【三次】 みほエリを見たかった俺はこの先生きのこれるのだろうか? 作:米ビーバー
送信者:西住みほ
件名:学園艦に帰りました
本文:
改めてあの時はありがとうございました。……って言うのも、ヘンかな?
私はエミさんのおかげでまだ戦車道を続けて行けています。
まだまだ色々考えることも多いけれど、お姉ちゃんやエリカさんも気にかけてくれてるってわかったから、何とかなりそうです。
私のことも色々教えるから、エミさんのことも色々知りたいな。
(中略)
そういえば聖グロリアーナはイギリス文化だって聞いているんだけど、朝はやっぱりパンなのかな?黒森峰もパンが主食だけど、小麦じゃなくてライ麦の方のパンでね……(以下延々とお互いの学園艦の違いを考える内容の雑談なので省略)
そういえば次の演習しあ【データ送信量の限界です】
(30分後)
送信者:西住みほ
件名:Re:学園艦に帰りました
本文:
途中で途切れちゃった。ごめんなさい。
そういえば次の演習試合ですけど、黒森峰はマジノ女学院と試合をするために名古屋港に寄港します。グロリアーナの寄港予定が合うようなら、補給の間に色々見て回れたらいいなって思うんだけど。
グロリアーナの航行予定だと補給のための寄港が前日になってるから無理かもしれないけど。一緒に歩けたら素敵だなって……あ、でも予定があるかもしれないし、グロリアーナの生徒会のお仕事とかもあるだろうし、そっちが優先だよね。
*******
エミ「なんだこれは……たまげたなぁ……」
>> Emi
メールの届く「ピロン♪」って音が軽くトラウマになりそうなんだが……。
初手の長文ほどではないが、日に3度のメール攻勢に、きちんと返信を返して行かないと何かあったのかと心配されるメールがおずおずと送られて来て、着実に俺の胃袋に累積ダメージを刻んでいく。
しかしここは我慢なのだ俺よ。エリカとみぽりんの間で相互で話が通っているならこんなレベルのメールになっているはずがない。つまるところ今俺がみぽりんの命綱を握っている状態!これをうまく捌きながらみぽりんの地雷を解除し、安全な状態でエリカまでパスすること―――これは最も過酷で、
*******
ぬぁぁぁぁん疲れますよぉぉんもぉ~~~(疲弊)
何故俺はこうまで疲労しているのか……?それは―――そう
―――夏季期末テストである。
ダージリンからは「成績不振で留年など許しません」と先んじて釘を刺されていたし、俺としてもこの状況で留年なんぞしでかしてXデーに間に合わず改変チャンスをフイにするなどあってはならないことなのだ。
……それはそれとして学力に関してはお察しの俺のおつむでは限界オタクが極まったような状況に陥ることしばしば……頼みの綱としてオレンジペコ(仮)とお仕事(諜報)の依頼にやってくるアッサムの協力は不可欠である。
最近はストレスを発散するためも兼ねたトレーニングに(勝手に)付き合ってくれる舎弟ヒップが癒しであり胃痛枠だったりする。
――月――日
恥を忍んで全力でダージリンに下座ってみた。
結果としては交渉は成功した。したにはしたのだが―――なんで?()
******* E to D
「前期期末試験を乗り切れるように協力してください」
礼を持って深々と頭を下げる目の前の少女に戸惑いを隠せなかった。
私のよく知る彼女は反骨精神に満ち溢れていて、とくに私に“借り”を作ることが何よりも嫌いな女だったから。
「どういう風の吹き回しですの?」
思わずそう聞き返してしまった私は攻められる謂れはないと思う。
目の前の少女、天翔エミは露骨に視線を彷徨わせながらいろいろと思案している様子を見せてから、やがてゆっくりと顔を上げ真っ直ぐにこちらを見た。
「このままだと進級と卒業が危うい」
「貴女どうやってグロリアーナに入学できたんですか?」
すっぱりと真っ直ぐなヘルプコールに一瞬ぽかんと呆けそうになっていた。
彼女の成績不振は知っていたし、多少危なげない成績になるようにこれまでテスト前に勉強会を開いたりしていた。
が、たった一年。実質は半年ほどでそこまで成績が落ち込んでいるとは思いもしなかったのだ。地頭とかそういうものが原因ではなくて健忘症でも起こしているのかと思ってしまうほどである。
―――少なくとも、テコ入れをしなければ卒業すら危ぶまれる。
現状の成績を見るために簡易テストを用意してみたが、その結果を見るにそう思わずに居られなかった。同時に、ここまで衰えた頭脳を再び鍛え直すためには通って通わせての臨時家庭講師では不可能だという結論に至る。
とはいえ、本人にその意思がなければどのみち意味がない。
