※この作品はR-18です。

プリズマ☆エルヴァ 第二部 並行世界篇   作:炭団

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今回はプリズマっぽい話。


その23 サクラを救え

 ランサーは不思議に思っていた。確かにランスロットやシンイチととある屋敷に行った。するとそこは少女が一人いるだけで、他に誰もいなかったのだ。

 だからランスロットやシンイチの薦めもあってバスを追いかけた。そして教会の戦いに参加した。それを無事終えて、拠点に帰ると、ランスロットがライダーたちと膝詰め談判をしていた。

 いや、そこはまだいい。そういう場面はこれまでも何度か見ていた。あのライダー……征服王は思った以上に議論好きだ。

 が、問題は座布団をかき集めて寝かしつけられた少女を、シンイチに主やトオサカにエミアが囲んで深刻な顔をしていることだった。

 

「主よ、いかがされましたか?」

「お前が騎士であるなら、断じて許せんことが判明した」

「え?」

 

 主はこの1年で騎士というものを理解して下さっていた。オレというあり方を、ブリテンの騎士を見て認めて下さったのだ。だからこそ、『騎士として許せないこと』というのが気になった。

 が、このランサー……オレことディルムッドも、この1年で主のあり方を理解した。あの方は現代に於ける魔術師の最高峰であり、その神秘へ向き合う姿勢はまさに王侯貴族にも等しい。

 そんな方が黙しているのは、事態がそこまで深刻である証拠だ。また、この家の若き主たちを待っているのだとも想像できた。

 そこでライダーたちの話に耳を傾けると、色々と見えてきた。少女はシンイチの指摘通り、なにかに寄生されている。そして常に魔力が欠乏している。余命もあと僅か……。これか、主たちが悩んでいたのは……。

 

「ただいまぁ~」

「うん? 皆んな、どうした?」

 

 振り向いた皆んなの顔の中心に、横たわり目をつむった桜の顔が見える。

 

「桜、どうした!?」

「え、桜? 桜がどうしたの?」

 

 なんだ……大人たちの顔が真剣で怖いくらいだ。

 

「凛……。桜を魔術探査したことはあるか?」

「時臣、並行世界だぞ?」

「わかっているよ、切嗣君。不可侵の盟約があり、そこに縛られていたことも想像に難くない。それでも聖杯戦争が始まる前に、令呪の確認などやるべきことはあったはずだ。そのときに内部まで探査したかどうかなんだよ」

 

 どういうことだ?

 

「遠坂……?」

「うん……。妹だから、真っ先に疑った。だから令呪が浮かんでいるかどうか確認した。けど……内部までって?」

「私たちの診立てだが、おそらく……体重の三分の一が異物で、内臓のほとんどがその異物に食い荒らされている」

 

 え?

 

「どういうことですか、お父様?!」

「ここの私を恨みなさい、凛。間桐は蟲使いの家系だ。桜は死なぬよう長い年月をかけて蟲の苗床となっていた。治してあげたくとも、ここまで来れば……。それに保って一ヶ月程度だろう」

 

 嘘だろ……? 嘘だよな……。

 

「そんなの嘘だ!」

 

 そして次に俺が気付いたときは居間でなく廊下だった。襖を破って廊下でノビていたんだ。殴ったのはオヤジだった。時間にして数秒だろう。気付いた俺は目でオヤジに詫びた。

 当たり前のことだ。動顛してどうする。遠坂のためにも俺がしっかりしないと。桜のことに何一つ気付かなかったのは、遠坂だけの落ち度とは言いづらい。

 むしろ毎日顔を会わせている俺が気付くべきことだ。なのに俺は何も知らず気付くこともなく……。自分自身のバカさ加減に頭がクラクラする。

 だけど……そんなことより今の状況だ。何か、何か手はないか?

 

「時臣師、先生。僕が罪を被ります」

 

 そう言ったのは、緩いウェーブの青髪を持った少女だった。この子も魔術師でマスターだとは聞いていたけど、誰なのかは聞いていなかった。

 

「エルちゃん。頼む。慎二を使う」

 

 その言葉をあちらのセイバーが、イリヤ似の少女に訳していた。

 

「セイバー、あの言葉は?」

 

 俺は俺達のセイバーに尋ねた。

 

「ドイツ語です。あのエルと呼ばれた少女が何かをするのでしょう」

「並行世界のオヤジの娘らしい」

「それでイリヤスフィールに似ているのですか……」

 

 俺は教会からの道すがら、それなりのことをセイバーに話していた。新たに来たサーヴァントが、第四次に出ていたサーヴァントだと指摘したのはセイバーだ。

 そして見た目が余りにも異なる、もう一人のセイバーに彼女は驚いていた。その驚きや戸惑いがあったからか、救けられたことに感謝を述べても、それ以上の会話はなかったんだ。

