相棒が剣盾内定から落ち、サブ相棒で自身を慰めている
そろそろゲーム〇リークはバランス調整というものを覚えた方が良い。
100種類を超えるカレーなんぞいらない。
「ハァァアアアアアア」
仕事が終わり、生徒が全員帰ってから、俺は深いため息を吐く。
あの三人に五時間目を潰され、授業が止まったのは後々響いてきそうだ。
たかが一時間と思う人もいるだろうが、アイツら(特に桃知)の成績を考えると無駄にできる時間なんてない。
まぁ、それでも多少駆け足になるがこの差を埋めるのは簡単だ。
だけど、その為のスケジュール調整をしなくてはならないのだが・・・・・・。
「あの、何しているんですか?」
俺は隣の席でこちらを見ている三宅先生にそう声をかける。
彼女はもう仕事を終わらせているのでさっさと帰ってもいいと思うのだが、まぁ、どうしようと彼女の自由なので特に何も言わないでおく。
ただ、視線が気になって気が散るのでさっさとどこかに行ってほしいのが本音だ。
「何か疲れているようですが、問題でもありました?」
「問題だらけですよ」
「そうなのですか? 前任の方よりも顔色がよかったので大丈夫とばかり思っていたんですけど・・・」
そう言って首をかしげる彼女に、俺は成績をまとめた紙を差し出す。
「・・・・・・これ、」
「そうです。桃知の成績が酷いんですよ。ここを何とかしないと将来どうなる事やら・・・・・・」
紙を見た三宅先生もあまりの酷さに言葉を失っていた。
だが、それは仕方がないと言えるだろう。
彼女らの学年は五年生だというのに、桃知の成績は二年生並みで止まってしまっているのだ。
多少なりと応用等が出来たりはしているのだが、それでもそこまで大きく変わっている訳ではなく、足りないとしか言えないのが現状だ。
「成績が悪いとは聞いていましたがまさかここまでとは・・・」
「最低でも、足し算・引き算・掛け算・割り算・ひらがな・カタカナ・常用漢字・地図の読み書き・パソコンの操作をできるようになれば安心なんですけどね。さらに欲を出すなら世の中の危険・・・麻薬とかですね。そう言った生きていくうえで来る危険を教えられれば満点だと思うんですが、それが中々・・・・・・」
俺はそう言って今日授業で使ったプリントに視線を向ける。
早川や暗視は八割以上に丸が付いているのに、桃知は三割ほどしか丸がない。
単純な引っ掛け問題に引っ掛かって点を落としてしまっている所も多く、少し残念な気もする。
「何とかしたいのは山々ですが、ここら辺は本人次第なんですよね」
「そうですよね。でも、そんなに悩んで頭の中詰めて行っても意味はありませんよ」
「ですかね・・・。もう少ししたら軽いテストをして、その点数を見てから何かレクレーションでもしてリラックスさせてやりますか」
「違いますよ」
俺の呟きに三宅先生はノータイムでそう言ってきた。
何が違うか分からず一瞬固まってしまった。
「えっと、違うって何がですか?」
「詰め込み過ぎなのは月城先生の方ですよ。休み時間でもほとんどパソコンに向かって問題用紙作っているじゃないですか。神経張り詰めすぎですよ。少しは休んだ方がいいですよ」
「そう、ですかね・・・」
自分でも薄々思っていたことを指摘され、少し苦笑しながらそう答えると、三宅先生は手帳を取り出しペラペラと捲ってから言った。
「ええ。そうですよ。明後日の夜は空いてますか? 良い所連れて言ってあげますよ」
「良い所? もしも酒屋とかだったら無理ですよ。俺、酒に弱いんで」
「大丈夫ですよ」
三宅先生はそう断言してから間を開けずに言う。
「ラブホなんで」
「・・・・・・・・・」
「一発ヌけば少しは頭の中スッキリしますよ」
そう言う彼女を余所に俺は資料をUSBメモリに保存し、パソコンの電源を落とす。
そして、
「じゃ、これで失礼します。後、今さっき明後日の予定が入ったのでお出かけのお誘いはキャンセルという事で」
「あからさまに流された・・・」
そりゃぁ流すだろう。
変に反応しても無駄だもの。
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帰宅してもやる事は特にない。
ここは学校から車で一時間ほどの距離にあるごく普通の七階建ての賃貸マンションで、番号は【四〇五】号室。
