※この作品はR-18です。

プリズマ☆エルヴァ 第二部 並行世界篇   作:炭団

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クライマックス第一弾。


その16 誰がために

 アーサー王は私たちのことを円卓のメンバーに、どう説明したのだろう? セイバーなんて怪しいことこの上ないのに。

 そんな私の疑問をセイバーが念話で教えてくれた。

 

 〈チッ……。怪しいはないだろ? けど想像付くだろうが、英霊を上手くゴマカして説明したらしい。つまり過去の英雄たちが正義のある国を救けるとな〉

 〈正義の定義なんて主観の産物ですよ。勝てば官軍で、言ったもの勝ちの勝ったもの勝ちでしょうに〉

 〈そうだ。民や騎士が納得して、結果が勝利なら、善悪はほとんど問われん。それで私とモードレッドにランスロット卿のことは、遠い親族と説明していた。卿が兄でモードレッドは妹だ〉

 〈三兄妹?〉

 〈エルたちを見て思いついたそうだ〉

 

 さっきの食堂から長椅子が運ばれ、私たち三人とシンイチにウェイバー、それとママたちに舞弥さんは円卓のそばで座って会議を眺めていたのだ。

 ロードはまだ良いとして、トオサカに父がちゃっかり円卓に座っているのが驚きだ。

 アサシンさんも代表して、あの女性型が座っている。他の男性型は円卓を囲むようにして気配を消していた。これって肉眼で見ていた頃なら、かなり意識しないと見えなくなっていたと思う。

 だけど今の私には、アサシンさんたちがどこにいようと見えていた。そして一度認識してしまうと、扉の外にいようと城の外にいようと、その存在を感じられた。

 

『分裂した姿は全部で80人でしょう?』

 

 そう女性型のアサシンさんに話したら、ものすごく困った顔をされた。悪いことをしちゃった。けれど私も29番や83番のように別の自分を出力して、別々に動けるよと話したら、とっても興味を持たれた。

 それで、本当の自分が誰なのかわからなくなっちゃって困ってるんだって教えてくれた。そのとき、『我思う故に我あり』とは軽く言えなかった。というのは、第19代教主とも聞いていたからだ。

 それぞれが別人だと考えるのは簡単だけど、そうなれば誰が教主なのだと別の悩みが出てくる。そこまで想像できたから、あえて返事をしないで、手を握らせてもらったりしながら観察した。

 心も読んだりしたのでわかった。思考の分裂でなく、この人たちは最初から魂がたくさんあったのだ。

 つまり一人の赤ちゃんに10人くらいの魂が入っていて、その10人が10人とも7~8人分の並列思考や分割思考を生まれつきでできていたのだ。

 それもエキスパートだ。役者さんが演じ分けられるとかのレベルじゃない。まるっきりの別人に思考が切り替えられるのだ。

 そんな天才肌の魂が、引き寄せ合うように一人の赤ちゃんに入ってしまった。たぶん呪術や薬品を用いた、人為的な結果だと思う。

 そこからアサシンさんたちと、個別に話して簡単なカウンセリングをするようになった。だけどそれはもっと後のお話で、この頃は女性型を含む数人としか話したことがなかった。

 そして不思議なことに、アサシンさんたちはセイバーとやたら仲が良かった。

 

『彼女は理想の上司ですよ』

 

 そうなんだ?

 

『アーサー王は堅物ですが、彼女はそうではありません。清濁併せ呑む覚悟がある。そういう意味であなたはセイバーの良きマスターですね』

 

 そんなことを言われてしまった。

 

「元でこの数字の倍か……。よくこれで今まで勝ってきたものよ。騎士どもの一騎当千ぶりが目に浮かぶわ」

「お褒めに預かり光栄だが、対するピクトは10倍だ。いや、今回を好機到来と更に数は増えるだろう」

「さりとて北方は大地が痩せておるのだろう? 魚介を食べるにしても断崖絶壁が多く接岸が難しいらしいと聞いた。ならば痩せ細った兵卒ばかりであろう。時間が押せば体力が失くなる」

「それはこちらも同じだ。できれば短期決戦で臨みたい」

「ならば……。追い込んで一箇所に敵を固めよ。余に秘策がある」

 

 大王は多くを語らずニヤリと笑った。ただ、セイバーには戦法を話していたようだ。

 

