ゆったりとした動作で振り向いた大男は、私を見て優しい笑みを浮かべた。それが余計に、現実感を私から奪ってしまう。
現実だと認識するのが難しい。だって、彼はもう死んでる筈で……。
「ナミ、久し振りだな」
その言葉で確信する。幼い頃に見ていた夢は、現実にこの先で起きる事なのだと。
優しい声が、懐かしさと愛しさを伝えて来る。そしてその眼差しは、大切だと訴えて来るけど、その理由が分からない。
でも、もし本当に彼がロシーだとして……と言うか、夢の中でロシーと呼んでたからと言って初対面の小娘にロシーとか呼ばれたら不快よね。待ってそうじゃない、何でロシーがここにいるの?
その疑問が顔に出ていたのか、ロシーは穏やかな顔で、優しい声で私に話し始めた。まるですべて分かってるとでも言いたげな雰囲気に、現実ではないどこかに居るような錯覚に陥りそうになる。
「覚えてないんだろ、俺の事。……正確には〝夢で見ていた〟だったか?」
「なんで、その事を……」
「俺にとっての過去、ナミにとっての未来でナミが話していたからな。俺としてもやっと、繋がった」
「ロシー?」
「10数年に1度現れて、俺を助けて、消えて行く彗星のようなナミの手掛かりは、ナミの語った夢物語だけ。俺はそれだけを頼りに探していた。それでな、少し前にナミが〝愛してる〟と言っていた男の手配書が出た事に気付いたんだ」
私は何も言葉に出来なかった。だって、ロシーの話が本当なら、未来の私は過去のロシーに惚気けるらしいから。
その上で、どうやら時を移動するのは1度ではない。何が起きるのか分からないけど、トキトキの実とか食べるとかなのかな?
でもそれで過去に行けるの?
ダメだわ悪魔の実の能力についてなんて、情報持ち合わせてないもの。どう判断したら良いのか分からない。
「俺は即座にローに許可を貰ってナミの話を思い出して、ここに来てみた。そうしたら、本当に居るんだもんな……。暴走ヤガラに乗ったナミを見た時、どれだけ嬉しかったか」
「ロシー……」
「逢いたかった……。ずっと、探していたんだ……」
ロシーの声が震えているのが分かり、無意識で近付くと私はその体を抱き締める。大き過ぎるから、抱き着いてるようにしかならないのが悲しいけど……。
そんな私をロシーは震える両手で抱き締めて来る。甲板に膝をついて、震える体で抱き締めてくるこの人は、本当に私を探していてくれたのだと分かってしまったから。
未来の私が、過去のロシーに何をしたのかは知らない。でも、私の存在を探し回るくらいの何かをしたのだと、それだけは分かるから……。
「ごめんね、何も分からなくて」
「ナミが何も知らないと、分かっていて、探してたんだ。だから気にしなくていい」
ロシーはそう言ったと思った直後、私の唇と己の唇を重ねて来ていた。それに遅れて気付いて抵抗しようとするけど、そうだこの人、ドジが無ければ結構優秀な男なんだった……!
逃げられないっ!
鼻で息をしているのに、酸欠になりそうになる私に気付かないのか、気付いていて続けているのか、ロシーは私の唇から離れようとしない。必死でその顔を引き剥がそうと腕に力を込めるけど、ロシーの拘束は強まるばかり。
「……っ……やぁっだ!」
僅かに出来た隙間で抵抗する言葉を拒絶する言葉を向けた私に、ロシーはつらそうにその瞳を揺らして、それから言葉を伝えて来る。その間も、私を拘束する腕がほどかれる事は無い。
「ナミ……好きだ、ずっと、幼い頃から、憧れて、愛してきた。今のナミは俺を知らないのだと分かってるが……悪い。止まれそうもない」
その言葉が意味するところが分からない程には、鈍くないつもりで……だけど私は、ルフィじゃなきゃ嫌なのよ!
「やっ……!やだ!ロシーやめ……!」
言葉は最後まで紡がれる事なく、ロシーの唇に吸い取られる。私の抵抗を気にした様子もなく、平然と私を抱き上げて唇を離さないままに船内へと私を連れ込むと、当然のように服の中に手を入れてくる。
それに体が反応する。反応なんかしたくないのに、反射的に触れられただけで反応を示してしまう。
「んんっ!?」
手が、違う。唇が、違う。
いやだ、私は……。ルフィッ!
