っとおふざけは置いて、数少ない読者の皆さん、明けましておめでとうございます。
約半年も投稿ができずに申し訳ございませんでした。
前回の前書きで書いたと思うのですが、怪我して指が使えなくなったせいで執筆をサボり、Twitterで同じく細々と小説を書いている人に誘われて生まれて初めての企画小説に取り組んだりしていて執筆している時間がありませんでした。
今後はなるべく遅くとも月一で投稿できるように努力します。
ガバッと飛び上がるように起きる。
時計の針はまだ午前三時を過ぎたばかりであり、いつも以上に早く目が覚めてしまった。
二度寝しようとも思ったが、下手に目が冴えてしまい眠れそうにない。
顔に手を当てて息を整える。
随分と懐かしい夢を見た。まだ俺が幼く勉強が苦手で毎日のように頭を抱えていた頃の記憶。
あの日常が今後もずっと続いて行くと、そう信じて疑わなかった。
視線を横に移すとそこにある小さな額縁に入っている写真が視界に映る。最も平和で、みんな笑顔で、そして――――最後に笑い合えた瞬間を固定してそのまま留めているソレが。
「うっ・・・」
突然胃の中から込み上げてくる違和感に口を押えてトイレに駆け込むと、すぐさまソレを吐き出す。
一睡していた事もあってか胃からはほとんど何も出て来ず、最初に昨晩の残りらしき物が出てからは胃液しか出て来ない。
ドロリとした唾液の気持ち悪さと口全体に広がる酸っぱさがより気分を最悪の物にしていく。
どれほどの間便器に向けて口を開き吐き出し続けただろうか。
吐き気が収まる頃には息も絶え絶えでグッタリとしてしまっていた。
「今日が、休みでよかったな・・・」
そう、今日は土曜日。休日であり仕事はない。もしも平日だったらこんな不調で仕事をしなければならず、アイツらの押しに勝てる気はしない。
フラフラとトイレから出ると、台所の冷蔵庫から飲料水を取り出してからリビングのソファーに深く腰掛ける。
そうして、水を一口飲んでから息を整える。
「くっそ、悪夢だな」
あまりにも懐かしく美しく、忘れてはいけない事のハズなのに思い出したくない記憶。
俺は自室に戻り寝間着から普段着に着替えると玄関に向かう。家に籠っているよりも外に出て風に当たって気分を変えた方がいいだろう。
ドアノブに手をかけて外に出ると視線の端に何か大きい物が映った。
そちらに視線を落とすと壁に背を付けて寝息を立てている春実さんがいた。
「何をやっているんだか・・・」
そんな呆れの声が口から洩れてしまう。
放置するのも忍びなく、腰を落とすとその頬をペチペチと叩きながら呼びかける。
「お~い、起きてくださ~い。こんな所で寝てたら風邪ひきますよ~」
「む、うにゃ・・・?」
「起きましたか?」
「な、なななななな何でアンタがここにっ!!」
「自宅の前で寝ておいてその反応はどうなんですか・・・」
「うっさい、どれだけチャイム押しても出て来ないアンタが悪いんじゃん!!」
「せめて事前連絡ぐらいしたらどうですか?」
勝手に来てこの言い草は酷いだろう。
少し呆れていると、春実さんは目頭をキッと上げて睨んできた。
「誰にも連絡先を教えてない癖に何言ってんのよ!」
「ユウトとマコト含む数名には伝えてあるぞ」
「あの二人に聴いても知らぬ存ぜぬと言われたんだけど」
「そりゃぁ口止めしてありますから」
「こ、このっ・・・・・・」
握り拳を作りプルプルと震わせて怒りを全身で表現しているが、残念な事に俺が文句を言われる理由はない。
勝手に連絡先を教えないように頼むのは当然だし、事前連絡なしに勝手に来られて対応できないのも仕方のない事だ。
そこについて怒られるのは理不尽と言うしかない。
「それで、何の用ですか?」
「別に、ただちょっとからかいに来ただけ・・・・・・って、何スッと扉閉めてんのよ!」
「いや、それだったら関わる必要もないかなと」
「アンタ、ここしばらくの間に大分神経太くなったんじゃない?」
「そうですか。誉め言葉として受け取っておきます」
俺はそれだけを言って扉を完全閉めるとしっかりと鍵をかけてチェーンも付ける。
外ではまだ春実さんが騒いでいるが、特に意識を向ける事はそれ以上せずに居間へと戻った。
ただ、戻ってもやる事がある訳ではない。視線をチラリと横に向ければ本棚に収められた参考書たちが視界に映る。
もう二年は買い替えていないソレを手に取れば、何度も読んだせいか変な癖がついており大分ボロボロになってしまっている。
「そろそろ買い替えかな」
そう呟きながら参考書を本棚に戻すと、俺は3〇Sを掴み電源を入れると、ポ〇モンを始める。
厳選作業をしていれば気分も紛れるだろうし、時間を潰すのにも持って来いだろう。
▼▼▼▼
金髪の男はいつものように玉を打ち終えると稼いだ金を手に店を後にする。
その日はいつも以上に金を増やせたために上機嫌で家に向かって歩いていると背後から足音が聞こえて来た。
何の気なしにくるりと音のする方へと視線を向けると、視界一杯に靴底が・・・、
「どっせい!」
「あぶぁぁああっっ!!」
