※この作品はR-18です。

プリズマ☆エルヴァ 第二部 並行世界篇   作:炭団

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その4

0006、2月1日朝。学園2-Aの教室。

 

朝早くから学園に潜り込んでいた私は、使い魔でルヴィアと交信しながら探索をしていた。ライダーが張る筈だった結界も張られていないようだ。良かった。

 

「お、おはようございます! 遠坂さん!」

「おはようございます、三枝さん」

 

調査も終わったしそのまま帰ろうかなと思ったが、朝練が終わった美綴さんに捕まり教室まで来てしまった。仕方ない。お弁当も用意してあるし、授業を受けてから帰ろう。

 

「あ、あの、遠坂さん!」

 

また三枝さんか。何だろう?

 

「何でしょう、三枝さん?」

「あの、今日のお昼、ご一緒しても良いですか?」

 

顔が真っ赤だ。彼女は常識的な子だし、ほんわりとした雰囲気が気持ち良いので、あちらでは何度か一緒に昼食を摂っていた。元々、ルヴィアと仲が良かった蒔寺さんの関係者だ。断る理由はない。

 

「良いですよ」

「わぁ、ありがとう」

「いいえ、こちらこそお誘いありがとうございます。ご一緒させて下さいね」

「は、はい!」

 

本当に嬉しそうだ。さて、残る聖杯戦争の関係者は葛木先生とキャスターだけれど、土壇場まで追い立てられないと学園には手を出さないと思われる。けれど礼装は幾つか仕込んであるのを発見していた。

これは私だとキャスターに見付かる。エルヴァに頼むしか無いわね。

 

 

「む? 蒔の字、少しヘンとは思わんか?」

「何がだ?」

「いや、今しがた由紀香が遠坂嬢を食事に誘ったろう? あれだけ躱しておったのに、OKしたのも驚きだが、あそこまで気さくに返してくれたのは初めてではないか?」

「由紀っちの、仲良くなりたいって願いが届いたんだろ。遠坂は人見知りするタイプでな。一度気を許して貰えたら案外話せる奴だぜ?」

「そうなのか?」

「ああ」

 

う~ん……。思ったより、ここの凛は気を張っているみたいね。確かに三枝さんは霊視力の高い子だ。エルヴァに言わせると軽い魔眼持ちらしい。だけどこちらが魔力を絞れば、そこは問題ない。

あ。もしかしたら、ここの凛はあのほんわかした雰囲気が苦手なのかも。私も最初はそうだったけど、こちらのペースで話せば被ったネコを落としそうになる心配もないのになぁ。

こういう機微がわからないのは、魔導師の先生から教わっていなかったり、ルヴィアが居ないからだろうな。ここでは一人だけだものね。こういうのをエルヴァが導いてくれると嬉しいのだけれど。

それはそうと、イリヤスフィールはどうなんだろう? 衛宮君を殺しに来るのかしら? 全然動きがないわねぇ。

おっと、先生が来た。教卓に貼ってあった座席表は確認済みだし、そこに座っても誰も不審がらない。よしよし。素早く横目で隣の子が開く教科書を盗み見る。数Ⅱだ。3学期なだけに微分・積分のページらしい。

こっちは1学期が終わったばかりだ。一応予習はしているが、指されるとマズいわね。

 

〈ルヴィア。1時間目が数学で、微分と積分なのよ。あんた、わかる?〉

〈予習にも限度はありますわよ。あなたと同じくらいでしょう。そこまで期待しないで下さいまし〉

〈万一の場合は私が教えますから〉

〈え? エルヴァ? どうして?〉

〈ここの凛と契約したからでしょう。あなたとのパスというかチャンネルが同じなのだと〉

〈あ、な~るほど。じゃ、この念話、そっちの私に聞こえたり?〉

〈そういう心配は要りません。私が切っていますから。それとルヴィア。もう少し身を隠して。そこは上からだと丸見えですよ。ライダーやランサーが居る事を忘れず。あ……〉

〈どうしたの?〉

〈どうされました?〉

〈アーチャーとイリヤスフィールを発見しました。お父さんの予測通りの相手でした〉

〈やっぱり。で、どう?〉

〈感触は悪く感じません。見た目も仲の良い兄と妹のようです。これはもしかしたら……〉

 

ここでエルヴァとの念話が切れた。自分から追うような事はしないだろう。追わせた使い魔に集中した感じだ。

 

〈あれは……アーチャーは真名と自分の時の聖杯戦争を、既に話しているようですね〉

 

そんな声が頭に届いたのは6時間目だった。S.H.が終わると、私は一目散に学園を出た。そして近くの公園に隠れていたルヴィアと合流して拠点に帰ったのだった。

 

 

0007、2月1日深夜。学園校庭。

 

「エルヴァ、どう?」

「ええ、宝具を使った形跡がありますね。私も使います。魔力を頂きますよ!」

 

へ?

 

「『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』!!」

 

彼女が盾のようなものを投影した瞬間に、ドデカイのがやって来た!

