ビンクスの酒の時はそれこそ大合唱か、はたまた自由気ままに呑んだり食べたりをする人達の様子が見て取れる。誰かが歌いっぱなしになる事もなく、交代で歌ったり、歌わずに演奏したりして宴を盛り上げていけば、途中で歌いたいと入って来る人に合わせての演奏も行う。
それは賑やかで、明るく、楽しい。いつものメンバーしかいなければなし得ない構図でもあるのに、何故かこれもまた心地良いのはなんでかな。
私の視界に、踊り、歌うウタの姿が無い事がひたすらに違和感として映る。それでも、今この時が楽しい事に間違いはない。
「ナミは次、いつ歌うんだ?」
「飛び込みが無ければ、あと……五曲後ね」
小首を傾げるチョッパーに問い掛けられたので、一応脳内で予定を確認する。記憶している限り、順番は乱れてないし……その筈だわ。
麦藁の一味とは違い、音楽家が複数人いるこの赤髪海賊団では、一人が二曲歌い、その間にビンクスの酒を挟み、更に途中参戦者がいれば百曲程度の時間は稼げる。チョッパーはそれを聞いて小さく頷くと、俺も歌って来る!と指揮者に声を掛けに行く。
その姿を微笑ましく見送って、少しだけ休憩を貰う為に席を立てばライムジュースが手招いてくれた。それは子供の頃に、何度か聞いた覚えのある言葉付きで。
「俺の膝が空いてるぞ」
「なら、立ってるわ」
「ウタは素直に座ったのによ」
「何年前よ。その頃なら私だって「座らなかった」」
可笑しそうに笑って、少し寂しそうにグラスを揺らす。そして、瓶を一本投げ寄こした。
言われてみれば、昔言われた時も座った試しは無かったかも。……忙しかったし。
「〝ウタはマセてる〟ってナミはよく言ってたがな、俺達から見たらナミは見た目だけ成長が遅れてる婆さんみたいな時が多かったぞ。……大半は、母親みたいな所が多くて、ウタを溺愛し過ぎてた事の他は問題なかったけどな」
「そんなに、溺愛してた?」
可愛がってた自覚はあるけど、溺愛とはいかない気がする。そう思って首を傾げたら、何人かが酒を噴き出した。
そのまま咳き込む皆を見ていたら、ホンゴウから仲間に一斉攻撃仕掛けるな!と、意味のわからない謗りを受けてしまう。
なんて酷いと思いながら受け取った瓶をラッパで呑み干せば、相変わらず強いな……なんて、呆れたような声が聞こえてくる。そんな事を言ってるスネイクだって、似たような事をしているのに。
それにしても……。このお酒。
「なんか、懐かしいわ」
「ん?……それ、蜜柑酒だからな。最近東の海で販売され始めた物らしい」
「……最近?」
「ああ……懐かしい味だろ?」
悪戯に笑うライムジュースのその反応で、これがベルメールさん達が蜜柑から作って販売してるのだと気付く。教えて無い筈の故郷。
だけど、どうして知ってるの?なんて、無意味な問い掛けである事も分かってる。……懐かしい訳だわ。
「……それで、溺愛してたかな?」
「お、覚えてたか。あれを溺愛と言わずになんと言うんだよ。ウタが泣いてたら、俺達の誰が叱ってても無条件で庇いやがって。ウタがワガママになったのは、ナミが甘やかしたからだぞ」
そのままウタのやらかした事を指折り数え始めるのを聞きながら、小さく頷く。確かにそんな事もあったわね。
過去の出来事を否定するつもりは無い。それでも言える事はひとつある。
「ウタは可愛いんだから、何してもいいのよ」
「今俺の話を聞いてたか!?そもそもその理論おかしいって、何度言えば理解するんだ」
