※この作品はR-18です。

プリズマ☆エルヴァ 第二部 並行世界篇   作:炭団

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バーサーカー暴れる。


その9 トオサカトキオミ

 お昼を食べていかないかと誘われたけれど断った。一応和解をしたけれど、こちらは何かの『お試し』で殺されかかったのだ。

 この『お試し』の真意も気になったが、それより先にあの地下の廃墟で、私の肩を抜かんばかりに喜んでいた人がだまし討のような罠を仕掛けたことが納得できなかった。

 なので、ガスや水道も通っていないこの館でなにが作れるのだと思考を鈍らせていた。アハトの城でもそうだったけれど、地下水と霊脈さえあればライフラインはどうにかできるのが魔術師だというのに。

 そして男性は自称『キャスターの宝具』だ。この段階で私はキャスターが並行世界で英霊に至ったトオサカ・リンであると理解していた。

 男性本人がそう話していたし、セイバーの記憶からも明らかだ。そして男性もキャスターと同じく英霊に至った並行世界の父の養子だ。

 それはきっと奇跡だろう。信じられないような話だ。だけどこの世界での聖杯戦争とは関係ない。私がやるべきことは謎解きでなく、平和裏にどうやって終わらせるかだからだ。

 まだトオサカの当主とも会っていないし、ライダー陣営にも連絡しないといけない。何よりヤドを出発する時に一足先にロードへの言伝を頼んだランサーと合流しないといけない。

 ロードに頼んだのはトオサカに渡す書状だ。トオサカはエーデルフェルトと同じく宝石魔術を扱うそうだ。そして当代は時計塔への留学経験がある。

 なら宝石科のロードからの書状は無碍にできないだろうとの読みだ。

 そりゃ、言いたいことはたくさんあった。騙し討ちもそうだし、相手の思惑からの一方的な『お試し』にもムカつく。勝手に城を使われていることよりもムカつく。

 だけどそれを今言っても何かが違う。あの三人は……サーヴァントの枠からはみ出ている。キャスターなんてマスターが居ないのではないか? 完全に自分の意志でこの世界に来ていると思う。

 そして忘れてはならないのが教会だ。これまでの経緯を話し、なんとか手を引いてもらわないと。この辺りの工作はママたちだけでなく、あちらでお祖父様もなさっているはずだけど動きは一向に見えない。

 そのためにも必要なのは既成事実だ。もう終わらせるのだと参加者全員が意志を固めて訴えるしかない。それは困るというなら、大聖杯の処理を行う際に抜き出さないといけない呪いをバチカンに直結してやるまでだ。

 

『汝、この先を征くならば一切の希望を棄てよ』だ。

 

 セローからCBRに乗り換えても、私はそんな風に考えごとをしていたのでセイバーとの会話がなかった。だけど街に近づき交通量が増えるに従って、徐々に会話が増えていった。

 

『エル、あれはなんだと思う?』

 

 それはお昼からの講義にでも向かであろう、大学生くらいのお姉さんが乗っているバイクだった。タンクにウィングマークがあるのでメーカーは明らかだ。

 全体的にレトロなデザインなのにカムがDOHCっぽい。エギゾーストは2→1の集合管なのに排気音は単気筒。なんだこれ? こんなのEUで見たことない。

 

『日本だけのものでしょうか? 見たことありません』

『軽々乗っているな。エルも免許が取れたらああいうのに乗ってみればどうだ?』

 

 そうだなぁ。全体的には良いけれど、あの雰囲気とヘッドカバーが合わない気がする。それと女の子が乗るにはタンクの色が渋すぎると思った。

 私なら赤とか濃い緑に塗り替えるか、そういう色があるならそちらにするだろうと返事をした。

 知っている人は知っているだろうが、それはホ◯ダのGB250クラブマンのH型(2型)だった。この95年の日本では、最新モデルがS型(5型)だった。だけどモデル末期で、次のV型(5型)で終息してしまう。

 SRはドラムブレーキの2型が最盛期で、レトロでシンプルなバイクが、アメリカンとともにスマッシュヒットしていた頃だ。だからあんなSRVに続いてルネッサのようなバイクが出てきたのだろう。

 各メーカーがシノギを削ったレーサーレプリカは駐輪場で錆び付き、2ストが終焉に向かいつつあり、TWがストリートバイクとして人気が出る前のことだ。ゼファーがχになる前年で、各メーカーが暗中模索をしている小康期でもあった。

