う~ん。はぁ~、爽快。こんなに気分良く眠れたのって何年振りだろう。何時間くらい寝ていたのかしら?
あら? もう7時じゃない。早く着替えて学校に行かないと。
待って……。わたし、昨夜は何をしていた? そうよ、サーヴァントの召喚! 何者かが廊下に居て……。
慌てて飛び起きれば、姿見に映るわたしはネグリジェ姿だ。え?
急いでそこらにある服に着替え、宝石をポケットに詰め込んだ。違和感があるのだ。階下に人が居るような。
そ~っと階段を下るとキッチンから良い香りがする。居座り強盗?
「お目覚めですか? 召喚したサーヴァントを襲うバカなマスター?」
ゲッ……。マジ……?
「あ、あの……?」
その人は小麦色の肌をした、とても個性的な美人だった。ややピンク掛かった銀髪や、薄い赤の瞳が人類以上の存在感を醸し出していた。
「原因がわかりましたよ。外に出て、夜中も開いているお店で確認しました。この家の時計が、全部一時間狂っていましたね。時計の知識は聖杯から得ています。そして私も魔術師ですので、工房にあった宝石箱のトラップに気付きました。召喚陣に供えた大きな宝石、あれを箱から取り出すと発動するようですね?」
「う、嘘?」
「ここで嘘を吐いて、私に何のメリットが? まだ、寝惚けていますか?」
「あ、いや。ごめん。あなたは本当にわたしのサーヴァント?」
「パスを確認。どこに繋がっています?」
「あ」
「フフ……。お名前は? マスター?」
「遠坂。遠坂凛よ」
「私はエルヴァ。エルヴァ・フォン・ハーウェイです。知名度補正が全然期待できない無名な英霊ですが、ステータスはそこそこ高いと思うのであなたの役には立つでしょう」
ステータス。そうだ!
ん~と、何々?
クラス:ウォッチャー
マスター:遠坂凛
真名:エルヴァ・フォン・ハーウェイ
性別:女性
身長・体重:153センチメートル 43キログラム
属性:秩序・膳
筋力:D~A
魔力:A++
耐久:D
幸運:A+
敏捷:B~A+
宝具:A+
クラス別能力/戦略眼:A、戦術眼:A、千里眼:A++、その他はヒ・ミ・ツ
保有スキル/心眼(真):EX、無毀なる料理:A+、無窮の家事:A、まだまだあるゾ!
「エキストラクラス!?」
「みたいですね」
「属性の『膳』って何よ?」
「保有スキルの『無毀なる料理』が反応した?」
「それって何なの? 『無窮の家事』もヘンだし、クラス別能力の『ヒ・ミ・ツ』や保有スキルの『まだまだあるゾ!』って何なのよ?」
「想像通りです。保有スキルに関しては家事炊事が得意なので。クラス別能力に関しては知りません。保有スキルは書ききれないのかな?」
「あなた、変わってるわねぇ?」
「モノは試しで、お茶を淹れましょうか?」
なら、やってみてよと淹れて貰った祁門茶は完璧だった。蒸らし方やカップの温め方が上手い。
あ~、目が覚める。うん? 牛乳なしで頭が冴えたのって何年ぶりだ?