魔力で編まれた赤い半透明の盾の向こうで、捩れた剣のような矢が迫り来るのが走馬灯のようにゆっくりと見えた。

 

「ぎゃ~~~! 宝具よ!? ヤバい!」

 

その矢は盾にブチ中って大爆発を起こした。けれど、花弁のような盾は何一つ傷付かない。これで投影魔術……信じられない……。

 

「何者!?」

「アーチャーでしょう」

 

そう答えつつ、弓を投影した彼女は続けざまに矢を放った。

 

「赤原猟犬(フルンディング)! 天魔失墜(バルムンク)!」

 

これも宝具か。凄いわね。それと思ったほど魔力が減らない。燃費が良いのかしら?

屋上で彼女のと良く似た赤い花弁が開いた。だけど、それは七枚の花弁だ。彼女のは七枚の花弁が三層になっていた。もしかしないでも彼女は相手の上位互換!?

そして彼女の矢は花弁を外れ……? いや、通り越して……? もっと上空、遙か先の何かに中った。そしてその何かは錐揉みしながら墜ちた。

 

「やるわね、トオサカ。ライダーが狙っていたなんて気付かなかったわ」

 

校舎の植え込みの影から、白い妖精のような少女が現れた。あそこに隠れられるって……小っこ!

 

「あんた……」

「自己紹介するわね。私はアインツベルン」

「アインツベルン……」

 

御三家の一角だ。ここで出て来たか。10メートルほど手前で立ち止まってカーテシーをしてくれた。優雅で良く似合う。見た目と違って、年の頃は小学生の高学年くらいかしら?

 

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ、リン・トオサカ」

 

わたしの事は調査済みなわけね。けど近づいて来た彼女は本当に小さい。見た目だけなら中学年でも通りそうだ。

 

「アーチャー?」

「承知した」

 

彼女の前の空間が歪み、サーヴァントが現れた。屋上からここまで霊体化していたのだろう。その身に纏うは、黒い上下に赤い外套。褐色の肌に白髪。まんま男性版のエルヴァだ。

そして相手マスターの少女は、不思議な事にエルヴァに面立ちが似ていると感じた。

 

「親戚か何か?」

「さぁ? では、リン。この剣を握っていて下さい」

 

そう言って彼女が消えた。双剣を構えたサーヴァントがこちらに向かって来たが、エルヴァが少女の首に刃を当てていた。

 

「残念。わたしのサーヴァントは空間転移ができるのよ」

「クッ……」

 

そしてわたしに剣を振り下ろしたが、わたしの握った剣が発する結界に弾かれていた。この剣の結界も凄い。

やった! 完全な勝利だ。

 

「何者だ、あのサーヴァントは?」

 

結界の外から男性が、声をひそめて尋ねて来た。

 

「あんたの同類か同族じゃないの?」

「それは無い。何より彼女は我がマスターにそっくりだ」

「よね?」

「君にもわからんか」

「今のところはね。で、どうするの? キャスターが覗いているかもよ?」

「うむ。その懸念があったので攻撃した」

 

そして彼は剣こそ握っているが、殺意を鎮めた。やっぱり演技か。

 

「実は同盟を組めたならばと参じた次第だ」

 

今度はさっきよりもっと声を潜めて、けれどわたしの目をしっかり見つめてそう言った。だからわたしもそれに合わせた。

 

「はぁ~、やっぱり。うちのサーヴァントが予測していたわ。だからここで待っていたの」

「そうか……」

 

エルヴァがイリヤスフィールとともにこちらへ来た。話は通しているのだろう。捕らえたようなフリをしている。

 

「こちらとしても、話し合いは望むところです。あなた方に危害を加えるつもりはありません」

 

マスターのわたしを差し置いて先に話を進めるエルヴァ。少しムッとするが、イリヤスフィールの態度がヘンだ。

 

「あなた、自然の触覚でしょう? ここまで近づくとわかるよ? 同族なの?」

「ん~、半分だけ触覚です。遠い祖先が同じだったりして」

「あ~、そういう……」

 

学園の敷地から出たわたし達は、近くの公園で結界を展開し、缶の紅茶を頂いた。イリヤスフィールにはわたしのおごりだ。

 

「これ、どうやって飲むの?」

「これはですね……」

 

私服姿に戻ったエルヴァが、甲斐甲斐しくプルトップを開けてあげていた。そして他愛ない話を膨らませ、和やかに談笑している。こうして見ると、仲の良い姉妹のようだ。

 

「どう思う? あの二人」

「私に聞くのかね? まぁ、客観的に見ればだが――よく日に焼けた活発な姉と、屋内で静かに遊ぶ大人しい妹といったところか。が、君のサーヴァントは、そんな単純な者ではなかろう。どう見てもセイバーには見えん。バーサーカーもあり得ない。となれば、エクストラ・クラスが頭に浮かぶ。その実力もかなりのものと見受けられるな。キャスター並に魔術が使えるのも驚きだが、弓の実力も私と変わらんだろう」