 そして銀髪の少女はパミという別の少女と、ミトという姉らしき人を伴って居間から出て行った。その後ろを青髪の少女がついていき、あちらのセイバーが桜を抱えて後に続いた。

 だから、俺と遠坂も行こうとしたんだ。だけど……。

 

「来ないほうが良いですよ。何かをなすには必ず対価が必要です。僕たちは今から、あの城で捕まえた間桐慎二を対価にして桜さんを救けます。彼女に支払う報酬は慎二の眼。それでイリヤさんの目も元に戻ります」

 

 な!? つまり慎二を殺すってことか? そんなの……。

 

『士郎────誰かを救いたいということはね……他の誰かを救わない、ということなんだよ……』

 

 ああ……オヤジ……。

 

「これは私のエゴよ。桜を散々虐待してきたアイツがどうなろうと、私は桜を取る」

 

 それが普通の考え方なのか……? 両方救いたいって思う俺はヘンなのか……?

 少女たちの足音が離れの使っていない部屋の前で止まった。中から扉が開き、メイドたちが出て来た。しまった。掃除をしてくれたのか。

 扉の前で黒い騎士がどかりと座った。誰も立ち入れさせないという無言の意思表示だった。パミという子とミトという子が、隣のイリヤの部屋からイリヤを支えて出て来た。そして騎士が起き上がって扉を開けた。

 

 すると桜をベッドに横たえたあちらのセイバーが出てきて、俺たちにこう言った。

 

「あの子からの言葉だ。『ここぞというときに、煮魚にするか刺し身にするか迷う者は、料理人にも向いていないし、一番生命の恵みをわかっていない』とな」

「え?」

「迷う間に鮮度が落ちる。即ちチャンスをものにできないという意味だ。あの子ならサクラもシンジも救える。ただしシンジは今までのシンジではなくなる。そいつの面倒をみるのがお前たちの仕事だ。邪魔になるから居間に戻ろう」

 

 そうして扉が閉まった。

 

「戻りましょう、衛宮君。私たちにできることなんてないわ」

 

 トボトボと居間に戻ると、メイドたちが買ってきた食材を冷蔵庫に閉まってくれていた。それどころか調理に掛かっていた。

 一人は俺の包丁でサバを三枚におろしていた。そしてもう一人は既にフライパンでいくつかのサバを煮込んでいた。その合間に食材を分けたりラッピングしてくれていたんだ。

 なんでメイドたちはサバの味噌煮が作れるんだろう?

 

「悪ぃ、俺がやるよ」

 

 何も考えなしにそう言った。ここは俺の家だからと、軽い気持ちだった。すると二人のメイドたちは振り向きもせず、低い声でなにかを話していた。

 

「セイバー?」

「これを訳すと落ち込みますよ?」

「衛宮君、あっちで話そう?」

 

 そう言って遠坂が、台所から居間の隅に俺を引っ張った。座卓の向こうで、先に戻っていたもう一人のセイバーがビールを飲んでいた。藤ねえが置いていったやつだ。

 

「衛宮君、私も多少はドイツ語がわかるから。思い出して。お父様やあなたのお父様、皆んながここに来たのが昨日の夕方なの。そこで私たちは出会ったんでしょう? その後、キャスターを倒しに行って……。別働隊が桜を救ってくれて、今からその治療よ。わかる? あの子、何歳なの?」

 

え?

 

「メイドたちは、朝方治療が終わるだろうと言ってたの。そして仮眠後に起きてきたあの子に、少しでも栄養が付き美味しいものをと……それしか自分たちはできないからと……」

 

 ああ……なんて迂闊(うかつ)……。そんなことも考えられないなんて……。

 

「身の丈に合わぬ、壮大な夢を持つ者ほど周囲の人々の心が見えぬものなのだ。頭のリソースをそこに全部奪われるからだろうな。それがいかに愚かしいことか。まだ国事に携わる身分ならマシかも知れんが、見知らぬ誰かを救いたいなどと願うバカは身近な危機にすら気付かん。そのなれの果てが教会で斬ったアーチャーだ。あいつのイリヤやサクラがどうなったのであろうな?」

 

 あちらのセイバーだ。俺たちのセイバーが何か言い返そうとしたが、俺は止めた。

 それは俺が何一つ言い返す言葉を持たなかったからだ。だってそれが真実だと理解してしまったんだ……。

 

「人は天秤の皿に乗っているのではない。その両方が大切なら、優先順位を付け人を出すなりして手を広げるしかない。キリツグが貴様に話したことはそういうことだぞ? お前は世界を救うほど偉いのか? お前と全人類は同じ重さなのか?」

 

 そうだ。オヤジはちっぽけだと……。メイドたちと同じだ。大切に思う人へ自分ができる範囲のことしか、人はできないものなんだ……。

 

「リン。こいつをカウンセリングへ連れていき、長い目で治療を受けさせろ。何も無理して倫敦へ連れて行かずともいい。たまに日本で会えばいい。こいつの血がトオサカの血と合うのかどうか……そういうのも調べなきゃならんのだろう? 先は長いのだから。それに我々がどのくらいここに居られるのかも不明だ。並行世界だが、父親と話せ。エルメロイやウェイバーと議論しろ。時間は有限だぞ? あ、今日のところは無理だがな」

 

 そういやオヤジたちが居ない……?

