【三次】 みほエリを見たかった俺はこの先生きのこれるのだろうか? 作:米ビーバー
聖グロリアーナ女学院高等部。その門をくぐる少女が一人。
身の丈は小学生のそれながら、背中に背負った気性は修羅のそれ。
並々ならぬ決意と覚悟が背を覆い、まるで立ち上る幽鬼のような何かがうっすらと透けて見えるほどに凝縮された“想い”が、周囲の女生徒達からも感じ取れているようで、朝の登校風景でごった返す状態の高等部正門前は、まるでモーセの十戒の如くその少女の周囲だけぽっかり空洞ができて生徒の列が二分されていた。
が、そんなことは少女には全く関係ない。と言わんばかりに少女は正門前で学院に向けて仁王立ちしていた。
「―――長かった……」
ぽつりと少女が呟く。その瞳の端に一滴、光るものが見えた。
「―――ここから。ここからだ」
意識が己の内面にのみ向いているのか、ぽつりぽつりとつぶやきながら、ゆらゆらとした、しかししっかりと大地を踏みしめて―――
少女は、高等部の学舎へと歩み始めた。
「―――早速高等部の女生徒から苦情が来ているのですけど?」
「……?」
「いえ、首をかしげる話ではなくてよ?ご自覚がなくて?」
始業式から数十分後。少女は生徒会室で正座させられていた。
正座している少女の名は―――天翔エミ。
そう―――――――俺だ。
…………なんで?(素)
>> Emi
――月――日
高等部に進級してとりあえず生徒会にご挨拶。
なんか先に向かってたダージリンと一緒にパイセンに出待ちされてたっぽい。
生徒会長の椅子に座ったパイセンに抱っこされて胃袋のスリップダメージがヤバい(やばい)
「烏帽子子だし冠名いるー?」ってパイセンに耳元にささやき(ASMR)されたのを全力で「お断りします()」したらなんか満足そうに微笑んでいた件。
これ多分断るの理解して質問してたな。さすパイセン、俺のことよくわかってるわぁ(尊敬)
――月――日
高等部にお呼ばれしたオレンジペコ(仮)が正式に冠名を授受され、オレンジペコ(真)になった。
あとなんかついでについてきて紅茶とスコーン摘まんでた舎弟ップがめっちゃパイセンに気に入られてたっぽく、冗談めかして「貴女も冠名欲しい?」って聞かれてローズヒップ()になった。ええんか……?と思ったが、ダージリンもアッサムもなんか諦めた表情してるしパイセンの同級生は苦笑いしてるので、どうやらパイセンを止められる人物はいないらしい。
つまりパイセンが俺が「いやです」と言ってるのを全肯定してくれている今、冠名とか二つ名とかの酷い名前が付くことはないという事だな!Vやねん!!
―――あれ?それはつまり「ぶりゅんひるで」だとか「まっは」っていう名前は変えようがないという事なのでは……?(推理)
******* >> E to O
「冠名を与えなくてよろしかったんですの?」
「―――与えちゃうとね……“連中”に変に付け込まれかねないから……」
互いに紅茶を嗜みながら会話を続けているのは、ダージリンとアールグレイその人。場所はグロリアーナ女学院生徒会室。施錠はしっかりと、この場に居るのは二人と、紅茶をサーブするアッサムのみ。
「今冠名を与えるとなると、卒業後の誰かの名前を名乗ることになるわ。そうしたら、先代の冠名を持つ娘が、必ず彼女に接触しようとする。あわよくば、自分たちの陣営に引きずり込もうってね」
スコーンを乱暴に摘まんでぱくりと一口で食べきって紅茶で流し込むアールグレイに「はしたないですよ」とダージリンが釘を刺す。アールグレイはその言葉に適当に相槌を返して天井を見上げた。
「―――資金難になるのはわかってるけどさー……今すぐにマチルダ会とチャーチル会とクルセイダー会の集会場にいっぺんに隕石落ちたりしないかしらねー……?」
「天の助けを期待するのは、人事を尽くした後でしてよ」
「ダージリンやさしくなーいー。いつからそんな娘になっちゃったのかしらー?」
「ぶーぶー」とブーイングに唇を尖らせるアールグレイに構うことなく自分の紅茶のカップを傾けるダージリン。その瞳が、少しだけ細められた。
「……今年は正念場ですわ」
「だからこそ、よ。横からあの娘に茶々入れられたらこちらの手数が減っちゃうじゃない」
ダージリンは言外に「冠名を与えて味方として手駒に加えるべき」と言い、アールグレイは「メリットとデメリットを鑑みた上であえて遊ばせる浮き駒とした」と語る。双方の言い分を理解するアッサムはただ静かに心に蓋をして紅茶をサーブしていく。
