この人は私をどうしたいのかな。今この場で私を殺せないのは間違いないのに、どうしようと言うのか。
海賊相手に身代金ってのも変な話だもの。そう考えていたら、声が降って来た。
「昼間、ウソップ、ロビン、無事でいてと……そう言ったな」
「……そうだったかしら?それで、それが何か?」
「その時点では、ニコ・ロビンが居なくなっている情報はお前には入っていなかった筈だ。何故ニコ・ロビンの失踪を知っていた?」
やっぱり、この人はCP9なのね。そう言葉から判断出来てしまえば、息を細く吐き出して気持ちを落ち着かせる必要性を感じた。
気持ちを落ち着かせてから、私は笑みを浮かべて見せる。動揺を悟られては、勝てるものも勝てなくなる。
「大将〝青雉〟と私達が会った場所。ロビンが狙われる理由。ここがエニエス・ロビーまで海列車で行ける島である事。これらを鑑みればロビンが危険なのは、考えるまでも無く誰でも分かるもの。そこへ来てウソップの誘拐……ロビンの無事を祈って何がおかしいのよ」
「成程、本当に頭の出来は悪くは無いらしいな」
なんなのよこの無礼な男は、そう思ってクリマタクトに電気を纏わせて殴り掛かれば雷を纏っていない所を捕まれ、奪われる。純粋な握力や腕力では勝てる筈もなく、縋るようにクリマタクトに両手で掴まっても簡単に奪われて部屋の隅に投げられてしまう。
それに意識を向けていた間に私は再度ベッドに戻され、唇を奪われる。これ迄に、これ程無機質なキスをされた事があっただろうか。
思い返してみても、そんなものは1度としてない。キスは、いつも相手の想いや性格を私に伝えてくれていた。
でも、この人のキスは、試すようなクロコダイルのそれとも違い、本当に無機質。それに、心が縮こまる。
何も分からない事が、怖い。どうして……こんなに、怖いの……?
震えそうになる体を情けないと叱責して、短剣を抜くとその首に押し当てる。それにより離された唇に、内心でホッとする。
「嫌な気配のある短剣だな」
「私の武器は全て大切な人からの贈物なの。悪く言わないで」
「傍にいなくても守るとでも言うつもりか、馬鹿馬鹿しい」
「私を解放して、私は政府に従うつもりは無いわ」
「なら、俺に従え」
「は?」
何言ってんのこの人。そう思った直後に短剣を弾かれて身に付けていたビキニが引きちぎられる。何をと思っても、抵抗しても、簡単に身に纏う全ての物が取り払われて行く。
「や!辞めて!嫌!ルフィ!」
思わず助けを求めて名を口にしたその瞬間、首に痛みが走った。跡を残す為のそれではなく、明らかに歯を立てられ……いいえ、噛み付かれている。
「っ……!」
思いがけない痛みに、声を抑える事だけはなんとか成功した私だったけど、それだけだ。噛み付かれた状態で、身体中を撫で回されて私は上手く抵抗する事さえ出来ない。
声を出せば悲鳴となる可能性があり、そんな無様な事したくない。睨みつけようにも、相手は首に歯を立てていて、いつ出血させられてもおかしくない強さのそれは、位置を考えれば素直に命の危険を感じる。
頸動脈に歯を立てるって、どうなのよ!
