ここにドフラミンゴが来るなんて、そんな話私は知らない。でも、知らなかろうと、知っていようと、今ここにドフラミンゴがいる現実に変わりはないのだ。
クリケットさん達に視線を向ければ、ベラミーにより怪我をさせられているのが分かる。どうにか助けに行きたいけど、ドフラミンゴの足止めだって私に出来るかと言われたら怪しい。
会話で時間稼ぎ程度が出来ても関の山。ならば私は、どうしたら良いのか……そう考えた時ドフラミンゴが唇を動かした。
「そんな冷てェこと言われたら、傷付いちまうぜ?」
「……心にも無い事を……。それで、何の用?」
「可愛い部下の様子を見に来たんだ。……それだけさ」
その言葉で少しズレたのだと気付く。確か、ルフィに負けたと知ったドフラミンゴが制裁を加えに来るのが初登場で……そう、この頃からドフラミンゴは原作で登場してたわ、確かに。
だとしたらドフラミンゴが本当に〝可愛い〟部下の様子を見に来たなんて、思える筈も無い。だから私の口は勝手に言葉を紡いでしまう。
「そろそろ、失態を犯したとでも思ったの?」
「……賢すぎると、長生き出来ねェとナミには教えなかったか?」
ドフラミンゴはそう言うと、私を捕らえようと糸を差し向けて来る。それから必死で身を躱して、躱した事で甲板に傷がついたのを見てドフラミンゴを睨む。
メリーを傷付けないで。メリーはルフィの大切な仲間なのよ!
「私の物を傷付けないで!」
「……あァ、そういや、この船はナミの物だったな。悪かった」
思いがけず謝られて、私はあれ?と思う。この人謝るとか出来たんだと。
「ん?……まさかナミ、ここまで1人で来たのか?」
「違うわよ。どうして?」
「仲間はいねェと言っていたし、あの時確かに他に誰も居なかった。今もな」
「そこに、いるじゃない。大切な人達なの。これ以上手を出さないで」
「ならナミは何を差し出せる?対価はなんだ?」
私が、差し出せるもの……?
今までなら、簡単に命を投げ出してただろう。今ここには、メリーも航海術に関する資料も海図もある。
ロビンという賢い仲間も現れた。私はそれならばもう充分だと言って、簡単に投げ出せる筈だったのに……脳裏にルフィの声が響く。
傷付くな、傷付けるなと言う、大切だと、愛してると笑うルフィの声が。私が何かを犠牲にしたら、それを知ったら悲しむだろうと分かる仲間が出来た……その事がある意味で私を弱くする。
私……何も、差し出せない。ならば……どうするか。
「……ドフラミンゴの求めるものと、それが合致するとは思えないわ。何がお望み?」
妖艶に微笑み、余裕があるように見せかける。ハリボテなのは自分が1番よく分かってる。
「そうだなァ……ナミを持ち帰りたい」
「私は物じゃないし、メリーから離れるつもりは無いわよ」
「なら、壊してやろうか?粉々にな」
「分かってる筈よ。それをしたら、2度と私と会話も出来やしないって……」
互いに睨み合う。ドフラミンゴは何が楽しくて、こんな事をしているのか。
「……それなら、ナミの体で払ってもらうんでも、構わねェが?」
背筋に冷たいものが走る。でも拒絶して他に何が差し出せる……?
言葉が、出ない。ルフィを裏切りたく無い。
でも、なら、戦って勝てるのかって言われたら無理で……。でも……嫌だ、と、思ってしまった。
自らの身体を抱き締めるようにして、無意識で数歩後ずさる。そんな私を、驚いた様子でドフラミンゴは見つめてくる。
「……変わったな。随分と、人間らしくなった」
「余計な、お世話よ……」
「益々、欲しくなった」
その言葉に反応して逃げようとした時には遅かった。動きは恐怖と混乱から鈍くなっていたので、簡単に糸で抑え込まれてしまい、どうにも身動きが取れない。
いや、触らないで!