部屋にはあまり物はなく、リビングには大きめのソファーと小さなテーブル、ソファーに向かい合うように薄型テレビが置かれていて、寝室の扉の隣に少し大きめの本棚がありそこの上段には参考書が、下段には小説が収められている。
小説と言っても高校生の頃に買った物ばかりで今となっては古い作品でありここ数年数えるぐらいしか開いていない。
漫画類は実家に放置したままになっているし、それも小学生の頃に買ったものでもう一三~一四年も前の物である。
時間は九時半ほどで風呂を沸かす気力もないが、さすがに汗は流さないと不味いだろうと判断し、寝室にあるタンスから下着を取り出し、その隣に置いてあるパジャマ入れ(アミ籠)からパジャマ代わりの甚平を取って風呂場へと向かう。
蛇口を捻り、お湯が出るまで少し出してそれを頭から浴びる。
全身を濡らしてからシャンプーを手に取り、少し泡立てて頭につけ髪を洗う。
髪を洗っている間も頭の中は彼女らに出すプリントの内容をどうするかという事しか浮かばない。
難易度が高過ぎず低過ぎず適度な引っ掛けを入れて尚且つひらめきを入れた問題。
これがまた難しいのだ。
当たり前だが成長途中の子供の脳と成長してしまった大人の脳ではモノの見方や発想が大きく違う部分が出てくる。
そこも考慮しなければ子供向けの良い問題はできない。
俺は全身を洗い終わり、すぐに風呂を出る。
甚平を着て、少しドライヤーで髪を乾かしてからリビングの本棚の前へと向かい、何冊か取り出し、ソファーへと腰を掛ける。
本を開き何分か眺めるが、参考になりはするもやはりもう一味アクセントが欲しかった。
手に取っていた参考書の最後の方にあるページを見ると、それはもう二年ほど前の物で、さすがに新しいモノを買った方が良さそうであった。
勉強方法とは早ければ数ヶ月、遅くても一年ちょっとでもあれば良い悪いはさておき新しいモノが出てくる。
二年も経過すれば古くなるのは当然だ。
まあ、それでもこういった物ばかりを参考にして自分でほとんど考えないのも問題があるので褒められたようなやり方とは思っていない。
ただ、名前の通り少し『参考』にする程度に留めておくのが賢明である。
時計を確認するともう一一時近くになっていた為、本を閉じ寝室へ向かう。
寝室にはシングルベッドが設置されており、その隣にある布団干しに掛けられている掛け布団を被ると睡眠に入る。
学校には七時から七時半までには行ければいいので、大体五時半ぐらいに起きれば問題はない。
スマホのアラームはセットしてあるので俺はゆっくりと意識を落とした。
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やかましいアラームの音で目が覚める。時刻を確認すると時計の針は五時一五分辺りを指していた。
俺は布団を払い除け、ゆっくりと起き上がる。まだ頭はボーっとしているがそれでもベッドから降りて洗面所へと向かう。
昔から寝相が悪いせいで朝起きると確実に頭がド豪い事になってしまっているのだ。
あまりにも髪の毛が絡まりすぎて櫛がへし折れたことすらもある。その為、髪の毛の様子を確認してから風呂場で軽くシャワーを浴びる。
無論、全身ではなく頭だけを濡らすように。
濡らした髪を軽くタオルで拭いてから櫛を入れた所でフッと気付いた。かなり髪が伸びているのだ。
少し前まではさっぱりしていたと思ったのだが、肩までかかる程になっていた。毎日鏡は見ていたはずなのにそんな当然の事に気付けていなかった。
俺は後頭部を少し掻き、今度の休みにでも床屋へ行こうと考えながら洗面所を後にした。
台所へと行き、冷蔵庫を開く。そこには昨日の晩飯用に作っておいた焼き魚と白ご飯のあまりが入っていた。
それを前にしてようやく帰ってすぐシャワーを浴びて寝てしまった事に気が付いた。
「・・・・・・三宅さんの言っていた通り疲れてるのかもな」
俺はボソッとそう呟いて焼き魚と白ご飯をレンジで温めた。
ほんの数十秒の温め時間の間にも頭の中に浮かんでいるのは課題プリントについての事だけであった。
床屋に行くついでにどこかでリフレッシュしてきた方が本当に良さそうである。
頭の中で課題プリントについて考えながら、今後のスケジュールについても思考を割く。
ここの近くでリラックスできそうな場所と言えば、最寄り駅から四駅先にある中心駅で乗り継いで五駅ほど先にある温泉街しか思いつかない。
