万代の全年齢向けの所にあった小説を無作為に取って中身を確認せずに購入したら官能小説が混ざっていた。
/(^o^)\ナンテコッタイ
テストから少し経って休日になった。
俺は普段着に着替えて昼過ぎ辺りに家を出るとこの街の中央駅近くにある喫茶店へと入る。
軽く店内を見渡すと待ち合わせをしていた人物はとっくに席に座っていた。
俺がアイツを視覚するとほぼ同時にレジにいた店員が声をかけて来た。
「いらっしゃいませお客様。お一人ですか?」
「いや、待ち合わせです。相手はもう来ているみたいなので大丈夫です」
そう答えると「そうですか。ではごゆっくりと」と店員はその場を去る。
それを見届けてから俺はアイツの元へと歩を進める。
昔に比べると色々と変わってしまった人物なんだが、雰囲気とかがソイツらしさを醸し出している。
「よう、久しぶりだなマコト」
「やあ、久しぶりだね匠」
俺はソイツ―――マコトの机を挟んで真ン前に腰掛ける。
コイツの名前は『
興味が無いと言う俺に対しネットスラングやアニメマンガゲーム知識を叩き込むまでは許せたが、性知識からエロ単語まで教え込まれてしまった。ある種嫌な記憶だったりする。
「君は変わらないね。その生気のない眼をどうにかした方が良いと思うよ」
「どうにもならないよ。・・・お前は大分変ったよな。スカートがお似合いの様で」
俺がそう返すとマコトは少し恥ずかしそうに笑う。
ホント変わったな、コイツも。
「ガキの頃は一緒に山の中を駆け回って泥だらけになっていたのにな」
「まあ、あの頃の
そう。
マコトは子供の頃は男だった。所謂トランスジェンダーというヤツだ。
昔から女っぽい奴だと思っていたが高校卒業と同時に性転換手術を開始して今ではれっきとした女性だ。そして何故か性転換したと同時期に男勝りな性格になった。
また、本人は今まで通りに接して欲しいらしいので特に変に意識することなく関わっている。
「それで?
「よく分かってるじゃないか。・・・生徒たちに社会科見学をさせたくてな。良い所ないか?」
「ん~、そうだねぇ。・・・・・・それじゃ、君の抱えている悩みを教えることを条件に仲介してやっていいよ」
「は?」
ニヤニヤと笑うマコトの表情はまるで俺のすべてを見据えているように感じた。
いや、きっと見据えているのだろう。
昔からそういう風に全てを分かったような顔で確信を突いて来るヤツだ。
「顔に疲れの色が出てる。どうせ、生徒関連だろ? まったく、君はもっと夢を見ろ。君が教師を目指したのだって『あの子』に対する君なりの罪滅ぼしの為だ」
そこまで言ってからマコトは間を置き再度口を開いた。
「ハッキリ言って下らない。アレは誰がどう見ても不幸な事故であり抱える事自体が間違っている。人は夢や希望を持たなきゃすぐに潰れるよ」
「・・・それは自覚している。でも、これが俺に生き方だ。それに、『人』と『夢』を合わせてみろ」
「うん? ・・・・・・『儚い』だね。なるほど、言うじゃないか」
カカカッと楽しそうにマコトは笑った。
そして、真剣な顔になる。
「まあ、雑談はここまでだ。ここからは大人の会話と行こうじゃないか。・・・それで? 抱えている事は何だ? 心配するな、君も知っているだろうが
「超絶極秘社外秘企業秘密秘伝だぞ。いいか?」
「とりあえず『秘密』系の言葉を並べた感じだね。いいよ、聞いてやるさ」
「・・・・・・何があろうと誰かに漏らすなよ」
俺はそう前置きをして今自分が配属されているクラスの事とあの三人の事をできるだけ事細かに話した。
最初に何度か念押しをしたがよほどの事が無い限りコイツが誰かに言う事が無いというのは理解している。
できるだけ漏れの無いように話し終えるとマコトは腕を組んで呻りそれからゆっくりと口を開いた。
「想像以上に厄介な事になってるね」
「想像以上だろうな。そりゃ」
「せいぜい学級崩壊が起きて教室で密室殺人事件が起こったのかと・・・」
「ニュースになるレベルの大事件だよそりゃ」
名探偵でも呼ばないといけないような問題じゃないか。
コ〇ンとか金〇一とかそこら辺を呼べってか。
「春実ちゃんが出てくるとはねぇ。彼女も君みたいに過去に囚われ過ぎている。どうも変な事になりそうなこった」
「俺もそう思うが、それが償いになるならどうでも良いとは思ってる」
「二人とも変な所で拗れてるねぇ。・・・・・・はぁ、それで一番の悩みは生徒の事かぁ」
マコトはそう言うと少し眉を顰めてテーブルを指でトントンと鳴らす。
そうして数秒後に面倒くさそうに言った。
「う~ん、もう押し倒して立場理解らせれば早くない?」
「生徒に手を出すかよ」
「真面目だねぇ」
マコトはフフッと笑う。
蚊帳の外にいるコイツはともかく、当事者の俺からすれば笑えなかったりする。
俺は深くため息を吐いてから言う。
「しっかし、
「逆に経験があった方が恐ろしい」
そう返すとマコトは自身の顎に手を付けて少し考えこんだ後に呟く。
「あのさ、その生徒の一人―――早川優歌ちゃん、だっけ? 多分だけどその子なら面識あるよ」
「・・・・・・は?」
「多分だけど、この子でしょ?」
マコトはそう言いながらスマホを取り出すとこちらに渡してきた。
受け取って表示されている写真に目をやると確かに早川だった。
そしてその隣にスーツを着てピースサインをしているマコトも映っている。