「美味しい……。けどさ、これって戦いとは関係ないスキルよね?」
「勝った後に相手と仲直りするスキルですよね? マスター、髪を触らせて下さい」
はい? どうぞと言えば櫛を取り出し、髪を梳いてくれた。
「そんなの良いのに」
「あなたは私のマスターです。身嗜みはきちんと」
ごめんなさい。ブラッシングまでしてくれて、髪はツヤツヤだ。
「あなたって強いの? ってかステータスだけで言うならキャスターよね? 宝具が凄そうだけれど?」
「ええ。キャスターにも適性があります。そしてその宝具があるから、アーチャーにも適性がありますよ。宝具の名は『夢幻の剣製』。どんな英霊の宝具もそれが剣や槍のような旧態依然とした武具であるなら、瞬時に投影して自分の宝具として扱えます」
「待って、投影よね?」
「マスター、リンとお呼びしても?」
「え? ええ、どうぞ。それで?」
「現代の魔術師の尺度で図られ、貶されるなら私も気分が良いとは言えません。同乗開始(パイルダー・オン)──」
彼女の手には黄金に輝く剣が握られていた。これ……単なる投影魔術じゃない……。
1メートル以上ある剣をゴトリとテーブルの上に置いた彼女は、自分の分の紅茶を淹れてムスッと飲んでいた。気不味いけれど、3分が経ち、5分が経ち……一向に剣は綻ばず、その神秘を辺りに放ちながら存在し続けた。
「ごめんなさい。これって何の剣かしら?」
謝るとニコッと笑ってくれた。可愛い人だ。
「信じられないでしょうけれど、あのアーサー王が持っていたとされる『エクスカリバー』ですよ」
驚いた。いや話を聞けばもっと驚いた。剣や槍でも戦えるが、その剣を彼女は矢に変形させて、弓で遠距離から攻撃できると言うのだ。
そしてわたしの魔力が持つなら、無数の剣を一気に相手へ叩きつけられるともいう。
わたし、もしかしてもしかしなくても、大当たりのサーヴァントを引けたのかも!?
触媒や聖遺物を探している間に、セイバーとバーサーカーしか枠が残っていないと聞いて一か八かで臨んだ召喚。
それに何よりわたしは最初セイバーが欲しかった。だって最優か狂人の二者択一よ? そんな切羽詰まった状態だったのに、エキストラ・クラスでこれほどの英霊が来てくれるなんて。ラッキー!
「ああ、わたしはあなたを何と呼べば良いのかしら?」
「『ウォッチャー』などと、わざわざエキストラ・クラスである事をバラす必要もないでしょう。エルヴァで良いですよ」
「そうよね。馬鹿にする訳じゃないけれど、エルヴァなんて名の英雄なんて聞いた覚えもないもの。それでエルヴァは、聖杯に何を望むの?」
「そうですね。胸に悲しみや苦しみを秘めている人々が癒やされるなら。世界平和とまでは言いません。たかだか一地方の霊脈が蓄えられる魔力で全世界を変えるのは不可能と見るべきでしょう。ならこの街の人々が健やかに暮らされる事を望みます」
たかだか一地方の霊脈と言われて少しカチンと来たけれど、その後に続いた言葉で何も言えなくなった。
「自分の願いは無いの? 自分に還る願いというか」
「そんなものは自分の努力で叶えるものですよ? あなたもそういうタイプだから、私を喚べたのでは?」
納得だ。その後、わたしの聖杯に対する考えや、戦争に臨む理由を彼女は静かに聞いてくれた。
「それで良いと思います。万能の願望器……これは絶対に嘘ですよ」
「嘘?」
「ええ。万能という部分が特に。等価交換を逸脱しています。魔術を措いても、物理的にもあり得ません」
そう言われてみれば、そんな気もする。
「時にリン。あなたは日課にしている事や、定期的に出掛ける必要のある場所などがありませんか?」
「ある。日課は夜のジョギング。ま、これは聖杯戦争が近いので最近控えているわ。それと学校というところに月曜から土曜日まで通わなきゃならないの」
「ン? 学び舎かな?」
「そうそう。だけど今日はいいわ。今から行っても遅刻だし。欠席の電話を入れるわ。その後、下見がてらに街を案内しようか?」
「そうですね。ご迷惑でなければ」
「迷惑なんて全然。あ、でもその格好じゃマズいわね?」
「少し待って下さいね」
そうして彼女は廊下に出て行った。廊下から呪文が聞こえる。やがて戻った彼女は、わたしの通う学園の制服姿だった。えらく似合うし可愛い。けど、どうして? これ、わたしのじゃ無いわよね? サイズが違うし。
「これも投影なの?」
「はい。昨夜、あなたを横たえた部屋に吊るしてあったので。それを真似ました」
ああ、そっか。現代の服なんてわかるはずも無いし。ってか、部屋に運んで着替えさせてくれたのは彼女なんだ? そんな事を今更ながらに思い出して顔が赤くなる。余裕をもって優雅たれ……。
「昨夜、部屋に運んでくれたのはあなたなの?」
「ええ。召喚で魔力をかなり消費されたのでしょう」
「ありがとう。そうだ、雑誌とか見ても投影できる?」
そうして部屋からファッション雑誌を持って来たら、モデルが着ているそのままの洋服に次々と。便利な魔術だなぁ。
わたしの魔術ってお金が掛かるばかりなのに、彼女は元手ゼロだよ。と言うか、その魔力もわたしのだし。チクショー!