「いやァぁ!ルフィッ!ルフィ!」
「ナミ、ごめんな」
その言葉と同時にロシーはその能力を使い、部屋に<ruby><rb>凪</rb><rp>(</rp><rt>カーム</rt><rp>)</rp></ruby>かサイレントをかけた様子だ。だって、互いの音が聞こえるから、それしか考えられない。
「ロシー!もう止めて、私には恋人がいて、こんなの、ドフラミンゴと変わらないっ!」
「兄上……?まさか、ナミは兄上に襲われてるのか!?」
「そんなのどうでもっ「良い理由があるかっ!なら、どうして俺と兄上を助けた!?どうして、俺とローを生かしたんだ!……普通なら、見捨てるだろう」」
甲板から1番近かった部屋、即ち操舵室に押し倒された状態でする会話じゃないかも知れないけど……。私には話を聞く権利がある筈だわ。
「ロシー、どういう事?」
「ナミ……そうだな。俺の記憶でナミと最初に会ったのは、まだ母上が生きていた頃だ。そして、母上と父上、俺と兄上を庇いながら少しの期間共に過した」
ロシーの言葉に耳を傾ける。淀み無く伝えられる言葉に偽りの色は無い。
「その時にナミが〝次に会う時は、私は過去の私だから皆さんの事を覚えていないでしょうね〟と笑ったんだ。その共に過ごしている期間、俺と兄上をナミは愛称で呼んでくれていた」
ロシーの幼少期って事は、天竜人だと知られて追い回されていた頃かな?
そんなの、夢で見てない。なら、それは本当に私なのかな。
別次元の私とか、私の生母とか……は、流石にないか。情報が、足り無さすぎて何も分からない。
「そうして突然消えたナミを、兄上はその先を生きる為に記憶から消した。その後、母上は病で、父上は事故で他界し、兄上は天竜人に帰る為として父上の首を持ってどこかへ去り、俺は1人さ迷っていたところを保護された」
だとするなら、話の流れは、変わらなかったって事?
なら、でも待って、私を覚えてないのにドフラミンゴは私を襲ったの?あれだけ妙な執着を見せていたのに?
それこそ理由が分からないわ。覚えているのならば、幼い頃に出会って共に居た筈が突然その姿を消して、その後に自分や家族に不幸が襲ったのならば、憎しみから嫌がらせのように私を犯したのもわかる。
でも、覚えていないのならば、どうして執着するの?
そこまで考えて、ロシーの行動にハッとする。そうか、ロシーは〝未来の私〟でありロシーの過去と関わった私に対する復讐をしようとしてるのね。
でも、ならどうぞなんて訳にもいかない。だって私はルフィのものだから。
他の人に勝手にどうぞなんて事にはならないし、殺されてあげる訳にもいかないわ。私はロビンを助けに行かなきゃいけないし、ルフィをラフテルまで導くと決めているから。
「ロシー……そうして、次に会った時の私はそれを知らなかったのに、またローちゃんを助ける為に尽力して姿を消したのね?」
「あァ……その為に俺は、少なくとも〝俺達を助ける前〟のナミになら会えるかもしれないと思っていた。助けた後のナミは、あの状況を考えれば……普通なら死んでるだろうが、よくわからねェ。時間軸が把握しきれねェんだよ」
確かに、こればかりは実際に起きてみないとどうなるか分からないわね。どうしたらいいかしら。
そう思って少し考え始め、気付いた時には私は何も着ていなかった。驚きの声を上げる私に、ロシーは笑う。
「話す事は話した。ナミは未来の事だから分からないと言うだけだとも理解した。なら……後は俺個人の本懐を遂げる」
「ロシー!?」
「大人しくしていてくれてると、助かる。傷付けたくはねェからな」
それに抵抗の声をあげる私を無視して、ロシーは私の足を掴み大きく広げるとそこを視姦してくる。羞恥と絶望で首を横に振ると、ロシーが切なそうな顔で私を見た。
そして、小さくごめんなと言って、秘部に指を滑らせたと思ったら、中に差し込んで来る。妙に優しい動きで、弱い所を探しつつ勝手に体を慣らし始めるロシーに嫌だと私は叫ぶしか出来ない。
「ナミ、いくら叫んでも、声は俺にしか届かない。諦めろ」
「や、ァだ!お願い、もぉ……やめ……!ふっん……ぁ……あアぁぁ!」
「ここ迄されても、涙のひとつも見せないのか。ナミは、凄いな」
その言葉と同時に指が1気に引き抜かれて、ホッと力を抜いた直後、恐ろしい程の圧迫感に襲われる。ロシーが、入って来る!