ルッチさんはそんな私の秘部に指を差し込み、弄り始める。嫌だと身を捩れば噛む力が強まり、動きを封じられてしまう。
「ルッチさん、お願い、もう止めて」
声を震わせないように気を付けながら声を出してみたけど、無言で私の体を弄るルッチさんの手は止まる事はない。強制的に高められる体に、情けなくて泣きたくなる。
どうして、私の体は刺激にこんなにも弱いのか。熱くなる体と、冷える心で私の思考は混乱して止まりかける。
でも、力の無い女海賊が頭のそれ迄止めてしまえば、起きる事は1つしかない。その事に気付いて思考を動かそうとした時、声1つ掛けられる事無く押し込まれ始めたそれに、動けない体の代わりと言わんばかりに悲鳴が迸る。
その悲鳴を抑える為か、ルッチさんは私の首からその口を離して私の唇を塞ぐ。首からその瞬間に何かが流れたのを感じて、その不快感と同時に感じ取ったのは血の味。
……ルフィが心配して、チョッパーが嘆くだろうなと、そんな事が脳裏を掠める。早く、帰らなきゃ。
奥まで突き上げられて、体はそれに反応するけど私の思考は離れている仲間の元にある。ゾロとサンジ君が知ったら暴れそうだなとか、ロビンとウソップは嘆きそうだなとか、そんな事を考える。
「余所事を考えるとは、余裕だな」
「はっ……!早く、終わらせて……。目的は知らないけど、私の思考にまで立ち入れるなんて思わないで!」
行為の途中でかけられた言葉に、苛立ちを込めて返答する事しか出来ない。声を出す事が即ち、与えられている刺激により紡がれそうなリスクを示す。
それが悔しくて、苦しい。この人のやり方は、激しいと言うよりも捕食されているというような感覚で、常に恐怖心が芽生えそうになる。
「その強気、いつまで持つか。……試してやろう」
その宣言通りと言うか、ルッチさんはそれからは私をまるでそれ用の道具であるかのように平然と扱い、弄び始める。それまでの衝動的に襲い、食らいついて来ていた様なものとは、明らかに変わった。
辱めるような言葉を口にするでもなく、愛を囁くでもなく、ただ平然と私を道具として使ってくる。試すように、調べるように、観察しながらただ乱して来る。
「……壊れない程度に使い、死なない程度に管理してやろうか。それとも、七武海を抑える道具として教育してやるか?」
「おこと、わりよっ!それなら、私はいつでも死を選ぶわ」
「お前が死んだら、その瞬間にニコ・ロビンも殺すと言ってもか?」
ビクリと体が揺れる。今……何を……。
そう思って視線を向けると、ルッチさんは私の中に埋め込んだモノを膨張させつつ笑う。そして、熱を帯びた声で言葉を告げつつ、腰を激しく動かして打ち付けてくる。
「お前の体は名器だ。誇るといい。声も、肌触りも、反応も、気の強さも……すべてが、極上だ」
「やめ、もう……!」
何度目とも分からないそれを中に放たれながら、それを心と言葉で拒絶しつつも体は受け止めるしかない状態に心が悲鳴を上げる。その代わり、少し冷静になった部分の私が居て、今はロビンをこいつらは殺せないからハッタリだと言う事に気付く。
そうよ、ロビンとの協定があり、今はまだロビンを殺す筈はないのだから。ロビンを捕らえてインベルダウンに送り、その後にロビンから情報を得る。
それが終わるまではロビンが殺される事は無い。ならば、私はこれから逃れる為に死を選ぶ事も……そこまで考えて、舌を噛もうとした時にルフィの笑顔がチラついた。
それにより、動揺している自分を自覚した時、声まで聞こえた気がした。少し怒ったような声でルフィがこれを言ったのは、何時だったかな。
〝何があっても自分を傷付けるなよ。ナミの全ては俺のモンだから、ナミが自由にしていい事なんてねェんだからな!〟
〝何よそれ、横暴〟
〝横暴じゃねェよ。ちゃんと教えておかねェとナミはすぐに自分を犠牲にしちまう。俺は、何があってもナミを好きだ〟
〝ルフィ〟
〝自分を責めるなよ。ナミがいい女なのは、ナミのせいじゃねェし、守れない俺の責任なんだからよ〟
少しだけ苦しそうに、泣きそうな顔で笑ったルフィの顔が、声が、私からその決断を奪う。自らの命を断つ事を、躊躇ってしまう。
ここでそれを選んだら、ルフィはどうなるのだろうか。そう考えたら、舌を噛む事が……出来なくなった。
「ルフィ……」
涙が、零れる。どんな扱いを受けても、どんな状態に陥っても、私が生きて帰らなければ、きっとルフィは自分を責め続ける。
そんな傷には、なりたくない。ルフィを苦しめたり、傷付けたりしたくない。