 

「年寄りは先に寝るものだ」

「待って、セイバー。ウェイバーってライダーのマスター……。あの人がエルメロイ先生じゃ?」

「Ⅱ世だろ? 先代がランサーのマスター。あの金髪を撫でつけた男性だ。ここでも戦死していたか……」

 

 遠坂が思いつめたような顔をした。

 

「どうした? 顔が怖いぞ?」

「キレイよ」

「は? そりゃ、遠坂は美人だけど。自分で言うか?」

「な、セイバー? バカだろう?」

「はぁ……あなたは。シロウ、リンの言うキレイは神父のことです」

「そうだ。その神父に彼女の父が殺されたと話していたろうに?」

 

 あ!

 

「そうだ、あいつは?」

「フン……安心しろ。トキオミが、とっくにアサシンに追わせている。当然、目や耳となる使い魔や生け捕る礼装を持たせてな。それがお前たちと、エルやトキオミとの差だ」

 

 ああ……。

 

「貴公。あなたは私かも知れないが……それ以上の愚弄は許しません」

「愚弄ではない。事実を述べているだけだ、人の心がわからぬ者よ」

「な!?」

「サーヴァントとマスターは気質が似ると言うが本当だな? だが、貴様よりシロウの方が一つだけ偉い」

 

 なんだ?

 

「それは……?」

「こいつはバカだが、たとえ聖杯を得ても、あの災害をなかったことにはしない。そんな間違った選択は絶対にしないのだ。焼け出されたこと、キリツグと出会ったこと、サクラや……フジムラだったか? あの者たちに出会ったことをなかったことだけにはしない。だな?」

「あ、ああ……」

 

 思わずうなずいてしまったけれど……セイバーが悲しいような恨めしいような目で俺を見る。どうしてだ?

 そこでガラリと襖が開いた。あの大男のライダーだ。

 

「むぅ~。寝酒を頂戴に来れば、聞くともなしに耳に入った。セイバー、このセイバーはもしや?」

「大王、わかるだろう? こいつはブリテンの復活を聖杯に祈ろうとしていたんだ。そしてそれが無理なら、別の王を立てて欲しいとな。モードレッドが聞けば泣くぞ。なぁ?」

「もっと剛毅な王と思ったが、ここまでとはな……」

「まぁ、アーサー王も色々いたということさ」

 

 な!?

 

「セイバーってアーサー王だったの?」

 

 遠坂の指摘でうつむいてしまったセイバー。

 

「シロウ、世界史の資料か歴史の本はあるか?」

「え? どういう……?」

「ファンタジーの本ならわかるが、どこの教科書にアーサー王が載っている? いつ生まれていつ死んだ? その在位期間は?」

「おいおい、セイバー。そいつはキツいぞ?」

「大王、言わんとしていることはわかる。過去のある期間を変えれば、今を生きる人々の歴史に甚大な影響を及ぼす。たかだかブリテン数万人の命と、その後の歴史を紡いだ何億人もの人々とが等価ではないと指摘もできよう。だから、その考えを改めろと諭すことも可能だ。しかし……実在しない者の願いなど、戯言(たわごと)でしかない。こいつがそれでも願いを変えんと言うなら、私はこいつを斬る」

 

 実在しない……?

 

「……そうだわ。アーサー王はあの時代に起きた、ゲルマン人の大移動を食い止めようとした人々の……」

「その通りだ、リン。兵をまとめ上げた騎士、あるいは豪族の長がモデルのお伽話だ。そもそもエクスカリバーがおかしいだろうが。岩の剣、カリバーンと混同されるのは元は両者が同じだった証だ。そして選定の剣は魔剣グラムがその元だ。ランスロット卿の不義も、ディルムッド・オディナの逸話からの流用だ。すべてが何かの借り物、創作だ」

 

 セイバーが涙を流して叫んだ。

 

「う、嘘だ! あの記憶が、カムランの丘が、全部……全部、嘘だと言うのか!?」

「そうだ。人々が面白おかしく語り継いだ伝承を、後世の者が脚色して書いた物語でしかない。そしてそんな物語の主人公が、こんな風に人格を得て英霊として奉られる……その『世界』の異様さをこそ、リンとシロウは知るべきだ。そこのアーサーのブリテンは、私のブリテンと同じく滅んだのだ。それはそういう物語だった。そういう悲劇の方が大衆には受けが良いからな」

 

 セイバーが放心状態だ。こんなの……。

 

