※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編)   作:夢枕 七変化

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査定

 ハットリ君と戯れて少し色々な意味で回復した私は、自分に妙な視線が向けられてる事に漸く気付いて首を傾げた。何だろう?

 

 「何か、ありましたか?」

 

 服装はいつもと同じで、ビキニの上からカーディガンと深過ぎるスリットの入ったスカート、そして腰に武器を装着する為のベルトと、ベルトを隠すような形で腰紐のように流星錘を巻き付けてあるだけである。即ち、何も変わった所は無いと思うのだけど……?

 

 「ハットリが、ルッチ以外の人間に、触れさせるなんて……初めて見たわ」

 「……私、鳥に好かれるタチなので」

 「あァ、ニュースクーもナミにだけは甘えるもんな」

 「動物に好かれるタチじゃ、ねェのか?」

 

 放心したようにカリファさんに呟かれた言葉に対して無意識で答えれば、ルフィは納得した様子で言葉を口にして、それを聞いたアイスバーグさんが不思議そうに聞いてくる。けど、私にだってそんなもの分からないから、私は小首を傾げつつその問いに答える。

 

 「……これ迄懐いてくれたのは鳥がメインでしたので、他はちょっとわからないです。だって……チョッパーは人間枠でしょ?」

 

 最後は思わずルフィに問い掛けたけど、ルフィはえっ!?と言うと考え込んでしまい、視線をウソップに向けたらやはり悩まれてしまった。なんか、ごめんね。

 でもそう言えば、原作者様は狸7、鹿、馴鹿、人間を1ずつでチョッパーになるとか前何処かで答えてた気がするから、動物枠なのかしら?

 私がそんな事を考えている間にも、ウソップは辺りをキョロキョロ見ながら楽しそうに造船所を見ていて、本当に好きなんだなぁと微笑ましく思う。ルフィはアイスバーグさんと話すのに夢中で、私はよっこいせと片手に1億ずつを持って移動するのに全力を向ける。

 その時ひょいと鞄を私の手から持ち去る手があって、驚いて視線を向ければハットリの飼い主……ならぬルッチさんだった。それに慌てて、ありがとうございますと言えばハットリがそれに答えてくれる。

 

 「気にするなっポー!レディにこんな重い物持たせる男なんざ、男じゃねェ!ここは、コイツに任せな!」

 

 その言葉通りに両方を軽々と持ってくれたルッチさんに笑えば、ルフィが俺も持てるぞなんて張り合い始めるからその頭を軽く撫でる。それにルフィは少し不満そうにするけど、振り回して川に落とそうとしたばかりだからね。

 そういう意味ではルフィに対する信頼はゼロ、いいえマイナスだわ。でもそんな事は流石に言えないから……。

 

 「ルフィの両手は空けておいてくれないと、私を誰が守るのよ?」

 「そう、か。わかった!」

 

 とりあえず納得してくれたようで、本当に良かったと思いながらアイスバーグさん達に続く。造船所の内部は色々な音が響いていて、外から見た時の何倍もの広さを有しているような気がする。

 そんな中をアイスバーグさんが歩けば、皆作業の手を止めて挨拶しているのが見える。本来ならば、そういう相手なのだろうと体感するように目撃してしまえば、凄い人だなと思う他の感想はない。

 座れそうな木箱や材木の付近に到着すると、ルッチさんは2億ベリーをその箱の近くに置いてくれて、私に視線を向けて来てくれたから、私はルフィの背中とお腹に付けていた2億も取り外してその場に並べた。自分が身に付けてるのはとりあえずそのままでも、支払いは大丈夫だろうとの判断で。

 ルフィはそこで船大工を仲間にしたいと言い出し、それに対してアイスバーグさんは楽しげに笑った。なりたいと、共に行きたいと言う奴がいれば連れて行ってくれて構わないと寛大に言うそれは、好きに生きていいと言う親の顔で……少し、ゲンさんを思い出した。

 元気に、してるかな。手紙、いつもベルメールさんとノジコにしか書かないけど、今度はゲンさんとドクターにも書いてみようかな。

 そんな事を考えている間にルフィは造船所内で遊び始めたので、私は少し木箱に座らせてもらう。休める時に休んでおかないと、倒れてしまうから。

 作中のナミちゃんは、倒れるシーンなんて無かった気がするのに……どうして私はこんなにも弱いんだろう。皆を、守りたいのに……守られてばかりで……。

 

 「クルッポー!」

 

