※この作品はR-18です。

プリズマ☆エルヴァ 第二部 並行世界篇   作:炭団

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59、それぞれの道Ⅱ

 唐突に目が覚めた。何だと思い、辺りを見渡すといつもの部屋? しかし随分と天井が近い。というか背中が当たるんじゃが? 

 むむむ……。何とか動くとくりんと下向きになった。ありゃ、エルマが机に突っ伏して寝とる。

 ああ、やっと理解した。実験に成功したんじゃ。儂は天井付近を飛んどったんじゃな。しかし今までとは全然違う感覚に戸惑うの。

 四苦八苦してようやっと姿見の前まで行けば、そこには真ん丸な中に正十芒星がキマる儂。

 ククク……。マジカル☆ゾウケン爆誕じゃ! 

 しかし……これってマスターが必要なのかの? 

 

『エルマ、エルマ。ほれ、起きんかエルマ』

「う~ん……」

『ベッドで寝んと疲れが取れんぞ? ほれ、起きんか』

 

 この羽根は確か手の代わりに使えたんじゃったな。ほれ。何じゃ? 体というか柄が伸びて……? 

 

「ギャー! な、何!? 目が! 目が痛い!」

 

 あ、あ、何で儂は目潰しなぞ? 

 

『すまんかった! 起こそうとしただけなんじゃ!』

「え? もしかしてゾウケン君?」

『応よ。マジカル☆ゾウケンじゃ』

「あ~、やっと視界が戻った。あ、本当だ。おはよう、どう調子は?」

『おう、おはようさん。慣れるまで暇が掛かりそうじゃが、今のところ不都合は無いな』

「あ~、でもあれか。羽を手の代わりに使おうとしてサミングしちゃった感じ?」

『そうなんじゃよ。これって予想外な機能が働いたり、行動を取る場合があるのかの?』

「あるだろうね。何せ人工精霊を人の魂に置き換えたんだから。理論上は同じ筈だけど、細かな違いが行動に出る可能性はあるね。けれど思考は問題ないみたいで良かったわ。これでバーサーカーだったら、ね?」

『そんなのはイヤじゃ。まぁ、おいおいと慣れるしかなかろうな』

「そうだね」

『取り敢えず礼を言うぞい。ありがとうな、エルマ』

「いえいえ」

 

 それでエルマとしばし話したんじゃが、儂にマスターは要らんらしい。ま、気分的にはエルマがマスターじゃ。

 ステッキの形態になって握って貰うと、まるでユスティーツァに握られたかのような。こりゃ、ええの。

 しかし鏡に映る儂は、円の内側や羽の部分が古代紫で、十芒星の部分や円の外部分が山吹色。柄の部分は葡萄染め(えびぞめ)なんじゃ。

 渋過ぎんかの? 何というか、ふぁんしぃさが足りんと思うのじゃが。ま、エルマが決めたのなら文句は無いがの。

 

「ゾウケン君にはエーテル出力機能があるんだよ。できる?」

『どれどれ。むぅ……お、これじゃな?』

 

 ほわわんと白い煙のようなものが出たんじゃ。

 

「それを、そうだなぁ。若かった頃の自分をイメージしてみて」

『応よ』

 

 すると、あっちの世界で留学しとった慎二みたいな子供の姿が現れた。おう、確かに儂の子供の頃じゃ。

 

「若過ぎ。でも、可愛いな」

『儂、若い頃は美少年として有名だったんじゃぞ?』

「モテた?」

『おう、モテモテじゃったわ』

「じゃ、このまま食堂に行こうか」

『エルマや、眠らんで良いのか?』

「ありがと。大丈夫。それに時計。もう朝の6時半だよ」

『すまんのぅ。徹夜をさせてしもうて』

 

 そうしてエルマはルビーを再起動して、三人で食堂に向かったんじゃ。

 

『ルビーちゃんにいつの間にかお仲間が。あなたは誰ですか?』

『儂はマジカル☆ゾウケンじゃ。ゾウケン君と呼んでくれ』

『ゾウケン君ですか。私はルビーちゃんです!』

『おう、よろしく頼むぞい。でじゃ、身体の動かし方とか、これが持つ機能が良くわからんので教えて欲しいんじゃ』

『それならあれですよ、接続してデータを送ります』

 

 そしてルビーは……エルマ、ここの解説を頼む……。

 

 えっと。ルビーはユニバーサル・シリアル・バスでゾウケン君と繋がった。これ2.0じゃなく、5.0とか6.0とか未来のバスパワーを得てるよね? だって廊下を歩いている間に終わったもの。

 

「どう? ゾウケン君?」

『おう、わかったぞい。なるほどのう……あれがこうなるのか。エルマ、これで不具合無しじゃ』

 

 すると今までホログラムみたいだった、ショタ・ゾウケンちゃんが、ヤング・ゾウケン君に変わった。服装もマリーンルックに半ズボンだったのが、白いミドル丈のタキシードにスカーフへと変化した。

 一見アスコットタイなんだけど、こっちは長方形のスカーフでフォーマルとカジュアルの違いがある。少し触ると衣類の質感が本物同然だ。凄い。

 

『おお! この立体映像は物を掴めるぞ!?』

「大ボケ~。エーテルなんだから、サーヴァントと同じでしょう?」

『ああ、そうか。そうなるんじゃな』

 

 食堂に行けば褐色の蟲使いと、白い英霊がおった。どちらもユスティーツァの末じゃが数奇な運命を歩んどるな。

 一通り挨拶を交わした後、儂は契約を結ぶ事と相成った。要は彼女達とともに並行世界を巡り、人々を救ける事に協力するんじゃ。普段の生活では彼女達を助け、迷惑を掛けない。そんな内容じゃ。

 人から蟲へ、蟲から礼装へ。とっくの昔に人である事を棄てた儂じゃからこそ精神面に問題なかろうと、この計画が練られたんじゃ。

 そしてこの実験に参加する事で儂は二つの物を手に入れた。一つはほぼ永遠の命。後の一つは魔法に限りなく近い能力。

 もはや儂に妄執はない。悪しき心も、悪に堕する脆弱な精神もない。悪とは結局弱さなんじゃ。なら儂は、己の弱さに溺れておる並行世界の儂自身を止めねばならぬ。それがこの実験に志願した理由じゃ。

 何よりむさい蟲どもと腐り果てるより、めんこいおなごとおった方が楽しいじゃろ? 

