ローちゃんから伸ばされる、縋るようなその手を振り払うなんて選択肢は、私には無い。苦しいのか、目眩がするのか、それとも意識が飛びそうなのかもしれないと思えば、心配になるのは当然。
色気だの、誘惑だのとほざかれていた私の覇気の根源を知れたからと配慮が足りなさ過ぎた。ローちゃんは王ではなく医者なのだと言うのに、私はなんて事を……!
「ローちゃん!ごめんなさい。……お水、持ってくる?それより、横になる?」
「この、まま……ベッド、使わせて、くれるか?」
「勿論よ!」
座っていた筈の私のベッドに押し倒すようにしてローちゃんを寝かし付けると、すぐ様踵を返して蜜柑水を作りに飛び出して行く。これを作る為にキッチンに飛び込んだ所で、サンジ君は私用にしろ誰か用にしろこれだけは口を出さない。
最初だけは、私が作るのを穴があきそうな勢いで見られていたけど、今はそれすらないのだ。その為か、今では私やロビンがいつでも飲めるように冷やされた蜜柑水は、常に冷蔵庫に入れてくれている。
今回は常温の方が良いだろうとの判断から、新たに作っているのでその辺は何も言われない。寒い気候の所ではこの常温で作るのが大切だったりするので、チョッパーとも話をしてあるのかもしれないわね。
「あまり、夜更かししないでくださいね」
「ええ、大丈夫。これは私用じゃないから」
「それなら安心ですね」
病人や怪我人用だと分かれば、それだけで良いのだろう。サンジ君にも早目に休んでねと声を掛けてから駆け出せば、背後で軽く手を振るのがわかった。
部屋に戻りグラスに注いだそれを手にローちゃんに飲ませようとするけど、上手くいかない。……私には虫歯は無い筈だし、大丈夫よね。
蜜柑水を自らの口に含み、ローちゃんの顔を見詰める。苦しそうな息をしながら汗を流すその様子に、やはり水分は取らせなければと唇を重ねた。
僅かに開いた唇の隙間から水を流し込むのは、応急処置として幾度か経験があるけど、やはり慣れない。ローちゃんが飲み込んだのを確かめてグラスを手にもう一度声をかけてみたのは、自力で飲めるなら衛生面的にその方が良いから。
でも、つらそうにしてるローちゃんがグラスから飲むのは難しいと伝えてくれば、それを疑う訳もなく、再びグラスの中身を口に含む。そうして唇を重ねると素直に受け入れる位だから、体調は余程悪いらしい。
それを繰り返す為に唇を離そうとしたら、後頭部に手が添えられ再び重ねられてしまう。それに慌てて離れたのは、まだ水を含んでないから。
「待って、今水「欲しい、ナミが」」
言葉を遮り重ねられる唇。欲しいのは水ではないと告げられ、意味を理解した時にはローちゃんと私の位置が逆転していた。
ベッドに押し付けられるようにしながら、もう水を含んでいない唇を貪られる。遅れてではあるけど、慌てて抵抗しようとするけど服の中に侵入した手が、胸をまさぐりつつその先端にある突起を弄り出せば身体が跳ねてそのまま力が抜けてしまう。
拒絶の言葉は唇が重なっている為に出せず、何をどうしたら良いのか分からなくなって来た。明らかに私は混乱している。
具合が悪いなら休んでた方がいいのにと思うけど、私の覇気が凶暴化をさせた可能性も否めない。だから、どうやって宥めたらいいのか……と、そればかりが頭の中を駆け巡る。
そっと離れた唇の隙間、荒い呼吸を繰り返しているのはどちらなのか。互いに無言で見つめ合い、けれども先にその沈黙を破ったのはローちゃんの方。
「……随分、弱ってるな」
「え?」
「身体は衰弱気味で、肌に潤いが足りてねェ。だからこそ唇も割れそうになってるし、脇腹を含む胴体にカサつきや粉吹き症状が出てるだろ。体温も低く、内臓機能が低下してる」
「へ?……今の、診察だったの!?」
こんな弱ってるのに、突然診察!?そんなのどうでもいいから、休んで欲しいんだけど!?