いつか、この命を捨てるとしたら、それはルフィの役に立つ形でありたい。私は、ルフィの元に……帰りたい。
「ルフィ……。ルフィ……」
「……宝玉も、ただの女か」
嘲るような声に、私は弱くなった自分を受け入れつつ頷く。そう、私には何の力もない。
失う事を恐れて、怯えて、泣きながら手を伸ばす事しか私には出来ないのだから。それを受け入れただけで、心が少し軽くなった気がした。
私に今出来る事は、今の自分を受け入れて、無理なものは無理だと認める事。そして〝生きる事を諦めない〟事だけ。
「そうよ。私は能力だけ高くて、自衛もできないただの美少女。だからこそいつも狙われるの。それを守ってくれるのは、政府じゃない!いつも、守ってくれたのは私が大嫌いな筈の〝海賊〟だった」
「……いい眼を、する」
「私は、貴方達政府が大嫌いよ!いつも、私の大切な人達を傷付けて、苦しめて、その癖有りもしない正義を振りかざす!」
「……有りもしない、だと?」
その瞬間ルッチさんが私の首を絞めた。上手く気管を塞ぐそれに、意識が霞む。でも、私は……。
意識を失うその瞬間まで睨んでいようと、ルッチさんに意識を向けると突然その手が離された。それにより1気に襲い掛かる酸素と言う凶器に振り回されて、咳き込む。
「……本気に、なりそうだ」
「ゲホッ……カハッ……っ……なに、を……言って……」
「お前の瞳は、狩猟本能を呼び起こすな……堕としてやりたくなる」
「……随分、悪趣味ね」
キツく睨み付ければ愉悦に歪んだ笑みを浮かべられ、これ良くないかもと思ったのは覚えている。その後痛みなのか苦しさなのか、少なくとも良いものでは無い感覚に襲われた事は間違いない。
まさかの衝撃により飛び掛けている意識の中で、ルッチさんを見れば獣の姿をしていて……悪魔の実の能力者だったのかと今更知る。その直後、獣の凶暴性を持って襲いかかられて、私は何かを考える余裕を失った。
時の経過も分からなくなった頃、それ迄に抵抗する度に爪で引き裂かれたり、牙を埋め込まれたりしていた体は、痛みもほぼ感じなくなっていた。そうなって少しした頃に、誰かがルッチさんを止めたらしい事に気付く。
霞む意識と視界で、誰が止めてくれたのかは分からないけどとりあえず犯されながら死ぬ事だけは、免れたらしいと気付く。そして、そっと何かに包まれた私は、誰かに抱えられてその場を後にしたようだった。
知らない、腕だわ。だれ?
「……呼吸はあるわね」
「じゃが、衰弱が酷いわい。ルッチのヤツ、何を考えておるのか」
「気に入っちゃった様子だったわね。……哀れな子」
「そう言うなカリファ。早く治療して、どうにか任務に支障が出ないようにせねばならんの」
そんな会話が意識の遠くで聞こえて、口調等からカクさんだと分かるのと同時にカクさんもCP9なのだと知る。では、この腕はカクさんのものだろうか。
何も身に付けていないだろう状態を自覚して、私は痺れてでもいるかのように力の入らない体にどうやら出血もあるらしいと知る。ルッチさんは、どうやら悪魔の実の影響で凶暴になるらしい。
このまま何処かに置いておかれたら、多分死ぬわねと何処か冷静な自分が判断する。さて、でも武器を取り返さないと。
ベルメールさんや、ベックからの贈物であり、シャンクスからの贈物をウソップが改良してくれた物だもの。取り返さなきゃ、動かなきゃ……。
霞む意識の中で、体を捻って移動中のその腕から飛び降りる。落下する途中で月歩を使おうとしたけど上手くいかなくて、着地さえ上手くいかないかもと思った所でカクさんが私を拾った。
そして、屋根の上に飛び乗ると低く問い掛けてきた。それは、本当に無機質な問い掛け。
「いつから、意識があったんじゃ?」
「……武器を、返して。そうしたら、大人しく帰って、貴方達の正体については黙っててあげるわ」
答えになるようでならない返答をすれば、カクさんは私をカリファさんに渡した。どうしたのかと思ったら、カクさんが成程のォなんて1人で納得し始める。
「カリファ、わしはルッチの元から武器を回収してくる。治療等任せたぞ」
「まァ、それは確かに私の方が適任だとは思うけど……」
そんな会話を聞きながら、暗くなる意識を自覚しつつも、それを伝えるつもりは無い。早く帰りたいと思うけど、でも……私がこの扱いなら、ロビンはどうしているのかな。
「ロビン……」
どうか、無事でいて。貴女に……逢いたい。
私は自分の書いてるヒロインを愛してますよ。本当ですよ。