 だけど、良いバイクがまだまだ市場に現役で出回っていた頃だった。4ストのオフ車やレトロな日常の足が世界中に転がっていた。

 例えば80年代の日本でしか売られていなかったバイクにSRX600やSRX250などがあったが、初等部の5年生頃これが無性に欲しかった。

 というのはこのSRXはクラブマンと同じ4バルブで、伝説のE型(1型)よろしく、吸気バルブごとに強制と負圧といった二つのキャブが着いていたのだ。

 VMAXのVブーストと似て非なるものだけど発想は同じだ。低回転は口径を絞ったキャブでレスポンスとトルクを重視、高回転では口径の大きな二つ目のキャブが開きパワーを稼ぎ出す。

 ホ◯ダはこのコスト高になるツインキャブを諦めると、カムを加工した強制閉弁機構を造り出した。高回転でハイカムになるクルマの方のVTECはバイクに合わなかったらしい。

 それはともかく、英国連邦だけどアメリカとも似た独自の文化を持つオーストラリアでは、それまでのアメリカンなSR250がSR500のようなレトロデザインを身に纏って発売された。2001年のことだ。

 当時中3だった私は別荘の敷地内でこれを乗り倒した。その前からファーム・バイクには乗っていたけれど。というのは、兄のカールの敷地が広すぎて移動がままならないからだ。

 このSR250クラシックは80~90年代の249ccでなく239ccだった。セローやTWとも異なる、何とも不思議な排気量のバイクだ。

 

 余談ついでに。私は高1の2002年に普通自動二輪免許を取得した。

 その免許を手に入れるやいなや、ディープパープリッシュブルーメタリックCのXJR400Rを手に入れた。

 このXJRは98年のモデルチェンジ以降のものが好きで、ダークグリニッシュブルーメタリックCなどを森で保管していた。翌99年からのブラックエンジン、ブラックマフラーのモデルは、特にお気に入りで数台買ってしまった。

 自分でもバカだと思うが、これはお祖父様からのお祝いのモンスター400を封印したお詫びの気持ちが強かったからだ。免許取得のお祝いで、第2世代のタコメーター付きを贈って頂いたのだ。

 私が黄色で姉のイリヤが赤だった。嬉しくていつも乗っていたのだけれど、残念なことに姉が転倒して炎上させてしまった。幸い本人にケガはなかった。だけどそれから姉は数ヶ月バイクに乗らなかったのだ。

 それで私は黄色いモンスターを封印した。そして落ち込むイリヤの前でXJRを乗りまくった。ツーリングに行こうと誘ったのだ。

 それでイリヤは2002年の暮に売れ残っていた、イナズマの最終00年モデルを手に入れてバイクに復帰した。半年経たずに外装をパールダークスペースブルーから、輸出用750のキャンディアンタレスレッドに換えていた。

 北海道へフェリーで行った時のマフラーは、ヨシムラの4本出しだった。

 その姉が落ち込んでいた2002年の秋、マアエモ・ママとルオン・ママはお金を出し合って、SV400を2台用意してくれていた。ハーフカウル付きのSの方で、白と青のワークスカラーだった。

 二人も姉が心配だったのだろう。いつもSV600Sに乗っているルオン・ママが、日本の道路には400が合うと聞いて買ったけれど、イマイチだったからあげると妙な言い訳をしながらキーをくれたのだ。

 サスはオーリンズに変わっているし、エンジン内圧バルブまで入っていた。それが2台だ。おかしいでしょう、と。けれど姉は泣いていた。そのSVは今も予備として走行距離を伸ばしている。

 

 やがて、道は円蔵山を裏手から登るカタチになった。

 

『セイバー、あれ!』

『ああ! 行こう!』

 

 ライダーとランサー、そしてバーサーカーが300メートルほど先の、樹々が開けた場所で一触即発の状態に見えた。ここからだと雑木が邪魔をして切れ切れにしか見えない。

 やがて近づいたこちらのバイクを一瞥して、ランサーが駆け寄って来た。状況を見ただけで事情がだいたい飲み込めた。

 

「聖堂教会ですか?」

「そのようだ。主からはそちらの考えがあるだろうからと、捕らえるだけに留めるつもりだった。が……間に合わなかった」

 

 争いではなく暴行を受けたシンイチを見てバーサーカーが暴れていたのを、ランサーとたまたまそれを発見したライダーたちが降りてきて抑えていたのだ。

 私は取り急ぎ唇を切って顔にも傷があるシンイチに治癒魔術を掛けた。今日はリンと同じ茶色い制服だ。

 