「永遠に理解しないわ。……可愛いは正義!つまり、
「この親馬鹿、どうしたらいいんだかな」
困ったように笑いながら、私に同じ瓶を差し出してくるのが甘やかしでないならなんだと言うのか。泣きそうになるくらい、懐かしい味のお酒。
どうやって仕入れたのかとか聞き出そうとしたけど、どうやら私には難しいルートらしくて答えて貰えない。少しむくれてたら、皆が背後から呼び掛けてきてるのに気付く。
振り向けばマイクを示されて、いつの間にか随分サボってしまったらしいと気付いて慌てて戻る。つまり、もう一曲を歌うタイミングらしい。
ドラムの前に腰掛けて、マイクを口元に用意する。忙しい所もあるけど、基本的にこれはヴァイオリンが仕事をする曲だから、歌に専念しやすいのはありがたい。
「お次はナミが……懐かしい曲を歌ってくれるぞ!『風のゆくえ』」
紹介されるのと同時に始まる演奏。呼吸を整えつつ、スティックを強く握らないように気を付ける。
この歌は、ウタが最初に作った歌。私達にとって、大切な思い出の曲。
あの日の衝撃は、きっと忘れられない。ウタは、悪魔の実の能力とは別に、列記とした天才だと気付かされた瞬間でもあった。
「ーーー」
産まれなんて知らない。実の親なんて分からないけど、そんなの気にした事は無かったよ。
それは、私もウタも同じ事。誰に問い掛けても答えなんて貰えやしないけど、そんなの気にならなかったの。
だって私達は愛されて来た。幼い頃から過たずに、真っ直ぐに愛されている。
「ーーー」
この歌声は、どこまで行けるだろう。私達はどこを目指しているんだろう。
そんな問い掛けの答えが欲しい。だから、まだ知らない海の果てへと漕ぎ出したの。
「ーーー」
私にもウタにも、譲れないただ一つの夢がある。その願いのままに、心に帆を揚げて突き進んできた。
いつだって、大切な人に届くように歌う。大海原は全ての島に、船に、通じているから……。
「ーーー」
それぞれが、自分と周りの幸福を目指してる。だから、傷付いてもそれを求めて手を伸ばすの。
譲れないものがあるから。諦められない想いがあるからこそ。
「ーーー」
悲しみも強さに変わるなら、きっとこの痛みも意味がある。大切な人を守れる強さが欲しいよ。
荒れ狂う嵐も、皆がいるなら、超えていける筈。信じてるこの旅の果てで、また……会いたい。
「ーーー」
目覚めたままで見てる幸福な夢。この夢は、決して醒めはしない。
水平線の彼方、大切な人の影が見えた気がして手を振るように、歌うわ。大きく広げた帆が纏う風のように、大切な人を包み支えたいの。
……ここに来てようやく大きな間奏が入った。これまでの間奏は、呼吸を整える程度の時間しか用意されてなかったのだけど、でも、この間奏が終わればエンディング。
ウタはあの頃、どんな思いを込めて歌ってたのかな。ただ、楽しいだけで歌ってたとは、どうしても思えないの。
大きく息を吸い込み、口を開く。ウタの歌い方とは少し違うけど、それでも聞いてくれてる皆に届くように。
「ーーー」
ただ一つの夢であり希望。生きる目標であるのは、家族の平穏。
仲間との平穏な日々。平和で優しい時間。
これだけは譲れない。これだけは奪わせないわ。
私が消え去っても、痕跡と愛は残る。歌声が響き続けるように。
だから、どこまでも届くように愛を歌う。大海原を駆けて、大切な人達に届くように祈りながら。