 腹話術では無い鳴き声が聞こえて顔を上げれば、目の前にハットリがいた。そのつぶらな瞳が何処か心配してくれてるようで、私はそっとその羽に触れる。

 クーちゃんよりは柔らかいけど、やはり多少濡れても生きられるようになっているから羽根は硬い。身に付けているネクタイは、輪になっているのを留めるタイプではなく、1本のネクタイをちゃんと締めてもらってるらしいと撫でていれば気付く。

 

 「……ハットリは、ルッチさんに愛されてるのね。これだけ愛されてたら、1緒に来る?なんて誘えないわね」

 

 ハットリにそんなふうに話し掛けると、腹話術でルッチさんがハットリとして答え始めた。それに動きと表情を合わせるハットリの見事さよ。

 

 「アイツは俺無しじゃ、会話も録に出来なくなっちまうから、俺が傍にいてやらねェといけねェのさ!クルッポー!」

 「あらあら……それは大変。なら、これからも仲良くね」

 「よせやい。仲良くとか、何言ってんだって話だぜ!クルッポー!」

 

 身振り手振り、いや身振り羽振りで言葉に合わせて動くハットリに、どんな教育したらこんな事が出来るのよと少し思う。でも、可愛いから無罪だ。

 そんな事を考えている私に、おい破廉恥娘と声を掛けてくる男がいて、なんなのよその呼び方と思って視線を向けると飲み物を手渡された。原作のナミちゃんよりは露出少ないと思うのに、何が不満なのかしら?

 多少不愉快になりながらも、手渡された飲み物に対してお礼を言えばパウリーは顔を赤くしたまま視線を即座に逸らす。……本当に免疫ないのね、この人。

 そんな私の傍でハットリがつぶらな瞳を向けて来るから、私の意識は即座にハットリに戻る。船大工の人達は、それぞれが私に渡されたのと同じ飲み物を手にしている。

 

 「本当に可愛いわ。……ねぇ、ルッチさん1緒に来ませんか?船大工として」

 「職長としての仕事と責任があるから、それは無理だ。残念だけどな。クルッポー!」

 

 駄目か。フランキーって記憶ではなってるから、無理だろうなぁっては思ったけど。

 可愛いハットリとは1緒に居られるのも、最大2週間かぁと少し思う。残念だわ、本当に可愛いのに。

 その時ウソップ擬きならぬカクさんが帰って来てくれて、査定して来たと言うのでルフィとウソップを呼ぼうとして、ウソップが見当たらない事に気付く。私がハットリと戯れている間に、お金を他のそれに並べて置いてから、どこかへ遊びに行ったようだ。

 ウソップの為にも、大砲系の何か威力の高いものが今後欲しいわねと思いながら、きっと気になる大砲とかを見付けて喜んでいるのだろうと姿の見えないウソップを想像して、微かに笑う。ルフィもウソップもまだまだ少年なんだもの、考えてみればじっとしていられないのも当然よね。

 

 「ルフィー!降りて来てー!」

 

 私の声に反応して降りてきてくれたルフィは、やはりウソップが居ない事で首を傾げる。

 

 「ウソップは?」

 「わかんない。でも、お金のケースは1緒に置いてあるから、造船所の中を見て回ってるんじゃないかしら?」

 「そっか、ならいいか」

 「本当は、いつもメリーを直してくれてたウソップの話も聞きたかったんだけどね。でも、きっとすぐに帰ってくるから、そうしたら話を聞きましょ」

 

 笑って言えばルフィもそうだなと言ってくれる。友達だから、仲間だから、それだけじゃなくてウソップはやっぱりメリーの事を1番わかってるのだと言う事をルフィだって理解してるのだ。

 笑い合う私とルフィに、カクさんは帽子を目深く被り、その表情を見せようとしない。そして、アイスバーグさんと僅かに会話をしてから、メリーの状態を問い掛けるルフィに私の知っていた通りの言葉を向ける。

 それにルフィが納得できる筈もなくて、私はルフィの言葉に何を言えばいいのか分からない。そんな私にロープの人が視線を向けて、おめェは?なんて言ってくる。

 

 「私?」

 「なんか、ねェのか。黙ってるけどよ」

 「……竜骨がやられてるなら、直せないのは分かるもの。同じ船だって作れる筈ないわ。そして私はクルーの1人でしかないから、船長の決定に従うつもりよ」

 

 私の言葉にルフィが怒鳴った。それはある意味叫びのようでもあり、そしてその行き場のない怒りに翻弄される姿を見て、ルフィが普通の少年なのだという現実を思い知らされた気がする。