『学校はどうしたの?』

「学校に行かなくて良いのか?」

 

 私のドイツ語をすかさずセイバーが訳してくれた。この間、セイバーはバーサーカーに睨みを効かせている。

 

「……僕の使い魔が聖堂教会のおかしな動きを掴んだんだ。その確認のために学園の塀を乗り越えて……」

 

 痛みが引いてきたのかシンイチはしっかりと話してくれた。

 

「その神父が別の男性と、大聖杯を冬木から持ち出す相談をしていたんだ」

 

 それを使い魔で聞いていたシンイチは、問い詰めようとしたらしい。理由も聞けば納得で、彼の師匠であるトオサカ・トキオミと、教会の責任者であり監督役のコトミネ・リセイは年齢を越えた友人同士だったのだ。

 元々はリセイとトキオミの父親が長年の友人だったらしい。冬木がホームのトオサカが教会の神父と友人……十分キナ臭いが、今回は各陣営との和議と停戦が目的なので、そこは納得できる範囲だ。

 だけど聖堂教会の中にあるだろう勢力の幾つかが、この『第七百二十六号聖杯』がもたらす奇跡か、あるいは『聖杯戦争』という儀式そのものを欲していた可能性がある。その膿が吹き出したといったところだろう。

シンイチが言うには、その神父はコトミネ親子の応援に来ただけの人物で、冬木とは関係ない人物だという。

 そして密談を弾劾したところ、逆上した男はシンイチを襲った。どうもそういう性癖の持ち主で、シンイチを前々から狙っていたようだ。

学校から抜け出し正体を隠すためとはいえ、シンイチはスカート姿だったのだ。その危機一髪に令呪で喚ばれたバーサーカー。周囲の樹々に肉片がこびりついている。簡易的な結界を張ったのはウェイバーだけど、簡易的すぎるよ。だから張り直してあげた。

 

「ともかく埋めましょう。やったことは仕方ないですし、バーサーカーもマスターを守ったに過ぎません。とりあえず聖堂教会への言い分は立ちます」

「だけど、シンイチだっけ? この子の令呪はもうないぞ?」

 

 そうだった。シンイチの令呪は狂化の解呪で二画失われていたのだ。

 

「仕方ありませんね」

 

 そう言って私は地面に魔方陣を描き、バーサーカーにその中央に立ってもらった。そしてセイバーにシンイチを支えてもらい、再契約の呪文を唱えさせた。

 これは御三家にしかできないことだ。聖杯は再びシンイチの手の甲に三画の令呪を刻んだ。

 

「ハァ~……。しっかし、教会も何を考えてんだ。こんなカワイイ女の子を襲うなんて」

「坊主、お前さん、マジで言っとるのか?」

「当たり前だろう! 神職についてるクセに。そんな神父は制裁を受けて当然だよ!」

 

 面白いので彼らの英語をセイバーに訳させた。シンイチは顔を赤らめモジモジしている。私より年上のはずだけれど、どう見ても女の子にしか見えないその姿に胸がキュンキュンした。

 

 兜を外したバーサーカーが私にひざまずき、声を発した。

 

「ありがとうございます。セイバーのマスターよ」

 

 少し驚いたが、再契約で狂化の呪いが完全に消えたようだ。今までは理性に一画、知性に一画使っていて、言語は取り戻せなかったのだと思う。

 シンイチが男の子だったと知って驚いているウェイバーを代弁するかのように、私はシンイチに質問した。もちろんセイバーが訳してくれるし、ランサーも補足してくれる。ウェイバーにはライダーが訳していた。

 

「どうしてそこまで徹底して性別を隠していたのですか?」

「リンちゃんやサクラちゃんを守りたいってのもあったけれど、僕も僕自身を守る必要があるだろう? その茶色いランドセルの中にはウィッグやメガネにマスク、ジーパンや男子の制服、それと髪が隠せる帽子などが入ってる。それで逃げられるんだよ」

 

 やっぱり賢い。

 私は感心した顔のままでこうも尋ねた。

 