声を音にさえ出来ない。唇をドフラミンゴの唇で、塞がれてしまったから。
頭を振って逃れようとする私に、ドフラミンゴは愉しそうに笑うと、ベラミーに視線を向けた。
「この船とその3匹には手を出すな。〝俺の女〟がオネダリして来たからなァ。……そうだろう、ナミ」
「誰がアンタなんかのっ「俺の女じゃねェなら、止める必要は無ェよな?」」
ドフラミンゴは私に自ら認めろと言うのか、この男のモノだと。でも、私はルフィの……。
他に選択肢は無い。従わなければ、クリケットさん達もメリーも……だけど、ルフィッ!
脳内で縋るようにルフィの名を呼んだ時、ドフラミンゴが言葉を口にした。それは、何処か楽しそうでもある。
「……強情だな、相変わらず。そんな所も気に入っては居るが……ナミを変えた奴が俺じゃねェ事が、気に食わねェ」
「ドフラミンゴ、この船にも、クリケットさん達にも、手を出さないなら……相手をするわ。それで、いいでしょう?」
ルフィ達と、会わせる訳にはいかない。まだ、ルフィ達には勝てない。
でも、こうなると分かればルフィ達は私を守ろうと挑み掛かる。それは、避けないと……。
寒気がする程に嫌だけど、そんな事を言って皆が傷つく方がもっと……嫌だもの。既にクリケットさん達の方は破壊され尽くしてる様子で、意識だってあるのかどうかが分からない程。
このままには、出来ない。私は目の前で誰かを喪うなんて、耐えられないっ!
ベラミーがドフラミンゴのマークを残して、クリケットさん達の宝を手にアジトへ帰る。それに合わせてドフラミンゴが私を抱えて共に進む。
全身が総毛立つ。鳥肌というか、サブイボというか、そんなものになってる自覚はある。
ルフィ、ゾロ、サンジ君、ロビン、シャンクス、ベック……。祈るように、心の中で助けを求めている間にアジトに帰り着いた様子で、ドフラミンゴはベラミーに部屋を借りるぞと言って私を連れて行く。
ベラミーは私を見ると、確かにいい女だとは思ったが……なんて呟く。それに対してドフラミンゴは1瞬足を止める。
「ナミの連れ合いも、見たか?」
「どっちかはわからねェですけど、見ました!緑の頭の剣士と、黒髪の麦藁帽子被った小僧で、どっちもでも雑魚で……!」
「そうか、ありがとうヨ」
言ってその場を移動したドフラミンゴは部屋に入ると、粗悪な部屋だなと笑う。私は震えそうになる体と心を必死に押さえて、ドフラミンゴを睨み付ける。
「……本当に、毛を逆立てた猫だな。泥棒猫?」
「調べたの?」
「当然だろ。迎えに来てやったのに、フィアンセのそれを拒むなんて、どうしてやろうか?」
「寝言は寝てる時にって言ったと思うのだけど、忘れてしまったの?まさか、もうボケてるの?」
問いかければフッフッフッフッフッと、独特な笑い方で肩を震わせる。そして、無言のままに私の衣服を切り裂き、その糸で私の自由をも阻害する。
そのまま私を歩かせてベッドに移動させると、良いように身体をまさぐり始める。それに、嫌悪感しか感じなくて……思わずルフィの名を呼びそうになる。
……ダメよ、ここでルフィを印象付けたら、ルフィが危険になる。まだ、ダメ……もう少しルフィが強くなる迄は……。
「惚れた男にしか、従順になれねェってのは……女海賊としちゃ終わってると思わねェか?」
「思わないわ。そんな私の甘さも含めて、彼は私を愛してくれてる」
「……相変わらず、いい度胸だな。アレだけ俺に抱かれたってのに」
「何言ってるのよ。私は〝抱かれた〟訳じゃないわ。無理矢理〝犯された〟のよ。合意じゃないわ!」
「だが、今回は船とあの3匹の為とは言え〝合意〟だ。違うか?」
言葉が続かない。悔しい、何を言っても勝てる気がしない。
どうにかして、逃げられないだろうか。誤魔化して、逃げられないだろうか……。
「俺は優しいからナァ?選ばせてやるよ、ナミ」
何を選ばせると言うのかと見れば、ドフラミンゴは残忍な笑みを浮かべた。嫌な予感しかしない。
「俺を〝ドフィ〟と呼び〝抱いて〟と自ら足を広げるか……。俺に犯された後、連れ帰られるかだ。勿論帰る場所は、俺の国だ」
血の気が引く音を、私はハッキリと聞いた。どちらも、選びたくないけど、選ばなければ自動的に連れ帰られるのはわかり切ってる。
たった1文字、たった1音違うだけ。それなのに……その名を呼びたくない。
でも、連れ去られる訳にもいかない。ルフィ、皆……助けて。
私は、慣れてる筈よ。大丈夫、演じれば良いのよ、気にしてない風を、装えば良いだけ……。
そう思い込もうとしても、体は嫌だと動こうとしない。声は、無様に震える。
「っ……!どふぃ、抱い、て」
「……いい、顔をするようになったな。苛め甲斐が有りそうナ、なァ?」
そう言って、ドフラミンゴは私の中に己の熱く滾る楔を容赦無く埋めて行く。けれども心と体がそれを拒否するから、ただ、痛みと苦痛ばかりが私を包む。
これ程のそれならば、入れてる男の側だってつらい筈なのに……!
