺達の事洗う時に使うのは、蜜柑の匂いが強いよな?」
「蜜柑成分が一番多く配合されてるのよ。汗とか、皮脂の汚れを落とすのと、ビタミンを失いにくいの」
「ナミとロビンのは、似てるけど、なんか違う……」
「それぞれ、合わせてるハーブとかが違うのよ。サンジ君のは油汚れに強くて、皆が自由に使える物には、コンディショナーが中に混ぜられてるのよ」
「そう言えば俺達のは全部で二本しか無いもんな。ナミ達のは四本とか五本とかあるのに」
「ルフィやゾロが頭二回洗うと思う?」
チョッパーの問い掛けにポンポンと答えて行く。実はコレ、前にルフィにも言われたのだ。
船長よりも贅沢してるって……。だから、私の使ってるのを使って頭を2回洗って、身体と顔を別で洗い……とやったら、文句言わなくなったけど。
「洗わないな」
「でしょ?だから、一回で良いように混ぜて作ってるのよ。ボディソープで顔も洗うだろうから、二種類で充分。でも、私達は顔は洗顔フォームを使いたいし、お風呂を出たら化粧水とかも使いたいの」
「……うん。ごめんな。俺も何回も洗うのは面倒だから今まで通りで良いや」
「ふふ、チョッパーだけは一種類で済むのよ。全身が毛で覆われてるから」
ワシャワシャとチョッパーの事を洗いながら、答えていたら少し笑えて来た。でも、この質問の仕方はチョッパーならではよね。
人間には、この微妙な香りの違いに気付く事が難しい。それも、今この空間は髪にコンディショナーを馴染ませてる私と、身体を洗ってるロビンと、私に洗われてるチョッパーなので、蜜柑の香りが充満しているのだから余計に。
「チョッパーは敏感だから気付けたのね」
「ルフィも、ナミだけわかるぞ」
「……どうせ、一番美味しそうとか、そんな感じでしょ?」
「よくわかったな!」
驚いてるチョッパーにザッパーとお湯をかける。突然のそれに慌てた様子を見せるから、少し溜飲がさがる。
けど、それを見聞きしていたロビンに叱られてしまった。確かに悪かったのは私だものね。
「チョッパーに八つ当たりしないのよ。ルフィが冒険と食欲以外存在しない生き物なのは、今更始まった訳じゃないでしょ?」
「……なら、なんで私に執着するのよ……」
しょぼんとしながら、チョッパーの泡を綺麗に落としていく。チョッパーはそれを気持ちよさそうにしてるから、なんだか嬉しくなってしまう。
お客さん、痒い所はありませんかー?って聞きたくなるのは、顔が溶けてるからかも。
「ナミは、ルフィには飯の枠だろ?それに、冒険に連れて行ってくれる指針だし……大切なの当然だと思うけどな」
「そんな、ばかな……!なんで人間なのに食べ物枠なのよ!?」
チョッパーの言葉にギョッとしてしまうけど、ロビンも頷いてるからどうやら間違ってないらしい。つまり……ルフィは、人間も食べる……と?
……原作にはそんな描写なかったんだけど、でも、確かに遭難した時とかは生き残るのに食べていい事になってるから、食べられない事はない筈よね。つまり……描写されてなかっただけで、パンクハザードとかで離れてる時にルフィは凍ってた人を食べたりしたのかしらね。
そういう事が無ければ、二人揃ってルフィが人間を食べると言い切る事は無い筈。そう考えたら、私ちゃんと気をつけた方がいいのかも。
……ルフィに求められたら、私はそれを受け入れてしまうと思うから。でも、それは流石に不味いわよね……。
そう思いつつチョッパーの事を洗い終えたので、浴槽に入るか確認して入ると言うのでチョッパーを抱いて浴槽へと向かった。チョッパーが脱力しても大丈夫だし、座高的にも抱いて入るのは効率的なのだ。
「ルフィには、ナミ欲もあるわね」
「何それ!?」
「ナミに対する性欲?」
「普通に年齢考えたら、性欲はあるでしょ!?」
「私が知る限り、ルフィはナミ以外に欲情してないわよ」
なん……だと……!?と、某少年誌の主人公みたいになる私。
あの主人公、声だけならマルコと同じだったと記憶してるわ。と、現実逃避していたらロビンが両手を伸ばして来た。
「ナミ、チョッパーは私が抱くわ」
「ロビンも水没しちゃう人なんだから、駄目よ。危険物が合体したら困るわ」
「……二人だけ一緒になんて、狡いわ。仲間外れに、しないで?」