「とはいえ、恥ずかしくありませんか?」

「アインツベルンなら、もう調べてあるだろう? 間桐は真実の当主が、4年前に亡くなり後は没落するだけだった」

「そこをトオサカが手を貸した?」

「そう。そして僕がしっかり学んで間桐を再興すれば、間桐と遠坂が争う必要もない」

「それは恩返しの意味で?」

「そこもあるけれど、等価交換の意味もある」

「うん?」

「遠坂は女の子ばかりだ。しかも二人とも才能があり、禅城という優秀な血を引いている」

 

ゼンジョウとは姉妹の母親の実家らしい。相手の先祖代々から受け継がれる血を活性化させる血脈だという。

 

「それでどちらかを養子に出すなら僕が引き受けますと。将来の妻として迎えますと契約したんだ。ま、跡継ぎはリンちゃんに決まったので、お嫁さんはサクラちゃんに決定だけどね」

 

 なんと。この10歳の男の子は妹の方、つまり5歳の女の子と婚約していたのだ。

 この告白への返礼として簡単にだが、アサシン達の前から姉妹をさらったのが、実情を把握していない私の分身だったと話した。

 

「そうか、君の魔術だったのか。リンちゃんの記憶を探ったよ。お腹を刺された彼女を救ってくれたんだね。ありがとう」

 

 このとき私の中の何人かが落ちた。後年、姉のイリヤかシンイチだったかで意見が真っ二つにわかれるのだが、少なからず私の異性に対する初恋はこのときだった。同性が姉となるのはこの数ヶ月後で学園に通うようになってからだと記憶している。

 だけど最初に姉のお世話をしていた47番や、ドイツに残した59番に97番は、イリヤが初恋の対象だったと明言している。

 そこではたと気付いた。バーサーカーがおとなしくセイバーや私の前でずっとひざまずいているのだ。

 

「どうしたの? この人?」

「ああ、そうか。エルはバーサーカーの正体を知らなかったのだな」

「知り合いの人?」

「エル風に言うならかつての従業員だ。それも専務というか……社長夫人を引っ張っていった?」

「なにそれ?」

 

 そこでランスロット卿だと知ったライダーやランサーは呆れていた。ウェイバーはセイバーがアーサー王と知って驚いていた。英国人ならそうだろうね。

 だけど私の分割思考はとても黒い計算をしていた。

 

「ランスロットの罪を水に流す代わり、シンイチは私の性奴となりなさい」

 

 シンイチもウェイバーも見ている前でズボンを下ろされ、お尻をセイバーに叩かれた。それを見て、ランスロットもお尻を出そうとした。

 

「誰が貴公の尻など叩くものか!」

 

 なんとなく王国が滅んだ理由が飲み込めた。

 

「それでこの後はどうするんじゃ?」

「この件をトオサカに知らせるべきだろうな。僕への断罪が刻一刻と近づくわけだけど……」

「坊主、考えすぎじゃろう? 喚ばれた余が坊主がマスターで良かったと思っとるんじゃから、堂々と胸を張れ」

「喚ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」

「アニメばっかり見てんだろお前は? またセイバーに尻を叩かれるぞ?」

「そうだ! 我が社で人工知能を開発したら『Siri』って名付けよう」

「は?」

「ライダーのマスター。構うな。調子に乗るだけだ。そしてトオサカに知らせる案は賛成だ。シンイチの言が正しいのならば、トキオミなる者は道理がわかる人物と見た。それにアーチャーとキャスターがなぜあのうような事をしたのか、見えてくるやも知れん」

「アーチャーとキャスター? 会ったのか?」

「ああ。少々遊ばれた」

 

 ここは宝具で威嚇しあったとごまかした。まだ奥がありそうだけれど、とりあえずトオサカの当主へ連絡することは大事に思えた。なので私はママに電話を入れ、トオサカへの連絡を頼んだ。

 

「シンイチはお腹、空いてない?」

 

 それで皆んなでお昼を食べにマウント深山という商店街に出た。指定された場所にバイクを止めてしばらく待ったら皆んなもやってきた。

 そこで入ったお店が『タチグイソバ』というヌードル・スタンドだった。シンイチのオススメはスタミナ・ウドンだったが、生卵がイヤだったので、テンプラウドンにアゲというモノをトッピングしてもらった。

 コインで支払ったら、1分で出て来た!

