投稿遅れて本当に申し訳ありません。
もはや投稿が遅れる事が恒例行事化してしまっていますが、今回は結構な事情があったんです!!
焼きナスとミツネ希少種を狩るという事情がっ・・・!!
えー、はい。ゲームしてました。
ゲーム優先で一週間程一文字も書いていませんでした。
待ってくれている数少ない読者の皆様、本当にごめんなさい。
ガンガンと頭が痛む。
今の自分が置かれている状況を判断したいが、室内は小さな電球が淡く照らしているのみで全体を見通す事が出来ない。
分かる事と言えば手足を縛られてベッドに寝かされているという事だけだ。
薄暗い室内で耳を澄ませるとシャワーの音と水が流れる音が聞こえる。
俺はとりあえず思考を巡らせる。
記憶が途切れる前を思い出す事で何が起こったのかを判断するために。
俺は早川と手を繋ぎながらパーティーホールに入った。パーティーホール内には多くの大物の顔があり、軽く委縮してしまった。
大手企業の社長、よくテレビで見かける芸能人、某政党の議員etc.正直に言って俺がここにいるのは場違いなのではないかとすら思う。というか場違いでしかない。
大物たちはそれぞれが談笑をしており、僅かに聞こえてくる話の断片は聞いていいのか分からないような情報すら幾つもあった。
こういったものは忘れようとしても無理な事が多い。『忘れよう』とする意識がそれをより記憶へ深く刻み込んでしまう。
その為、素早く記憶から消す方法は一つ。何も聞かなかった事にしてさっさと意識から外す事だ。
全員がパーティーホールに入った所で、入り口の正反対側にあるステージに一人の老人が上がる。
黒紋付羽織袴を着こなし、堂々とした立ち振る舞い、顎に携えた深く白い髭、見た目から大物である事、そしてステージに上がっている事からその人物が誰なのかは明白だった。
老人はマイクを手に口を開いた。話す内容は所謂テンプレートをなぞっているものであった。
「・・・?」
「先生、ちょっとお耳を拝借してもよろしいですか?」
「あ、あぁ・・・」
「もうお分かりでしょうが、あそこにいるのが私の御爺様です。もう八〇歳を超えるご老体ですが未だに元気溌剌で、新規事業の開拓や業務提携、買収等は自分で現場に出たりして率先して動いている人で、社員からはあだ名で呼ばれていて御爺様本人もそれを良しとしているんです。そうそう、左手に巻かれているあの包帯は、数日前に人生初のスケートボードを行った際に派手にスッ転んで手首を痛めてしまったらしいです」
「随分とアグレッシブな人だな・・・」
「えぇ、年齢的にもそろそろ引退してもおかしくないハズですのに未だに元気満々であっちこっちへ飛び回って一か所に留まらないんですよねぇ・・・」
「なるほど。簡単に時間が取れないっていうのはそういう事か・・・」
本当なら財閥の会長の話をしっかりと内容を聞いておきたかったが、早川からの説明に耳を傾けていたせいで内容は全く入ってきていなかった。
「っと、御爺様のお話が終わったようですね。校長先生の長ったらしい話よりも簡潔であっさりとした話で良いですねぇ」
「ウチの学校の校長は結構話短い方だと思うが」
「掲示板では『校長は話が長い』と言うのが共通認識ですよ」
「ねらーかい」
別にネット上での印象や認識を頭っから否定する気は無いが、それを確定した事実で例外が無いように話すのはあまりいただけない。
近いうちにネットリテラシー等についての授業も行う事も視野に入れておこう。
思考を仕事の方へと傾けていると、ステージから降りた会長がこちらにへと向かってきていた。
「優歌~! おじいちゃんでちゅよ~!!」
とんでもないキャラで来た。満面の笑みで両手を大きく広げているその姿は、まさに『孫煩悩のおじいちゃん』そのものであった。
早川も会長に笑顔を向けてからペコリと会釈で返す。
「お久しぶりです、御爺様。相変わらずお元気そうで大変喜ばしい限りです」
「そう堅苦しくならなくていいぞ~。昔みたいに飛んで抱きついてきていいんじゃぞ~」
にっこにこでそんな事を言う会長の隣にいる初老の男性が呆れたように呟く。
「過去の捏造は止した方が良い。実際は貴方がべたべたと抱きついて結構ウザがられていたでしょう」