「ぃや、いやぁぁぁ!ルフィ!ゾロ!サンジくっんァ」
指で弱い所を確認していたからか、ロシーは私の声が名を紡げなくなるようにそこを中心に責めてくる。それに嫌がって逃げようとしてみても、足をガッチリと押さえられ、熱く滾るモノが私の中に深く埋め込まれて行くそれから逃げる事が出来ない。
抵抗の筈の声は、甘い喘ぎへと変えられ、助けを呼ぼうとする度に弱い所を責められて強制的にイカされる。凶悪なそれは確かにドフラミンゴと近いと思うのに、その手つきと抱き方が明らかに違う。
「鳴いてくれ、もっと、聴かせてくれ……その声を、求めていた」
「やっ……ァ……!」
「出すぞ」
「やだ!やめっ!」
私の静止は聞き入れられる事は無く、容赦無く突き上げられ中に放たれる熱いモノに、意識が混濁する。それでも辞めてくれる事は無く、続け様に動かれて私の心と体が悲鳴をあげる。
何度辞めてと叫んだだろう。何度ルフィを呼んだだろう。
その度にロシーは私にゴメンなと謝るけど、その行為はやめては貰えない。抱きながら抵抗を抑える為にだと思うけど、ロシーは何度も愛していると私に言葉を伝えて来た。
悲哀を含んだその声に、けれども信用なんか出来る筈もない。だってこれはロシーの本懐……つまり、復讐でしょう?
未来の私は何をしてここ迄憎まれるのかな。自分の過ちが元なのだとしても、現状が辛すぎて私は何度目かも分からない放出の際に、思わず〝いっそ、殺して〟と呟いた。
そんな私に、少し眠れと言ってロシーは突然私の意識を綺麗に刈り取った。次に目覚めると私は身を清められて、衣服も整えられた状態にあり、所在無さげなロシーが近くでその大きな体を丸めているのが見えた。
それが捨て犬のようで、なんとも言えない気持ちになる。それでも、きっと見捨てる選択肢だってあった筈なのに、私はそれを選べなかった。
体は大きいのに、何故か本当に幼い子供が悪い事をしたと自覚して、叱られると分かってそれに怯えているような雰囲気だったから。その上、捨てないでと縋る子犬のような瞳をしているから。
「加害者が、被害者みたいな顔しないで。ロシーがした事は、いけない事なのよ」
「怒り方が……なんかおかしいぞ、ナミ」
「ロシー!」
「ごめんなさい」
「宜しい。……それで、どうしてこんな事したの?」
私の問い掛けにロシーは困ったように笑って、小さく言葉を口にした。その瞳は今も未だ、怯えを宿している。
「その温もりを得たら、もう失わずに済むかと思ったんだ。いつも、消えちまうから……」
「それは……私にも何も上手く言えないけど、普通なら、こんな事されたらそれこそ関わり絶たれちゃうわよ」
「ナミなら、許してくれる気がしてた。ナミは、優しいから」
「甘えるんじゃありません!もうロシーは大人でしょ?それに、ローちゃんの所へ帰る人が、私を求めないで」
「……1緒に来てはくれないのか?」
捨て犬のような顔で言われても、私はロシーをちゃんとは覚えてないし、ルフィが良いから。それをしっかりと言葉にして伝える。
それに対して、なら……今は引き下がると言ってロシーは立ち上がると、襲って悪かったなんて、今更言う。それに今回だけよと言おうとしたら、ロシーが先に言葉を口にした。
「俺はナミを愛してる。そして俺は諦めが悪い。必ず、振り向かせてやる。……襲った事は悪かったと思うが、後悔はしてない。2度と、消えるなよ」
「後悔しなさい!そして、消え方が分からないわよ!」
「愛してるは、無視かよ。……またな、ナミ」
そう言ってロシーは私の髪にキスをして、小さな船に飛び乗るとそのまま姿を消した。それを見送ってから、私は甲板に座り込む。
だって、今更、強がってた事の弊害みたいに、体が震えるんだもの。本気で抵抗したのに、勝てなかった……振り払えなかった事実に、私は打ちのめされていた。
午前と午後の同じ6時掲載なら、皆様を混乱させないかなと考えました。