「―――それでも、敗色は色褪せませんわよ?」
「……覚悟の上よ。でもね―――『ダメで元々』なんて痩せた考えで戦うことなんてしないわ。やるからには勝ちを拾うつもりで行く」
グッとテーブルの上に乗せた拳を強く握りしめるアールグレイに、ダージリンは少しだけ微笑んで見せた。
「―――当然ですわ。私も、あの娘も、勝てればラッキー程度の意識で戦うなんて願い下げですわ」
そう言って、優雅に一礼して生徒会室を後にした。
残されたアールグレイの空っぽのカップにアッサムが紅茶をサーブすると、アールグレイも少しだけ落ち着いた表情を見せる。
「―――あとはあの娘の“仕込み”次第ね」
そう呟いて、アールグレイはテーブルの上の書類に視線を落とす。
『西住みほ』『逸見エリカ』『西住まほ』
それぞれにそういうタイトルで付箋が張られた書類には、その名前の少女たちの人間関係を含めた情報がまとめられていた。
「……不敬を覚悟で申し上げますが、あの娘は、“そういう意図”で彼女を救ったわけではないと愚考致しております」
アッサムが声を上げる。アールグレイはその言葉に「でしょうね」と答え
「でもそれが必要であるとなったら、私は『使う』わ。それであの娘に恨まれたとしても」
そう断言した。
******* >> O to E
――月――日
日に3通ほどに落ち着いたみぽりんからのメールに目を通し、ぽちぽち返信しつつ紅茶の会の会議に末席で出席する日々。
火力不足の現状、黒森峰に勝つにはその火力の差を埋めるしかない。が、無い袖は振れないし何より英国戦車に拘ってる時点で碌な火力を持った戦車が無いのだ。
そもそも英国は島国で、陸上に相手が上陸するより前に海戦で仕留めきるか、陸上では戦車なんぞより歩兵の方が主流だった。
だからこそ歩兵の盾になるごつくて堅い戦車が開発されたんだし。つまるところ、英国戦車のみに限ると途端に戦車選びが難しくなるのだ。詰んでない?(推理)
……そう考えたらドイツ戦車を選べる黒森峰と、アメリカの戦車選べるサンダースの優遇っぷりヤバババだわ。そりゃ強い罠(確信)
――月――日
パイセンの、ダージリンの、俺の、そして何よりみほエリの。
それぞれの未来が、この数週間で決まる――――!!
*******
そうして迎えた戦車道高校生大会、準決勝。
聖グロリアーナにとっての【運命の分岐点】と言って良い一戦にて―――
「―――貴女!!そこの貴女!!カチューシャの
「…………なんで?」
―――俺は何故かカチューシャに気に入られて熱烈な勧誘を受けていた。
なんで?(素)
なんか滅茶苦茶気に入られてるわ、パイセンがバグパイプ吹き鳴らしながら行進してくるわ前になんかあったのかカチューシャを護る様にノンナがパイセンを威嚇してるわ―――いやプラウダ戦記で初顔合わせの時になんか謎の衝突があったっけ?(みほエリにあまり関係ないのでうろ覚え)
ともあれ、色々あった(雑感)
ダージリンはなんかクッソ警戒した様子でカチューシャ……ではなく何故かノンナを見ている。ノンナはノンナでカチューシャの号令一下、縮地か箭疾歩*1で距離を詰めて俺を抱き上げ、「うわぁ!?」と声を上げる暇もないほどの速度でメジャーで身体のサイズを測定し始めるし、動きを読んだパイセンとダージリンのふたり掛かりで奪い返しに行った結果なんか俺の身体がモッシュ&ダイブか人力神輿かって状況で弄ばれる(物理)ことになったりしてた。
そんでなんかカチューシャは俺の身長が自分以下だったことに機嫌を良くしてるっぽくてグイグイ来てるなう。だが申し訳ないが俺にとって百合の間に挟まるのは許されざる八つ目の大罪である。カチュノンの間に挟まるとか当然の如くピロシキ案件でしかない。
「試合前に不躾でしてよ?お引き取りになって、どうぞ」
そんな感じの台詞とともに、胸の前で腕組み仁王立ちポーズをとり強めの圧をぶち込んで、据わった瞳でジロリと睨みつけるダージリンの迫力がもうなろうとかの悪役令嬢のそれである。
「……それもそうね。それじゃ、あなたたちに勝って、黒森峰も下して、最強のプラウダの隊長カチューシャ様として迎えにきてあげるわ。楽しみにしてなさい」
「―――失礼します」
ノンナが膝を曲げ、その膝を足掛けにして素早く肩の上によじ登ると、カチューシャはそんな風に言い捨てて颯爽と(反応には個人差があります)去って行った。去り際にノンナがお辞儀をするのに合わせて前のめりに倒れそうになって慌てて腕組み体勢から頭にしがみ付くような姿になったのもご愛敬だろう。