「おまっ! それを言わんでくれ!」
「残念な事に周知の事実です。孫バカ事態は否定しませんが時と場所を考えてください」
初老の男性の言葉に会長はがっくりと項垂れる。
周囲の人たちがその様子を見て「またやってる」だの「恒例行事ですな」と話している声が聞こえてきた為、毎度のようにこのような事をしているのだろう。
フットワークが軽い人、と言う印象が俺の中で強く刻まれる音がした。
そんな光景を見ていると、会長がこちらに気が付いたようでゴホン、と咳をして気持ちを切り替えたような表情になる。
「おっと、挨拶が遅れて申し訳ない。優歌の先生ですね。初めまして、私は『
「いえいえ、本日はお招きいただきありがとうございます。優歌さんの担任を任されている『月城匠』です。お会いできて光栄に思います」
「私こそお会いできて嬉しく思っていますよ。もうお分かりでしょうが優歌は我儘な所がありましてな・・・。そこが可愛くってたまらないと言うかクールでツンツンしている所が祖父心を刺激すると言うかほんとに私の孫可愛すぎて今すぐにでも抱きしめたいし思いっきり頭撫でたい」
「止まれ煩悩爺。見てみなさい、月城さんが結構マジな顔で引いていますよ」
初老の男性がギロッと会長を睨みながら冷たい声でツッコミを入れた。
先ほども見たような光景に、本当にこれが毎度行っている事だと言う事が実感させられた。
「おっと、すみません。優歌が可愛すぎるせいでつい・・・。ゴホンッ、どこまでお話しましたっけな・・・。そうそう、優歌に我儘な所があるという辺りでしたね。その我儘も一度息子夫婦や私が言えば我慢できるすっごくいい子なのですが、例外として他人との付き合いに関しての我儘だけは譲らなんですよ。嫌な人だと感じたらそれだけでもう関わろうとしなくなる程に」
だから、と会長は少し頬を緩ませて微笑を浮かべながら言葉を続ける。
「貴方に関しての話で不満を一つも聞かないのはとても嬉しいんです。優歌が家族以外で心を許している相手はそれこそご友人の二人と貴方ぐらいですかラ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛!!!!」
突然会長が蹲り足を抑えて呻き声をあげる・・・。
視線を少し下げると少し怖い顔をした早川がジッと会長を睨みながら立っていた。
「御爺様、喋りすぎですわ」
「い、痛っ・・・!」
その様子から察するに、早川が会長の足・・・正確に言えば脛を蹴った様である。
どう行動すべきか判断に迷っていると先ほどから会長にツッコミを入れていた初老の男性が軽くため息をついてから、会長に手を伸ばす。
「ほら、いい加減学びなさいな。すみませんね、先生。この人毎度毎度この調子なんです。・・・ったく、他の方への挨拶もあるんですから孫自慢はこれくらいにしましょうね」
「お、おぉ・・・。つい熱が入ってしまった」
「いつもの事ですね」
「いやははは。もう少しお話ししたい所でしたが少し挨拶回りに行きますね。また時間があれば優歌の話を聞いていただけるとありがタブァァアッッ!!」
初老の男性の手を取って立ち上がった会長の足を早川が再度蹴飛ばした。
普段の様子とは大きく違う暴力的な姿に、戸惑いを覚えたが、初老の男性の言葉や周囲の反応からここまでがテンプレート化している事がなんとなく伺えてしまう。
軽く足を引きずりながら去って行く会長を見送ってから俺は腰を落として早川と視線を合わせる。
「いくら恥ずかしいからと言って暴力に訴えるのはダメだぞ」
「大丈夫ですよ。暴力は全てを解決しますから」
「・・・お前そんな脳筋だったか?」
「私は理系・文系の脳筋ですので」
「そうか・・・。うん、俺はもう色々とツッコミを入れる気は無いからな」
軽く手で頭を押さえながら呟く。
人は見かけによらない、とはよく言ったものだ。
早川は見た目だけなら『大人しそうで知的な令嬢』に見えるが、実際は結構ヤンチャかつ強引な所があるので『脳筋』という早川の自評に対してツッコミを入れる理由もなかったりする。
「さて、と。私も挨拶回りをしますか。・・・先生は私の後ろにでも付いてきて下さい。ふふっ、こういった場には慣れていますので大丈夫ですよ」
