※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編)   作:夢枕 七変化

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サバイバル開始

 伸ばされたエネルの手が、私の腕を掴む。その目的が分からないし、この状態で電撃を放たれたら終わる。

 それにより震えそうになる体を気合いだけで押し込めて、キツく唇を引き結べばエネルは楽しそうに笑いだした。それを睨み付ければ、この空島には居ないタイプの女だなと言い始める。

 えぇ、そうでしょうとも!私は青海の村娘Aですからね!

 空島の天使達と1緒にされたらかなわないわ。そう思っていたらエネルは独特の笑い声を響かせて、生き抜いて見せろと耳元に囁きを落とす。

 それにゾクリとして咄嗟にその顔を覇気を纏って平手打ちすれば、その瞬間その手首を掴まれて甲板に倒される。そして、ニンマリと笑ったエネルが実に面白いと私を抑え込んだ状態で言う。

 

 「ぃ……ゃ……」

 

 声が引き攣る。単純に力ではかなわないし、覇気を纏わなければ何も出来ない。

 生殺与奪権を奪われてる状態でこの体勢は、色々な意味で……ツラい。もう、誰にも……ルフィにしか触れられたくない。

 

 「いやぁぁぁ!」

 「辞めんかァー!」

 

 そこで攻撃を仕掛けて助けてくれたのは、空の騎士で……私は震える体を1度強く抱き締めると深呼吸して立ち上がる。もう、大丈夫。

 もう、戦える!

 クリマタクトを強く握り、覇気を纏わせる。そして、殴り付ければエネルは予想外の衝撃であったらしく、思わずといった様子で私からクリマタクトを弾き飛ばす。

 

 「どうやって俺に攻撃を当てた?」

 「答える筈、無いでしょう」

 

 海楼石の短剣を抜いてエネルを見据えれば、クリマタクトに視線を向けたエネルが首を傾げた。理解できないと、納得出来ないとその表情が雄弁に伝えて来る。

 

 「おかしな何かを使ってる訳でもない。単なる棒に見えるが……なんだ、1体」

 

 それから、痛みの礼だと言って瞬間的に移動すると私の腰を掬うように抱き上げて、唇を重ねて来る。咄嗟に噛んでみても、相手は雷、ただ舌が逃げるだけで私に反撃しないでくれてるのは、私の反応を楽しんでるからなのだろうか。

 

 「俺に抵抗する女など、いなかった。新鮮で、面白い。その上俺を殴れると来た……。お前だけは、フェアリーバースに連れて行っても良い」

 

 そう言って再び重ねられた唇に、両手に覇気を纏ってその体を押しのけようとしても、簡単に両手を纏められてしまい動かせなくなる。身長差の為に持ち上げられているから、不安定さがあり余計に怖く感じる。

 歯に覇気を纏うとか、やれるかなと考えた時唇が離されて、甲板に投げ捨てられる。その直後、楽しませて貰おうかと言い残して、エネルは姿を消した。

 

 「娘、大丈夫か?」

 「えぇ、ありがとうございます。ご心配お掛けしましたが、私は大丈夫です」

 「顔色が悪い。少し……」

 

 その瞬間、明らかに馬鹿っぽい何かが2個、姿を現した。何が起きてるのかと焦る私に対して、空の騎士は神官だと呟いた。

 という事は、敵かとクリマタクトに手を伸ばし、深呼吸してから立ち上がる。そんな私に空の騎士は下がれと言うけど、そうは行かない。

 こいつらの狙いがどうやらサンジ君とウソップだと解れば、倒さないなんて選択肢は存在しないのよ。大切な仲間なんだから。

 

 「嫌よ!私だって戦えるのよ、たまには守ってあげなくちゃ!」

 

 これ迄なんの為に鍛えて来たのか。アーロンにはかなわず、敵にはすぐに捕まり……私は1体今まで何をしてきたのか……!

 空の騎士は私を1瞬だけ見て、小さく頷いた。共に戦う事を、空の騎士は認めてくれたらしい。

 とりあえずドアの前に立って近付いて来た瞬間に電気を纏ったクリマタクトで殴れば、転がるように後ろに下がるボール人間。次に近付いて来たもう片方に対抗しようと殴り掛かれば、そのエネルギーを吸われたのが分かった。

 電気を纏ってなくて良かったわ。この感じだと、インパクトダイアルである事が分かる。

 そう判断した直後に目の前に手が差し出され、それを避けながらその胴体を殴る。クリマタクトはその体に食い込むのに、脂肪が邪魔で打撃によるダメージに繋がらない!

 その時手を前に突き出され不味いと思い構えたけど、そこから放出されたそのエネルギーは、臭いもので……。フレイバーダイアルだとわかる。

 2体の敵、即ち腕は4本。残りは最低でも2種類!

 それにしても、何この臭いの、吐きそう。……オナラ?

 そんな私の動きを見ていたらしい空の騎士が4つのダイアルを使用しているなと確認するように問い掛けると、敵は自ら手の内を晒してくれる。空の騎士は敵に視線を向けながらも、私の事も気に掛けてくれている。

 空の騎士は基本的に善人なのだろうと、その気遣いに小さく笑う。自分の事だけしか出来ない私とは、大違いだわ。

 フレイム、アックス、インパクト、フレイバー。どっちがどっちだか分からないだろうと、球体が得意げに言うけれど。

 

 「そんなもの、元々興味も無いわ!!」

 

 私がクリマタクトで台風を起こす準備をするのと、敵が空の騎士にフレイバーをかけるのはほぼ同時で、引き続きフレイムを使おうとするのが分かり咄嗟に空の騎士へと声を掛ける。

 

 「危ない!ガスに引火する!」

 

 けれどもそれを分かっていたらしい空の騎士が上手くいなして1人を倒してくれたので、私はクリマタクトが私の元へと戻るのを待つ。サイクロン・テンポ!