「た、たとえそれが事実でも、そんな言い方残酷すぎないか!?」

「本当にバカだな、お前は。こんな架空の存在が聖杯を得て、世界を変える方が恐ろしいだろうが? 真面目に生きてきた人の……お前の亡き両親や、あの災害で死んでしまった人たちの、全部の歴史が消え去る可能性があるんだぞ? そんな道理もわからぬ者が正義を語るな」

「やめい、アルトリアよ。現代は成人が遅いそうだな? 小僧にはまだ早いぞ」

「そうだな。少々言い過ぎた」

 

 俺たちは黙り込んでしまった。居間にはセイバーの嗚咽と、メイドたちが調理している音が響くだけだった。

 

 

 

 翌朝、起きれば9時だった。昨夜というか今朝は3時だったからな。

 寝過ごしてしまったと居間に行けば、遠坂が正座していて、親父さんに叱られていた。あ……あの寝起き姿を見られたのか……?

 

「ククク……実に優雅な寝起き姿だったね?」

「切嗣君。やかましいよ君は」

 

 ぐるりと見渡すと、子どもたちは……ものすごい目の隈だ。青髪の子はちゃんとしているんだけど、銀髪の三人はうつらうつらと食べていた。そしてあのキツいセイバーとは思えないほど、甲斐甲斐しく少女たちの世話を焼いていた。

 食べ終えたのか、エルという少女が手を合わせた。

 

「イタダキマシタ~~」

 

 ヘンだろ、それ。

 

「ご馳走様だ、エル」

「ゴチソウサマダエル?」

 

 繋げてどうすんだ。けど桜は?

 

「桜もイリヤも元気よ。部屋に行くと驚くけどね」

 

 え?

 

「部屋の床に3歳くらいの女の子が寝ているの。名はマコト。『慎』と書いて『マコト』よ。つまり間桐君のなれの果てなの」

「な!?」

「慎二だった頃の記憶は封印してあるんだって」

「そんな。どうすんだ?」

「経済的に支援するから。この問題はウチにこそあったんだし、子育ては手伝うわ」

「そんな軽く……。そもそもどうしてそんなことに?」

「桜の損失した内臓や筋肉を補うには慎二の身体が必要だった。けれどそうすると、慎二の肉体が維持できない。だからよ」

 

 そこで朝食を終えたらしい青髪の子がやって来て、詳しく説明してくれた。

 

 

「おはようございます」

「おはよう。何か?」

「間桐慎二についてです。彼は間桐臓硯の教育が悪かったのか、かなり歪んでいたようですね」

「いや、あいつはわかりにくい奴だけど根は……」

「桜さんは中学生に上る前から何度も妊娠しています。そして胎児はその都度、蟲に食われていました」

「え?」

「その食われた胎児の父親、その何人かは慎二だと僕は話しているんです。その他は不明です。養父だったのか、行きずりの男だったのか……。士郎さん、あの家はそういう家だったんですよ。彼女は誰にも言えず、一人悩んできたんです」

「そ、そんな……」

「だから了承したの。慎二の身体を使うことを」

「遠坂……」

「悔しいのは同じよ。それをわかった上で、父は敢えて叱ってくれていたの。でないと気分がリセットできないわ……」

 

 俺は思わずオヤジを見た。するとオヤジは視線を、あちらのセイバーに移した。何故か竹刀を持っていた。

 朝食後、俺は道場で臨死体験をした。見知らぬ荒野。延々と剣が突き刺さった大地。遠くに見える丘の上で、あの赤い男が来るなと言ったような気がした。

 

 道場から戻るとメイドたちが幼女と遊んでいた。慎二……いや、マコトちゃんか……。けど、この子ってあの青髪の子と随分似ているな。

 四人の少女は部屋で眠っているらしい。

 

「あの子、女の子じゃないの。男の子だったのよ」

「へ?」

「魔術師であることを誤魔化すために変装していて。元から男の子だったの」

「はい?」

「名前は間桐慎一。並行世界の慎二のお兄さんだったの」

「あ。それで慎二って名前だったのか?」

「どうやらそうみたい。ねぇ、士郎。これって……」

「ああ、俺は狭いんだな。何にもわかっちゃいないんだ……」

「そこに気付けただけでも前進だと思わないと」

「そうだな……。セイバーは? もう、朝飯済んだのか?」

「ううん。道場にいなかったの?」

「いや、会っていない。まさか?」

「ううん。今は私がマスターだから。家の中にはいるわ」

「そうか。しばらく放っておくしかないか……」

「そうね。それと、マコトのことはイリヤの情操面に良いと思うって衛宮さんが。ただし周りの伝えるべき大人にはきちんと話せって。カバーストーリーは、桜のことを明かした上で、あの子の従姉妹ということで」