……歌い終えたら、音楽も余韻のみを残して静まって行く。ウタとは雰囲気も違うだろう私の歌を、泣きそうな顔で見てる皆にワザとウタを真似るように締めの挨拶をして見せれば、数人が滂沱の涙を流しながら鼻水を落とすから表情を取り繕えなくて吹き出してしまった。
「そんなになるくらいなら、ウタに会いに行ってあげてよ!」
「お頭ァァ!ナミがいじめるゥゥ!!」
「こらナミ!泣いても可愛くない奴を泣かすんじゃない!」
「お頭が酷いィィ……!!」
その瞬間船内は笑いの渦に包まれる。そんな騒ぎの中で、それぞれが自由に過ごす。
私は演奏等の役目を終えたと判断して酒瓶を適当に貰って、シャンクス達がいつの間にか増設した休める形で作られた見張り台に登る。南国を思わせるデザインなのは、シャンクスが無駄に暑苦しい海の男だからだろうか。
皆の熱気から離れたからか、潮風が心地好い。それなのに冷たく感じるのは、離れた事が寂しいからなのかな。
「楽しんでるか?」
「……そうね、ここにウタもいたら最高に」
「居ないからこそできる事もある」
背後からかけられた声に、振り向きもせずに答えたのは顔を見たら泣きそうだったから。でも、返された言葉に思わず振り向いてしまう。
それを狙っていたのか、振り向くと同時に抱き締められてしまったと思ったら、そのまま驚く私を無視して重なる唇。いつもより少しだけ甘い、シャンクスのそれ。
抵抗しようとする度に深まる口付けは、すでに拷問に近い。呼吸さえままならないこれが何を目的としているのか分からないままに、酸欠で意識が朦朧としてくる。
「やっ……」
必死で角度を変えるタイミングを見計らい抵抗の声を上げるも、それで辞めて貰える訳も無い。どうしたらいいのかと羽織ってる上着を掴むと、それに合わせてシャンクスの腕が少し動きを変えた。
開放されるのを期待した私を嘲笑うように、その手は着てる物を簡単に剥ぎ取って行く。それに抵抗しようとしたら、漸く唇が離れて耳元で低く囁くように言われたのはある意味脅迫。
「衣服を破かれて、素肌を晒した姿をクルー達に見られたいなら、抵抗したり騒いだりしてみろ」
「っ……!」
ここは腐っても見張り台。声や姿を遮るものなんて何も無い。
力でも素早さでも、技術でも勝ち目は無い。だからこそ、悲しみとも怒りともつかない感情が溢れそうになる。
こんな所で、何考えてんのよっ!そう、叫べたら良いのに。
実際に口に出せたのは、震えて掠れる音。情けない、涙声。
「……ひど、い……」
「宿代と、ナワバリ使用料だ……」
「っ!……ここじゃ、やだ……」
うるっとした瞳を向けて、声を出す。それにより息を飲んだのはシャンクスの方だった。
泣きそうな顔で、なのに驚くくらい嬉しそうに笑う、少年のような空気を出すシャンクスが乱れてはだけた私にマントのようなそのコートを羽織らせて、そのまま横抱きにして移動する。それに抵抗するのは、つまり抵抗した場所で抱いてと言ってるようなもの。
それでも、仲間達に見られるのは、嫌だった。知られているのだとしても、見られるのは本当に嫌なの。
勝手に震える身体。なのにシャンクスは気恥しそうに耳を染めて、なんとも言えない幸せそうな顔をする。
その理由が分からなくて、でも、これ以外に選択肢を見つけられなかった。抵抗さえ下手にできないし、逃げるなんてどう足掻いても不可能。
なら、甘えるのが最良。……全力で、誑かしてやるんだから!