 

「ゾウケン君計画は取り敢えず成功ですね。後は実績を残すのみですよ」

「マキリを救って、更に利用するって。エルマは天才ね」

 

 儂もそう思うぞ。朝食後そのエルヴァがこう言った。

 

「それでルビー。私達が行っている事は説明した通りです。あなたはどうしますか?」

『面白そうですね? ルビーちゃんも参加します』

「ありがとうございます。しかし、問題はマスターですねぇ。向いてそうな子は皆んなルビーを持っていますし」

『本当に私が他に二人も?』

「ええ。一人はお向かいさん。もう一人は今ロシアです。どうします?」

『ルビーちゃんとしては可憐なJS美少女が良いですが、JKなエルマさんでも何ら問題ありません』

 

 じゃろうなぁ。コヤツがエルマを気に入っとるのは最初からわかっとる事じゃ。そうエルマが改良しとったんじゃから。

 それに、より面白そうな方に行くというコヤツの嗜好と、エルマの立ち位置は合致しとる。誰がどう見てもエルマがエルヴァに一方ならぬ思いを抱いておるのは明白じゃからの。

 ならばと着せ替え着飾らせ、当たって砕けてこいと送り出し、無様に砕ける様を見たいとの欲が働く。じゃがそうは問屋がおろさん。そもそもエルマは儂の恩人じゃぞ? 儂もこのルビー攻略に加担しとるんじゃよ。

 そういう思考に固まるよう、お前さんは踊らされとるんじゃ。何よりエルマは分別のある子じゃ。エルヴァだけを見ておるワケではない。ここがわからんとは。人工精霊の限界かの。

 ま、ともあれエルマはルビーと契約した。転身姿は可憐の一言じゃ。

 白い衣装には腰に白いリボンがあり、小さなリボンがあちこちに散りばめられておる。スカートの縁と襟ぐりには金色の帯が入っとるんじゃな。そして背中には天使のような羽。マジカル☆エルマ降臨じゃ。

 ええのう。何じゃか、儂とユスティーツァの孫を見とるような気分じゃ。

 

 エルマの艶姿を見たエルヴァとイリヤにセイバーはアルバイトに出て行った。

 

『エルマや。お前さん、今日はどうするんじゃ?』

「今日はお姉様方に代わって掃除と洗濯、そして蟲の餌やりですね」

『エルヴァの部屋の押し入れじゃろう? 前に一度見ておる。そちらは儂がやっておくから、エルマは掃除と洗濯を済ませればええじゃろう』

「じゃあ、お願いするね」

 

 二手に分かれ、儂は餌やりをしにエルヴァの部屋に向かった。このエーテル出力はルビーも持っとる筈じゃ。そもそも儂の能力のオリジナルがルビーなのじゃから。

 が、とても掃除ができるとは思えん奴じゃからなぁ。それとも長い間子供達とおる方の杖はできるんじゃろうか? 

 エルヴァの部屋は整理整頓が行き届いてとても綺麗じゃ。教科書など必要なもの以外は、本箱も棚もくろぅぜっとなる押入れに押し込んどるのも部屋を広く見せるポイントじゃ。

 対するエルマの部屋は物が多いし、棚も満杯なのじゃ。几帳面な子ではあるが、こういう工夫を見習って欲しいのぅ。

 さて巣箱じゃが、ほぼ正方の立方体で、一辺が三尺というところか。蓋を開けると七厘から一寸くらいの幼虫が一斉にこちらを見上げおる。

 この段階でここまで知能があるのが素晴らしい。成虫は庭の木や森の樹で自主的に生きておるのも面白い。卵を産む時やエルヴァからの司令があれば駆けつけるという訳じゃ。

 これはエルヴァの蟲が蛾のようにしか見えんから可能な事だ。またエルヴァはコヤツらに視覚や聴覚、触覚といった感覚を得るためのアンテナ以上の性能を求めておらん。

 高い攻撃性を求めておった儂とは正反対じゃ。ちなみに元の世界での儂の蟲は雁夜に全部譲った。育てるも改良するも廃棄するのも任せると。まぁ、あ奴には何もできんじゃろうが。

 儂は餌皿を取り出し洗面所で洗い、食堂で貰ってあった野菜屑を乗せ、エルヴァの机の引き出しに入っておるアンプルの中身を餌に振り掛けた。

 たったこれだけ。これだけで命令に絶対服従じゃ。見事なものじゃな。アンプルの中身はエルヴァの血と魔術的な措置を行った栄養剤らしい。以前は血液だけだったらしいが、今はこの方法に代わったそうじゃ。

 びっくりなのは巣箱の隅にキッチンペーパーを敷いたトレイがあるんじゃが、コヤツらはそこでしか排泄をせんのじゃ。これは昆虫の生態としてあり得んじゃろう? どれだけ知能が高いんじゃ。

 ところで知っとるかの? 幻想種のほとんどは自然発生したのでなく、時の魔術師が品種改良したものだという説があるんじゃ。

 そんな中で長命を得た個体や、世代交代して人々に広く知られるようになったものが現代で言うところの幻想種じゃと。

 この説の裏付けとなるのは全て絶滅しとるところにある。そうではなく、神秘の薄まりを察して世界の裏側に行ったのじゃという伝承はある。

 じゃが、人の手が入った事で進化の袋小路に最初からあったとの解釈を強く推す者も多いんじゃ。

 そこで儂は思うのじゃ。妖精というものがあるじゃろう? あれだけは今も残っておって、特定の波長を見る目があれば誰もが視認できるんじゃ。なので魔術師で妖精の存在を疑う者はおらん。しかし、その生態は今も謎なんじゃよ。

 じゃが、エルヴァの蟲を見ておってふと思ったのじゃ。あれは大昔の魔術師が死んで野生化した使い魔の成れの果てなのかと。

 何故ならエルヴァの蟲は袋小路に入っておらんからじゃ。そして妖精も然りじゃ。儂のは袋小路に入っておって、あれ以上どうしようも無かった。エルヴァにはつくずく恐れ入るわい。

 ところで儂はハンターでは無いので詳しくは知らんが、こういう打ち捨てられた使い魔狩りがあるのは知っておる。犬猫に対する保健所のようなものじゃが、ペット問題と同じく、昔から主が死んだ後の使い魔の問題はあったんじゃ。

 雁夜にもそこはきちんと話してあった。殺すための薬も用意してやったし、埋める場所も教えてあった。儂の蟲は魔力の貯蔵庫でもあった。なので庭の薬草畑に死骸を埋めろと話してあったんじゃ。

 そこでじゃ。そこで話を戻すが、中には幻想種に近い生き物を捕らえたハンターもおると思うんじゃ。そしてもしそういうハンターと話ができたのなら……。

 どうじゃ? そういう生態を研究するのは面白そうに思わんか? エーデルフェルトの娘と永人の末が戻ったら相談してみようと思うんじゃ。儂も、らいふわぁくというのが欲しいのじゃよ。

 

 

 

「おはよう~! イリヤ、クロエ!」

「おはよう、タツ子」

「おはよう~」

 

 バスを降りて校門に向かうと校舎の窓からタツ子が手を振っていた。暑いのに元気だなぁ。

 いつもの5年1組の教室で皆んなに挨拶する。

 

「タツ子、どうしたの? 元気いっぱいだね?」

「イリヤ、お前ぇの姉ちゃん最高だ! 先週と今週の売上げが過去最高だったってオヤジが大騒ぎだ」

「ああ、それで。なるほど~」

「バイト代を、はずんであげてよ?」

「クロエ、そこは考えてるってオフクロも言ってたゼ?」

 

 それで皆んながワラワラ集まってきた。

 

「なんか兄ちゃんも、もう一人の姉ちゃんも凄いらしいけど、お前ん家はどんな家だ?」

「お兄ちゃん以外は従姉妹だから。ドイツの家が凄いんだと思うよ」

「うん。育ちの違いだね。私らもお姉ちゃんを見習ってるのよ」

「クロエは前からイリヤよりお姉ちゃんっぽかったけど、最近イリヤも成長したよな?」

「言えてるな。お姉さんの影響だろう。あの人は凄いよ。持ってるアイデアも素晴らしいし」

「ウチの姉ちゃんも、あの姉ちゃんには勝てないって言ってたぞ?」

 

 ナナキのお姉さんが? 