金髪の男は飛び蹴りを喰らう寸前で避けると同時に飛んできた人物が転ばぬように掴んで何とか踏ん張る。
顔にかかる蒼い髪を、首を振るって掃ってから金髪の男は呆れたように言う。
「何やってんだよ、危ないな・・・」
抱き抱えたのはつい数日前に面倒くさい依頼をしてきた優歌であった。
呆れ顔を前面に出している金髪の男に対する優歌も感情を前面に出してそのふくれっ面を晒しながら言葉を返す。
「タバコ臭いです。不快です。身だしなみを整え臭いに気を使いなさい。殿方としての自覚はあるのですか?」
「殿方って・・・いつの時代だっての」
「ふふ、この前漫画で読みまして、言ってみたくなったのです」
「くっだらねえ。それで、何の用だ?」
ため息混じりに問われた事柄に優歌はスカートが捲れパンツが露出する事をお構いなしに足を上げて金髪の男の顔面を足蹴にするとグリグリと土を擦りつける。
「この私が、直々に、貴方に、依頼をしたというのに、なぜ、玉打ちなんて言う、くだらなく、非生産的で、無価値な事に、精を出しているんですかねぇ」
「最近そう言った事する体力無くて性は出していないぞ」
「字が違います~。なんですかぁ? 欲求不満なんですかぁ? それとも低能のお馬鹿さんなんですかぁ? どっちなんですかさっさと答えてくださいなオラ答えろ答えねぇならテメェにセクハラされたと訴えて証拠偽造してでも有罪喰らわせてやんぞ」
「口調崩れてる口調崩れてる。ってか、証拠の偽造は犯罪だ」
「お金って素敵ですよねぇ」
「さっすが上級国民。ガキだってのに性根からイカれている」
「お褒め頂光栄です♡」
「ハハハハハ、お前大人になったら絶対大物になるな」
笑いながら優歌を降ろすと、金髪の男は腰を落として視線を合わせる。ただし、その顔には嫌そうな表情と靴の跡が浮かんでいるが。
それに対する優歌はふくれっ面をより酷くする。
「・・・? どうしたんだよ」
「貴方も、先生も、あの人も、なんでそうやって視線を合わせるんですかねぇ」
「そりゃあガキと話すならそうするだろ」
「・・・それで、情報は集まったんですか?」
「サッと話変えるなァ・・・。今纏めてる所だからもう少し待ってろ」
「えい」
「痛ェ!!!」
返事よりも前に飛んで来た蹴りが見事脛に当たり、金髪の男は脛を抑えて蹲る。
対する優歌は蹲った事で下がった頭を土足で踏みつけた。
「私が依頼してから何日経ちましたかね~、ちゃんと数字を数えられますかぁ? あれから一〇日は経ちますよねぇ? なのになんで未だに玉打ちばかりしているんですかねぇ? 馬鹿なの? 馬鹿なんですかぁ? ほぉら、しっかりと答えてくださいよぉ?」
「ぐりぐりするなオイ。ったく、仮にもテメェは小学生だ伝える情報の精査ぐらいするだろうが」
「内臓でもぶちまけて鳥に突かれてる可哀想な人の写真でもあったのですか?」
「あってたまるか!」
「冗談ですよぉ」
ころころと笑う優歌に金髪の男は頭を踏みつけられながら呆れたようにため息を吐く。
怖いもの知らずと言うか一周回ってどうでもよくなっているというか、目の前の少女から感じるものは『大人に対する恐怖心の無さ』であろうか。
金髪の男は二年前の事を思い出す。そして、丁度その頃にパチンコで記録に残るレベルの大負けをした事を思い出して先ほどとは比べ物にならない程深いため息を吐いた。
「・・・・・・なに突然陰鬱な雰囲気を纏っているんですか?」
「うっせぇ」
金髪の男は首をブンッと振って優歌の足を掃う。
「おっとっと。危ないですねぇ」
「ここに居る事自体が危ねぇんだよ。ほれ、どうせ近くに保護者・・・つーか世話役がいるんだろ? 連れて行ってやるからさっさと帰れ」
頭に付いた砂埃を片手でパッパっと払いながら立ち上がり、もう片方の手を優歌に差し出して―――咄嗟に引っ込める。
一瞬、優歌の顔に浮かんだ暗い表情に金髪の男はギュッと手を握り締める。
「すまない」
「いいんですよ。私も、乗り越えなけれならないことですから」
優歌はそう言うと金髪の男の手を掴む。
金髪の男はふぅっと軽く息を吐くとその手を引いて大通りの方へと向かう。
その間、無言の二人をジロジロと見てくる者たちがいたが、金髪の男が睨むとサッと目を逸らす。
ただのパチカスでしかない金髪の男だが、この裏の社会では絶妙に顔が利き、微妙に有名な人物である。下手に機嫌を損ねるよりも下手に触れず干渉せずにいるのが最善手になるのだ。
優歌がこの場で安心していられる理由の一端がそれだろう。
「……お前のことだ、俺の連絡先ぐらい知ってるだろ? 直接接触せずにそっちに寄こせ」
「その言葉は、玉打ち最中にスマートフォンの電源を切っていなければ少しは心に響いたんですがねぇ」
「なんでそこまで知ってんだテメェ!!」
「自分よりずっと年下の小学生に怒鳴るなんて、お里が知れますよ?」
「あ゛~~!
金髪の男の言葉を聞いた優歌はその情けない様子をケラケラと笑う。
そんな様子を見て金髪の男は今までで一番深いため息をついた。
お互いに一つの星に魅入られ、その星の輝きを受け、そして今がある。似ているようで根本から違う二人はフラフラと路地を後にするのだった。