投稿が思いっきり遅くなってしまい本当に申し訳ございません。
何故こうなったかと言いますと、伝説二体環境から逃げてガラル地方を飛び出してエルガドで狩猟生活を送っていました。
モンスターを孵化させる作業を止めてモンスターをぶっ×す作業ばかりしてました。真逆の生活ですね。
っとまあ、ゲームばっかしてて二週間ほど一文字も書いていませんでした。
次の投稿はなるべく早くしようとは思っていますので仏のような心で待っていただけるとありがたいです。
「先生、今晩はお暇でしたよね? 少し付き合ってもらってよろしいでしょうか?」
早川から突然そんな事を言われて俺はなんと返答すればいいのか咄嗟に判断する事ができなかった。・・・いや、もしも即答できていたのだとしたら自分自身をあり得ないものを見る目で見ていただろう。
例えば、学校でこんな事を言われたのなら即答できていただろう。
学校でならある程度、変な事を言われる事を想定して構えている為、即答・・・とはいかなくてもちゃんとした返答ができただろう。
―――そう、学校でならなのだ。
ここは自宅。しかもベッドの中だ。
俺は昨晩いつも通り食事をして、シャワーを浴びて、授業プリントの作成等をしてそのまま寝室のベッドで寝た。これは何かしらの力で記憶が操作されていなければ確定と言うか確実と言える部分だ。
しかし何か違和感を覚えて起きたら何故か隣に早川が居たのだ。
さも当然ですと言う顔で。
「なんでお前がここにいる?」
「ふふふ、寝起きだというのに調子は変わらないようですね。・・・単純な話ですよ」
早川は少し間を置いてから衝撃の一言を漏らす。
「つい先日このマンションを買収してオーナーになったんです」
そっと、頭を抱える。
想定外のさらに想定外―――なんて言葉で言い表せるほどの話ではない。想定なんぞしていなかった。
こういう事をさらっと言える辺り、温室育ちのお嬢様と言うか金銭感覚がバグっていると言うか・・・。
俺の隣でクスクスと笑ってる早川を余所にどう返答すべきか頭を悩ませる。
「付き合うって、一体何があるんだ?」
「今晩ちょっとした集まりがありまして、御爺様も参加されるのですが、その御爺様が先生と顔を合わせたいと言っておりましたのでこの機会に顔合わせでもと思いまして」
「ちょっとした集まりって・・・。別の機会はないのか? 例えば三者面談とか」
「御爺様は現役で『早川財閥』を率いている会長ですよ。そう簡単に時間が取れるお人じゃないんですよ」
「なるほど、ねぇ・・・。その会長様がなんでただの一教師である俺と顔を合わせたがっているのかが分からないんだが・・・」
俺はそう言いながらベッドから出る。
「あら? お仕事の疲れがまだ残っているでしょう? もう少しお休みになったらどうですか?」
「疲れの原因一号が何を言っているんだ・・・」
「歯に衣着せなくなりましたねぇ」
「お陰様でな」
「とてもいい返しですね。それでこそ先生です。・・・・・・それで、お休みにならないんですか?」
「ハァ・・・。一つだけ言わせてもらっていいか?」
「どうぞ」
早川はそう言いながらベッドから出る。
俺が何を言うのか、それを楽しみにしているかのようにニコニコと笑顔で。だから、努めて冷静にその一言を言う。
「何で裸なんだ」
「私寝るときは全裸派なんですよ」
即答されてもう言い返す気も起きなかった。
▼▼▼▼
俺は冷蔵庫の中にあったソーセージを焼く。
フライパンに軽く油を引いて温めた後にころころとソーセージを転がして全体へ均等に火を通す。
視界の端では当然といった顔で食卓に座っている早川がこちらをジーっと見てきている。
時計を見れば午前六時を少し過ぎた所であり、お腹が空いてくる時間だろうか。
いつからベッドの中に入っていたが分からないが、朝食を食べていない可能性もあるので念のために聞いておく。
「・・・食べるか?」
「食べます」
即答だった。
とりあえずソーセージを小皿に分けてから、昨日の夜にスーパーで買っておいたサラダも二つに分けて小皿に盛る。
白米は昼の分も含めて余分に炊いておいた為、早川の分は十分にある。
「ほら。これ食べたら帰るんだぞ」
「あの~、帰るのは別にいいのですが、今晩の集まりへ参加するかどうかを教えてくれませんか?」