「ともかく彼の言う通り、相手を一箇所に誘導して欲しい。そこで一網打尽にする」

「言うは易いが、それも聖剣でよく使った手だ。蛮族でも学習はしているだろう。難しいぞ?」

「聖剣ほど相手を固める必要はない。大雑把で良いんだ。ある範囲というべきか」

「燃える水や魔術を使うのか?」

「まぁ、そんなところだ。ただし、こちらも動かねばならんぞ」

「それは当然だろう」

 

 大王が何をしようとしているのか? 私にはさっぱりだった。

 ともあれ会議は滞りなく終わり、出発は明日の早朝だった。アーサー王はこちらが断る場合も想定して、準備だけは終えていたようだ。

 そして大王がバーサーカーとモードレッドに言った。

 

「お主らは組んで、追い込み猟の一翼を担え。特に小娘、貴様は奇襲・奇策に長けておるだろう? そこを活かせ」

「……! お、おう!」

「バーサーカーは戦局を見て動け。小娘を手伝うも良し、その武の翼を広げるも良しだ。ランサーは別方向から追い込みを掛けよ。できれば王国の騎士どもの動きを読んで助けてやれ」

 

 ランサーさんはうなずいたけれど、円卓の騎士がムッとした。

 

「バカモノ。お主らではないわ。部屋持ちのお主らを上級とするなら、食堂で雑魚寝する中級、城の周囲か上級騎士の納屋や倉庫で眠る下級の騎士などがおろうが? その下級騎士とお主らの力量差が大きすぎるのだ。特に若い者の多い下級騎士を守らねば、ここまで戦士が減った国は他国からでなく自国の情勢で潰えるのが目に見えておる。それは短期での会戦の多さから来る弊害であり、お主らの腕が立ちすぎるがゆえの弊害でもある。お主らが老いさらばえた暁に、王国を担うのは誰だ? 後進の育成は怠らずやったと言うであろうが、たび重なる戦がその楽観を許さん。現状をきちんと把握せよ」

 

 凄い。大王は、この人には珍しいくらいまともな正論を述べたらしい。

 

「珍しいの?」

「そりゃ、東征で自国の内政を置き去りにして、帰ってすぐに死んだんだからな。後に国や統一した地方が割れたのも、後継者問題に手を打たなかったからだ。まぁ、たぶん自分のことじゃないから客観視できているんだろうな」

「ウェイバーは厳しいね?」

「そりゃそうだろ。こっちも他人事だしな」

「うわぁ、無責任」

「無責任で良いんだよ。普通の人に国一つを担うなんて無理だ。僕にできることは、ライダーに魔力をしっかり渡すことと、お前は正しいと言い続けることだけだ」

 

 そっか。それはそれで正解だと思う。ウェイバーも変わってきた。

 また不思議なことに奇策に期待すると言いながら、ライダーは夜襲や大掛かりな罠は使うなと釘を刺していた。この件を後でセイバーに尋ねると、こんな風に返された。

 

『夜襲で天幕を燃やすのか? あいにくこの時代に火薬はないぞ? 油も獣油しかないので大量に用意できん。そこで魔術師の出番となるのだが、どこの国も生活に密着した魔術師ばかりでな。マーリンでも戦術的な魔術は少ない。また、何万人も一度に掛ける幻術なども難しい。ピクトはその手の幻術に耐性が高いのと地形の問題がある。突き落とせる崖なんて海岸線にしかないし、岩を落とせる山もないんだ』

 

 そうだ。私の考える程度のことならセイバーも大王も考えて当然だった。

 

『それに宗教的というか民族的なものかな? 襲ってくるから戦うのであって、誰も相手の滅亡までは望んでいない。そのことを察しているから、ライダーは若い騎士を守ると言ったんだ。この言葉だけで円卓は落ちたも同然だ。彼らも今の地位にあぐらをかいている訳ではない。寝食をともにし、自らが鍛えた若い騎士が死んでいくのを何度も経験している。その悲哀は決して拭い去れるものではない。こういう機微が読めるところがライダーの偉大さだな』

 