 

 「ナミは、メリーの凄さ知ってんだろ!どんだけ頑丈か、今まで、ついさっきまで走ってたんだ!修理すれば絶対走れる!諦めるなよ!」

 「ルフィ……」

 「……沈むまで乗りゃあ満足か……」

 

 名を呼ぶしか出来ない私のそれに重なるように、アイスバーグさんが言葉を口にする。その言葉の重みに、普段のそれは馬鹿なフリしてるだけなんだなと思い知らされてしまうような、リーダーとしての風格を感じさせるそれに私は息をのむ。

 

 「呆れたもんだ……。てめェ、それでも1船の船長か」

 

 ルフィはその言葉に衝撃を受けたようで、黙る。その様子にアイスバーグさんは息を吐き出して、話は1旦終わりだななんて言うから、私はその様子を見守るしか出来ない。

 カリファさんから差し出されたカタログにルフィは手を伸ばし、そっとしまう。見る事もせずにしまったそれを、直後に取り出してルフィは私に差し出して来た。

 意味もわからずに受け取ると、ルフィが微かに笑った。何処か、泣きそうな雰囲気で。

 

 「ナミが持っててくれよ。俺、今冷静じゃねェみたいだからよ。それと……責めて、悪かった」

 「……私がもう少し言葉を選べば良かったのよ。ルフィの言葉は人として正しい。私は、感情より先に、理屈を優先して来たから、だから……」

 

 感情が先走る今回みたいな時、どうしたらいいのか分からなくなってしまうの。とは、言えなかった。

 ルフィが震える両腕で私を抱き締めるから、私はそっとその頭を抱えるように抱き締める事しか、出来なかった。叶うなら、ルフィが悲しまない未来に導きたい。

 

 「あー……なんか、いい雰囲気な所悪いんだが、政府の奴らが来てるらしい。隠れとけ」

 

 ロープの人ならぬパウリーがそう言うので、私はルフィと共にお金を持って材木の影に隠れる。その時パウリーがお金のうち2つを持ってくれようとしたのを、ルッチさんが危険だとか信用ならないとか言って運んでくれて、隠れながらこれからについて考える事になった。

 その筈なのに隣に隠れてるべきルフィが変な顔をしているから、どうしたのかなと不安になる。ルフィは思った事を全て口や顔、態度に出すから。

 

 「……軽い」

 

 そんな馬鹿なと思って、そして……唐突に理解した。私は選択を〝間違えた〟のだと。

 ウソップだけが居ない。大金を狙うそこそこ強めの人間達が居て、その時に大金を持ってるウソップが……。

 

 「ルフィ、ごめん。私の判断ミスだわ」

 「ナミ?」

 「ウソップが、危ない。多分、お金を奪われて、ウソップは1人で戦ってる」

 「……なんだって?」

 

 ルフィの声が低くなる。私は、深く息を吐き出してから、気持ちを落ち着かせる為に深呼吸すると同時に立ち上がった。

 近くに見えていたパウリーさんを呼んで、フランキー1家の居場所を確認しようとしたら、ルフィがその説明を聞く前に立ち上がった。不味いと思ってももう、動き出したルフィは止まらない。

 

 「ナミ、必ずウソップ見付けるから!任せとけ!」

 「だから、その為に今!」

 

 ルフィが私の言葉を最後まで聞かずに去った後、私の手は空を切る。……あの、慌てん坊めっ!

 

 「フランキー1家の溜まり場は何処?」

 

 私の言葉にパウリーは丁寧に答えてくれるから、1度頷いてからありがとうと言葉を告げて、お金をどう運ぼうかと近くで見据えて考える。そんな私にハットリが飛んで来て肩に止まると、ヤガラまで運ぶっポーと言ってくれる。

 

 「……ありがとうございます」

 

 ウソップが話の流れの通りになったのなら、ロビンはどうなったのだろう。ロビンは……いったい……どうしているだろう。

 私が、この未来を選んでしまった。回避するつもりで、最悪の形を選んでしまった。

 

 「ウソップ……ロビン……」

 

 どうか、無事でいて。2人の名を声に出している自覚もなしに、祈るような気持ちで歩いていた。

 早く2人を見付けないと。気ばかり焦る私は、傍にいる男の気配が変化している事に気付く事が出来なかった。




更新頻度は今後暫く、これで進めようと思います。よろしくお願いします。
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