 

(ナナキのお姉ちゃんって、お兄ちゃんに告白する勇気もないのにちょっかい出すから。お姉ちゃんに睨まれてるのよ)

 

 クロお姉ちゃんの耳打ちにビックリだ! そんな情報知らないよ? 

 

(お姉ちゃんは桜派だからねぇ)

 

 そうだよね。そうなるとお兄ちゃんに寄って来る女の人は皆んな敵になっちゃうのか……。

 

(それと、お兄ちゃんと桜はもうキスする関係だから)

 

「ウ、ウソッ!」

「どうしたイリヤ? 急に大声出して?」

「どうしたのイリヤちゃん?」

「う、ううん……。なんでもないよ」

 

 なんでもない事はないけど、思わず私はクロお姉ちゃんを睨んじゃった。横を向いて素知らぬ顔をするクロお姉ちゃん。

 確かにね……もう、高校生だもんね。何よりクロお姉ちゃんも私も、お姉ちゃんとは何度もキスしている。挨拶の延長だけれど、好きな人とのキスはあったかい気持ちになるもんね。

 チラッと見たらクロお姉ちゃんが目をつむって唇を突き出していた。そういえば私ってクロお姉ちゃんとあんまりしていないんだよね。あっちのクロエお姉ちゃんとイリヤはしょっちゅうしていたけれど。

 クロお姉ちゃん、帰ったらしてあげようか? そんな意味を込めてウィンクしたら、顔が赤くなった。クロお姉ちゃんも意外に純情なんだよね。だから大好きなんだけど。

 

「なぁ、イリヤ? ウチの姉貴と交換してくれよ」

「それは絶対ダメ!」

 

 お姉ちゃんもお兄ちゃんもイリヤさんも、暑い中ご苦労さまだ。21日に何か贈ってあげたい。それも誕生日の違う人も楽しめるカタチで。何かないかなぁ。

 

「そりゃあれよ。食べ物よ、イリヤ」

 

 放課後、帰りのバスの中で私はクロお姉ちゃんと相談していた。

 

「食べ物? お料理って事?」

「うん。私らの誕生日の次の日でしょう? もしかしたらアルバイトが入っていたり、試合があったりするかもだから晩ご飯だけで良いと思うのよ。そこで前みたいなカレーよ。美遊も誘って三人で2種類くらいカレーを作ってカレー・パーティーにすれば、お兄ちゃんにもエルマお姉ちゃんにも楽しんでもらえるでしょう? 何より、こういうイベントの材料費くらいなら、セラも目くじらを立てないし、ママも賛成するわ」

 

 なるほど。クロお姉ちゃんはさすがだ。賢い。カレーはあれから何度か作っているし、意外と材料費も安いってわかった。何より一緒に暮らしているお兄ちゃんはともかく、お姉ちゃん達とママが私達の今の腕前を知らないのだ。これは良いチャンスだ。

 

「そうだね、そうしよう。それで食後にデザートでアイスか何かを出せば」

「ああ、デザートね。それはナイスよ、イリヤ。あのさ、かき氷機ってあったっけ?」

「ある! リズお姉ちゃんが持ってるよ。それでオリジナル・シロップとかにも詳しい」

「決まりだね。後はトッピングのフルーツを買って」

「良いね、それだわ!」

 

 私達は家に帰ると、ママ達にこの計画を話した。

 

「二人ともナイスアイデアよ。かき氷くらいならママもお手伝いできるしね」

 

 ママ、自分でそういう事を言うの? 

 

「そういう事でしたら、今日から21日までカレーを献立から外しますね。その方が士郎さんも楽しめるでしょう」

「そうだね」

「ん~と、イリヤ?」

「何? リズお姉ちゃん?」

「かき氷機を買い換えないと刃が欠けてる」

「え~っ!」

「ママが出すから。リズ、良いのを買って来て?」

「うん、わかった。ママさん、お金。今から出る」

 

 そうしてママからお金を預かったリズお姉ちゃんが、新都までかき氷機を買いに行った。カレーやかき氷の材料やトッピングは、セラが前日に買って来たり製氷してくれる事に決まった。

 

「この案件の難しいところはわかる、イリヤ?」

 

 部屋で着替えている時にクロお姉ちゃんがそんな事を言った。

 

「わかるよ。いつも相談に乗ってくれる人に相談できないところ」

「その通り。そして凛もルヴィアも帰ってくるのは今週末か来週頭。そこでうっかりイリヤお姉ちゃんに話せば……ね?」

「う~ん……。大人なのに私より天然なところがあるからなぁ」

「そこよ。優しくて良い人だし、私は好きよ。でもこういう場合はね?」

「こうやって私達も大人になるんだねぇ」

 

 お菓子をどっさり買って来てくれるとても優しいお姉ちゃん。なんだけど、時々秘密が秘密にできなかったり、空気が読めない場合がある。私も好きなお姉ちゃんなんだけれどね。

 

「そういう事よ。妹の成長を促してくれる人だわ」

「だね」

「そこでさ、この場合はお兄ちゃんに頼るべきだと思うの」

「お兄ちゃんに? なんで?」

「すぐに返事をしないで少し考える。考えなしに返事をするのは、あなたの悪いクセよ?」

「う、うん……」

「ヒント。給食がカレーでした。なのに家に帰ってもカレー」

「あ!」

 

 上達した腕前を見て欲しいと、そっちに気がいっていて忘れていた。だからお兄ちゃんか。なるほど。三人は学年こそ違えど、同じ弓道部だ。話すチャンスはたくさんあるだろう。

 要はお兄ちゃんの頑張りで、エルヴァお姉ちゃんやエルマお姉ちゃんに、誕生日までカレーやかき氷を食べないように仕向けて欲しいのだ。ちょっとお兄ちゃんにはハードルが高いけれど。

 

「わかった? ま、私もセラの言葉で気付いたんだけどね。それでね、お誕生日おめでとうの言葉とお手紙、こちらをサプライズにして、カレー・パーティはお食事会を装うの。当然、お姉ちゃんなら見破るだろうけど、だからといって雰囲気を壊す発言をする人じゃないわ。私達は私達なりに、無理をしないでパーティを開くの。お姉ちゃんやエルマお姉ちゃんだけでなく、お兄ちゃん達にも気持ちよく楽しんでもらえれば良いんだから」

「なるほどだね。全員が楽しめてこそだもんね?」

「そうそう。じゃ、降りようか。セラがお昼ご飯を用意してくれてるから」

「うん」

 

 この日、私とクロお姉ちゃんが着ていたのは、セーラー襟が付いたボーダーなサマーニットだった。一枚は白とピンクのボーダーで襟が白、もう一枚は白とエメラルド・グリーンのボーダーでこれも襟が白。両方ともボーダーと同じ色のラインが入っている。