「シャンクス……」
抱き上げられてるから自由な両手を動かして、そっとその頬を両手で挟む。視線を合わせて微笑むと、それだけで顔の変化は無いのに、心音が強くなる。
大人になって顔を繕えるようになっても、心音を誤魔化すのは難しい。平常心を保とうとしても、耳だけは赤くなってしまうのと理由は同じ。
「宴には、戻らせてね」
クスリと笑って言えば、小さく善処するなんて返ってきた。それが今のシャンクスにとって、精一杯の妥協点なのだろう。
誘惑しようにも、シャンクスの方が色々な意味で上手過ぎて、私には太刀打ちできはしない。そもそも、シャンクス相手に勝てると思う方がどうかしてるのよ。
「狡いわ……」
「何がだよ」
「シャンクスに勝てる事が見当たらないわ」
少しいじけてしまう。勝ち目が無さすぎる。
狡いなァ。やっぱり、男に生まれたかった。
「……むしろ俺は、ナミに勝てる要素が見つからねェよ。勝てるとしたら、戦闘能力とそれに付随する事だけだろ」
「それが敵わないから、私はいつも負けてるんじゃないのっ!」
「……本気で、言ってんだな。ナミは本当に、頭は良いのに馬鹿だな」
「頭のいい馬鹿って何よ!?」
思わず大声を出した時、部屋に到着して連れ込まれてしまう。でも、このまま好きにされるのは納得いかない。
説明して貰うまでは、全力で抵抗してやると睨み付ければ呆れたような視線と共に声が降って来る。人をベッドに降ろしつつ、当然のようにドアと鍵を閉めるのは素晴らしい技術だけども。
「戦闘能力だけで航海できて溜まるか。寧ろ、ナミなら一人でも航海できるが、俺やルフィにはそんな事できねェよ。……知識もあるし、それを活用して知恵とする事もできてる。だが、それは感情が伴わない時だ」
「え?」
「その感情が自分以外の誰かに向けられてるなら使える知識なのに、自分に向けられる感情を伴う時ナミは幼児レベルに落ちるんだ」
自分に向けられる感情は、幼児レベル?どういう事?
分からなくて首を傾げたら、シャンクスから泣きそうな視線を向けられてしまう。でも、シャンクスは頭をそっと撫でたと思ったらしゃがんで視線を合わせてきて、その時には泣きそうだったその気配は霧散してる。
「俺は、ナミを愛してる。その感情と、ナミの優秀すぎる能力故にいつも負けちまってる。……ナミが本当に俺に勝てないなら、今頃俺の船に帰って来てる。それなのにナミがルフィの船にいるのが、ナミの勝利を意味してんだよ」
「……でも、私、いつも……」
シャンクスに毎回抱かれてるわ。もちろん、シャンクスに限らないけど……。
抵抗した方が酷くなるからと受け入れて、諦めて、妥協して、なのに……その度に心が冷えて行く。その時に、本当に私へと向けられる感情を感じ取れなければ良いのに感じ取ってしまう。
それなのにどこが、私は感じ取るそれが幼児レベルなのよ。こんなにも、ちゃんと分かってるのに……!
「ナミは、愛されてる事をその瞳を見た時や肌が触れ合った時に感じ取る。感情もそうだ」
「……それは、そうね」
「赤子も同じだ」
「へ?」
何を言われてるのか分からなくて、思わずシャンクスの顔を見つめる。それを受けても、冷静な声と顔でシャンクスは言葉を紡ぐ。
こんな顔が、声が、私の心を掴んで離さない。だから私は、シャンクスに勝てない。
「自分を愛してくれてる人に縋るしか生きられないから、敵と味方を区別する為に赤子にはその能力が備わってる。そして、触れてない時は他の事に意識を向けてるから何も感じ取れない」
「うっ……」
「ナミは、全てにおいて、敏感すぎるんだ」
天候も、感情も、状況も、全て肌で感じてしまう。だから、許して受け入れてしまうのかも知れない。
自然に逆らっても生きられない事を本能が知ってるから、相手の感情にも逆らえないのかも。でも、自分の中にも感情はあって、それは触れられたくないと叫んでる。
愛してるのは間違いないけど、でも嫌なの。ルフィを、裏切りたくないし傷付けたくない。
「そんなにも子供だと思ってるなら、性的には触れないでよっ!」
「……逆だよ」
「ふぇ?」