 

「背伸びしても届かない~~!」

「小父さん、椅子、ありませんか?」

 

 そうシンイチが頼んでくれ、私とシンイチのイスが出て来た。シンイチはスタミナ・ウドンでライダーはそれの大盛りを5杯、セイバーも5杯頼んでいた。安いから良いけれど。服のないバーサーカーは外で待機だ。

 そしてなぜかランサーはキザミ・ウドンにコブというのをトッピングしていた。チャレンジャーだ。

 

「ウェイバーは頼まないの?」

「なにを食べれば良いのかわかんないんだよ」

 

 そこでお店の小父さんが、ニク・ウドンというのと、カヤクゴハンを薦めた。私は出て来たそれを見て、次回はあれを食べようと決心した。

 他のお客がウドンになにかを振っている。カウンターにある缶だ。なんだろう?

 

「あれはなに?」

 

 セイバーの通訳でシチミトウガラシだとわかった。これは知っている。アジアン・スーパーで買える、ジャパニーズ・レッドペッパーだ。すかさずマイ・ウドンにババっと振りかけた。それが鼻を刺激した。

 

 ックチュン!

 

「今のくしゃみ? カワイイね」

 

 シンイチの方がカワイイでしょうに。私のうどん好きと唐辛子好きはここから始まった。

 そしてお昼ごはんの後、一度解散して、シンイチの手引きで私だけがトオサカ当主と会うこととなった。アサシンへの先触れとしてランサーに走ってもらった。

 

「こらッ! お前ら! 私のバイクに、なにをやっている!」

 

 茶髪の頭が悪そうな三人組がいた。

 

「うるせーよ」

「なんだ、このちびっこい外人のねーちゃんは」

 

 うっわ。セイバーにケンカを売った! これは言葉が通じなくてもわかる。

 

「■■! ■■■■■■■■■■■■!!」

 

 バーサーカーが吠えた! 言語にならない声をあげて一人の顔面を鷲掴みにして好き放題振り回した!

突然目の前で実体化した真っ黒な鎧の怪人。悲鳴を上げて逃げようとしていたけれど、振り回されている奴の足で、他の二人が吹き飛んでどこかの塀にぶち当たった!

 塀にヒビが入ったよ!? ってか、振り回されている奴の足が変な方向に?!

 私は慌ててバイクを宝具に取り込み、シンイチの手を引いて一目散に逃げた。

 

「この人、やっぱりバーサーカーだ!」

 

 遠くでサイレンが聞こえるけど幻聴だ。今朝もあったような気がするけれど幻覚に違いない。そう信じたい。

 

「なんだか、どんどん悪い子になるよ~~!」

 

 私の叫びにセイバーはしきりに頭を下げてくれた。

 

「死後にまで私に迷惑を掛けるのか、この男は!」

 

 その後、めっちゃブツブツ言ってた。私、シンイチ、セイバー、バーサーカーの四人でトオサカ目指して歩いている最中ずっとだ。そのバーサーカーはこんなことを言っていた。

 

「騎士として正義を通したまで。なぜそんなことを言われねばならんのか。本当に人の心がわからぬ王だ」

 

 頭が痛かった。

 私は気を取り直して、シンイチにトオサカの家の近くに公衆トイレのある公園がないかを尋ねた。セイバーがそれを訳してくれると。

 

「変装するの?」

 

 違います。お化粧直しと着替えです。こんなライディングウェアで目上の人と会えません。私はシンイチの案内してくれた個室で、宝具から衣類を取り出し着替えた。

 ワイシャツにネクタイ。紺のスカートに紺のブレザーに白いソックスと革靴。どこか英国風だけど、こういうフォーマルはいつも持ち歩いている。髪を編み直し衣類を整えた私に、シンイチが驚いていた。

 

「育ちが良いんだね」

 

 そこは重要ですよ。

 

「なんだか君みたいな子だと安心するなぁ。大きくなったら弟のお嫁さんに来て欲しい人だ」

 

 セイバーの訳でフイた。10歳の子供が8歳の子供に対して言うセリフなの、それ? だけどシンジという名前と、私のひとつ下という情報はゲットした。それでシンイチみたいに可愛い顔ならちょっと考えてしまう。

 

「あ、でも。弟は魔術回路がないんだよ。残念だ……」

 

 まぁ、相手に回路があろうがなかろうが、子供は私の遺伝で回路はバッチリだろう。問題は宝具があるので、私自身が子供を産めないところだ。

 遺伝子からなにから同じ身体を造って、受精してしまえば後はどうにかなるけれど。だけどこれもあと10年は掛かる。18歳か。その頃の私ってどんな女性になっているのだろう?