 それを去年の夏にママが買ってくれたのだ。替えのつもりだたっとママは言うだろうけど、クローゼットの中には時々こうやって同じもので色違いの服があったりする。クロお姉ちゃんには言えないけれど、今にして思えばママはエルヴァの事を思って揃えたんだろうなぁ。

 そのグリーンの方をクロお姉ちゃんが着ている。スカートは二人とも白いのを選んだ。

 

「あなたのワードローブにはこういうお揃いがたまにあるよね? きっとエルヴァのなんだろうなぁ」

「クロお姉ちゃん……」

「そんな顔しないの。私達はもう三人姉妹でしょう?」

 

 思わず抱きついちゃった。

 

 

 儂は今、とてつもなく狭い場所でじっと息を殺しとる。というか出れんのだ。役目も終わったのでエーテルの体は消しておった。もう一度出せば、この窮地から脱出するのは容易い。しかし、今あれを出力してエルマに気付かれれば儂は破滅する。

 どういう事かと言うと蟲の世話をやっとる時に、エルマは部屋の掃除と片付けをしておったらしいんじゃ。雑然としておったのがかなり綺麗になっとったからの。そして餌やりを終えた儂はエルマの部屋に戻り、無駄な魔力が勿体無いとエーテルを消したんじゃ。その後どうやら儂は居眠りをして漂い、棚の奥に落ちたらしい。

 問題は目が覚めたら、喘ぎ声が聞こえた事じゃ。いや、年頃の娘と同室じゃからな。電灯を消した後に、軽く慰めとる場合があったのは知っとった。

 しかしそこは大人じゃ。儂は素知らぬ振りをしておった。ところがじゃ。やはり儂がおる事で相当抑えておったんじゃなぁ。

 この時は素っ裸で本腰を入れておったのじゃ。そして洗濯カゴから持って来たのかのぅ……。

 エルヴァの下着や道着や制服を嗅いだり抱いたり、着込んだり、挙句の果てに股間に擦り込んだり、まぁ嬌態というか痴態を演じておった。『お姉様、イクッ』とか5~6回は言うとったな。

 まぁ、ええんじゃわ。それは。それも若さと健康の証じゃ。間が悪かっただけの事じゃし、儂も若い頃は好き放題やっておった。問題はそれを見てというか、聞いて柄がカチコチに伸びた事なんじゃ。これってそういう事なのか? 

 かれこれ五百年も生きとる儂は、あれが役目を終えたから蟲に身体を替えたんじゃ。つまりこの三百年余り、カチコチになる事なんて無かったんじゃよ。そもそもそこは排泄用に造った蟲の管じゃったしな。

 ともあれ伸びた柄が壁を押したのか、羽が棚と壁に引っ掛かっての。2時間は出れんでおるんじゃ。そして頼みの綱のエルマは徹夜が響いたのかすっぽんぽんで寝ておるし。どうすれば良いんじゃ? 

 

「きゃー!!」

 

 な、何じゃ? む、儂はまた眠っておったのか? 

 

「もう4時じゃない! 早くお洗濯しないと染みが残っちゃう! 早くしないとお姉様が帰って来る!」

 

 そうしてドタバタとエルマは服を着て出て行ってしもうた。こうして儂は落ち着いてエーテルを出し、その体で自分を引っ張り出せたんじゃ。

 はぁ~、危機一髪じゃったわ。ユスティーツァや、これも理想を忘れた罰なんかのう? 

 

 

 

 お昼を食べ終えて部屋に戻るとベランダの網戸が開いていた。あれ? 風を通すためにサッシは開けていたけど。なんで? 

 

「ルビーじゃない? ベランダで気配がするよ」

「本当だ。話し声が聞こえるね。サファイアが遊びに来てるのかな?」

「そうね。いつもの二本はロシアだし」

 

 そしてチラッとベランダを覗いたら、相手もルビーだった。

 

「相手もルビーだよ、クロお姉ちゃん!」

「え、なんで?」

 

 そうして私達はエルマお姉ちゃんのルビーと出会った。

 

「じゃ、ルヴィアさんのサファイアのお姉ちゃんなの?」

『そういう事になりますね』

 

 エルマお姉ちゃんの転身姿を映像で見せてもらえば、まるっきり天使だ。なんか差を付けられた感じ。

 

「契約するマスターのイメージで変わるって聞いていたけれど、ここまで違うんだ?」

「前にエルヴァお姉ちゃんが変身ヒロインみたいになったから、ルビーのイメージだけじゃないと思うな」

「エルマお姉ちゃんの干渉もあるって事か。やるわね」

「そっちのルビーはどうしてエルマお姉ちゃんと契約したの?」

『イリヤさんみたいな人は珍しいですよ。今どきの子は恥ずかしいと言って契約してくれません。深刻なんですよ、若い子の魔法少女離れって』

「なんかルビーじゃないみたいな事を言いだした!」

「エルマお姉ちゃんから調整を受けてるね、これは」

 

 私のルビーも頷いていたから、きっとクロお姉ちゃんの言う通りなのだと思う。

 でもでも、あのイリヤのルビーに私のルビー、凛さんの新しいルビーにエルマお姉ちゃんのルビーだよ? 合計4本だから私の知ってるサファイアの倍もある。う~ん。

 

「午後になって暑いからさ、あんた達も入って。軽くエアコンを付けるから」

 

 そう言ってクロお姉ちゃんはルビー達を中に入れてサッシを閉めた。設定温度は28度。これ以下にするとセラに叱られる。

 ルビー達がペチャクチャ話している横で、丸いテーブルを挟んで私とクロお姉ちゃんは勉強をしていた。このテーブルをそうやって使えるように折りたたみの椅子をママが買って来てくれたのだ。

 だからクロお姉ちゃんも今はこの部屋で勉強している事が多い。

 

「クロエちゃん、イリヤちゃん、行くわよ~」

 

 ママがカーポートから呼んでいる。あ、もう3時なんだ? 私達は急いでエアコンを止めて水着の入ったバッグを持って外に出た。

 今から海水浴場に行って、お兄ちゃんやお姉ちゃんの働きぶりを見るのだ。これは昨日からママと約束していて、邪魔にならないでお客なら良いよとお兄ちゃんの許可も取ってあった。お姉ちゃんには何も言ってないけど、お兄ちゃんが話していると思う。

 それで帰りは5時上がりのお兄ちゃん達とバスで帰る予定だ。もちろんルビー達も外に出してあげた。お向かいで仲良く待っているだろう。

 

「クロエちゃん。お姉ちゃんだからイリヤちゃんを抱えてあげて」

 

 新しいクルマは前のクルマと同じで、どちらを選んでも2座席なんだよね。けれど小柄な私達なら、お尻を詰めればなんとか座れた。

 

「あら。イリヤちゃん達、細いのねぇ。けれどサイドブレーキを引く時に困るかな? ママはまだ、サイドを引かないとドリフトやターンができないのよ」

 

 何かむずかしい事を言い出した。けど、ママのいう通り。このクルマはどうしてサイドブレーキのレバーがこっちにあるんだろう? さっきから太ももが当たって気になるんだけど。

 

「ママ、これって法律違反なんじゃ?」

「子供料金って半額でしょう? 小学生までは二分の一人って数えるのよ」

 