「大人過ぎて苦しくなるようなナミが、そんな所だけまっさらだから……俺の色に染めたくなる」
突然色気むき出しで、微笑みを浮かべて言われては流石に顔が熱を持つ。でも、だけど、シャンクスは変だわ。
言葉を向けようとしても、声が喉に絡んで上手く出てこない。変な汗が出て来る。
「…………今、子供だと、言ったじゃ……ない……」
絞り出した声は掠れてて、震えてる。不明瞭な声が、シャンクスに届いたのか不安になる程の小声で紡いだそれ。
答えなんて、聞きたくない。私は、自分の心が分からないよ。
「ナミ……ナミは、子供の頃から大人だった。そのまま時が止まってて、肌で俺達の感情を感じ取っては、全て受け入れちまうから……壊れそうになってるだけだ。……肌が、心が敏感だから壊れない為にところどころで鈍感なんだろうが……悪い、俺は大人になってやれねェ」
「へ?」
「望み通り、場所は変えてやったんだ。この先は何も考えずに、鳴いてろ」
その言葉と同時に首筋に噛み付かれて身体が跳ねる。既に半裸だった私を裸体にするのはシャンクスには簡単過ぎて、抵抗なんて何の意味もない。
確かに外で、見張り台の上でされるのは嫌で場所を変えて貰ったけど……だからって抵抗を一切許されないのは理不尽。そう思うのにシャンクスは簡単に私を抑え込んで、抵抗しようとする度に見えやすいところに跡を残して行く。
「あっ……やっ……そこ、やァ……!」
「知ってる。ナミの弱い所は、全て知ってるから……安心していい」
「あっ……ンンっ!」
声を必死に飲み込んでも、指先が腰を撫でる度、肌を舌が這う度に震えてしまう。跳ねる身体を抑えられない。
私以上に私を分かってるシャンクスに、勝てる筈がないのだ。これもスポーツだから、運動神経の良い人は上手いという特徴がある。
だから、意識が簡単に持っていかれそうになる。そんな私にシャンクスが言う。
「この砂時計が落ち切るまで、ナミがイかないで耐えられたら、挿れないでやめてやる。その代わりイッたら、その回数……ナミの中に出す」
「な……に、言って……ん……の……?」
快楽と拒絶感の波に揺らされて、思考が上手く働かない。なのに、どうして……シャンクスはこんなに楽しそうなんだろう。
イタズラを企んでる子供みたい。ああ、こんな所もやっぱり弟達と似てて……可愛いって思っちゃうんだよね。
「ナミ、俺との賭けに乗るかって聞いてんだ」
「も、辞めてくれ、の……?」
「……ナミが、勝ったらな」
イク直前で何度も休憩を入れられた身体は、限界に近い。なら、ここで勝つのは難しいけど……無駄にイタズラをされ続けるよりはマシだろうか。
賭けに勝てる可能性はと砂時計を見るけど、恐らく五分か十分の物だろうと分かれば持たないと理解出来てしまった。だって、触れられたら……30秒だって持つか怪しいもの。
でも、それなら……。勝てないなら、賭けよりこれがいい筈だわ。
「シャンクス……」
そっと両腕を伸ばしてシャンクスの首に抱き着く。それに驚いたような顔で動きを止めるシャンクスは、確かに私に甘い。
ここで、言葉を間違えなければ、私に堕ちる。勝てないなら、落とせば良いのよ。
「そんな無粋な事しないで……普通に、愛して……」
そっと耳に吐息と共に声を放てば、シャンクスの鼓動が大きくなった。これを拒むなんて、シャンクスにできる筈が無いのよ。
欲しいものが目の前にあって……甘えて来て……振り解けたらシャンクスじゃない。海賊なら、この誘惑は振り払えないわ。
「……策士だな。賭けでは分が悪いとその状態で判断したか」
「あら?……シャンクスは、こんな私が好きなんでしょ?」
クスッと笑えば、シャンクスが違うと言いながら己をあてがう。そのまま悔しそうな感情と、喜びを混ぜたような顔でじっと見詰めてきた。
暑苦しいほどの熱を感じさせる眼差し。分かりやすく上がる体温。
「惚れて、愛してるんだ。……だから、拒めねェ」
「私も、負けてるわ」
「どこがだよ。……俺は結局いつも、ナミには勝てねェんだよな」
そう言いつつ私に押し込む熱塊。それを私は必死に声を押し殺して、その分シャンクスの背中に爪を立てていた。