「そっか……。けど間桐は? あそこって他に大人はいないのか?」

「そこを知ろうともしなかったところがヘンなのよ、士郎は……」

「う……」

「まぁ、それであそこには間桐臓硯という人がいたの。穂群原のPTA会長だけど、知ってる?」

「悪ぃ、知らない……」

「はぁ……。そいつが諸悪の根源。300年以上も生きていた妖怪みたいな爺を、あの慎一君が倒してくれたの。だから桜は自由になったのよ」

「そうだ、言峰って神父はどうなった?」

「森の中を隠れていたの。父がアサシンをやって殺したわ……。復讐なんてものに囚われず、遠坂の魔道を深めろと言われちゃった……」

 

 そんな風にして俺たちの聖杯戦争は、一応終わりを遂げた。

 

 

 衛宮邸。中庭に面した主寝室の一室。

 

「ここのセイバーが起きて来んがどうなっとる?」

「布団の上でウジウジしているのだろう。あれも私かと思うと情けないな」

「言うてやるな。あれはお前さんと違って、ただの村娘がその正義感から重責を担ったようなもんだ。そもそも実在せんと知ると、ああなるのも無理なかろう。それに……きっともっと大望を持った余とか、こじんまりとした余もおるのだろうて」

「いや、私は二人しか大王を知らんが、心意気は変わらんと思うぞ? 貴公の方が話が通りやすくは思うが」

「そうか。余はこんなもんか?」

「ああ、確固とした自分がある。それ即ち実在だ。何より貴公がボケておれば、あの精鋭どもが黙っとらんだろう」

「そこよ。以前話したが、全体の総意が余の考えと乖離しようとする兆候がな……」

「以前聞いて思ったが、それが貴公の歩まなかった未来ではないか? その一抹の不安を感じているのだと」

「なるほど。かも知れんな」

「とは言え……」

「何じゃ?」

「あいつも以前第四次に出ていたのなら、別の大王と出会っていたことだろう。こんな具合に、話し合う機会があったなら……」

「ヘコまされたか……。お主のときはどうだったのだ?」

「ああ。一献交わしたいと、あの森へやって来てな。城で酒を飲みつつ話した」

「ん? その話は聞いておったか?」

「いや、向こうでは大王も私も忙しかったからな。1年もあったのに」

「だよな? どうであった?」

「聖杯を求めるには格が必要だ。となると何も武で競う必要はない。話せば自ずと知れよう……とな。だけど、私は聖杯なんて求めていなかったからな。だから滔々と述べる、その覇道のあり方を聞いていたよ」

「なるほど。余らしい。で、どう思った?」

「これも話したかな? 大王のあの時代の……大王の下に集ったあの者たちには、絶対にそういう夢が必要だった。でなければまとまらんだろう。その一つの答えを大王は正しく示したのだと思うぞ」

「面映いわ。しかしそうよな、余でなければ国はもっと早く終わっておったろう」

「うん、エルもそう言っていた。オータムセールに始まって、クリスマス・キャンペーンまではどうにかなっても、春から夏はスプリング・セールやサマー・セールだけではダメなんだと」

「は?」

「つまり夏の旅行やレストランの食事券が当たるといった、長期的なキャンペーンと、こまめなセールを波状に掛けんと売上が上がらんらしい」

「それが国家の経営にも当てはまると言うのか? たまらん娘よな。とまれ、あの国でわかった。ああまで他国に攻め立てられる弱小国だと、娘っ子のような知識と智慧がなければやっておれん。さすがの余も満点の答えを出すのは難しいと思ったものだ」

「だろう? それを村娘があがいて来たのだ。その意味であいつの心情もわかるがな。だが、それでも終わったことをピーピー言うのは許せん。答え合わせをして、間違ったところに対し、次はこうしようと前向きに考えるならまだマシだが」

「お前さんがそうじゃったものな」

「そうだ。そしてそういう姿勢が、ああいう奇跡を掴めるものなのだ。そうだろう?」

「そうよな。じゃが、あの世界はなんだったのかのぅ」

「わからんが、魔法使いには意味のあることだったのだろう」

「ここのあれもそういうことか?」

「エルが悔しがっていたろう? どうやらあのアーチャーとキャスターは、自分たちを世界に割り込ませるための生贄だったらしいな?」

「我らには自分自身と戦わせてか?」

「そういうことだ」

「ふ~む……ま、それは良いわ」

「良いのか?」

「肉を得るに必要なことと納得できるからな」

「本当に前向きだな? その姿勢があるから、大王はオケアノスに来れたのか?」

「茶化すな。オケアノスとは最果ての概念よ。最初は東の果てが日本と知ってガッカリしたんじゃぞ?」

「それで今度は宇宙か?」

「そうだ」

「確か海底なども調べようとしていたんだったな?」

「うむ。余は知的好奇心が旺盛なのだ」

「家庭教師が最高だからだろ?」

「ブハハハ……。娘っ子たちが言うとったぞ。お前さんは教師に向いとると」

「みたいだな」

「うん?」

「今はそういう道もいいかなと思っている」

「それが良い。お前さんの教え子に娘っ子がおればなお良い」

「まったくだ」

 