そう思って驚きつつもじっと見ていたら、ローちゃんが遠慮もなく呆れた様子で私を見た。それから長い沈黙の後で、言葉を口にする。
「…………馬鹿だろ」
「違うの?……なら、触診?」
「分かった。ナミは馬鹿だ」
「ちょっ!?何言ってんの!?私、頭の良さと逃げ足でここまで生き抜いてきたのよ!?」
「……なら、逃げてみろ。無理なら、俺に愛されるしかねェぞ」
私が動揺しつつ騒いでた間に脱がされていて、いつの間にって焦るより先にローちゃんが私を反転させベッドに俯せで抑え込まれてしまう。そのまま背中に指を這わせて、私の身体がビクビクと震えるのを確認したかと思ったら、そのまま今度は舌と唇を這わせていく。
慌てて逃げようと腕に力を入れると、脹脛を掴まれ大きく広げられたかと思うと、そのまま上に足が乗って来て動かせなくなる。逃げようと足掻いた事で腰が上がれば、ローちゃんの楽しそうな声が背後から聞こえて来た。
「なんだ、積極的だな。腰上げて、弄ったり挿れたりしやすくしてくれるとはな」
「違っ……あっ!」
否定するより早く宛てがわれた指が弱い芽を刺激して、声が出てしまう。そんな私の腹部に左腕を回したと思ったら、グイッと引き上げられてお尻だけが高く掲げられてしまった。
足を大きく開いた状態でそうなれば、当然全てが丸見えな訳で……。必死で目の前のシーツに縋ると、指が動きを早めつつ芽だけをピンポイントで刺激して来るから、力が抜ける上に声が抑えられない。
「あっ……あぁっ!やっア……!」
「嫌?……嘘吐きだな。こんなに濡らして……どこが嫌なんだよ。ああ、感じ過ぎて俺しか考えられなくなりそうで嫌なのか」
「んっ……ぅ……っ!!」
何を答えても恐らく無駄。それが分かるから、諦めるしかないのかもと心が揺れる。
でも、嫌なの。ルフィじゃないと、嫌で……いたいと願ってるのに。
どうして、私はこんなにも弱いの。泣きそうになりながら、ローちゃんを見たのに帰って来たのは残酷な言葉。
「素直に、気持ち良いって言えるまで……何度イってもこの指を止めずに動かしててやるよ。好きなだけ、クリトリスでイキ続けてろ」
「あぁっ!やっ……も、許し……て……っ」
「何日でも、付き合ってやる。大切な女だから特別に……な」
「いやぁぁぁ!!」
叫んでも、喘いでも、身を捩る事さえできずに弄られ続け、幾度達したか分からないくらいになっても辞めては貰えない。身体が震えて自力では身体を支える事もできなくなっても、指の動きは止まらなくて涙が勝手に流れ出る。
過度な快楽は拷問と同じ。それを分かっていてローちゃんがやっているのだと分かるのは〝素直に気持ち良いと言わないって事は、まだ続けてって意味だろ〟と言っている所から明白。
「もっ……イキた……くな……ぁ……!!」
「なら、素直になればいい」
「あぁっ……きもち、い……から、もっ……やめ……て……!!」
「やっと素直に言えたな。約束だ。指は辞めてやる」
その言葉通り止まった指の動きで、けれども幾度も達した身体は既に限界。足を伝い落ちている己の中から出て来たものが不快でも、それを拭き取る余力さえない。
そんな私の身体は、それなのにヒクヒクと物欲しそうにしているのが見なくてもわかる。それが悲しくて、なのに泣く体力さえ残ってはいないのだ。
支えてくれている腕が消えれば、そのまま崩れてしまうだろうと分かる程度には、もう限界だと思う。なのに、そのヒクついている場所に熱いモノが触れた時、涙がこぼれ落ちるのを感じてしまった。
ヌルりと侵入する男根に息を止めたのは声を出さない為か、それとも別な理由なのかさえ私には分からない。いや、分かりたくないの。
声を出したら、息したら、ルフィに縋りそうで……。なのにどうして私は、拒む事も受け入れる事もできないんだろう。
でも、大切な人を傷付けなければ拒めないなら……傷付けるよりは傷付く方がずっと良い。私は、大切な人達の傷付く姿を二度と見たくは無いのよ。
「……明日、コラさんも共に出航したら……少し遠回りして向かうと良い。ビッグマム海賊団に行き先を知られたなら、そうしないと鉢合わせするだろ」
そんな言葉に頭が航海士に切り替わろうとした時、そのままズンっと衝撃を感じる勢いで突き上げられてしまえば、声を抑えるとか逃げるとか、そんな事は一切できはしない。悲鳴のような声を上げながら、情けない声で喘ぐばかり。
ローちゃんは真面目ぶった口調で明日からの事を色々告げつつ、腰を動かすから、脳が混乱する。返事を求められても出るのは、嬌声のみ。
「ナミ、答えろよ。……明日の天気は?」
「あっ……んぅっ……!」
「あ?……雨、か?」
意地悪に笑うその瞳。なのに声だけは真面目ぶってる。
それを頭では分かってるのに、騙されてしまう。ローちゃんは真面目なのに、私が答えられないで駄目なんだって……。
それくらいに理性が溶けてしまってる。私は、何も考えられなくされかけているのかも知れない。
「違っ……ああ、やっ……そこ、やだァ!」
「打ち合わせなんだって言ってるだろ。真面目に答えろ。……それとも、肌を打ち合わせる事に集中したいか?」
「いじ、わる……しない……で……っ!」