 なるほど……。もしかしたらカムランの反乱軍も、王や国をひっくり返したいのでなく、この行き詰まった情勢と世の中に嫌気がさしてなされたことだったのかも。

 王ですら何度もやってくる侵略者を完全に止められない。その場で制圧しても何年後かに再びやってくる。それが民族移動だ。

 こんなのどうすることもできない。だけど王を信じたからこそどうにかして欲しかった。根底にあるのは厭戦ムードだったのだろう。

 というのは、家に帰れば家族や使用人が真っ先に戦争を嫌がるだろうから。その苦情を毎回出立のたびに聞かされるのだ。円卓の騎士の家で暮らす若い騎士なんて、こういう愚痴を何度も聞かされたことだろう。

 要はモチベーションが上がらないのだ。東征は荒唐無稽だったけれど、モチベーションを上げるには当時としては良いお題目だったのだと気付かされる。

 こういう考えは現代でも通用する。売上目標も大切だけど、企画会議から上がったキャンペーンやイベントが成功すると、半期は勝ったも同然だ。

 そしてそういう一丸となったイベントが成功すると、不思議と流れが良くなり売上も伸びる。そうなるとボーナスがすんなり出せる。

 他国から奪うか、顧客の財布の紐を緩めさせるかの違い。断然私のほうが正しいと言い切る自信があるけれど、人を扱うとはそういうことだ。

 

 城を退去した私たちは、ケイ卿の村に戻った。

 

「フロントを一丁落としたいね」

 

 なんてことを話しながら、ママたちがバイクを整備していた。

 

「余は明日、戦車を出すゆえ……。モードレッドよ、これに乗ってみるか?」

「良いのか?」

 

 バーサーカーの通訳を介したママが声を上げた。

 

「乗るならこちらにして下さい! その限定物のセローは、お嬢様が大きくなられたときに乗っていただこうと用意したものです。鎧で傷が入ったらたまりません」

 

 そうだったんだ? けど、お初はライダーさんだよ。

 けどさっきから私の手をペロペロ舐めているサラマンダーのサランは、こういうバイクが怖くないのかな? うん?

 私は地面に小石で術式を描いていった。冬木で見たあれとか、これとか、ママたちやセイバーのあれ。完成した術式を魔方陣に印し、その中央に立って宝具を発動した。

 

 フォン! フォン! フォ~~~~ン!

 ブォン! ブォン! ブバババッバッ!

 ドルル! ドドド! ドババッドバッ!

 

 これを譜面があるみたいに……。なんて言ったっけ? 誰かが日本語で『コール』とか話していたような。

 

「やかかましい! なんだってんだ!」

 

 ライダーさんでなくモードレッドがビクッとして怒っていた。

 

「これ、1000台くらいに増幅して、音量をもっと上げればピクトの人って驚きますか?」

「モードレッドでもビクッとするくらいだ。昔の人間なら、間違いなく効果がある」

「そもそもこんな音を聞いた経験がありませんからね。とんでもないことを考えますね?」

 

 バーサーカーもセイバーも使えると感心していた。やったね!

 

「ただ、一時しのぎにしかならんから、追い込みのときにしか使えんと思う」

「そこです。戦士は馴れるのが早いですよ」

「いえ、これをピクトの人たち全員の鼓膜で鳴らすのです。延々とリピートを掛けて。命令系統がむちゃくちゃになりますよ。ついでに今日中に呪いに変換します。ブリテンの土地を踏めば、1年365日24時間、この音に悩まされるように」

「それだ! 偉いぞ、エル!」

 

 セイバーが私を抱き上げた。

 

「それなら誰も傷つかず、他者を侵略しようとも思わない。そうかぁ、そんな呪術があるのか」

「いえ……初期は魔術ですよ? それを呪術に変換すると言うか……」

「どちらでも良い。お前は今、誰も思いつかないことを考え出したのだ。掛けるタイミングや発動のタイミングは任せるので、頼んで良いか?」

「はい。今までこれでうるさいメディアや政治団体を潰してきましたから。実績はバッチリですよ」

「お前なぁ……」

「王も眠るときは一人ですし、蚊の一匹であの世です」

 

 そこへライダーさんが飛んで来た。

 

「恐ろしいことをのうのうと言うな!」

「けど、シンイチと言いこの子と言い、蟲使いって怖いよな」

「坊主……お前がそれを言うのか。もちっと魔術を勉強せいよ?」

「ウルサイ!」

 