 私とクロお姉ちゃんは違うような気がして不安だった。けれど魔術を使うから誰もわからないらしい。

 

「さぁ、NBロードスター。あなたに命を吹き込むわ!」

 

 そんな事を言って、ママはクルマを出した。

 

「イリヤちゃんのお薦めで○S技研のLSDを入れたけど、慣れるまで難しそう。えいっ!」

 

 ママの言うイリヤちゃんは私じゃなく、英霊のイリヤお姉ちゃんの事だ。タイヤがギャーギャーッて、鳴っている。

 他のクルマと同じくらいで、実はそんなに飛ばしていない。それでもこの前まで乗っていた、300何とかで山を走った時みたいな音がする。小さい頃、ママの横でひっくり返りそうになったのを思い出す。

 

「オープンカーって頭が熱いけど、気持ちいいね」

 

 うん。帽子を飛ばされたらイヤだなと思って被っていないんだけど、太陽がまともだから頭が熱い。エアコンも意味がないから止めてるみたいだし、クロお姉ちゃんと触れている腕は汗びっしょりだ。けれど気持ちいいのは本当。

 

「なにか楽しいよね、このクルマ」

「ね? 気に入ったわ」

「でしょう? エルヴァちゃんが薦めてくれたのよ。これで腕を磨いて、エスニーよ」

「エスニーってもう1台のほう?」

「そう。あっちの方が速くて難しいの。だから名義は、あっちがエルヴァちゃんなのよ」

 

 クロエお姉ちゃんが言ってたけれど、エルお姉ちゃんは運転がとっても上手らしい。そしてエルヴァお姉ちゃんはエルお姉ちゃんと同じ事ができる。けれどお父さんが言うには、ママ以上に恐い運転らしい。どっちが正しいんだろう? 

 

 ほどなく海水浴場に着いた私達は、海の家には直接行かず公設の着替え場で着替えた。これは家族のいる場所でいそいそと着替えたくなかったのと、公設だと駐車場と近いし、ロッカーがちゃんとしているからだった。

 あ、駐車場で屋根を付けるのを手伝ったんだよ。クロお姉ちゃんが、ナイフで斬り裂かれたら終わりじゃないと言ってたけれど、ママが何か魔術を掛けていた。それでクロお姉ちゃんも安心していた。

 着替え終えた私達はクルマから持って来たお揃いの麦わら帽子を被り、サングラスを掛けた。私はサングラスを四つも五つも持っている。

 格好を付けたい訳でなく、こういう砂浜のある海やスキーのゲレンデでは必需品なのだった。食べ物のあれとは少し違うけれど、ママが白人なだけに強い日差しに小さな頃から弱いのだ。

 おまけに瞳の色が薄い赤だから、よけいに照り返しがキツい。学校のプールでもゴーグルを付けっ放しだもん。そしてそれはクロお姉ちゃんも同じだった。だからサングラスを貸してあげたのだ。

 私達は先日ヴェルデで買った水着だけれど、ママの水着も新しかった。しかもちょっとセクシーなビキニ。いや、ちょっとじゃない。色は白でブラがマーガレットみたいな花形で、それが周囲の紐部分と繋がっている。つまり花びらのカタチ以外は布がないのだ。これはショーツも同じで前がハート型で後は紐だけ。お尻を隠す布があるのは良かった。お姉ちゃんだとここも紐だからね。

 でもさ。普通、お母さんってワンピースだよね? 

 

「ママ、それ新しく買ったの?」

「ええ。エルヴァちゃんに負けてられないもの」

「張り合ってるの?」

「あなた達には言わなかったけれど、こう見えてママは実は19歳なのよ?」

 

 なぬ!? じゅうきゅうさい!? 

 

「19歳って本当に?」

「本当よ。パパと出会ったのが5歳頃かなぁ。イリヤちゃんを産んだのが8歳のときよ」

「ちょっと待って! おかしいよ、それ!」

「イリヤ、落ち着いて。ママは産まれた時から今の姿なのよ。そういう事でしょう?」

「そう、クロエちゃんの言う通り。だからエルヴァちゃんと私は1~2歳しか変わらないの。エルヴァちゃんの本当のお母様も見た目が私と同じで19歳なんだって。あちらは1歳で子供を産んだそうよ」

 

 なにそれ!? まるでお父さんが犯罪者に聞こえるよ~! 

 

「パパって筋金入りのロリコンだね?」

 

 クロお姉ちゃんが冗談めかしていう。

 

「フフフ……。クロエちゃん、パパが可哀想よ。それでママは30歳で通しているけど、エルヴァちゃん達のお母様は39歳で通しているんだって。やっぱり子供の実年齢って大きいわね」

 

 そりゃ、ママと1歳違いなんて誰も信じないし、色々困ると思う。学校の三者面談なんてどうしようかと迷うよ。あれ? 

 

「って事は、ママ。イリヤお姉ちゃんは年上になっちゃうの?」

「うん。本当は18歳で止まっている筈だけど、英霊化で見た目は20数歳でしょう。だからママのお姉さんに見えるわね」

 

 頭が沸騰しそう。でも、ママは魔術の事を話すようになってから変わった。いや、開き直った? 

 でも、エルヴァお姉ちゃんは言ってた。

 

『優しくて時々厳しい、けれど間違っていない。それがママ』

『若くてキレイで、私の憧れでもある』

 

 って。

 それは私も同じだった。何より変わっているけど、それが私達だ。

 あ、サングラスにアロハシャツのお兄さん達がこっちに近付いて来る。クロお姉ちゃんがいつでも剣を投影できるように腕をだらりと下げた。けれど褐色の人達に引きずられてどこかに行っちゃった。アサシンさんの誰かだ。海まで来てるんだ? 

 ママはそれを知ってか知らずか砂浜をずんずん歩く。

 

「ああ、あれね?」

 

 海の家、嶽間沢。そのままの名前なんだ? お姉ちゃんを見付けたクロお姉ちゃんが、あっという間に砂を2~3メートルは蹴り上げて走って行っちゃった。相変わらずのお姉ちゃん子だなぁ。

 

「いらっしゃいませ~、いらっしゃいませ~、海の家・嶽間沢~。ご休憩、お食事にお気軽にご利用下さ~い。名物の焼きそばに、特製ラーメン。トルコ人もびっくりな本格ピラフに、インド人もお代わりする特製カレー。これでもかというわらじカツが乗ったカツカレーにカツ丼は女の子にはかなり多いぞ。特盛り・デカ盛りチャレンジ大好きなあなたは大盛りにチャレンジだ~! そして、本場関西の昆布ダシがキマったおでんに、炭火でじっくり炙った焼き鳥に焼き鳥丼は、お父さんもニッコリな一品に仕上がっていますよ~。山椒と七味でお召し上がり下さ~い。軽いものが良いなら、冷凍物だけど、卸業者は選び抜いたフランクフルトにアメリカンドッグでキマリです! ちょっと良いものを使っている粒マスタードと相性はバッチリ! そしてそして、ベルギー人もカナダ人もこれなら満足するか、自慢のフライドポテトはケチャップ以外の特製ソースがあるぞ! そして夏といえばかき氷でシメましょう。お薦めはシロップ全掛けのレインボーシロップだ~。更に各種ドリンクにアイスキャンディーなどなど、この他にもたくさんメニューを取り揃えております。是非ともご賞味下さ~い! またレンタル部門では、貸し浮き輪にビーチマット、パラソルにサマーベッドなども扱っています。時間貸し、半日貸しなどプランも豊富。あなたのスタイルに合わせて、どうぞご利用下さ~い。スタッフ一同皆様のご来店を心よりお待ち致しております。いらっしゃいませ~、いらっしゃいませ~」

 

 うわ、上手。それでもってママが来るのがわかっていたからか、お姉ちゃんはビキニだけどおとなしめだった。こういうところの積み重ねだよね? 