「――――何をしても留年を阻止したいですか?」
「当たり前だろ」
何言ってるんだ頭大丈夫か?というニュアンスを含んでいそうな声にややイラッとしながらも、言葉を選ぶ。
「どんなことをしても?」
「痛くなければおぼえませぬ」
覚悟は決まっている。その肝の座った返答にこちらも十全にて応えるべきと思うには十分すぎた。
「―――では、今日からそちらに泊まり込んで個人指導しますので」
「……なんで???」
******* D to E
――月――日
激動のテスト週間が終わり、俺に平穏が訪れた。
俺の部屋に泊まり込みで試験勉強をすることになり、俺の胃壁はほぼ限界を迎えた。
テストを終えると同時に精神的なダメージから吐血して倒れた俺は陸上の病院で数日入院して無事(?)夏休みに突入したのだった。
――月――日
ぼくはいま、びょういんにいます。
へいおんって、すばらしいなあ。
******* E to D
テストが終わり、天翔エミが倒れたという話を聞いて「ああ、やっぱり」と高等部紅茶の園の執務室でため息を吐いた。
無理もない。あんなオーバーペースで、睡眠時間を削る勢いで勉強をしていればそうもなろうというものだ。
私が泊まり込みで勉強を教えることになって、戸惑いながらもようやく己の立たされている場所が本当の本当に崖っぷちであることを自覚したらしい。状況を理解させるために初等部の教科書からスタートしたことが拍車をかけていた可能性は否定できない。
鬼気迫ると言った様子の彼女の姿に「留年などありえない」とはわかっていても尋ねずに居られなかった。これまでみてきた彼女の在り方生き方は【必要なもの以外には頓着をしない】というものだっただけに、この状況は疑問を抱かせるに十分すぎたから。
戦車道を続けること以外に執着を感じさせない彼女ならば、それこそ途中で「別に留年しても構わないのでは?」的な堕落の誘いをこっそりと運んでくる後輩のあの娘の言葉に乗ってしまってもおかしくないと思っていただけに……意外だと思っていたのだ。
「なぜそこまで頑張ることができますの?」
私の問いに
「当たり前だろ。こちとら留年なんて足踏みしてる暇なんか無ぇんだよ」
吐き捨てるようにそう答えて再び用意された予想問題集に向き直る彼女の背中に強い決意を見た。それは彼女の行動理由が「意地」であることを差し置いてもより強いものだと感じられる。
そしてそれは、留年をしている時間がない=来年までにどうにかしなければならない
一人では埒が明かないと考えて私は執務室で同じように夏季休校における申請書類と向き合っている先輩へと視線を向けた。
「アールグレイ様。来年度の―――」
そこまで口にしたところで私の頭の中で急速にパズルのピースが埋められていく。欠けた部分を想像で埋めて、頭の中で【結論】が組みあがる。
―――私の上級生にあたるアールグレイ様は現在高校二年生。来年度の大会が最後だということ。
―――天翔エミはアールグレイ様にその素質を見出され、引き揚げられて紅茶の園に庇護されてきたこと。
―――アールグレイ様が「黒森峰を倒し、大会で優勝すること」を目標とする気概にあふれた存在であること。
―――「足踏みしている時間はない」=「一年遠回りしていては間に合わない」という彼女の言葉。
「……ふふっ」
「―――なぁにー?私の仕事半分手伝ってくれるとか?」
艦を離れて夏休みを過ごすことが決定しているため溜まりに溜まるであろう書類の一部を先んじて片付けていたため死に体のアールグレイ様に、結論を導き出した私は小さく噴き出してしまったことをごまかすように
「いいえ、アールグレイ様は後輩に良く慕われておりますわね」
それだけ答えて書類と向き直った。
―――それはそれとしてなんだか出汁にされたようで気に入らないので天翔エミには何かしらの“お返し”を期待しましょうか。
********
――月――日
平穏が終わり、冬の期末試験も同様の精神ダメージで乗り切ることができた。やはり二度目だったため覚悟ができていたことが勝因と言えよう。
「無事進級できた時の見返りは期待しないで置いて差し上げますわ」
なんていうダージリンからの脅迫もあったが、無事進級できそうで何よりと言える。こんな状況で留年してみぽりんを救えないとか笑えなさ過ぎて『おいは恥ずかしか!生きてはおられんごつ!!』と即人生からピロシキする勢いだったし、みほエリの転換ポイントのフラグはおれの手でどうにかせねばならないものなのだから。
――月――日
中等部の卒業式。
俺は無事卒業することができた。思えば三年目はほぼ勉強してた記憶しかない。