そこで気分転換も兼ねて、二人でバッチリ決めて街を練り歩いた。お昼はオシャレなカフェでランチを食べて、午後は彼女の希望により、街で一番高いビルに登った。夜なら屋上にコッソリ出られるのに。
「そんな犯罪染みた事は止めましょう。ここからでも街の景観は楽しめますよ」
彼女は思ったよりも真面目な人だった。
「それで? 物見遊山でこのビルに登ったんじゃないでしょう?」
「ええ。リン、あの山の中腹にある建物は?」
「ああ、柳洞寺ね。お寺よ。それが何か?」
「あそこがキャスターの拠点ですね。街中から人々のオドを吸い上げています」
「え? あ……まさか。昏睡事件って……」
「そういう事でしょうね。夜ならあなたでも見えたでしょう」
真っ昼間でも吸い上げられたオドの流れが見えるのか。
「それとそのお寺? そことは別に、もう少し右に白い建物があるでしょう? あれは?」
「ああ、あれが学園。あなた風に言うとわたしの通う学び舎よ」
「なるほど。魔力残滓を感じます。昨夜か一昨夜くらいに戦闘があったのかも」
「そんなのまで見えるの?!」
「ええ。かなり濃厚に立ち込めていますよ?」
「そうなんだ……」
キャスターの適性があるらしいから、千里眼も普通じゃないみたいね。ウォッチャーの本領発揮ってところだろうか。
「他に何か見える?」
「あの山の向こうに大きな魔力を感じます」
「円蔵山の向こうか。あの山の先に、アインツベルンの森があって」
「アインツベルン?」
「ええ、この聖杯戦争を始めた御三家の一角よ」
「なるほど。その御三家の後の二家は?」
「んと、間桐って家と、わたしんちの遠坂よ」
「となると間桐はこの方角の、リンの家の少し手前?」
「大当たりよ」
彼女はガラス窓の外、川の向こうの洋館街を正確に指差していた。
「それであそこは?」
「うん? どこ?」
「この方角の先です。気味の悪い波動を感じます」
その方角には冬木教会、別名言峰教会がある。悪い波動か。勘かな? それも当っている。
「じゃ、ぼちぼち帰る? それともまだ観たいものがある?」
「いいえ。市(いち)に寄る必要はありますか?」
市ってスーパーや市場のことね。古風だなぁ。けど……籠城用の備蓄はあるけれど、新鮮な食材は買える間に買うべきよね。うん、寄って行こう。
「決まった顔ですね。では市のイメージを下さい」
そう言って彼女はわたしのおでこに手を当てた。へ? と驚いていると座標を読んだという。目を瞑れと言われ、次に目を開けろと言う。するとそこはマウント深山の外れだった。
「く、空間転移……」
私はゴクリと唾を飲んだ。これほどの魔術師だったんだ……。伝承にも残っていない神代の魔術師……。
トヨエツに入ると、彼女は活き活きとしていた。生鮮産品に日配食品と、グルっと回ればカートのカゴが上下一杯になった。けれど、彼女との買い物は何故か楽しい。
何よりこんなに買っているのに、レジで1万円もしないのが驚きだ。思った以上に買い物上手だ。
家に戻ると彼女は、テキパキと食材をラッピングしたり、冷蔵庫に収めたりしていた。
どうしてこんなのがわかるのと聞けば、冷蔵庫を指して『この箱が現代の氷室である事と、現代の包み方がわかれば。後は聖杯の知識と組み合わせて想像できます』と返された。頭の回転が早い人なのね。
そうよね、英雄=武力じゃないわよね。国を治めていた人も居ただろうし、頭の良さが必要な場合も今と変わらずあったろう。
いや、より必要だったと思う。こういう人達が歴史を動かし、わたし達の時代に繋がるんだものね。
「エルヴァ、あなたってどこの英雄なの?」