 

「大聖杯なしでセイバーを召喚するような子だから、お客の召喚なんて楽勝ね?」

「今のも呪文なの!?」

 

 ママも相変わらずだ。

 

「おい、ねぇちゃん。ねぇちゃんのレンタルってアリ?」

 

 二人の男の人だ。ママがムッとしている。お姉ちゃんのそばまで行ったのに、お姉ちゃんの呼び込みの上手さに固まっていたクロお姉ちゃんも男の人達を睨んでいる。ありゃりゃ~。

 

「お客さん、私のレンタル料は即金で一億兆万円ですよ?」

「ハハハ、関西人っぽいノリだなぁ。残念、持ち合わせがないなぁ。それで、ここって喫煙できる?」

「はい、できます。アルコールもおつまみもあります。おでんは関西風の昆布ダシですよ」

「よし、ここにしよう」

「どうぞ、いらっしゃいませ。は~い、ご新規さん二名様ご案な~い!」

 

 おお! 商売人だ! めっちゃ上手。さっきの男の人達はタバコを吸いたかったのと、フィーリングの合うお店を探していただけなんだ。イリヤお姉ちゃんが席まで案内していた。

 

「もしかして呼び込みの子と姉妹?」

「はい。あの子は高校生ですから、お手付き禁止ですよ?」

「ハハッ、そちらは?」

「大学生です。語学留学で日本に来ました」

「へぇ~。姉妹で日本に。もう、十分に日本語が上手いよ。頑張ってな」

「ありがとうございます。ご注文はお決まりですか?」

「ああ、生中二つとおでん盛りちょうだい」

「かしこまりました。オーダー通しま~す。7番さん、生中二丁、おでん盛り一丁!」

『アイヨ~、生中二丁におでん盛り一丁、ありがとうございます!』

 

 はぁ~、こっちも上手だ。意外だなぁ~。

 

「はい、焼きそばあがり! いらっしゃいませ~。焼き立てだよ~! 当店名物、焼きそばはいかがですか~!」

 

 お兄ちゃんだ。お姉ちゃんに負けない大きな声。なんだろう、とても活気がある。お店がお客さんでいっぱいだ。

 

「海の家ってこんなに混むものなの?」

「凄いねぇ」

「エルヴァお姉ちゃんやイリヤお姉ちゃん目当てかなと思ったら、イリヤ、あれタツ子のお兄ちゃん達?」

「うん、そうだよ」

 

 ウチと同じでタツ子もハーフだ。そしてお兄さん達はイケメンで有名だった。初キスは兄貴に捧げるとまで言っていたのが、半分以上本気なのはクラスの皆んなが知っていた。そんなお兄さん達に女の人が熱い視線を送っていた。

 

「バランスが取れてるのね。エルヴァちゃんだけでなくイリヤちゃんも接客が上手ねぇ」

 

 そうなのだ。テーブルを行ったり来たりしているイリヤお姉ちゃんが、意外なほどに上手だった。

 

「お姉ちゃん、焼きそば以外でお薦めってあるかな?」

「ありますよ。どうされました?」

「いやぁ、潮でやられたのか喉越し良いのが欲しくて」

「では、特製ラーメンはいかがでしょう」

「残念な業務用スープで作った醤油味じゃないの?」

「そう思うでしょう? ここのは店主が丹精込めて豚のゲンコツと鶏ガラでスープを摂っています。若干、最初の一口が獣臭いですけど美味しいですよ。自信ありなので味も塩一本で、デフォの煮玉子とチャーシューにメンマ以外は追加のトッピング類も一切なしです」

「なんか拘りを感じるなぁ。じゃそれと、おにぎりはある?」

「あります。1コ80円で2コなら150円のセット価格です」

「じゃ、2コとそのラーメンで」

「かしこまりました。5番さん、特製ラーメン一丁、おにぎりセット一丁! しばらくお待ち下さいね」

 

 奥でまた『アイヨ~』とタツ子のお父さんの返事がする。

 

 

「鐘ちゃん、凄いねぇ」

「うむ。こここまでとは思わなかったな」

「あ~! 何で先輩は陸上部じゃないんだ! あの口上があれば文化祭の屋台も!」

「まったくだな。高校生とは思えん。JRの売り子かスーパーのベテランのようだ。若干誇大広告気味だが」

「それがウチの弟が言うには、どれもこれも美味しいんだって」

「ほぅ。家族で来たのか?」

「由紀っちも来たのか?」

「ううん。私は陸上部があるから、弟達と両親が先週。お父さんもお母さんも美味しいって言ってたョ」

「ほぅ~」

「それと鐘ちゃん。スーパーのあれって案外と聞き流しちゃうんだョ。けど先輩の声って綺麗だから耳にすんなり入って残るんだよネ」

「それは言えるな」

「ウグイス嬢ってやつか?」

「それは選挙カーだ。だが、先輩なら楽勝だろうな。先程から全然噛まんからなぁ」

 

 この人達は確か、お兄ちゃんと同じ学年の陸上部の人達だ。三人はどのくらい聞いていたのだろう。お姉ちゃんは噛まないんだ? 

 

「イリヤ、どうしよう?」

「本当だね。どうしよう?」

 

 声を掛けられないほど忙しそうなのだ。そうだ、私はお姉ちゃんと念話ができたんだった。

 

 〈お姉ちゃん? 〉

 〈ごめんなさいね、せっかく来てくれたのに。4時を過ぎたらお客が引けますから、4時半まで海で遊んでいて下さい。それで5時に上がれば、おごりますから皆んなで焼き肉でも食べに行きましょう。お店の予約は6時からでセラに電話させて下さい。そしてリーゼリットとエルマにセイバーも誘うように伝えて下さい〉

 〈わかった。じゃ4時半だね。頑張ってね? 〉

 〈はい〉

 

 私は今の念話をママとクロお姉ちゃんに話した。そしてお店から離れようとしたら。

 

「イリヤ~! クロエ~! おやつ、持って行け~」

 

 お兄ちゃんだった。焼き立ての焼きそば。1パックにお箸が3本。手渡してくれるとすぐに鉄板の前に戻っちゃった。お兄ちゃんもちゃんと気付いてくれていたんだ。

 ママがセラに電話を掛けている間、私とクロお姉ちゃんは砂浜で焼きそばを食べていた。うん、美味しい。電話を掛け終えたママも一緒になって食べた。

 

「あら、美味しいわね。もっと安っぽい味だと思っていたら」

「だよね? 美味しいよね?」

「お兄ちゃん、やるわね~」

 