「・・・まあ、なんだ。別に予定もないしいいぞ。ただし、顔合わせをするだけで長居はしないからな」
「いいんですかっ!!?」
「なんで驚いてるんだ」
俺の返答に目を真ん丸にして少しオーバーに反応する早川の態度に逆に驚かされた。
普段から物静かな早川が出した大声に、珍しい物を見た気分で居ると、早川は数秒ほど目をぱちぱちさせた後に一回咳をしてからいつものような落ち着いた口調で答えた。
「本日の一七時にお迎えに来ますので、正装で待っていてください。それと、あくまでも今夜の集まりは軽い懇談会や顔合わせをする事が目的ですので肩の力は抜いて参加してくださいね」
「多分肩の力を抜くのは難しいと思う」
「そうですか。・・・では、少し雑談をしましょう」
「何がどうして『では』なんだ」
「軽い雑談でリラックスして、そのリラックスした気持ちで参加すればよろしいのではないかと思いまして」
「う~ん、そうなのか?」
言い分としては確かに頷ける面はある。だが、どうしてもただのこじつけにしか思えない。
肩の力を抜くだけなら別に雑談をしなくても方法はいくらでもあるし、何なら今は早朝だ。
今リラックスしたからと言ってそのテンションがそのまま夕方~夜まで持つハズがない。むしろ、朝のテンションで一日を過ごせる人間はいないのではなかろうか。
そんな考えが浮かぶが、俺の気持ちも意見もお構いなしと言った様子で早川が口を開いた。
「こだわり、ってあるじゃないですか。何かしらの事柄に対しての執着や固執、『これは譲れない』とか『こうじゃないと納得できない』みたいな。これは大小に関わらず誰でも持っている物ですよね。日常生活を送る上でもこのこだわりを持って一つ一つの事柄をするなんていうちょっと窮屈な生活をしている人の話もよくテレビとかで見ますし、そのこだわりから外れた事で気分を悪くしたりなんてのも。ああ、そうそう。こだわりから外れた事をした・された、何て言うのが殺害動機のミステリー物も結構ありますね」
「そうだな。・・・それで、何が言いたいんだ?」
「先生って処女厨ですか?」
思考が停止した。気分はまさに宇宙猫。
頭の中を早川の言葉が反響し、その言葉の意味を理解しようとしては理解が追い付かず最終的には思考が止まっては数舜後に動き出すという無駄で謎な動きを続ける。
そうこうしてたっぷり一〇数秒程固まってから俺の口から洩れたのはたった一言。
「おまえは何を言っているんだ」
「ミ〇コ・クロ〇ップですか?」
カクリ、と首を傾げる早川を前に深くため息を吐く。
何故こんな事を質問したのかが一切分からないが、それでも何とか口を動かす。
「質問には答えよう。俺にはそう言ったこだわりはない」
「そうなんですねぇ。それは良かったです♪」
ニコニコと笑顔を浮かべる早川と対象に、俺の顔はげんなりとしているのだろう。
結局質問の意図が分からないままである。
その後は早川の質問や雑談を軽く流しながら食事を終えた。
「「ごちそうさまでした」」
手を合わせてそう言って食器を台所のシンクに入れる。
早川は椅子に座ったままジーっとこっちを見ている。
「どうした?」
「私の使った食器、隅々まで舐めてもいいんですよ?」
「誰が舐めるか」
俺は蛇口を捻り食器を水に浸ける。それを見た早川はつまらなそうに口を少し尖らせている。
時計をチラリと確認する。まだ七時過ぎ。だと言うのにかなりの疲れを感じる。
普段なら『仕事』というフィルターのお陰で多少の事なら受け流せるが、仕事モードでない状態だと流石に疲労を強く感じてしまう。
実際の所、疲れは同じくらい―――いや、拘束時間的に言えば今の方が圧倒的に疲れは少ないはずなのだが何故かドッと疲れた。
少し肩を落としながらも食器を洗っていると、早川がひょこっと食卓の椅子から降りた。
「それでは、私は一旦帰りますね。また夜にお会いしましょう」
それだけを言ってさっさと出て行ってしまった。
▼▼▼▼
時間は少し遡る。
とある大手飲食会社のチェーン店で優歌はドリンクバーとソフトクリームのみで一時間程居座っていた。