「ドナウ文明が興る頃、ライン川の上流に住んでいた小部族のシャーマンです。ですから今から6千年ほど前でしょうか? リンの感覚からは古臭いかも知れませんが、こう見えて占いなども得意ですよ」
「6千年前……。へぇ~」
そうかシャーマンなのか。本当にキャスター向きの人なんだ。けれど消えない投影魔術って凄いな。何にも無い時代だと重宝されただろう。
そして彼女はわたしが持っている料理本に軽く目を通しただけで、現代の料理をほぼ理解したと言った。心配だから一緒に作ったんだけれど、上手過ぎだろう。包丁を投影した時には笑ってしまった。
確かにね、長年使っているステンレスの包丁は切れ味が鈍っている。だからそろそろ買い換えようと考えていたんだけれど、彼女は鋼でなければ包丁では無いと断言した。
投影された包丁は気味が悪いほど良く切れる。それは見事な包丁捌きで、イカと大根の煮物と小松菜と油揚げの煮浸しを作っていた。私がブリの照焼きを焼いている間にだ。
照焼きができてコンロが空けば、白菜と厚揚げの味噌汁を作っていた。顆粒ダシにブツブツ文句を言っていた。ってか、ダシの概念や旨味を、昔の欧州人が知っているところが不思議だ。
「魚介類など海産物のダシが無かっただけで、野菜や肉から取る旨味はありましたよ? 味付けは岩塩とハーブ、そしてお酢ばかりでしたが」
そうだろうな。そう思う。旨味という言葉が無かっただけで、旨味を知らないなんてありえないもの。大昔の人なのに、合間合間に話してくれるコツやアイデアは、面白いしなるほどと納得できる内容ばかりだ。
特に切り身の下拵えなんて、とても勉強になった。室温に戻して塩を振って、7~8分置いてから布かペーパーで水気を取る。
臭み抜きだろうけど、青魚でなくブリの、しかも照焼きでも手を抜かないのは、昔は内陸だと魚の流通がままならなかったからだろう。
料理全般への造詣が本当に深い。私も一人暮らしが長いので、料理は一通りできる。同年輩の女子の中では、炊事と家事は結構している方だと思う。それでも彼女には敵わないと素直に思えた。
我が家でこんなにコンロをフル稼働したのは初めてじゃないか? 『無毀なる料理』や『無窮の家事』は伊達では無いという事だ。
見た目も名前からも到底日本人のルーツとは関係ないだろうに、軽くレシピ本を見ただけでここまでできる彼女のスキルには驚かされる。何より食べて再び驚いた。煮物が美味しい。おふくろの味? 涙が出そう。
それを彼女はもっと良い調味料を使えば、更に美味しくなると力説していた。
「一人暮らしなのですから、こんなに大きな容れ物の調味料は要らないでしょう? 買った時より少し味が変質しているのでは?」
痛い。痛いところを突かれた。醤油とお酒は怪しいと自覚していただけに。だからといって小瓶だと割高になるしなぁ。特売が入るのは大きめな容器ばかりだし。難しいところだ。
「この味噌と醤油は、この国の野菜と合います。見事な発明ですね。難点は似た傾向の味になるところでしょうか」
それは言えるわね。けど、クリーミーな煮物やハーブの効いたおひたしとかあったら嫌だ。
ん? そういや、あいつも一人住まいなんだっけ? あんなでっかい家で。いや、人の事は言えないけれど。
じゃ、あの子がお呼ばれするのは、あいつ的には助かってるのかな? 藤村先生も入り浸っているとか聞いたなぁ。
0004、2月1日の朝。双子館。
「ねぇ、本当にやるの?」
「お願いします。先日お姉様が怪我をされた件で、アサシン達が逸るというか憤っていて」
「それなら彼らだけで良いじゃない」