「ああ、この子だ」
「やっぱりかぁ。この子が何者かは知ってるよね?」
ニヤニヤと笑うマコトの表情に軽くイラッとしながらもそれを表情に出すことなく俺はその問いに答えた。
「日本有数の巨大財閥の一つ『早川財閥』の令嬢だろ?」
「知っていたか。・・・・・・そう、あの『三沢財閥』とも肩を並べ政界にも影響を持っている所謂上級国民と呼ばれる一族だね」
「その上級国民ってのを嫌がる人もいるって聞くからあまり口に出さない方が良いと思うぞ」
「確かに、そうだね」
マコトは特に気にする事なく笑う。
特に気にした様子無く飄々としているその姿はコイツの本質が一切変わっていない事が分かる。
「まあ、とりあえず校外学習の社会見学だね。・・・・・・えっと、今すぐに使えるツテだったら月見市に本部がある『服部組』が、」
「そういった方面は却下で」
俺はマコトの言葉を遮りそう切り捨てた。
社会見学をするのに何で裏社会のおっかない人の元へ行かなければいけないんだ。
「そうだねぇ。・・・・・・それじゃあ、ここはどう?」
マコトはスマホを少し操作してから俺の方に画面を向けて来くる。
スマホの画面には清水寺の写真が映し出されていた。
「京都?」
「そう。中学生になれば修学旅行として行くことになるだろうけど、今の内に行っておいて歴史に触れさせるのを最初にした方が良いんじゃないかな? 君が生徒たちを歴史に触れさせている間にこっちで探ってやるさ」
「ありがとう。・・・出来ればスーパーとかコンビニで頼むな」
俺がそう言うとマコトはケラケラと笑う。
「釘刺しか・・・。ってか、学校側からそういった連絡してアポ取りすれば良いんじゃないのかな?」
「俺の担当しているクラスの授業内容や日程は全て俺に一任されてるからな。『学校側』としてのアポ取りは禁止されてるんだよ。・・・・・・基本、学校からしてもアイツらを外に出したくないだろうからな」
そう、ため息交じりに言う。
あの三人をなるべく表沙汰にしたくない気持ちは一応理解している。
学校の公式ホームページにも書かれていないし、そもそも東校舎が物置としてしか使われていない事になっている。
その為、『特別支援学級M』は存在しない事になっているし、表向き俺は他の教師のサポートをしている事になっている。
それで解決している辺り大分緩いんだと感じていたりする。
「なるほどね、何となく事情は分かったよ。それじゃあこっちで色々や合っておくさ。京都の方も手配しておくよ。・・・・・・夏休み終わりでも良いかな?
「大丈夫だ。それまでに基礎授業をより徹底させる」
「ならいい。・・・・・・っと、
マコトはそう言うと立ち上がりさっさと店を出て行ってしまった。
・・・・・・ココの支払いをせずに。
なるほど、諸々の手配をする代わりに奢れという事か。
肩を落として呆れと悪い意味での関心を覚えながら俺は財布を取り出すのだった。
▼▼▼▼
大森マコトは鼻歌交じりに街を歩く。
特に定職に就いている訳でもない彼女は基本暇を持て余している事が多い。
金を得る方法は別に定職についている必要はない。
マコトは情報を集めそれを売ったり、時には非合法的な取引で生活費を稼いでいる。
社会には表と裏がある。
友人である匠も表から隠されている事柄に巻き込まれているがあんなのは白に近いグレーよりもさらに白い。
マコトのように裏社会のさらに奥にあるところまで下りている存在からすれば日陰の世界に居るようにしか見えない。
ただ、マコトも完全に奥深くまで関わっている訳でもなく、彼女の親戚はもはや暗闇の世界で輝くような人間だったりする。
鼻歌交じりにマコトはスマホを取り出すと登録されている連絡番号をタッチする。
数回のコールの後、相手が出る。
『もしもし』
「やあ、数日ぶりだね。今日さっそく彼と会う約束があったから上手く誘導しておいたよ」
『あら、それはありがとうございます。報酬はいつもの所でよろしいでしょうか?』
「いいよ~」
マコトは軽い口調でそう言う。
傍から見れば普通の仕事会話のように思えるかもしれないが、この報酬が数百万単位だと知れば見方が大きく変わるだろう。
『それにしても、マコトさんと先生が知り合いだとは思いませんでしたよ』
「ふっふふ~、これでも
『ええ。先生がなんで平然としているのかが分かりました。・・・・・・後、聞きたいことがあるのですがよろしいですか?』
通話相手が改まってそう言った事にマコトは少しキョトンとする。
だが、追加で金になるなら良いか、と思い少しは鼻歌混じりに答えた。
「どうしたんだい?」
『先生がどうしてあんなにも「教師としての職」に拘っているのかを、』
「ああ、それは話せない」
相手の言葉を最後まで聞くことなくマコトはそう切り捨てる。
まさかそう返ってくるとは思っていないかった通話相手はどこか困惑したように言う。
『ダメなのですか?』
「ああ、こればかりは彼の問題だからね。彼自身から話してくれることを待っていなさい」
『・・・分かりました。それでは、また何かあれば連絡いたします』
ブツッと通話が切られる。
マコトは数秒程スマホの画面を眺めた後、ポケットにしまい込み人混みの中へとその姿を隠して行く。
裏で着々と追い詰められ始めている事を、月城匠はまだ知らない。
外堀から埋めて行こう・・・・・・。
_(⌒(_´-ω-)_イロイロツカレタ…