 

 その横のもう一つの寝室。

 

「そうではない、ウェイバー君。この術式の場合はこちらの方法を使う。全体基礎科からやり直すかね?」

「す、すみません」

「厳しいな」

「とは言え、あれは降霊科で学ぶ内容ではない。この1年でウェイバー君の知識はかなりのものになっただろう。ロードは彼を買っているんだね」

「イジメてるようにしか見えないけど」

「いやいや、あのテキストもロードが自分で揃えたものだ。なかなかあそこまでできないよ。君も彼に色々教えていたじゃないか」

「カスケイドね。元気にしているかな」

「彼の何が気に入ったの?」

「発想だ。元々罠猟や釣りが得意でね。それを軍事に応用できる頭がある。ああいうタイプが今後は必要だろう?」

「ああ、それで親身に教えていたのか」

「娘に言われたのもあるけどね」

「オーク殺しの娘が竜殺しって……まるで夢のような1年だったね」

「まったくだ」

「ここの息子は導いてあげないの?」

「う~ん……時臣と違って僕は彼と接点がないんだよ。何を言えば良いのか」

「肉体言語は使っていたよね? だけど、そうなるよなぁ。でも……ここの君はどうして彼を医者に診せなかったのだろう?」

「僕自身がPTSDだとわかったのが、ここ最近だ。ここの僕も、そういう知識がなかったんだろう。それと、泥の呪いで精神的に一杯一杯だった可能性が高い」

「令呪で聖杯を破壊させた……か」

「ここのセイバーだろう? すごい目で睨んでたよね?」

「うん。なんでも冬木で3回しか会話がなかったそうだよ。それってつまり……」

「令呪による3回。そんなのでプロジェクトが成功するかって、娘なら言うだろうなぁ」

「言うだろうね、あの子なら」

「エルと出会わなかった僕……違いはそこだろうな」

「もう一人の娘さんは?」

「早く会いたいよ」

「ここのだよ」

「ああ、その意味か。今日の夕方か明日の午前中に封印するらしい。まずは桜ちゃんが最優先だったからね」

「ここの私は何を考えて桜を養子になんて……」

「わからないけど、何かあったんだろうね」

 

 

 衛宮邸、三室続きの一角。

 

「起きた?」

「おはよう、ミト。今何時?」

「お昼の12時。ママたちが起こしてこいって」

「エルは起き……てないか。後で連れて行くよ」

「それがお鍋でさ。揃って食べないと失くなっちゃうよ」

「お鍋?」

「うん。トットリってところで水揚げされたズワイガニでマツバって言うんだって。それの不揃いなのが、魚屋さんで安かったんだって」

「おお……それは起こさないと」

 

 

 今、俺は猛烈に感動している。かつてこの家でここまでカニが食卓に並んだことがあっただろうか。

 確かにどれもこれもが、脚や爪が欠けた不揃い品だ。だけど甲羅にはカニビルがびっしりで期待が持てる。それに浜茹ででなく活けだ。

 これだと一杯7~8千円はするんじゃないか? 安くとも6千円は超えると思う。台所を占領されるのは不本意だが、この食材を提供してもらえるなら文句も言えない。

 それに何より、この二人のメイドさんはやたら料理が上手い。下拵えの段階から只者じゃない。それに目利きが鋭いし、調味料も良いものを使っている。

 お米もこちらの事情を察してか、俺が普段使うグレードより少し良いものを30キロも買っている。それを研いだあと冷水に1時間は浸け、これまたどこからかで仕入れた文化鍋で炊いていた。

 電子炊飯器で炊くより、専用の鍋で炊くほうがウマいのは俺も知っている。だけど……今は休んでいるけど、普段学校がある学生に鍋炊きは厳しいんだ。

 

 海外の人向けだろうか? バタークリームで仕立てた甲羅焼きとボイルした脚が全員分並んでいる。その食卓の真ん中にウチではちょと使わない9号か10号の鍋が三つも並んでいて、グツグツとカニ鍋が湯気を立てていた。

 あのカセットボンベのコンロも家のじゃない。わざわざ買ってきたのか……ただ美味しいものを、大切な人に食べて欲しいという一念で……。

 その他の小鉢なども豪勢だ。キンメダイの煮付けにゴボウと高野豆腐の炊合せ。それと茶碗蒸しだ。カニでなく、具はユリネやギンナンに、戻したシイタケやカマボコだ。こいつのダシがまたウマい。

 眠たそうにしていた三人の女の子は満面の笑顔だ。慎一という子も、フーフーと冷ましてほぐした身をマコトに食べさせている。ああいうのを今後はしなくちゃいけないんだな……。