 そんなことを考えていたら、ランサーが赤い洋館の前で待っていた。

 

「アサシンは姿を消してくれている。ここの主への連絡も済んでいるようだ。ただセイバーとライダーに私はここで待機だ」

 

 そこは仕方ないだろう。呼び鈴を押すと、当主自らが出迎えてくれた。私を見てほぅと声を発した。身なりをきちんとするとこういう効果がある。

 

「坊主を頼むぞ?」

 

 おや? 余も行くとは言わないんだ?

 

「既にここまで道筋がついとるんじゃ。取って食われることはなかろうて」

 

 確かに。

 

「もちろんだ。私が遠坂家第5代当主遠坂時臣だ。この名に懸けて君達の安全は保証するよ」

 

 ワインレッドのダブルを着込んだ涼やかな日本人紳士は、青い瞳で刈り込んだアゴヒゲが特徴だった。ドレスシャツの胸元で黒いヒモタイが揺れている。

 きっと歳は二十代の後半。貫禄を出そうとアゴヒゲを蓄えているのだろうけど、にじみ出る清潔感がそれを打ち消している。リンとサクラの父親。らしいなと思った。

 通された応接室で紅茶がセットされた。入れ方が甘いけれど、葉はなかなかだ。

 

「まずは我が娘である凜と桜の件に付き感謝致します。その後の隠蔽まで完璧でした」

「いえ」

「ロードからのお手紙も拝見致しました。つかぬ事をお伺いしますが、そちらの現当主は8代目ではなかったのですか?」

「8代目ではなく8番目という意味です。7代目ユスティーツアが大聖杯の礎となりましたので、8代目の不在が一族に伝わっていなかったのです。それが判明したのが100数年前。それよりは私の養父が9代目を正式に名乗っていました。ですから8代目は自称といって差し支えありません」

「なぜそのようなことに?」

「アハトの家は人間がおらず、ホムンクルスばかりの工房でした。その打ち捨てられた者たちが第三魔法を追い求め、今に続いていたわけです。それでも一族の末端には違いありませんから、養父は度々支援していたようです。ですが、あの家がこのような儀式に固執している間に、時代は流れ、魔術は進化し、私のような若輩者が11代目を名乗り……時計塔の理事を務めているのが現代です」

「あなたは本当に理事だったのですね?」

「倫敦と連絡が付きましたか?」

「はい……」

 

 私はこのときトキオミの心を読んでいた。私に対する反骨心を打ち消し、きちんと今回のことを考えていた。

 

「誤解なきよう事実だけを伝えます。既に伝わっているとは思いますが、当家はこの儀式の永久停止を望みます。そして大聖杯の解体に向けて、あなた様のトオサカ家やマトウ家と共同事業を提案致します」

「汚染が明白ならば仕方ありません。ですが根源には……」

「こんなものを望まずとも、あなたは才能の芽を潰さずお手元で育てていらっしゃいます。6代目のあの子は必ず根源に行きますよ」

「う、嬉しいお言葉ですが、その根拠は……?」

「キャスターです」

「お会いになられたのですかっ?!」

「ええ。意外にも当家の森の館に潜んでいました」

「なんとまた……。ですが、そのキャスターが一体?」

「今は胸の内で留めて下さい。近い内、全員であの館に集まりましょう。キャスターの真名を伝えますね」

「真名……判明したのですか?」

「はい。その名はトオサカ・リン。並行世界で第二魔法を掴み、その後英霊に至った存在でした」

「なんですと!?」

 

 トキオミは驚きのあまり立ち上がってしまった。無理もない。

 

「おめでとうございます。真実の娘とは異なれど、第二魔法であるからこその偉業ですね」

「そうだ……その可能性があったのだ……」

「押し切ってお嬢様を弟子入りなされては? 席を設けますから」

「あ。その手がありますね」

 

 そこからは全員揃えての会談に向けて、少し打ち合わせただけだった。そして今日より二日後、アインツベルンの森にある館で全員が話し合うことに決定した。

 帰る間際、シンイチが手を握って喜んでくれた。なんてカワイイ笑顔なの?

 ウェイバーには私がロードに取りなすと確約した。ただし賠償金に関しては知らないよ。




10/3訂正
GB250について
E型(1型)
H型(2型)
J型(3型)
L型/P型(4型)
S型/V型(5型)
と、パーツリストでは分けられていて、L、Pを4、5、S、Vを6、7とするのは間違いだそうです
うろ覚えで書くと間違いのもとですね。
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