―――その後は、特筆すべきことはなかった。と言うよりそんな暇全くなかった。
いやプラウダの戦術やべーわ。わかっててもやべーわ(迫真)
縦深戦術―――ロシアがまだソ連と呼ばれていたころに開発された攻撃方法で、長距離砲や航空支援を使って縦列方向に幅広く攻撃を叩き込んで相手の防壁を割り、続く突撃で敵兵力を真っ二つに分断する戦術である。
聖グロリアーナの戦術は壁を作り固めた上でそれをゆっくり押し進めて相手を押しつぶす浸透強襲戦術。ゆっくりと前進する壁は広範囲一斉射撃にすこぶる弱い。そもそも英国戦車は鈍重にできているため、広範囲の砲攻撃がクッソ刺さるのだ。
それを何とかするために速度特化のクルセイダーやクロムウェルで駆け回って陽動とかかく乱を行いつつメインの戦車が前進して押しつぶす という戦術を取っていたのが現在なのであるが―――カチューシャは蹂躙戦におけるスペシャリストだった。これに尽きる。立てこもり作戦のために廃墟状態の城塞跡を改造したトラップハウスを丸ごとふっ飛ばされ、崩壊した陣地の中で絶望する一同と、じわじわと前進してくるプラウダの一団。圧倒的な敗色を前に、俺にできることなどたかが知れていた。
「私は装填しかできないからさぁ!狙いつけたり砲撃したりは任せるぜ!」
大声を張り上げる俺に、戸惑いながら「はい」と答える砲手の娘。
「もう大勢は決しました」とか馬鹿な事抜かすダージリンの姿に思わず「お前誰だよ?」とか素で言ってしまったが、俺は悪くない(確信)
だってこれまでウザいくらい俺に構ってきて、あんだけ黒森峰にボコボコにされても諦めないぜ投げ出さないぜ最後の最後の最後まで止めないぜだったダージリンが「もう無理です」とか言うはずがねぇだろって思うじゃん?俺は思った。
その後、なんかすごいドヤ顔で復活したダージリンと一緒に滅茶苦茶砲撃指示を飛ばした。
まぁ意気込みだけで勝てるほど甘い話ではないので、普通に負けたわけだが。
試合後、チームテントで落ち込んでるパイセンがいたんで背丈を合わせるために紅茶とか入った箱の上に乗って「いずれリベンジしますけぇ」って適当に約束したら感極まったパイセンに抱き着かれた件。やめてください死んでしまいます(不夜キャス感)
「―――忘れなさい。さもないと全身余すところなくチューするわ。時間をかけて丹念に、他の誰も見れなくなるくらい」
と詰め寄られ「墓までもっていきます」と誓約した。いや頼まれても自分から誰かに言うつもりもなければ言えるもんでもないんだが?
―――これで問題は、【決勝戦がどうなってしまうか】に絞られた。
>> E to D
「お前、誰だ?」
大勢が決して、もはや敗北は必至の状況でなおも戦おうとする天翔エミに、そんな風に言われた。あまりにも素っ気ない。余りにも気のない。その上に、こちらを見上げて来る無機質な瞳。まるで路傍の石でも見るような―――
―――嗚呼、そうだ。
―――体格に恵まれない彼女は、黒森峰から蹴られた。
―――肉体的に足りない彼女は、日夜トレーニングを行いそれを埋めて行った。
―――勝ちきれないグロリアーナで彼女は、勝利を模索するアールグレイ様の背を見ていた。
そんな彼女が、“戦いの最中に敗北を受け入れる”など、認めるはずがない。
私は何者なのか?
―――天翔エミの先達としてグロリアーナに通い
―――天翔エミの乗る戦車の車長として戦車の指揮を担い
―――天翔エミよりも一年早く、アールグレイ様の背中を見て育った
「―――私は誰?ですか」
フッと口角が上がっていた。これまでの諦めの表情などどこにもない。不敵に笑った顔が手に持ったカップの中の紅茶に映えている。
「―――無論。ダージリンですわ」
「……だよなぁ」
呆れたような顔の天翔エミ。貴女が言い出したのでしょう?全くもって失礼極まりない。ただそれでも、晴れやかな気分で前を向いている自分がいるのでお相子として置いて差し上げましょう。
「―――戦車前進。残っている砲弾全部お見舞いするつもりで攻めなさい!!」
砲撃と前進を命じて、私は手元のカップを一気に呷った。
次回更新(お相手)
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本編やって、やくめでしょ?
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聖グロ以外の学園艦