「……ナミッ!少しは、力を抜けっ!」
「っ!」
呻き声の1つだって、出したくなくて息を詰める。その時のドフラミンゴの眼差しが、どうしてか苦しそうに見えるなんて、そんなのは気の所為だとしか思いたくない。
半分も入らない所でドフラミンゴが動きを止めると、前より狭いって事はねェよななんて呟いてから、何かを取り出した。取り出された物を見て、私は咄嗟に逃げようと試みるけど、その反応でドフラミンゴは私がそれが何か気付いたのだと悟り、愉しそうに笑った。
ソレはアーロンに飲まされた事がある。発散させても無駄な、飲んだ量で効果そのものとその継続時間が変わる嫌なタイプ。
「まだ販売してそう経たねェんだがナ。知ってるってこたァ……使われた事があるのか」
「五月蝿い!アンタに関係な」
言葉の途中で顎を掴まれて、無理矢理流し込まれた液体に、吐き出そうとしても口と鼻を押さえられれば死ぬか飲み込むしか無くて……体は飲み込む事を選択した。私がそれを飲み込んだのを確認して、ドフラミンゴはこれ以上ない程に唇を割って笑い出す。
「……っ!」
思わずルフィと呼びそうになる。まだ、戦わせる訳には行かないのに、助けを求めそうになる。
「ただ、効果が出るのを待つってのも詰まらねェから、続けながら効果が出るのを待ってやるよ」
ドフラミンゴの言葉に、絶望しか抱けない。もしも、薬のせいだとしても、意に沿わない言葉を口走る位ならばいっそ、声など失ってしまいたい……!
体は次第に熱くなり、ドフラミンゴの動きに合わせて体は大きく反応を示すようになる。汗が流れる事すら、快楽を呼ぶから……快楽の為に霞む意識の中で、それでも声を出すまいと息を詰める。
「この薬を通常の倍の量飲まされて、それでも自我を保つとはな……。お前は何者なんだ、ナミ」
答えられないし、応える気も無い。早くドフラミンゴが満足して、終わる事を祈るように願う。
けれどもドフラミンゴはその後1度出しただけでは終わってくれなくて、それで終わると力を抜いた私を嘲笑うように突き上げ、掻き乱し、弄ぶ。気が狂いそうな熱の中で私はただ、声を出すまいとし続ける。
それに対してドフラミンゴは、私に自ら求めさせようと、声を出させようとして来る。それはあたかも戦いのように、私には感じた。
それでも、明らかにコレは私の負け戦。終了も何もかも、決められるのはドフラミンゴだけなのだから。
薬のせいだとしても、快楽の中にいる事自体がつらくて、自分を許せなくて……泣きたくなる。体だけが熱くて、心は凍り付きそうで、なのに……凍らせる事も出来ない。
ルフィ……ルフィ……!
「……フィ……」
脳裏に浮かぶのは愛しい男の、太陽のような笑顔。無意識に手を伸ばした瞬間に、涙が……勝手に零れ落ちた。