 アレキサンダー大王は強心剤のヘレボルスを愛用していたという説がある。そこからギランバレー症候群に陥って死亡したという。

 それとは別に蚊に刺されマラリアになったとか、毒蜂に刺されて心臓発作を起こしたという説もある。そしてたぶん真相は複合的でヘレボルスの過剰摂取中に毒草の棘か毒虫の針に刺されたのだと思う。

 なにか一つしか理由がないという歴史学者は、人の社会をぜんぜん見ていないと思う。物事の要因はいつだって複合的なものだ。

 

「けどさ。そのピクトだっけ? その相手の王というか首領というか。そいつをプスッと……」

「クルクルパーにする程度ならアリですけど、殺すのは反対です。私、人殺しは最低の方法だと考えていますので」

「そういう教えでもあるのか?」

「11代目を名乗る時の誓いです。跡を継ぐ時の誓約と言いますか。言ってみれば信念です」

「なるほどな」

「なにより、戦争は負傷者を大量に作ったほうが勝ちです。その負傷者を相手の足枷とし、交渉材料に持ち込むのです。人の一部や領土の一部を取れたら大勝利ですね」

「ほぅ、娘。言うではないか。領土とは?」

「北方の沿岸部とそこに住む漁師たちです。港と船を抑えれば、海産物が得られます。そして船の知識をもっと増やせば、海を渡って戦えます」

「その通りだッ! 短期的には食料問題がある程度しのげる。しかも中期的には次に繋がる案でもある。そして大陸に渡れば長期的な展望が開ける。小娘、お主はこの国の王より優れておる」

「擁護じゃないが、他国を攻めてまで栄えたくないのが今のあいつの心情だろう」

「ですけど、儲からないマーケットは見切りを早々に付けないと。次のマーケット開拓の資金が消えますよ?」

「セイバー、娘の言うことの方が道理だぞ? 余の時代にも商人は栄えておった。軍は嫌われても、商人は市井に溶け込むものだ。そりゃ、侵略された国から見れば悪だろうて。だがなぁ、どちらが後々まで双方の人や国が栄える?」

「そこだよなぁ。今の私にはわかるが、こういうのも経験というか……」

「頭を打たれる前に変われん為政者は落ちぶれて当然よ」

「ライダーがそのまま生きていれば、日本もマケドニアだったのかも。国旗が似てるから良いのかな?」

 

 ここで猛抗議をしてきたのがシンイチとトオサカだった。愛国心を持つ魔術師もいるにはいる。だから驚きはしないけれど、御三家の二家までが口を揃えたことには驚いた。

 やっぱり日本は暮らしやすい国なんだと、最初に思った通りだった。

 

 

 翌朝未明。

 

「お嬢様、起きて下さい。出立ですよ」

「う~ん……。はい、起きました」

 

 寝袋から跳ね起きた私は、すぐに洋服を着た。表で顔を洗い、お手洗いを済ます。そこへ武装姿のセイバーとともに、鎧を着込んだケイ卿がやって来た。

 テントからのそりと出て来たライダーが、結界の外で戦車を喚んだ。牛の瞳がつぶらで可愛い。

 

「オイシそうな牛ですね?」

「神牛を食うのか!? なんつうことを言うんじゃ」

「けれど、牛も馬も最悪は戦場の携行食でしょう?」

「ブケファラスは断じて食わん! どれだけ荒んどるのだ、娘の時代は?」

「そんなことよりエル。モードレッドとバーサーカーの偽装を頼む」

「そうでしたね」

 

 セイバーから促され、二人に魔術を掛けた。モードレッドはわかりやすく燃えていて、バーサーカーは気味が悪いくらいに静かだ。

 

「今日の二人は怖いぞ」

 

 バイクと戦車に歩きだと差が大きいので、戦車がリヤカーを引っ張った。リヤカーというか、この時代の馬に引かせる車輪付き農耕器具だ。

 これに付いた鉄の刃を土に挿して耕すのだけど、今は刃を取って、人が数人乗れるよう板を上に乗せている。ここに父や舞弥さんが乗った。

 この他、ケイ卿が馬を用意してくれたので、バーサーカーはそちらにまたがり、シンイチを後ろに乗せていた。ライダーの戦車にはウェイバーとトオサカが乗った。

 出発した私たちは、城ではなく荒野に進んだ。日が高くなった頃、戦場が眼下に広がった。青い、入れ墨の戦士たちが草原いっぱいに広がっている。

 こちらもアーサー王と大王を中心に、横長の陣を敷いた。

 