 

最初から気さくに話し掛けてきたから見落としがちだけれど、彼もまた英霊だ。それもアインツベルンが喚ぼうと決定した。だからだろう、きちんとエルヴァの実力を見抜いていた。

 

「むぅ~。衣類の意匠が似ているのは偶然かしら?」

「偶然だろうな……。少なからず、私とは関係ない筈だ。それだけにこちらも不思議なのだよ」

「それであなたのマスターは、いつわたしに同盟を申し込んで下さるのかしら?」

「まぁ、待ちたまえ。君の実力はマスターの手の者が調査済みなのだ。そして我がマスターが、君に実力をアピールする前に、どうしても彼女と話したいと言うのでね」

 

イリヤスフィールはかなりエルヴァの事が気になっていたのだろう。それにマスターだ。エルヴァのステータスも見えている筈だ。

 

「ステータスに驚くかな?」

「何だ?」

「保有スキルに『無毀なる料理』や『無窮の家事』なんてのがあるのよ」

「は?」

「だから、料理や家事全般が得意なのよ。彼女が来てから、どこもかしこもピカピカだし、料理が本当に上手なのよ?」

「ほぅ……」

「お茶も美味しいし」

「聞き捨てならんな……」

「はい?」

「あ、いや……」

 

やがてイリヤスフィールがわたしに幾つかの魔術を見せてくれ、聖杯戦争のあらましを教えてくれた。それは父が亡くなりわたしの家には伝わらなかった、聖杯の真実だった。

彼女は見た目とは裏腹に、実年齢はわたしの一つ上だった。実質的には二つ上に近い。そしてその身は小聖杯。この戦争で死ぬ運命なのだ。

だからいつかこんな悪しき儀式を終えられるように、当代のわたししか居ない遠坂家に後を託したかったのだという。彼女の母親も前回の戦争で亡くなっていたのだった。

そしてその前回の勝者は彼女の実の父親。だけど汚染された聖杯は呪いのこもった泥を吐き出すばかりで、父親はサーヴァントに命じて、宝具でもって聖杯を破壊させたそうだ。

それでも新都の街が焼かれ、大きな傷跡を残した――――

 

「だから、リン。こんなのを残しちゃいけないわ。私には時間が無いけれど、あなたか、あなたの子孫が必ず聖杯を壊して」

 

欧州でも有数の大家であるアインツベルンには一族がとても多く、イリヤスフィール一人のチカラでは説得すら無理なのだという。

本当ならヘラクレスをバーサーカーで召喚すべきところを、彼女は現当主に逆らってアーチャーを喚んだ。

触媒無しで自分の意向を汲んでくれるサーヴァントが欲しかったのだと言う。そんな彼女のお眼鏡にアーチャーは適ったようだ。随分と信頼しているのが話し方の端々に出ていた。

だけど、それによって8代目のアインツベルン当主から彼女は失望されてしまった。そこを逆手に取って融通が効く身となったからと、わたしと会うべく日本に来たのだと屈託なく話してくれた。

 

「つまり父親の後始末になるの?」

「その意味もあるかな。キリツグも頑張ったんだけどね。どうしようもなかったみたい」

 

何より彼女は覚悟を決めている。母親の犠牲が無駄になろうとも、この儀式を終わらせようという強い意思は、わたしを大いに納得させた。彼女は十分な同盟相手になる。自ずとわたし達は握手を交わしていた。

 

「良かった、リンが話のわかる人で。最悪は弟に頼らなきゃならないのかなって心配だったから」

「弟?」

「うん。あっちは私の事なんて知らないだろうけど、冬木にキリツグが引き取った養子が居るのよ」

 

彼女は自分の父親をファーストネームで呼ぶ。どうやら父親は日本人のようだ。東洋的なところが一切ない面立ちなのに、ハーフだったんだ。そしてその弟は、この冬木に住む日本人だという。

 

「へぇ~。どんな人だろう」

「え~とね。エミヤ。エミヤシロウっていうのよ」

 

え? それは、奇しくも養子に出された妹の想い人の名だった。

そうか衛宮君もそういう……。待って……。

 

「イリヤスフィールは弟さんに会いに行ってないのよね?」

「うん。巻き込んだら可哀想だもの」

「わかった。それが正しいと思う。けどさ、わたしは情報に疎いから何ともだけど。前回の勝者の息子だと、知っている人は知っている可能性があるのよね?」

「ある。だからマキリを監視していたの」

 

必然そうなる。もしかしてあの子が通っていたのは衛宮君を探るため?

 

「そうしたら、マキリの家が消えて失くなっちゃった」

 

はい? なんつった? 消えた……?

 

「い、いつ?」

「昨日の夜かな? 隕石みたいなのが落ちてお家が壊れちゃった」

 

え~~~っ!? 桜は、桜はどうなったの?!




ここが甘さだなぁ。わかっているイリヤを出してしまいました。
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