何杯目かのオレンジジュースを喉に通していた所に一人の不審な男が近付いて来た。ぼさぼさで手入れをされていない金髪に生やしっぱなしの無精ヒゲを蓄えた小汚くタバコ臭い圧倒的不審者。
優歌はその不審者に気が付くと手を少し上げてヒラヒラと振る。
「やぁっと来ましたか。一体どれだけ私を待たせるつもりですか? あの地球人のように木っ端みじんにしますよ」
「どの地球人だよ。あと、お前世代じゃないだろ。―――ああ、言っておくが俺はGT世代だ」
「聞いていません」
「はいはいそうかよ」
金髪の男はそう言いながら向き合うように椅子に座る。そうして、持っていたバッグから幾つかのクリアファイルを取り出してその中の一つを優歌に渡す。
クリアファイルを受け取り、その中に挟まれている資料をペラペラと眺める。
そうして、一つの資料に目が留まり言葉を詰まらせた。
「・・・・・・」
「どうかしたか、上流階級のお嬢様」
金髪の男の言葉に優歌は重たくなった口を動かす。
「これって・・・」
「・・・これ?」
どう言葉を紡ぐのかを必死に考えているその姿に金髪の男は疑問を覚える。そして、ようやく気が付いた。
優歌に渡したファイルは金髪の男が刺激の少ないように一部情報を隠した物ではなく、調査を開始してすぐのあの日にマコトから渡された情報を精査する為に事細かに調べ上げた情報をびっしりと纏め書きしている物だったのだ。
サーっと金髪の男の血の気が引いていく。
定職に就かずパチンコばかりして借金を重ねて生活をしているハッキリ言って人生終わっている残念な人間であるが、案外に性格は一般のソレと変わらないのだ。
「あー、えっと、それはだな・・・」
何と説明しようか頭を悩ませていると優歌がファイルをパタンと閉じて少し深呼吸をしてから口を開いた。
「ありがとうございます。・・・そして、気を使わせてしまって申し訳ございません」
優歌はペコリと頭を下げるとファイルを自身のバッグに入れる。
取り返すことが不可能になった。冷や汗が滝のように流れ、ポタポタと垂れる。
「? ・・・熱いんですか?」
「は、はは、ははははははは・・・」
口から自然と笑い声が漏れ出す。
金髪の男は残念な事にマコトに勝てない。口でも暴力でも、そしてマコトから金をお受け取って口止めされた上で精査したのにワンミスでそれがパー。何なら最悪の場合、金髪の男の命もパーになる可能性すらある。
そうして、金髪の男はある結論を出した。
(パチ打と)
現実逃避して何もなかったことにするという結論を。
「なんか上の空になっていますが、気分でも悪いのですか?」
「いやぁ、大丈夫大丈夫ダイジョウブ・・・」
一切大丈夫ではないのだが、そういう事しかできない。
優歌は挙動不審になった金髪の男に疑問を覚えながらも、その思考をすぐに振り払った。
そもそも気にしてもしょうがないし特に興味もなければ突っ込んで話を聞く労力を割くつもりもない。
分かりやすく言えば、優歌にとって金髪の男はあくまでも駒の一つであってどうなろうと知ったこっちゃないのだ。その為、さっさとレジへ向かい会計を済ませると足早に去って行ってしまった。
その背を見送った後に金髪の男も店を後にしようと立ち上がり、
ガシッ、と肩を掴まれた。
ギギギギギ、とゆっくり首を動かして自身の肩を掴んでいる人物を確認する。
「マ、コト・・・」
「名前で呼んでくれるなんて珍しいですねぇ。何か気まずい事でも?」
「・・・・・・ッ!!」
金髪の男はマコトの顔面に目掛けて裏拳を放つ。マコトは簡単にそれを受け止めるが、一瞬の隙を突いて足首を踏みつけるような形で蹴る。所謂、『関節蹴り』であり場合によっては相手の関節を砕き障害を残す事もある危険行為だが、そんな事を気にしている余裕はない。
蹴り抜きの痛みで肩を掴む腕の力が抜けた瞬間に体を回転させて拘束を外し、出入り口に向かってダッシュした。
「ッぁ・・・。待、てっ!!」
「待てと言われて待つ馬鹿がどこに居ると思ってるんだっ!!!」
「く、ぅう・・・! 相変わらず逃げ足だけは立派だなぁ!!」
「はーーーーーはっはっはっは!! 逃げるってのは生きるって事なんだぜぇ!!!」
金髪の男は勝利宣言のようにそう叫ぶと雑踏の中へと姿を消す。
足を痛めたマコトはその後を追う事ができず歯ぎしりをする事しかできなかった。