「わあっ、凄い眺め……! 海岸が目の前じゃないですか!」
到着したホテルのカーテンを開くと、まばゆい青色が眼前に広がった。
ここは高級ホテルの最上階、そのスイートルームだ。一階丸々使った室内は信じられないほど広く、白で統一された調度品は高級感で溢れている。壁に掛けられた絵画は誰の作品か全く分からないけど、たぶんお高いのだろう。
「まだ朝なのに、泳ぎに来てる人いっぱいいますね。あっ、サーフィンやってます!」
海に来るのはあまり経験がないので思わずはしゃいでしまう。一方、彼は興味なさそうにミニバーを漁っている。置いてあるお酒も高そうだ。
眼下には既に砂浜で寝そべったり海に入って泳いでいる人たちがいた。老若男女問わず、水着で海を楽しんでいる。朝とはいえ真夏だ、とっくに日は上って肌に痛いくらいに照りつけている。いま海に飛び込めばさぞ気持ちいいだろう。
立地もホテル自体も最高と来れば、当然お高くつくはずだ。はず、というのは全部彼持ちだからである。
こういう関係になってから知ったけど、彼は土建屋の社長の一人息子、三代目だ。父からも祖父からもとっても可愛がられていてやりたい放題、将来を約束された人生イージーモードの人。女の子に手を出しまくりのチンピラなんてやってるのはお坊ちゃんの暇潰しというわけだ。間桐だって旧家だけど、それは魔術師としての話だしとっくに廃れている。少なくとも金銭面では彼の実家の足元にも及ばない。
今回の旅行、私も払いますと言ったけど結局一銭も出させて貰えなかった。本当に、宿泊費も移動費も食費も新調したこの服代も全て彼が出した。自由に使えとカードを預けられているので、なんならお金を貰っているくらいである。それは、自分で言うのもなんだけどそれだけ私のコトを気に入ってるということでもあるし、それ以上に、『お前は俺の管理下、支配下なんだ』って思い知らせる意味もあるのだろう。
……それは大成功だ。身体面だけじゃなく、社会面でも完全に圧倒されて。ますます、この人に服従するべきだって本能が認めている。身も心も気持ち良くしてくれて、更に何不自由ない暮らしをさせてくれるなら、もうこのオスでいいじゃないかと訴えてる。
でも、それは────
「…………っ、あ、ごめんなさい。ぼうっとしてました……それでどうします? さっそく海、行きますか?」
呼び掛けられて思考から戻った。
それなりに長旅だったとはいえ数時間電車に揺られていただけだ。体力は有り余ってる。すぐにでも泳げるだろう。
首を傾げる私に彼が近付いてきた。そのまま肩を抱かれ、上からキスを落とされた。
「む、ふ……っ♥️ ちゅっ、ちゅ♥️」
彼の唇を受け止める。
最初は形だけでも拒んでいたキスは、今では求められるがままに合わせるものになっていた。彼の胸板に両手を当て、つま先立ちして舌を絡める。ちゅぱちゅぱとしばらく舌を吸いあってから、口を離した。
「ぷはっ。ん……分かりました。準備しますね」
それじゃあ行こうぜ、と言われて頷く。
水着を持ち、彼に腕を引かれて部屋を出た。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
着替えて砂浜へ出ると、さっき上から見た以上の海水浴客が目に飛び込んできた。
子供連れが多いのかと思いきや、若いカップルも沢山いる。数百人は下らないだろう。みんな思い思いの水着姿でボールを投げて遊んだりサーフィンしたり、普通に泳いだり。解放感に溢れた真っ青な空の下で、まさに真夏という感じの光景が広がっていた。
(うぅ、やっぱり見られてる……)
前を往く彼の広い背中に隠れるように砂浜を歩く。
案の定、私は視線を集めてしまっていた。我ながら、こう……性的過ぎる格好になってしまっているからだろう。