 技の名前を教えてあげる必要は無いからと脳内で叫びつつ技を発動させて、残る1人を弾き出す。そこで空の騎士にトドメを刺すように言われるけど……いいえ、迷う暇はない!

 慌てて篭手を取りに行き、装着してみると想像してたより少し重い。でも、鉄扇を優雅に扇ぐ事が可能な程度の腕力は、持ち合わせているのよ。

 船へと舞い戻ってきた敵は濡れていた。この敵は確か火を使う……ならば!

 

 「クールボール!」

 

 なんだと言って敵は騒ぐ。ねぇ、私がなんで技の名前教えたと思うの?

 もちろんそんな問いかけを口にするつもりは無い。なので私はニッコリと笑う。

 

 「貴方は火を使うのでしょう?だから、冷やしてあげたのよ」

 

 私の言葉に怒り狂い敵は私の予定通りに、その火を使ってくれる。それにより霧が発生すれば、見聞色の覇気はそれなりに得意な私としては、簡単に接近できるようになると言う訳よ。

 エネルに触れられた事が影響しているのか、体が震えて上手く足が動かなくなる瞬間がある。まさかドフラミンゴの件で、そう言った事がトラウマにでもなってるのかしらと自分の弱さに苛立ちながらも、移動する。

 足音を立てないのは既に身に付いてる習慣だから、こいつら程度の奴らになら気取られない。長年培って来た泥棒としてのそれは、既に直せないレベルに達している。

 空の騎士から借りた篭手を使い、インパクトダイアルを用いて勝利はしたもののその代償は、腕がちぎれるのではないかと思う程の衝撃と痛みで、それを予想してなかった為に心構えも無かった身としては1瞬呼吸が止まる程の物だった。それでもとりあえず、当初の目的であるメリーと、2人を守る事だけは叶ったのだからそれ以上を望んでは罰が当たる。

 私が篭手を返そうとするのと同時に、空の騎士はピエールに飛び乗った。その様子に慌てて声を掛ける。

 

 「空の騎士!何処へ行くの?」

 「すまぬが吾輩、エネルを追う!」

 「なら、せめてこれを持って行って!」

 

 チョッパーが用意していた薬を慌てて投げれば、それを手にした空の騎士は私と薬を交互に見て、小さくすまぬと言い残した。それの直後にピエールは大切な主と共に飛んで行く。

 篭手は私の手元に残されていて、でも、それで良かったのだと思う。借りていた篭手を外したら、それに合わせたように腕から血が流れ落ちた。

 インパクトダイアルは、この体で使うには負担が大き過ぎるらしい。皮膚が裂けただけなら良いけど、筋肉や骨にもそれなりにダメージを受けてる様子で、こんなシーン記憶にないなと小さく笑う。

 滴り落ちる血液に、骨と筋肉のあげる悲鳴に、この程度慣れてる筈なのにと思う。予想できなかった自分の愚かさが恨めしい。

 とりあえず、私の怪我は大した事無いし、早く2人の手当をしないといけないわね思いと歩き出した時、進行方向に爆発が起きた。咄嗟に2人を庇う為にクリマタクトを構えたけど、血でクリマタクトが滑って甲板に転がって行く。

 ……なんて、情けない!

 自分に苛立ちながら、爆発の辺りに意識を向けると、どうやらその爆発は敵ではなかったらしいと気付く。そこに居たのは見覚えのある女の子……コニスだった。

 それを確認した瞬間、私は簡単に自らの腕の血を拭って、止血しながら包帯を巻き付けると、クリマタクトから血を慌てて拭い、適当な上着を羽織って包帯を隠してから会話をする。無駄な心配は、掛けたくない。

 仲間には勿論だけど、知った時悲しみそうな優しい人達には、知られたくない。だって……私がもう少し頭をまともに働かせていたら、こうなる事は予測できた筈なのだから。

 銃だってそのつもりで使わなければ、反動で脱臼する事がある。その為に鍛えていても、たまに骨を折る人だっている程なのよ。

 それなのに、銃よりも威力がありそれなり以上のエネルギーを発生させる物を直接使うダイアルで、何事も無いと思う方が可笑しかったのよ。心構えを持ってさえいれば、防げた事態なのだと思えばこそ、私は怪我の事を誰かに言うつもりは無い。

 ……チョッパーには、話さないとそれこそ泣かれるから後でちゃんと話すつもりだけど、他の人には極力隠しておきたい。特に、ルフィには知られたくないな……。

 騒音を響かせながら登場したコニスとその父、そして、見知らぬ女の子。そちらに視線を向けると、コニスの父……と呼ぶと長いからおじさんと呼ぶ事にしたけど……から渡されたのは、私のウェイバーだった。

 確認してみれば2人乗りのこのウェイバーは既に直されている様子で、本当に直してくれたのかと嬉しくなる。下の海でも使えたら良いなと思いながら、私の心はウェイバーに占拠され、1瞬とは言え後ろで消し炭のようになっているウソップとサンジ君の事を忘れていた程だ。

 

 この時〝神の島〟81人のサバイバル経過時間2時間。脱落者56名。

 〝神の軍団〟残り13人

 シャンディア残り7人

 麦藁の1味残り5人

 戦闘可能総数25人

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