「優しくしてるだろ。痛みは与えてねェ」
ハッハッ……と、荒い呼吸を繰り返しながら必死で逃げようと試みるけど、背後から抑え込まれている今、逃げるには前に進むしか無くて。けれど、それも不可能なのは間違いない。
前に進めば自らベッドの奥に誘ってる形になるのだから。それだけは、できない。
答えが、見つからないの。ただ、ルフィと同じ黒髪が目の前にある。
「もう、力も入らねェみたいだな。……逆駅弁で、鏡の前に連れて行ってやるから、どんな顔で俺を誘ってるかよく見てみろ」
「あっ……やっ……ゆるし、て……」
「許して欲しいなら、逃げようとするんじゃねェよ」
声が違う。唇も違うわ。
肌も、ルフィの方が滑らか。ローちゃんの方が指先が硬い。
ルフィはゴムだから。ローちゃんは医療道具を扱うから。
「んぅ……ぁ……!」
「逃げるから、追いかけたくなる。拒まれても、諦められないくらいに、俺の心を捕らえたナミの責任だ」
理不尽だと思う。でも、逆の立場ならどうだろうか。
生きる術を教えて、目の前で自分を守って敵に捕らわれた恩人……。そんなの、執着しない理由が見当たらない。
だけど……それを理由に何をしても許されるなんて事はない。だから、私は理性を総動員して睨む。
「私は、ルフィのものよ。ルフィの女であり、麦藁の一味の航海士!」
「……いい、度胸だな」
いつもより数音低いその声で紡がれた言葉と同時に、両足の下に腕が入り込み、膝裏を腕で抑えながら掌で胸を掴まれたと思ったら、グイッと身体を起こされる。それにより大きく動かされただけでなく、奥まで貫かれてしまえば身体は悦びに震えるばかり。
そのまま動かない筈もなく、立ち上がったローちゃんが歩き出すからその振動で中を縦横無尽に侵略されてしまう。苦痛と快楽の狭間で意識を持っていかれそうになった時に、その動きが停止した。
私の呼吸が安定するのを待って、ローちゃんが言う。それは、先程とは打って代わり妙に優しい声。
「目を開いてみろよ、ナミ」
「な、にを……?」
言っているのか、とは、言葉にならない。だって、目の前には鏡があって立ったまま背後から貫かれ、大きく足を広げて、胸を揉まれている自分が映っているから。
身を捩れば中が擦れて、前に倒れようとすれば胸を強く押し付けてるような形になってしまった。なのに、ローちゃんは残酷に笑うばかり。
「ナミが、望んだんだ。しっかり楽しめよ」
そう言って指を微かに動かして乳首だけを弄り出すから、身体がその刺激に反応して揺れてしまう。それにより中が擦られて、卑猥な水音が響く。
そんな状態で、ローちゃんは明日からの予定を確認しようなんて言い出す。辱めたいのだと分かっていても、抵抗する手立ては見えなくて唇を噛む他ない己が悲しい。
「明日には、俺とサムライ達二人を残してナミ達には出航して貰う。いいな?」
「んっ……あっ……!」
「ナミ?」
わざとらしく問いかけてくる。名を呼ばれただけで、どうしたんだと問われているのがわかってしまうの。
でもこれは、悪意しかない。私を甚振る事を楽しんでいるだけ。
「やぁっ……そ……!」
「俺にずっとこうして、貫かれていたいってことか。……残念だが、叶えてやれそうにねェな。その分……しっかり満足するまで付き合ってやるから、それで許せよ」
都合のいい解釈をされて、なのにそれに何かを言い返す事は難しい。声を抑えては、打ち合わせにならないだろうと腰を動かされてしまうから。
喘ぐ私に、背後から冷静ぶった声で言葉を重ね、そうして私の身体が限界に達して部屋を汚すのを満足そうに眺める。そんな残酷な男に育てたのは、ドフィか、それとも私だろうか?
私が力尽きて意識を失うまで快楽の拷問は続き、打ち合わせという名の辱めは続く。それなのに、目覚めた時には身体は清められて、部屋も綺麗に整えられていたのだから厄介な事この上ないと思うのよ。
身体が無理な体勢を強いられていた為にギシギシと言うのを感じながらも、やる事があるからと身支度を整えて表に出る。すると既に出航の為に動き出してる面々がいて、私はそんな彼等にそっと笑いかけてから様子を伺う。
問題を起こすメンバーが居ないので、物事は恐ろしい程順調に進んでいるように見える。でも、確認は必要よね。
「皆、おはよう!食べ物とか、薬草とかはちゃんと積み込んだ?」
「それはサン五郎とチョパ衛門が、ホネ吉に色々言いつつやっておるぞ」
「……そっか、ありがとう。モモちゃんはお父さん達とお別れの挨拶した?」
「すぐにまた会えると知っておる故、それ程の事は……いや、やはり……寂しいでござるー!!」
そう言ってモモちゃんが飛び付いてくるから、そっと抱き留める。泣き顔を見られたくないのか、胸に顔を埋めるモモちゃんの頭を撫でながらそうよね……と小さく呟くと、船の内外から野太い悲鳴が上がった。
「子供だからと何をしておるかー!」
「そうです!狡いですよ!」
「女神の山間に顔を押し付けるとは、許さーん!!」
上から錦えもん、ブルック、サンジ君である。……本当に馬鹿な大人達ばかりで、溜息を禁じ得ないわ。
深々と溜息を吐き出してから、拳を握る。素手に覇気を纏うのはまだ成功した事は無いけど、今ならやれる気がしたから。