彼が選んだ、布地の少ない紫のブラジリアンビキニ。金枠の刺繍が施されたそれはかろうじて乳首は隠しているものの、おっぱいの殆んどを覆えていない。上乳も横乳も下乳も丸見えだ。彼とのセックスで私の身体はメスとして開花してしまった結果おっぱいが育ち続け、今ではバスト97センチ。そのうち100の大台に乗りかねないそれが歩くたびにたゆんたゆんと揺れている。下もエグい角度のビキニで鼠径部が見えていた。後ろから見たらTバックさながらの状態なのではなかろうか。
男性は欲望、女性は嫉妬と感嘆の眼差しを向けてくるのがよく判る。まず私が注目され、次に私を連れている男の方へ。彼を見た人たちが驚くのが判る。それも仕方ないだろう、髪を脱色しピアスや金物をジャラジャラと着け、刺青もしたチャラいチンピラ風の男。自分で言うのもなんだけど、私のパートナーとしては不釣り合いに映るはずだ。
「あっ、あの、すごく見られてるんですけど……。ええ!? 私が下品だからって、貴方がこの水着選んだんじゃないですかっ」
胸を抱えて彼を睨むけれど、へらへらと笑われるだけで全くダメージは与えられていなさそうだ。
砂浜には予めパラソルや日焼け用のベンチが設営されているコーナーがあった。主にカップルや一人客が肌を焼いたり、いちゃついたりしている。二人でその中のひとつの傘の元へ腰を下ろす。強烈な日差しから抜けて、ほっと一息ついた。
ここならとりあえず注目してくる人も少なそうだ。うぅん、とひと伸びしている私の隣で、彼が日焼け止めクリームを取り出した。
……うーむ。展開が予想できる。
「あの……貴方、実は肌が弱くて自分に塗るとか……しないですよね、私に塗るんですよね分かってましたっ」
いや、俺は肌焼くつもりだぞ? と言いつつ手にクリームをたっぷり塗った彼に押し倒されてしまう。
思った通り、彼は私にクリームを塗るつもりのようだった。うつ伏せに倒され、大きく開いた背中に手のひらが押し付けられる。
首回りに塗られ、肩甲骨の辺りへ。ビキニの紐を引っ張って浮かせ、その下にも。ごつごつした大きい手のひらを這わせられるとマッサージみたいでちょっと気持ち良い。
上半身にはほぼクリームが広げられた。なら当然、次は下半身なわけで。
「っ…………♥️ ちょっと、手つきイヤらしいです……♥️」
水着が間に挟まっただけの、ほぼ飛び出ちゃってるお尻。おっぱいと同じく90オーバーの絶賛成長中ヒップ。ビキニを揉みくちゃにされながらその尻たぶへ日焼け止めを塗られる。……あ、向こうのベンチに寝そべってるお姉さんに赤い顔で見られてる。そりゃそうだ、たまたま塗ってる最中に手が当たっちゃった、レベルの触り方じゃないもの。気恥ずかしくて顔を背けてしまう。
「…………ん」
その背けた視線の先に、一組のカップルがいた。
若いカップルで、あまり柄はよろしくない。まるで彼みたいなチンピラだかヤンキーだか言われるようなたぐいの男女。
男の方はいい。私が気になったのは女の方だった。髪を派手に染め、海なのに厚い化粧。肌はこんがり焼かれ、耳だけじゃなく鼻や唇にもピアスが光っている。
私の身体にクリームを塗っている彼を横目で盗み見る。と、目が合ってしまった。どうしたと言われ、口を開く。
「ほら、あそこのカップル。女の子の方、髪を染めたり肌を焼いたりしてるじゃないですか」
彼がそちらを見て、それで? と言ってくる。
「いや、何て言うか……私もああした方がいいのかなって。……貴方も、ああいう感じの女の子の方が好みなんじゃないですか?」
彼の外見は、思いっきりチンピラ風だ。たぶん好みだってそうだろう。だから彼も、本当は私に染髪させたり日焼けさせたりしたいんじゃないかと思った。
けれど、そんな私の言葉を彼は笑い飛ばす。
────バカだな、お前。俺はそのまんまの桜が欲しいんだ。白い肌と紫の髪がそそるんだよ。余計な事はしなくていい。
「……………………はあ、そうですか」
じゃ別にいいです、と傾けた顔を戻す。彼は気にした様子もなくまた好き勝手に私の身体へ手のひらを滑らせる。再びされるがままになる私。
…………いや、別に照れてなんかないですよ?