 

 たぶんエルという子だ。顔を上げてドイツ語だろうか? 遠坂に何かを話していた。すると遠坂の顔がみるみる変わった。

 

『リンさん。リンさんはサクラさんの命とその後の人生にいくら支払えますか?』

『お礼なら後でちゃんとさせて頂くわ』

『蟲に関しては技術料のみです。対価はシンイチがシンジで支払ってくれましたので。イリヤスフィールの眼球もシンジの骨髄やリンパ節の変性で鋳なおせました』

『それもどうかと思うけど……どういうこと? 他にも何かあるの?』

『心臓です。寄生していたマキリは取り出しましたが、サクラさんの心臓は聖杯に変質しかかっていました。これを元に戻すにはもう少し対価が必要です』

『え? 心臓が聖杯……?』

『マキリが自分だけの聖杯を望んだのでしょう。それよりも心臓を作り変える材料です。これ以上はマコト(シンジ)から奪えません。そこで実姉であるあなたに尋ねたのです。何かないかと』

 

 おもむろに遠坂が、かなり大きな宝石をエルちゃんに差し出した。そこを咎めたのが遠坂の親父さんだ。

 

「凛。この子はかなりの魔力持ちだが、今は桜のために少々魔力が不足している状態だ」

「はい、それは」

「なら、家宝の宝石はどうした? エルちゃんが重要視しているのは、魔力の性質なんだ。それがわかるから、その宝石を出したのだろう? 桜も元は遠坂だ。あれならば十分対価になる」

「……それを触媒にしてアーチャーを……」

「中の魔力は関係ないだろう? 魔力はどうした?」

 

 遠坂が俺を見た。なんだ?

 

「ランサーに心臓を刺された衛宮君を救けるために……」

 

 え?

 

「時臣、そこにある宝石のいくつ分くらいになるんだ?」

「それよりも一回り大きいものの、10個分といったところか……」

 

 そんなにも? あいつは俺のために……? 引き出しに閉まってあるあれは返そう……。

 

『お嬢様、私の足か腕を対価に』

『戻ってから付け直すのは簡単でも、それがサクラさんに馴染むかどうかは別です。シンジとサクラさんも血は繋がっていませんが、それでもマキリの魔術に馴染むよう改造されていました。それがあったから錬成がうまくいったのです。ゼロから鋳造した心臓ならともかく、ママたちの体を使うのは難しい……正直私もそこまで研究が進んでいません。この先は未知の領域です』

『なら! 私の腕でも脚でも使って頂戴!』

 

 遠坂の叫びの後……大人たちとエルちゃんが、ドイツ語で何かを相談していた。

内容が不明だったが、オヤジの言葉でなんとなくわかった。

 

「士郎。愛する人の身体から脚が一本失くなるが、良いか?」

「オヤジ、どういうことだ?」

「桜ちゃんの心臓は間桐の爺さんによって聖杯に作り変えられていた。封印だけならこの子でもできるが、そんな程度じゃ桜ちゃんの寿命は短いままだ。だけど血を分けた姉妹の筋肉を変成して使えば治せる。もちろん本人の脚でもだ。そしてもう一つの手はそのマコトを対価にすることだ。だけど、それはしたくないんだろう?」

 

 そんな……そんなことって……。

 

『お嬢様?』

『なに、ルオン・ママ?』

『トオサカに魔杖がありませんでしたっけ?』

『あ! 私がそれを使って未来の私をダウンロードすれば……』

『そうです。それが一番確実ですよ、お嬢様』

『待って』

『待ちたまえ。当家のルビーは性格に難があって……』

『そう、そうなの。桜のためにあなたを犠牲にできないわ……』

『たかだか礼装でしょう? 用意して下さい。時間がありません』

 

 それで食後、遠坂と俺、そして遠坂の親父さんが遠坂の家に向かうこととなった。護衛にはあちらのセイバーが着いてくる。そう決まった頃、ようやくこっちのセイバーが居間に来た。

 

「セイバー?」

「申し訳ありません、シロウ」

「もう、良いのか?」

「ええ。ここに私がいる、それがすべてです。シロウたちが私を覚えていてくれるなら、私という存在にも意味があった」

 

 そこで声を掛けたのがあちらのセイバーだった。

 

「そう来たか。悪くない考えだ」

「じゃが、もちっと欲があっても良いのにのぅ」

「どういう意味だ?」

「エルは英霊を受肉させるクスリを持っている。私たちはそれを飲んで、第二の生を生きると決めたのだ。ただ、今は皆んなを守らねばならん。それで元の世界に戻って落ち着いてから飲もうと決めてあったんだ」

「そんなクスリが……?」

「ああ、あるんだ。夢幻のブリテンを求めず、現世で生きてみないか?」

「生真面目なのはわかるが、頑張り過ぎも良くない。ここで普通の娘として生きよ。そして自分の幸福を求めろ」

「オレもそう思うぞ?」

「ライダー……ランサー……」

 