そう言って笑顔を向けてくる早川の言葉に俺は少しだけ甘える事にした。
周りにいるのは多くの業界に顔が利く超が付く大物ばかりで正直に言うと結構委縮してしまっているのだ。
「あぁ、そうだ。流石の私も大人との会話は正直言って結構疲れますのでしばらくしたら休憩用に予約してある部屋に行きますのでそこへも付いてきて下さい。先生をお一人でこの場に残すのは忍びないので」
「ん・・・? あ、あぁ、分かった」
なんだか誘導された気がするが、気のせいだろう。
俺は早川の後に付いて行きながら業界の大物との挨拶をした。最初こそ緊張しっぱなしだったが、案外フレンドリーに来られて緊張は自然と解かれたように思う。
そうして一時間ほど経過した辺りで早川に袖を引かれた。
「先生、少し疲れてしまったので休みに行きましょう」
「あ、あぁ。分かった。すみません、これで失礼します」
俺はそう断って会場を後にする。
会場を出て右手側にあるエレベーターに乗ると早川に促されるままに上階行きのボタンを押す。
「ふぅ・・・。やはり大人と話をしているとやっぱり疲れますね・・・」
「まあ、そうだな。っというか、ホントに大物ばかりだったな。知らない人間の方が少ない気がしたぞ・・・」
「テレビだけでなくネットでも大々的に取り上げられている人たちもいますからねぇ。先ほど先生とお話しされていたのも近年一気に事業拡大をしているベンチャー企業の社長ですしねぇ」
「凄く気さくな人だったな・・・。あの人も会長との関りがあるのか?」
「いえ? 別の企業の重役のお知り合いでそこの繋がりで今回特別に来ているだけですよ。御爺様的にはあと数年で落ちぶれるから取引をする気もないそうですし」
「サラッと言うなぁ・・・」
「いくら勢いがあっても無作為に手を広げたらこんがらがるのは当然ですもの」
「確かに、そうではあるな・・・。何でもかでも手を出したらキャパオーバーになってしまうからな・・・」
そんな話をしている内に目的の階に到着し、エレベーターを降りると早川の案内でエレベーターから一番離れた部屋に入る。
早川がカードキーをキーホルダーに差し込むと室内の電気が一斉に灯る。
こういったホテルに泊まったのはそれこそ学生時代の修学旅行以来だったのでつい室内をグルリと見回していると・・・、
「ガッ゛ッ゛!!!」
突然体に強い衝撃が走った。
何が起こったのかを判断するよりも前に目の前が暗くなり、意識は完全に闇の中へと落ちて行った。
っと、ここまで回想できた事で何となくいだが今、自分が置かれている状況を起こした犯人が誰なのかが分かった。
自分の手を確認すると手首が縄で縛られていたが、それ以上にどこかに繋がれてはいなかったので結び目を口で解く。
手を自由にしてから足の縄を解いていると、浴場の扉が開く音がした。
「あら? もう気付かれたのですか? ん~、あと数分だけ寝ていて下さいませんか?」
「お前は時と場合を考えた方が良い。今日みたいな日にまるでいつものようなペースでこんな事をしでかすな」
「やはりスタンガンの威力をもう少し上げておくべきでしたかね・・・」
「どこに隠し持ってた」
「基本的に普段から太ももにホルスターをつけて護身武器を持っていますので」
まさかの言葉に「ふぅ・・・」と息を吐いてから頭を抑える。
やはりと言うか、さも当然のように言われると何と返せばいいのかが分からなくなる。
俺が軽い頭痛に目を細めていると、早川が体を覆っていたタオルをハラリと落としてその白い肌を露出させ、そのまま飛びついてきた。
「お前な・・・。こういう事をする為に誘い込んだのだとしたら俺は帰るぞ」
「良いのですか? もしもここで私が大きな声を出して外に飛び出したら、大変な事になってしまいますよ♡」
「桃知と同じような事言うな・・・」
「・・・先を越されていた、だと・・・・・・」
ショックを受けたような表情になる早川を見て再度ため息を吐く。
そして、とりあえず太ももに座っている早川をどかそうと脇辺りを手で掴んだ瞬間、
「カプリ☆」
首元を噛みつかれた。
俺の思考に空白が生まれる。
今までに無理やりキスをされた事なら何度もあったが、噛みつかれた事は今までになかったのでどう対応すればいいのか判断に迷っていると、早川はそのまま首元を舐め始めた。