 そうだね。お兄ちゃん、この頃変わってきた。クロお姉ちゃんは気付いているかな? お姉ちゃんと出会ってからのお兄ちゃんは、なんていうのかな? 大人になったというか。とにかくカッコいいのだ。

 

「なぁ、そんなのが本当に居るのか?」

「ああ、居る。俺がこの目で見たんだ。4台居るらしい」

「4台?」

「ああ、俺が見たのは赤いMR-Sと黒いEG6のバトルだよ。場所は冬木山のパーキング・エリアからの下り。あそこ、裏山に抜ける枝道があるだろ? そこから冬木に帰ろうと合流しようとした矢先だ。タイヤをかき鳴らしてテール・トゥ・ノーズだった。どっちも女の子がドライバーだと思うんだが、MR-Sの方が女の子なのは間違いない。最後の下りきった交差点で、日本人の父親に怒鳴られて涙目になってたっけ。だからハーフなんだろうな。ガングロの可愛い子だったぜ」

「へぇ~。後の2台は?」

「こっちは仲間が見たんだ。青いGC8インプとこれまた青いエボⅥだ。2台ともどこのWRCだってくらいバカっ速で、アンダーを一切出さずにタイト・コーナーを抜けるとか。特に凄ぇのはGC8らしい。あれとMR-Sの下りバトルを見てみたいよな?」

「ほぅ~。そりゃ、見たいな。現行ならともかく、エボに勝てるGC8って居ないだろ?」

「ああ。見事なドラテクらしい」

「応援するなら可愛子チャンだけど、MR-Sか。パワー的にどうなんだ?」

「だから下りなんだよ。いい勝負すると思うぜ?」

 

 それ、お姉ちゃんとエルお姉ちゃんに、あっちのルヴィアさんだ。

 

「でだ。最新情報なんだが、その可愛子チャンがどうもあの海の家で働いているらしい」

「マジか!? どうすんだよ?」

「どうもしねぇ。ナンパじゃねぇぞ? 勧誘さ。俺はあのテクに惚れたんだ。何としてもウチのチームに来てもらう。この俺の円蔵山ナイトハーツにな。クククク……」

「ダセェ名を不気味な笑いで呟くな。その名を聞けばアウトオブ眼中にされるぞ?」

「うるせーよ! 顔面治療費7万コースにするぞ!?」

「辞めてくれよ。お前と俺は、アウトかインかで叫ぶ仲だろ?」

「それ、仲悪いって意味だろう? けど、ま、安心しろ。今日のトコは確認と様子見だからよ」

 

 え!? 

 

「エルヴァちゃんが走り屋に? Illegales Straßenrennen は許されないわ。ママがエルヴァちゃんを守る!」

 

 なんだか知らないけどママが燃えている! 

 だけど、ママがお兄さん達に何かをする事はなかった。だってお兄さん達はお姉ちゃんを見てヒソヒソ話すだけで何もしなかったから。

 本当に確認と様子見だったみたい。それをママがじっと見ていた。何かを決意した、そんな感じだった。

 

「ママ?」

「うん? あ、大丈夫よ。エルヴァちゃんは魔術で声を遠くに届けられるの。イリヤちゃんには難しい話かも知れないけれど、エルヴァちゃんが言うには、まだ免許もないし免許を取っても1年間は初心者マークが必要なのよ。そんなのを付けた走り屋は居ないだろうって」

「ああ、なるほど」

 

 クロお姉ちゃんも頷いていた。

 海で泳いで砂浜で遊んで、あっという間に4時半になった。着替えてから海の家に近付くとお兄ちゃんが待っていた。もう、お客さんはほとんどいない。

 

「エルヴァさんも今着替えてるから。もう少しだけ待ってあげてくれ」

 

 その間に私達はタツ子のお父さんやお母さんに挨拶した。しばらくするとお姉ちゃんとイリヤお姉ちゃんが奥から現れた。

 今度こそクロお姉ちゃんはエルヴァお姉ちゃんに抱きついた。エルヴァお姉ちゃんもクロお姉ちゃんを抱きしめ、その後片腕に換え、もう片方の腕で私を手招きした。だから私もお姉ちゃんにくっついた。

 

「二人の水着姿が余りに可愛いので声が出なくなりましたよ。お母様も少し負けた?」

「フフ、負けちゃったかな?」

 

 私はお姉ちゃんと手を繋いでいるだけだけど、クロお姉ちゃんはお姉ちゃんの反対側の腕を組んで、頭をよせていた。まるっきり恋人だ。

 駐車場の前でお姉ちゃんが指をパチンと鳴らした。

 

「あのロードスターです。家のガレージに入れておいて下さい。キーはポストに入れて下されば結構ですよ」

 

 そう言ってママから受け取ったクルマのキーをアサシンさんに渡して、私達はバスに乗って新都に向かった。

 お店に入るとセラにリズお姉ちゃん、セイバーさんにエルマお姉ちゃん、そして美遊が揃っていた。セラが美遊を誘ってくれていたのだ。さすが! 

 美遊もお兄さんがいなくて寂しいのをかなり我慢していたみたい。話し始めると止まらなくなっていた。

 

「タン塩8人前、骨付きカルビ4人前にロース4人前。ここの特上カルビはサンカクですか? ザブトンですか? サンカク? なら、特上カルビ8人前、それとハラミを3人前、ツラミ2人前、上ミノ3人前。センマイはシロセン? あ、生があるんだ? タレは唐辛子味噌、良いですねぇ。え、キモもあると? では、生セン1人前に焼きセン1人前、生ギモ1人前にギアラ2人前、マルチョウ2人前、シマチョウ2人前、ナムル5人前、キムチ盛り5人前……」

 

 次々と注文するお姉ちゃんはママにお願いしてビールも頼んでいた。未成年は親がいても本当は飲んじゃダメなんだって。でもお姉ちゃんは14歳頃からパブっていうお店で飲んでいたらしい。日本とは違うんだね。

 皆んながレモンを絞ったタン塩を美味しいと食べている中で、お姉ちゃんは赤黒い何かを生で食べていた。

 

「なにそれ?」

「これが生ギモですよ。胡麻油と塩のタレで頂きますが、まぁ、薬みたいなものですね。食べてみます?」

 

 皆んながふるふると頭を振っているのに、お兄ちゃんが恐る恐る一切れ食べた。チャレンジャーだ。

 けど、微妙な顔だ。セイバーさんは信じられないものを見たという顔をしている。

 

「けど、臭くもないし、ヌルっとしているだけだな」

「生は新鮮な肝をきちんと処理してないと食べられませんからね。このお店は合格です。これはお肉も期待が持てますよ」

 

 そして次々と置き場に困るほどお肉が届いた。

 

「うっお! 焼きがいあるなぁ」

 

 なんで自分から焼く係になっちゃうの? お兄ちゃんは? 