 そんな風にしてセイバーが立ち直ったので、俺たちの護衛にはセイバーも着いてきた。ただし、セイバーがメシを食ってからだけど。そして道すがら、これまでにあったことを話した。

 もちろん、知らなかったとはいえ命の恩人である遠坂には何度も頭を下げた。親父さんは憮然としていたけど。

 

「そうでしたか……そんなことに……」

「そう。だから今はあの子にルビーを握ってもらうしかないの。本当に申し訳ないわ……」

「だけど遠坂、そんなにリスクがあるのか?」

「あの子、まだ8歳でしょう? トラウマにならないかしら」

 

 一体、杖を握ると何が起こるんだ?

 やがて数回しか入ったことのない遠坂の家に着いた。親父さんが自分の家かのように先頭で入った。

 

「凛。解錠キーは定期的に替えなさい」

「ああ……。ごめんなさい、お父様……」

 

 遠坂が借りてきたネコみたいだ。だけど、とても嬉しそうだ。10年だもんな。こんな広い家にたった一人で。

 

「士郎は玄関で待っていて。ここから地下の工房まではトラップが多いから。一度外すと後が大変なのよ」

「それもあるが、ロードや切嗣君が遠慮してくれた意味を考えなさい」

 

 あ、他家の工房だから……か。

 

「セイバーもここに居ろ。いくらリンと契約していても、そうそう覗いて良いものではない」

「そうですね。シロウがあまりにもオープンなので」

「礼儀作法でもなんでもそうだ。レベルの低い者と付き合うと自分までが堕ちて行く。トキオミが危惧しているのはそこだぞ、シロウ?」

「う……精進します……」

 

 そうして10分ほど経ったら、親父さんと遠坂が箱を抱えて現れた。

 

「この中?」

「うん。危険だから戻ってから開けるわ」

「そこまで危険なのか?」

「少なからず私も凛も被害を受けている。それをみすみす……アインツベルンの総裁に……。良いのだろうか……」

「ですけど、彼女は請け負ってくれたわけですし。それに他にもう手はありません」

「そうだね。あの宝石が残っていれば……」

 

 怖い……。睨まないで下さい……。

 そうして俺たちは家に戻った。道中、ほとんど俺が抱えていた。それで親父さんの気が晴れるなら……。

 それに思ったより箱は軽かった。だから安請け合いしたんだ。だけど、箱が大きいので腕がダルい。その箱を離れに運ぶと、エルちゃんが待っていた。

 エルちゃんは何の疑問も持たず、箱を開けた。

 

「ちょ、この子ってばあっさり解錠しちゃうの?」

 

 厳重に魔術の鍵が掛けられていたらしい。

 そしてパカンと開けて、布で包まれた棒状の何かを取り出した。その布をほどき、エルちゃんは呪文を唱えた。

 

「な、なに、この呪文?」

「う~ん……起動に一手間必要だったのか……」

 

 すると廊下がピカッと光って、ミトちゃんみたいな女の子が立っていた。だけど、その服装は……?

 

「なんで、アーチャーみたいな恰好なの?」

「あれ? これってどういうこと? 未来の私って半英霊なの?」

 

 姿も不思議だけど、日本語がペラペラなのが謎だ。

 

「まぁ、良いや。ちゃちゃっとやっちゃおう。ルビー?」

『はい、お任せ下さい。エルヴァさん』

 

 つ、杖がしゃべった?!

 

「あの子、使いこなしているわ」

「どうも、ルビー以外の魔杖を使った経験があるみたいだね」

「底が知れない子ね……」

 

 それで俺たちは、遠坂を残して一旦居間に戻った。そこから2時間かな。3時半か4時にエルちゃんがやって来た。

 

「成功です!」

 

 やった!

 

「ちょ、エルなのかい? なんて格好だ」

 

そんなエルちゃんの後ろからイリヤが走ってきた。

 

「キリツグ~~~!」

「イリヤ! もう目が見えるのか」

「うん!」

 

 となると桜は?

 

「桜は?」

「眠っています。明日には起きてくるでしょう。大成功ですよ」

 

 良かった……。

 

「ただし……」

「ただし……?」

「リンさんの魔力をかなり使いました。魔力供給をよろしくお願いします」

「は?」

「あ、別室でですよ? さすがに寝ている妹の横ではねぇ?」

 

 親父さんの顔が怖いんですけど……。

 

「坊主、良いのぅ。うちの坊主も参加するか?」

「しないよ!」

「しかし、1年もあったのに、まだなんじゃろ?」

「ウルサイよ!」

 

 なんだか知らないけど、居間が笑いに包まれた。




次回は元の冬木に戻って第四次の続きです。

11月30日、説明不足だった点を直しました。
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