「ッ!! お、お前なぁ!!」
慌てて引き剥がそうとするが服をがっしりと掴まれてしまい中々引き剥がせない。
「れろぉ♡ んちゅ・・・♡ ん~、ぺろ♡ ちゅっ♡ ・・・・・・ふふっ、首元にキスマーク付いちゃいましたねぇ♡ 茜さんやはっさんにどう説明します?♡」
「ありのままを説明する」
「羞恥心という物をご存じでないっ・・・!?」
「お前たちと付き合ってたら考えるだけ無意味だ」
「付き合ってたら、なんて・・・。先生はハーレム系がお好きなんですか?」
「なに顔を赤くしてんだよ阿呆」
「冗談ですよ。・・・もしかして本気にしました?」
「お前の冗談と本気の境目が未だに判断付けづらいんだよ・・・」
「名女優ですから」
「・・・・・・」
「あの、無視されると流石に悲しいですよ・・・」
「じゃあまず降りろ」
「あ、はい・・・」
案外素直に降りてくれた。
先ほどまでの抵抗は一体何だったのかとツッコミを入れたくなったが、藪蛇なので口に出す事はない。
とりあえず足の縄を解きながら服を着るように促すと、またも素直に言う事を聞いてくれた。
「ったく、とりあえず会場に戻るぞ」
「は~い」
「良い返事だな。学校でもそれくらい元気でいてくれ」
俺は手足の調子を確かめるとベッドから立ち上がり、早川と手を掴む。そして、そのまま部屋を後にした。
時計を確認すると会場から出てから三〇分以上が経過していた。
「見つけましたよ」
エレベーターに向かい途中の分岐路からそんな声と共に人影が現れた。
一瞬誰かと思い身構えたが、そこにいたのはホテルの入り口で出会ったホテルマンだった。
見つけました、という言葉から恐らく会場に居なかった早川を探しに来たのだろう。
「っ・・・・・・」
急に早川が俺の後ろに隠れる。
どうしたのかと思い早川に視線を向けると、その顔には怯え・恐怖の色が浮かんでいた。
「どう、した・・・?」
「違う・・・」
早川は震えた声で言葉を紡ぐ。
「アナタは、誰っっ!!!?」
その叫び声と同時に近くの部屋の扉が開き、そこから怪しい雰囲気を放つ連中が飛び出してきた。
訳が分からず抵抗するよりも前に頭部に衝撃が走る。
「っ゛ぁ・・・!!」
足から力が抜けて地面に倒れ込んでしまう。
思考がまとまらず、暗くなる視界に写ったのは手を掴まれ口を押えられながらそれでも俺の方へ心配の色を浮かべた目を向けている早川で、どうにか安心させようと言葉を発しようとしたが口は動かず、目の前が真っ暗になった。
▼▼▼▼
少年が怒りに任せて舌打ちをする。
油断していた。大丈夫だと確信していた。してしまっていた。
自らの青さに、浅はかさに、愚かさに、何よりもその未熟さに憎しみを覚えるが、その思考を切り捨てる。
今はこんな事をしている状況ではない。
少年はスマホを操作して電話を繋ぐ。
『もしも・・・、』
「分かったぞ」
向こうの言葉を最後まで聞かずに開口一番に言う。
その声色の怒気から、電話先の相手は事態を何となく察する。
「あの死体が持っていたのは『早川財閥』のグループで使われているバッジだ。デザインが財閥関係を現し、縁のデザインが職種、マークが主な勤務場所、色が大まかな役職を現している独自の物だ」
相手の返事を待たずに口を動かす。
「縁が鯉なのがホテル関係、コスモス柄はここら一体共通のマーク、色は蒼・・・マネージャーだ」
『それで・・・?』
「心当たりが一つだけある。・・・今日は『星座市』にある財閥系列のホテルでパーティーが行われている。・・・『
『なぁるほど。そういう事ね』
「俺はホテルに向かう。お前は引き続き情報を探してくれ」
少年はそれだけを言うと相手の返事も聞かずに通話を終わらせて走り出す。
(クッソ。こんな事なら死体を無視してパーティーに参加しとくべきだったな)
心の中でそう毒づき表情を引き締めると、大通りに出て手を高く立てる。
「ヘイ! タクシー!!!」
都合よく通りかかったタクシーに乗り込み、少年はホテルへと向かう。
ただ、一手遅い。もう事態はとっくの昔に動き始めている。
それを感覚で理解しながらも少年は僅かな望みに懸けるのだった。