「ん、う……。もう、随分念入りに塗りますね……」
彼が手のひらへクリームを補充する。ひとしきりお尻を触って満足したのか、手のひらがふくらはぎや太ももに移動した。そちらも塗って、背中側は完了だ。
「えっと、表は自分で…………とは行かないですよね」
否定されておとなしく仰向けになる。
……いや、こうして見ると我ながら大迫力の胸だ。仰向けなのに型崩れしなくて、見下ろしても上乳に邪魔されて自分の身体が全然見えない。衛宮邸に通って育った私の身体だけど、以前はここまでじゃなかった。彼とのセックス漬けの日々が私の女性ホルモンを倍増させてしまったのがよく判る。
首筋や肩に手早くクリームを塗り込まれる。上乳をぬるぬるされて、おっぱいに来る──と思ったらそこは飛ばし、お腹の方へ。ヘソらへん、腰回り、足へと塗って、彼は手を離した。
「え、何……終わりですか? ……周りに人が? 意外と気にするんですね、そういうの」
この人らしくないな……なんて思って。ふと彼を見て気付いてしまった。
彼の、短パン型の水着。そこはふっくらと膨らみ始めていた。彼の立派なモノのシルエットが浮かんでしまっている。
つまりこれ以上私に、それもおっぱいなんかに触れたら本気で勃起してしまって、周囲の人の笑い者になってしまうから────という訳である。
「………………くす」
笑みが溢れる。
いつもは見せない彼の弱味というか、可愛らしさというか。それに少しいたずら心が浮かんでしまった。
身を起こそうとした彼の手を引っ張る。バランスを崩した彼が、膝立ちで私の上に覆い被さった。
「いつも私を虐めるクセに、自分が恥をかきそうになったら逃げちゃうんですか? ヒドい人ですね……ほら。ちゃんとおっぱいも塗ってくれません?」
目を細めて言ってみる。
お前なあ、と困った顔の彼。それにまた調子に乗ってしまう。
「ふうん……イヤなんですね。
どうしても駄目って言うなら……そうだ。それこそ、あそこのお兄さんに塗って貰っちゃおうかなあ?」
さっきのチンピラカップルに視線を飛ばす。
女の方は海に行ったか屋台にでも行ったか、今は男一人だった。まあ倫理観も何もなさそうな相手である、私が誘えば喜んで身体をまさぐってきそうだ。
クリームのチューブを掴んで身を起こす。彼を押し退けるようにして、
「あの、退いてくれます? あの人を誘いに行きますから。『終わったら』ちゃんとホテルに戻りますから安心してください。まあ、何時間か掛かっちゃいそうですけど────」
瞬間。がっちりと肩を捕まれ、砂浜に押し倒された。
見上げる視界の中、彼と目が合う。じゃれ合いと分かりつつも、プライドと独占欲を刺激されたという顔。
私からクリームを取り上げた彼が自分の手のひらへと塗る。そして遠慮なく、ビキニとおっぱいの間へ手のひらを捩じ込んだ。
「あッ……♥️ も、もう、いきなり……っ♥️」
ぬぷり、たぷん。彼の太い指が私の乳房に触れる。手のひらを開いて絞るように揉み込まれた。ビキニがたわんで桃色の乳輪が覗いてしまう。
まるで掌紋を刻み付けるような大胆なおっぱい揉み。日焼け止めを塗るなんて建前は放り捨てて、私のおっぱいの感触をじっくり確かめてる。
「くふっ♥️やだ、乳首こりこりしちゃ♥️」
指先で乳首を挟み、転がされる。声が漏れてしまいそうで人差し指を噛んで耐える、と近くにいた高校生くらいのカップルが食い入るようにこっちを見ているのに気付いた。ごめんね、と笑いかけると慌てて目を逸らされる。他にもこっちを盗み見てる人──ほぼ男性だ──がちらほらといる。いやほんと、衆人環視の中でこんなコトをしてしまい誠に申し訳ない思いです。
鷲掴みにされたおっぱいが日焼け止めでぬるぬるしてる。もう全面に塗り広げられただろう。ふう、ふうという荒い息が頬にかかる。彼の水着の前はぱんぱんになってしまっていた。いつもならとっくにハメられているだろうけど、流石にここでは無理だ。これでは立ち上がることも出来ないだろう。いつまでも揉んでいたら状況が変わらないので、彼がしぶしぶ手を離した。
「ん……ありがとうございます、塗ってくれて。ふふ、怒らないでください。さっきのは冗談ですってば……それじゃ、おちんぽちょっと休憩させなきゃいけませんね」
人妻のおっぱい揉みでフル勃起してしまったおちんぽ。抜くコトも出来ない、移動するコトも出来ないのでこの場で座って萎えるまで待つしかないだろう。……少し可哀想だけど、仕方ないよね。