というより個人的にそこ以外にリラックスできるような場所がこの近辺にない。
レジャー施設とかは幾つもあるのだが、見たい映画なんてない、ゲームセンターに興味はない、スポーツはあまりやらない、美術品にも興味はない、動物園や遊園地だって別段好きという訳でもない。
言うならば娯楽関係にそこまで興味がないのだ。
全くないという訳でもなく、本は読むしゲームもするのだが、インターネット上やニュースでたびたび見かける廃人ゲーマーみたいなガチ勢ではなく、暇なときにゆっくりと進めていくような感じなのだ。
その為、少し前に買ったポケモンだって未だに全マップ制覇をしていない。
次回作が発売されるよりも前にクリアしたいところだが、そんな時間は無いので、どうしようかと思う。
俺はボーっと重要な事とくだらない事を考えながらスーツに着替える。
小学校の教員はいろいろな服装の人がいるが(無論、禁止されている服装もある)俺は基本的にスーツで過ごしている。
スーツに身を包むと気が引き締まるのだ。
着替えた後は戸締りをし、バッグにノートパソコン等必要な物を入れて家を出た。
いつものように、何気ない日の始まりである。
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俺はいつものように教壇に立ち、静かに言う。
「桃知、宿題はどうした?」
「ダンバル・・・というかメタグロスの厳選しててやってません!」
その言葉を聞いて、さすがの俺もやりきれなくなった。
何か大きな事情があれば仕方がない、と思えたがゲームに時間を割いて出来ていないのは違う。
それは免罪符にはならない。
「あのな、後々に回せば回すほどキツくなるのはお前だぞ?」
「うっ・・・・・・」
言葉を詰まらせる桃知。
それを見た早川がケラケラと笑いながら何気ない様子で言った。
「茜さんはポケモンが大好きですからねぇ。それだったら仕方がないでしょう。ね、はっさん?」
「はへっ、う、うん。そ、そそ、そう、だね・・・・・・」
暗視はオドオドしながら早川の言葉にそう答えた。
だが、その様子を見る限り同意したわけではなくいきなり話を振られた為、反射的に答えただけなのは確実であった。
「桃知、グラードンの種族値とゲンシカイキした際の種族値の変化は?」
「通常が、H一〇〇・A一五〇・B一四〇・C一〇〇・D九〇・S九〇の合計六七〇で、ゲンシカイキすることでAに三〇・Bに二〇・Cに五〇プラスされて合計七七〇です」
「そういった事を暗記できるなら少しはソレを勉強の方に割いてくれ」
俺が顔に手を当てて溜め息交じりにそう言うと、それを聞いていた早川がまたも何気ない様子で言う。
「茜さん。ダルマッカの種族値は?」
「H七〇・A九〇・B四五・C一五・D四五・S五〇の合計三一五でしょ?」
「桃知、なぜレートで使われることのないマイナーなポケモンの種族値をそこまで詳しく言えるんだ・・・・・・」
「これでも一応、全ポケモンの種族値とタイプとタイプ相性を記憶してるんだもん!」
「胸を張って堂々と宣言してるんじゃねえ!!」
さすがに怒鳴ってしまった。
今現在実装されているポケモンの種類は七二〇種類+メガシンカ&ゲンシカイキである。
その全てを記憶して暗記系の学習がロクに出来ていないというのがやりきれない気持ちになってくる。
俺がこの現実を前に取り繕う事無く
というかポケモンの話題で盛り上がっている。
「あのな、そう言った話題で盛り上がる事を悪いとは言わない。だけど、勉強だけはしっかりとやってくれ」
「先生。勉強とゲーム。社会に出てどっちが大切になると思っているんですか?」
「勉強だよ。何真剣な口調で言っているんだ」
そんなにゲームで生きていたかったらプロにでもなってみろ。
厳しい世界だけど。
そんなくだらない言葉が頭に浮かぶと同時に、頭の中に一つの案が浮かび上がってきた。
それを形付ける事が出来れば、もしかしたら桃知の成績にいい影響を与えるかもしれない。
俺は少し息を吐いて精神を落ち着かせる。
そして、
「来週から少し授業プログラム変更するから、今日明日は今まで通りに行くぞ」
と宣言した。
さて、土日のうちに頑張らないとな。
宣言してしまった以上やらないといけないので、俺は土日の予定(あってないようなもの)をどうするかにも思考を割くのだった。
余談ですが、物語の設定時間軸は2015年あたり。