「変な罠が仕掛けられていないかの確認でしょう? 文句を言わずに行ってらっしゃいませ」
「しゃーないなぁ」
エルヴァからの連絡によれば、召喚による魔力不足で本日ここの凛は休みらしい。なのでルビーで制服姿に転身した私は、学園に潜入する手筈となっていた。だけど、いざとなると勇気が出ないと言うか……。
「ここの美綴部長は、凛さんと親友らしいです。二人きりの時は綾子と呼び捨てみたいですね」
「ゲッ。クラスメイトの中では割合話す方ではあるけれど、こっちはそこまで仲が良いわけでもないのに……」
自分であるはずなのに、演技力が要求されるとは。
「並行世界ですわねぇ」
結局、皆んなに追い立てられ私は学園に向かった。鞄は、エルマのか? これ? けど、編入したてのエルマのはもっと新しかったと思う。エルヴァは小学部のリュックだし。誰のだろう?
不思議に思いつつ中身を見れば、2年の教科書だ。時間割はどうなってるのよ? でもなぁ、エルマのアサシンなら、そういうのも調べていそう。
凛さんが出て行ったところで、ここまで集まった情報をチェックする。
セイバー/アーサー&ランスロット
ランスロットさんはアーサー王の宝具として入る事に決定。マスターは衛宮の小父様だ。
アーチャー/?
アインツベルンだけど今だに謎。使い魔の確認はできているので、あちらも今は情報収集中らしい。
ランサー/クー・フーリン
バゼット→言峰→キャスター。終わっている男だ。
ライダー/メドゥーサ
桜がマスターだけれど、先生の結界とパスへの干渉に阻まれて、ここがわかっていない。現在放浪中。お気の毒様だ。
アサシン/佐々木小次郎
キャスターが召喚した門番だけど、山門から動けない。ランサーが一度は行ったかも知れないけれど。こちらは動けないのが明白だから現在放置中。
キャスター/メディア
マスターは葛木先生と思われる。寺から出ていない。けど魔力は集めているようだ。最後はお姉様に奪われるのに。
ウォッチャー/お姉様
遠坂凛がマスター。小父様の要望でアーチャーさんがバックアップ。更に私のアサシン数名と連絡を取り合っている。
そして英雄王だが、コイツは私の獲物だ。『王の財宝』を根刮ぎ頂けば、先生かセイバーが始末する段取りとなっている。
ふらふらとバゼットさんが起きてきた。一通りのあらましは話してあるが、降りるのか降りないのか。
「降りません」
「協会にそこまで義理立てする必要はありませんでしょう? 危険ですわよ?」
「いえ、確かに脱落したのは曲げようもない事実です。これよりは私怨とお考え下さい。何より調査段階から疑問だったのです」
「何がですか?」
「セカンド・オーナーもそうですが、余りにも参加者が若い。いや、若過ぎる。そして眠っているライダーのマスターは、セカンド・オーナーの実の妹でしょう? 彼、彼女らに未来を残してあげるべきです。よってあなた方に協力させて下さい。その上で英雄王との決戦で言峰と戦わせて下さい」
「わかりました。条件は私達の事を時計塔などに口外しない事。その約束を守って頂けるなら義手を最終決戦までにご用意します」
そこで、ランサーを取り戻したいかと尋ねた。
「いえ。彼の者は、今にして思えば好戦的過ぎました。これも聖杯汚染の影響だと言われれば納得です。ですから、もはやランサーも斃すべき相手です。いえ、この儀式そのものが封印すべき対象です」
「わかりました。当方もこの儀式を永久に終わらせたく考えています」
利害が一致した事を確認した私は衛宮邸にアサシンを放ち、何通かの手紙を玄関の引き戸に差し込ませた。