「かかれ~~~ッ!!!」

「おう~~~~ッ!!!!」

 

 ズドドドドという地響きとともに騎士たちが前に向かった。その騎士の三分の一が左に向かった。と同時に、ランサーさんがそれを追い越し、相手の左後方から陣を崩しに掛かった。

 速い。私は慌ててPWのアクセルを吹かした。相手の上空に巨大な魔方陣が現れた。

 

 ブォン! ブォン! フォ~~~~~ン! パ~~~ンッ!

 

 こちらには聞こえないが、相手の鼓膜は破れんばかりに震えているだろう。足が止まったのだ。

 そこを右側から、変装したバーサーカーやモードレッドが襲いかかった。ランサーさんは単独で相手の陣の真ん中まで進んでいる。

 そこを正面からアーサー王の騎士たちが突き破った。あぶれた相手を分裂したアサシンさんたちが襲う。

 

「坊主! 魔力をもらうぞッ!」

 

 周りの風景が薄ら寒い荒野から、灼熱の砂漠へと変わった。

 

「こ、これは?!」

「固有結界だと?」

 

 セイバーがニヤリとしているので、最初から知っていたのだろう。知らなかったのは私たち魔術師だけで。ってか、ウェイバーはなんで驚いてるの! 知らなかったの?

 奥の手を自らのマスターに明かさないサーヴァント。怖い人だ。

 

「肉体は滅び消え去った。その魂は英霊として『世界』に召し上げられ、『世界』の奴隷となった。それでもなお余に忠義を通す伝説の勇者たち────。時空を越え、我が召喚に応じる永遠の朋友たち。彼らの絆こそ我が至宝!! 我が王道であるッ!! これこそが、イスカンダルたる余が誇る最強の宝具────『王の軍勢(アイオニオンヘタイロイ)』なり~~~~~~ッ!!!!!」

「然り! 然り! 然り!」

 

 うわぁ……イエスマンばっかりだ……。

 

「者ども~~~~ッ!! 蛮族に貴様らの勇姿を見つけよ!! ブリテンに見せつけよ!! その栄誉は後世にあまねく伝え広がるッ!! 我らこそが、最強の軍団だッ!! 蹂躙せよ~~~~~っ!!」

 

 これは……。けれど大王の意向を汲んだのか、虐殺には至らなかった。相手はほぼ全員が、生け捕りにされようとしていたのだ。

 10分が経ち、20分が経ち……なのに集団の奥からの断末魔が止まない。

 

「どうして? 誰がやっているの!」

 〈エル、本命が来たぞ。しっかりマスターたちを守ってくれ〉

 

 セイバーからの念話だった。ママたちや私、そしてシンイチが使い魔を飛ばした。その使い魔の目は、赤いへんてこりんな上着を着た、白髪の男を写していた。

 

「あれは、シロウさん……?」

 〈違う! アーチャーだ! アラヤの守護者が歴史修正に現れたのだ!〉

 

 やがて人々の中央にポッカリとサークルができて、その中心にあの男が立っていた。そこへもう一人の赤い外套を着た男が現れた。

 同じ双剣を握り、斬り結ぶ二人……。

 

 〈後から現れたほうが、あの日のシロウだな〉

 

 シロウさんがアーチャーを斬り倒した。やった!

 

 〈エル、加勢に行く! 連戦だ! バーサーカー! ランサー! 行くぞ!〉

 

 セイバーがそう言うやいなや、アーチャーと呼ばれた、シロウさんそっくりな男が数人現れた。

 

「ラ、ライダー……!」

「心配するな、坊主」

「一体全体どういう……?」

「我らももとは一個の人間よ。その誇りがあるゆえ、ここは引けんのだ。これは『世界』との戦争だ」

「お前それ! 黙ってたな?!」

「絶対にこうだとは言えんかったからな。が、セイバーはもとよりそのつもりじゃった。己の分身であるアーサー王とモードレッドを世界から守りきり、英霊にさせん……。それがやつの願いだったのだ」

 

 セイバーは私の言葉を……。

 

「セイバ~~~~~~ッ!!」




このお話はまだまだ続きます。
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