「あはっ、行きますよー! それっ」
それから数時間後。彼と私は海へ入っていた。
今はビーチボールをバレーのように投げている最中だ。時に海へ倒れ込み、時に水を掛け合って直射日光で暖まった身体の熱を逃がしながら遊びに興じる。疲れたらまたパラソルの下に戻って休憩。お互いのコト──好きな食べ物とか、初恋はどうだったとか、学生時代の思い出とか──を思うままに話して時間を潰したら、また海に繰り出す。
それは端から見たらどこにでもいるカップルに見えただろう。親密になり、相手をもっと知るための触れ合いに映るだろう。
でも実際は違う。私は人妻で。彼は私を襲って堕とした人でなしの間男だ。
だからこれは、改めて再確認する工程と言えた。身体の相性は最高中の最高、人類で他にいないんじゃないかっていうベストパートナー。互いの出方如何では子どもも作っちゃうかも、という孕ませアリの関係。なら、心の方はどうなのか? 気は合うのか? というコトだ。
結果は、
────桜。桜? オイ、何をボーッとしてこっちを見てんだよ。
「あ……い、いえ。何でもないです……♥️」
…………結果は。率直に言えば、彼と私の相性の良さをナメていた、というコトに尽きる。
彼の横顔から目が離せない。
彼の学生時代の話を聞いて、同じ高校に居たかったななんて思う。
ちょっとイケメンな海水浴客を眺めてたら怒られて、子どもじみた独占欲に胸がキュンキュンしてしまう。
それが本当に心まで運命の相手だったのか、あるいは早々にべた惚れしていた身体に引きずられてそういう目で見てしまっているのかは分からない。確かなのは、それこそ先輩へ想っていたのと同じくらいに、彼を想ってしまっているというコトだった。
(まずい、まずいなあ……)
彼から投げられたボールを受け取りながらため息をつく。
甘いような、憂鬱なような感情。自分でも信じられない。あの日、帰る場所を失い雨に打たれながら公園で立ち尽くす私を、先輩が抱き締めてくれた時。永遠だと思った。永劫この人だけを愛するし、愛せないと思った、のに。
(まさか、おちんぽ一本で引っくり返されちゃうなんて)
ちょっと相性バッチリだったペニスで膣を擦られ子宮を小突かれただけで、すっかりめろめろにされちゃうなんて。流石に自分の浅ましさに嫌悪感を抱く。
でも同時に、それで良かったじゃない、と本音の部分が囁くのだ。経緯はどうあれ、そのおかげで彼との快楽を手にするコトが出来たんだから結果的にはそれで良かったじゃない──と。
(いや、良くないから。私、先輩の奥さんなんだから。……駄目駄目、先輩の顔を思い出そう)
ボールを抱えながらぼうっと先輩を思い出そうとする私。
炎天下の中、若干鈍い頭で意識を記憶に飛ばす。腰まで海に浸かり、波に揺られているせいで思考が纏まらない。……だからだろうか、彼が近付いているのに気がつかなかった。
(先輩、今何してるかな。そうだ、帰ったら今度先輩とプールにでも行こう。冬木にもあったよね、プールとかスポーツセンターがくっついてるレジャー施設。あそこに二人で────えっ)
「ん、んむぅ……っ!? ぷぁ、むちゅちゅっ……♥️ あぅ、ちょっといきなりっ……♥️」
突然。目の前まで来ていた彼に顎を捕まれて、唇を奪われていた。
他人が見ているのも構わず唇を舐められる。不意打ちに身体が固まってしまっているうえに、両手がボールで塞がっていてどうすることも出来ない。ただ立ち尽くし、ちゅぱちゅぱと口を吸われっぱなしになる。
丁寧に舌を舐められた後、唾液の糸を引いてキスが終わった。こんな時もセクハラを忘れていない彼は、ちゃっかり水面下で私のお尻に触っていた。
「な、なんですかぁっ……♥️ ぼ、ボーッとしてるから? 意味分かりませんっ、ほらみんなに見られてるじゃないですか、もうっ」
ぽこん、とボールをぶつける。唇を拭うと燃えるように熱くなっていた。確実にこの暑さだけのせいじゃない。
彼が悪い悪いと笑う。反省してください、とそっぽを向くと腰を抱かれて小さく悲鳴をあげてしまう。頭一つ分高い視点からニヤニヤと見下ろされて、髪に鼻をうずめられて。ちょっと離れてください、と言いつつも心臓がばくんばくんと高鳴っているのを隠せない。
休憩するか、と言われて、彼の腕に自分の腕を絡ませてついていく。
思い出そうとしていた夫の顔は、いつの間にか霧散して脳裏から消えていた。
直接のエロも良いけど、ヒロインが間男とイチャイチャするのがNTR感あって好きです。