というかダージリンが部屋に入り浸っていた状況が胃袋にスリップダメージ過ぎて勉強に没頭することでそれを緩和するほかなかったのが原因なんだが……。
******
卒業式を終えて、涙を流して別れを惜しむ百合ップル臭溢れる集団を抜け出して、中等部紅茶の園で荷造りを終えて校門に向かうと、そこにオレンジペコ(予定)とローズヒップ(予定)が待ち構えていた。
「「先輩!!第二ボタンをください(ませ)!!」」
―――なんで?(困惑)
いやいや待て待て待ちなさい(たやマ感)
第二ボタンってその文化女子校でもあるの?どういう需要なの!?
何で俺なの?エミペコなの?エミローなの?ローエミペコなの?何処の需要なの?馬鹿なの?死ぬよ?(俺が)
どうするの俺!?これ断る理由を考える余裕が今無いし、かといって渡すとしてどっちに渡す?って話になるだろ!?どっちに渡しても渡さなかったほうに角が立つだろ!?俺その時のダメージに耐えられる気がまるでしないんだけどぉ!?
畜生!なんて日だ!!こんなトラップが最後の最後に仕掛けられてるとか予想できるわけねぇだろ!!
いっそ逃げるか!?そんな選択肢も俺の中に生まれてきた。
―――が、ダメ……ッッ!!高等部への進級は決まっている……ッッ!!一時逃げられたとしても、所詮泥中……ッッ!!圧倒的、泥中……ッッ!!絡め取られている……ッッ!!四肢を余すところなく……ッッ!!
どうしようもない状況を前に微動だにできない俺は、この時ごく自然に背後を取られていたことに遅まきながら気づいて―――そのときにはもうすべては終わっていた。
「―――はい。これで万事解決ですわね」
背後から囁くような声が耳朶を打つ。同時に身をよじらせ反転した俺の前にはダージリンがニコニコと普段通りの微笑みを浮かべている。その手には卒業生に贈るための花束を持っていて、そして逆の手には―――今しがた俺の制服からむしり取った制服のボタンがひとつ鎮座していた。
「先のお勉強の対価は“これ”で勘弁して差し上げますわ。では、ごきげんよう」
そう言って俺にぽーんと花束を投げつけておいてさっさと去って行ったダージリンに、誰も何も言えないままただ立ち尽くすだけであった……。
よもやダージリンに心からの感謝をする日が来ようとは思わなかった。
――月――日
高等部の門をくぐる。
さぁ、ある意味でここからが始まりだ。
世界が望んだ
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【 聖グロリアーナの三姉妹!?の長女にインタビュー! 】
聖グロリアーナの隊長、アールグレイ嬢(SN)に、戦車道連盟のレポーターがインタビューを試みました。先方は快くインタビューに応じていただき、本年度の戦車道大会高校生の部について語ってくれました。
「本年度は我らが聖グロリアーナが最も充実するであろう年になります。おそらく過去最強の聖グロリアーナ戦車道隊となるでしょう」
意気揚々と答えるアールグレイ嬢の言葉には、昨年より右腕として彼女を支えてきたダージリン嬢(SN)への信頼と、本年度高等部一年生として入学する『聖グロリアーナの三姉妹』の末妹、『マッハ』の異名で知られる天翔エミ嬢の参加が自信の裏付けであると思われる。(以下略)
< 月刊戦車道 より抜粋 >
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―――何それ聞いて無いんだけど?
『だって高等部以外に流してないからね』 by アールグレイ
次回更新(お相手)
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ダージリン
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ペッコ
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アッサム
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舎弟ヒップ
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パイセン
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本編やって、やくめでしょ?
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聖グロ以外の学園艦