絶対本気じゃないと分かってるのに、ロビンの言葉にノックダウンさせられてチョッパーを渡してしまった。そんな私にロビンとチョッパーは笑うけど、本気で由々しき事態なのだ。
少しだけ二人から視線を外して、浴槽から出て頭にあるコンディショナーを流してから視線を向けると、浮き輪が欲しいとか言ってるチョッパーに笑ってるロビンがいる。そんな2人に、のぼせない程度であがってよと笑いかけつつ再び入浴タイム。
のんびりお風呂を楽しめるのも、夜だけなのだ。昼間は5分目を離したら何が起きるか分からないのだから、たまにはのんびり楽しませて欲しい。
「……モモちゃん達は元気かしら?」
「あの島は安全だから大丈夫よ。薬になる鉱石があるから、一部の人達がそれを求めて自然を荒らすのを防ぐ目的もあってシャンクス達が縄張りにしたんだったと思う」
「サラッと四皇の内部情報を投下しないで欲しいわ」
「四皇って言われても、なんか近過ぎて何とも表現しにくいのよね……」
「……近い?」
不思議そうに首を傾げるロビンとチョッパー。でも、冷静に考えて欲しい。
シャンクスはシャンクスだし、エースは弟なのだ。そうなると、その仲間達は既に家族枠になる。
「幼少期から一緒にいた人達が、ある時突然〝四皇〟です!なんて言われてもね。師匠であるシャンクス達はともかく、エースなんて弟よ?マルコはそのお兄ちゃんでしかないし……」
「俺さ、時々ナミが最強なんじゃないかって思うんだ」
「そんな訳無いじゃないの。私、こんなにか弱いのに。まぁ……か弱いままだと新世界で通用しなくて困るから修行はしたけどね」
そんな事を言いながらお風呂を出て、行くと何故か表が騒がしい。……昼間じゃないのに、どうして?
溜息を落としつつ蜜柑畑の所から顔を出せば、何故か海王類を仕留めてる馬鹿達。それも一匹ならまだしも、何故か五匹。
「ここって……いつから
「凪の帯じゃ無くても海王類は出るわよ。多分、最初にゾロが切り殺したのね。その血によって他の海王類が集まって来たのだとしたら……納得できるわ」
「確かに、サメとかは血の臭いとかで集まるって聞いた事があるわね」
海王類がそうして集まったからって全て殺して肉に変えていたのだとしたら……この量になってもおかしくは無い。おかしくは無い……けど、この量をどうやって処理するつもりなのか。
流石に全ては、ルフィのお腹にも入り切らないと思うのよね。BBQでもやるしかないかな?
とりあえず一部を焼いてルフィに与えながら、肉のタップリ入ったシチュー等を作ってるらしいサンジ君には頭が下がる。けど……その内の一匹はサンジ君が仕留めたらしいと分かってしまう。
「ちょっと皆!それ、船に乗り切らないでしょ!?どうするつもりなの!?」
「アウッ!美女達は風呂から出てきたのか?俺様が簡単な筏作って繋げるからそこは心配すんな!」
フランキーの返事に脱力してしまう。野菜とか、買い込んであって良かったわ。
大量消費を計算するなら、BBQしかないわ。食べて、遊んで、また食べてってのを繰り返してもらいましょう。
「……明日は、BBQになりそうね」
「俺、カレー食べたい!」
チョッパーの言葉に任せろと笑うサンジ君にまったくと思いながらも、私の手はいらなさそうだと判断して中に戻る。そうして図書室で三人仲良く過ごすのだけど……全員が別々な行動をとるのだから不思議なもの。
私は笛を吹いて、ロビンは本の整理。チョッパーは箱の中から、読みたい物を選ぶ為に物色している。
その後ロビンは部屋に運び込んだ本を読む為に部屋に行き、チョッパーは図書室にある資料を読む為にそこに残った。私はチョッパーの隣を通り過ぎて蜜柑畑に向かうと、弱ってる実が無いかとか色々確認して行く。
やる事を終えて下に降りると、サンジ君がお酒と軽食を用意していた。メニューに海王類の肉を使ったメニューがあるのは、消費したいからか、それともそれを好む相手の為か。
本当に優しい人だと思う。そうして様子を見ていれば、サンジ君は私の存在に気付いて飲み物を準備してくれる。
その厚意に甘えて腰を降ろせば、即座に運ばれて来たのは蜜柑を使ったカクテル。本当に、私に甘いわと思いつつ笑ってそれを受け取った。