 

「ほら、焼けたぞ?」

 

 そう言って次々に私達の前に焼けたお肉を寄越してくれる。

 

「衛宮先輩も焼いてばかりいないで食べて下さい。代わりますから」

「わりぃ、エルマ。けど、ここで衛宮先輩は無いだろ?」

「ああ、すみません。弓道部でのクセで」

「言い間違えちゃ不味いからと?」

「そうです。いつもみたいに士郎さんと道場で言ってしまうと……」

「1年生だと周りの目が厳しいよな?」

「はい」

 

 今日ばかりはセイバーさんも大盛りご飯を2杯で我慢して、お肉をたくさん食べていた。だけどスープも一緒に頼んでいたのはさすがだ。

 ここのスープってラーメン鉢みたいな大きさの器に入っていて量が多いのに。

 そのスープから大きな骨が飛び出ていた。テールスープと言って、牛のシッポのスープなんだって。

 

 

「セイバー、もっと身をほじりなさい。それ、まだまだ食べられますよ?」

 

 テールスープの骨の事だ。白い骨に茶色いお肉がこびりついているのだ。同じスープを頼んでいた、リズお姉ちゃんの骨は綺麗に真っ白い。

 セイバーさんにそう言っていたお姉ちゃんのお皿には、骨付きカルビの骨だけが三つもあった。

 それとセンマイ? なんだか気持ち悪いイボイボしたところ。白いのもねずみ色のも一人で食べていた。ねずみ色のは焼いて食べるようだ。

 さすがのセイバーさんも、お姉ちゃんを不思議な顔をして見ていた。お姉ちゃん、それって美味しいの? 

 

「お姉ちゃんはどうしてそんな変なとこばっかり注文するの?」

「何とかチョウって腸なんだなってわかるけど、ギアラって何?」

「ギアラは牛さんの四番目の胃です。センマイが三番目ですよ。ですから別名赤センマイとも呼ばれます。セッショウインとはまた別です」

「意味不明だよ~」

「ちなみに第二の胃がハチノスで、これはイタリア料理や中華料理などでも使われています。第一の胃はミノです。この第一胃と第二胃が反芻胃ですよ」

「どうでもいいウンチクを、お姉ちゃんはまた~」

「なんでそんな内臓ばっかり?」

「ホルモンは脂が少なく栄養価が高いですから。これを放る物とするのはアインツベルンとしては許せません」

「またなんでアインツベルン?」

「そりゃ、雪に閉ざされたお城ですよ? 食料が手に入りづらい冬場はメイドをコキンと」

「ウソだ~!」

 

 お兄ちゃんはお肉の焼け具合が気になるのか、エルマお姉ちゃんと一緒になって焼いていた。だからお姉ちゃんのお話を何も聞いていない。

 けれど食用ホムンクルスを開発していたのは、どうやら本当のことらしい。と言っても人でなく、増えるお肉なんだって。それが東洋にも伝わってシニクって呼ばれていたとか。

 

「正確には伝わったのでなく共時的発見です。あちらの視肉や聚肉や太歳は私達のそれとは本質が異なります。私達のはホムンクルス鋳造の零れ物で、あちらは純粋に尽きない肉を求めてでした。奇書の山海経などにも肉霊芝として出ていますね。昔から人は飢えずに済む方法を考えていたのですよ」

 

 お姉ちゃんは、なぜか時々こういうお話をする。キキンとか、冬木の聖杯戦争前にとっても怖くて辛い時代があったのも聞いたし、とても悲しいお兄ちゃんやママやお父さんがいる並行世界のお話も聞いた。それを少しでも防ぎたいっていうお姉ちゃんの気持ちは、私やクロお姉ちゃんも同じ。それでも気持ち悪いよ。

 

「イリヤちゃん、美遊ちゃんも、もっと食べなさい」

「ママ! それ、黒焦げ! 美遊のは生焼けだし!」

「イリヤお姉ちゃんも美遊も、お腹を壊しちゃうよ!」

「英霊だから壊さないけどさ。お母様ってこういう人だったんだ……?」

 

 私とクロお姉ちゃんが頷くと、何とも言えない顔をしていた。

 イリヤお姉ちゃんには8歳までの思い出しかなくて、厳密にはママと『お母様』は違うかも知れないけれど、その思い出がきっとキレイなままだったんだ。イリヤお姉ちゃん、どんまい。

 

「子供じゃないから、そこまで理想化はしてないよ。でもさ、こうやってしっかり食べなさいって言って貰えると、無性に懐かしくてね」

 

 なるほど。ママはママでイリヤお姉ちゃんや美遊を気づかっていたのか。やっぱりママだね。

 

 はぁ~、食べた食べた。皆んなしてお腹がいっぱいになるまで焼き肉を食べた。たくさん話せたしとっても楽しかった。

 だけど家に帰ってお兄ちゃんがお風呂の用意に2階に上がったら、クロお姉ちゃんにこんな事を言われた。

 

「イリヤ、気付いた?」

「何が?」

「美遊よ。美遊の食べっぷり」

「ああ、たくさん食べてたね?」

「あのさぁ……。あの子、何日もご飯を食べていないんじゃないの?」

「え?」

 

 ママがクロお姉ちゃんの頭をなでながら言った。

 

「何も食べていない訳じゃないみたいだけれど、焦げかかったお肉まで食べていたわ。たぶん、一日一食とかそんな感じかしら」

「ええ!?」

「エルヴァちゃんが心配していたのよ。それでママもお手伝いしていたの」

 

 それでママは美遊にたくさん食べなさいとお肉を回してたのか。イリヤお姉ちゃんには気づかいもあったけれど、美遊のカモフラージュもあったとクロお姉ちゃんは言う。

 

「うん、クロちゃんの言う通りなの。それでね、セラ?」

「はい。なにか口座残高が残っていなくらしく、ガスや水道の料金を引き落とすと今月と来月が……」

「らしいわよ。エルヴァちゃんが一度相談を受けていてね。それで美遊ちゃんの口座のお金を一度下ろして、生活費に回すように諭したらしいの。けれどそれをやっちゃうとお兄さんが心配するからって。もやしとちくわの炒めものや、もやしのお味噌汁で我慢しているのよ。そして今は短縮授業で給食が無いでしょう? それもあったのね、今回の焼き肉は」

「え~っ!」

 

 なんで美遊……。言ってくれれば良いのに。でも、こういうところが美遊だ。言えなかったんだ……。

 

「それでどうなったの!?」

「帰りにエルヴァちゃんが5万円ほど渡していたわ。あなた達に気付かれないように。結局クロちゃんが気付いちゃったけれど。だから美遊ちゃんのためにも内緒にしてあげてね?」

「美遊……」

「もう~。別に立て替えても良いじゃないの。なんでそんなに真面目なのよ」

「お兄さんに心配を掛けたくないから……。それが美遊なんだよ」

「まぁね。相談して欲しいけれど、親友だから迷惑を掛けたくないって気持ちもわかるわよ。でもさ、水臭くない?」

「だからだよ。こうやって私達が心配して誰かにポロッと話せば。そこから美遊のお兄さんの耳に入る可能性もあるよ」

「なるほどね。それを心配してか。子供は子供らしくしろって……私らも言えないものね」

「うん。もうお姉ちゃんに任せよう?」

「それしか無いね。あ~、無力だなぁ……」

「本当だよ。泣きそう……」

 

 お姉ちゃんが居て良かった。ママのもやしのお話も、お姉ちゃんの使い魔が見ていたか、アサシンさんが調べたんだ。それで美遊はナムルのもやしを避けていたのか。




人→蟲→礼装。なんと数奇な。
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