【三次】 みほエリを見たかった俺はこの先生きのこれるのだろうか? 作:米ビーバー
「アッハイ」
アッサムに促されて紅茶の園に向かうことになった。のはいいのだが―――実際問題、会って何を話せばいいのやらわからん。
「―――よし、明日にしよう」
この時、俺の選択によって何かが分岐した(確信)
――月――日 晴れ
ドロップを買った。
子供が舐める様な、色とりどりのドロップである。
独特の形状をした金属の缶に入ったアレで、カシャカシャと振るとそれなりに小気味よい音がする。童心に帰ったような気分で何度かカシャカシャと振っていると、彼女に怪訝そうな目で見られていた。
――月――日 曇り のち 雨
ハッカ味は苦手な味である。皆意外そうな顔をするけれど、苦手なモノは苦手だからしょうがない。
ミントティーならば別に飲むことに否やはない。だがドロップの独特のべっとりした味覚を塗りつぶす感覚と、後味全てがハッカの味に変わるあの後味の悪さはいただけない。後で飲む紅茶が不味く感じるのは致命的と言えた。
口臭対策には良いらしく、彼女は臭いを消すためによく食べているのを目にする。だったら香りの強いものを飲まなければ良いだろうに
********
時間はやや、巻き戻る――――
******** D to E
――月――日
あの日あの時から別世界にでもシフトしたんじゃないかと思うくらい感覚がズレているような気がする。
おかしい、明らかにおかしいのだ。
―――主にダージリンが()
――月――日
露骨にこっちを警戒しているようで、しかし俺の様子を横目でチラッチラッとみているのが感じ取れる。たとえ背中を向けて居ようとわかるくらいに視線が感じられるのだ。正直怖い。何?お礼参り?お礼参りなの?なんの?(不信)
―――あの一件は俺被害者じゃない?いや加害者になるの?(混乱)
初チューでしたが何か?相手も初めてだった?そうねたとえ相手がダージリンだとしても俺万死に値するんじゃないかな?(思案)
――月――日
とりあえず全力の謝罪から入ってみた。
土下座。それは生の執着の極致―――!!というわけでもなく正直俺自身自分の生命にそれほど頓着してない。
どっちかというと本来の土下座の意味に近い。所謂「許していただけないのならばこのままどうぞ首を落としてください」という意味の全面降伏の構えである。
「この間のことはお互いに忘れるってことで」と前置きの上での土下座。
こう、嗚咽のようなものが聞こえるのでチラッと見上げてみるとさめざめと涙を流していた。うん、死のう(短絡)
「足りないのなら私にできることなら何でもする」と思わず口にしていた。さもなくばこの場で【ファルコ】すべきじゃなかろか?とか思ってしまった。
ブリカスの命令がどの程度のものなのか考えると戦々恐々と震えて来るんだが―――どうしようもない。
******* E to D
「あの日のことはお互いに忘れよう」
ぎくしゃくしていた関係を気遣ってだろう。目の前の彼女は私の前で床の上に座して頭を下げ、そう言った。
土下座というそれである。謝罪の気持ちを示す最上級のもので、これを許さないというのは相手との関係の断絶を意味するのだとか。
―――そっと、自分の唇に手を触れる。顔を上げていない彼女には見えていない。
やや遅れて、ツゥと涙が頬を伝っていた。嗚咽交じりの声が聞こえると思っていたら、わたしのものだった。
子供の様に泣きじゃくる私にどうしていいのかわからず平伏し続ける天翔エミ。堂々巡りのどん詰まり。お互いにどこまでも下がってゆくだけの無限ループの構図を破ったのは、彼女の言葉だった。
「―――わかった!私でできることだったらなんでもする!!」
平伏したままの天翔エミに「じゃあそのまま正座して目を閉じなさい」と命令すると、スッと顔を上げて断罪を待つ罪人の様に神妙に私を見上げるように顔を上向きに、首を自分から差し出す格好で瞳を閉じた。
小学生のような小さな体、整った顔、長い黒髪が背に流れる。少し涙も流していたのか、睫毛がキラキラと明かりを反射していた。
「―――そう、そのまま瞳を閉じていなさい」
耳元で言うとビクリと一瞬震えて身を竦ませたが、軽くかぶりを振って脱力し、再び断罪を待つ姿に戻る。
私は彼女の傍に膝を着いて高さを調整。ちゃんとした角度、自分の立ち位置を計算し、じっくりと距離を詰めていく。
そうして、「必殺の間合い」を形成してから―――彼女の首の後ろに片手を添える。
ぐっと手に力を入れて引き寄せるのと同時に逆の手は彼女の片腕の上から回り込む様に腰の下に。逆方向の脇腹まで手を伸ばしてぐっと彼女の身体ごと引き寄せ―――無防備な唇を奪った。
「―――ん―――」
「―――!?んむぐ―――――」
唐突に重ねられた唇に目を見開いた彼女が抗議に口を開こうとするその瞬間を狙って舌を絡めとる。首の後ろを押さえているので首を振って逃げることも、腰を密着させているので身を翻すこともできない彼女が困惑していたのは、僅かに3秒ほど。
―――だが、勝負はその3秒でついた。
舌を絡めて絞り吸い上げ、絡ませた舌から互いの唾液が混ざる。呆けている彼女の口から唾液を吸い上げて、自分のそれと交えて舌を使って丹念に口内に塗りつけるように―――歯の表、裏、歯茎、舌先、舌の根、順番にじっくりと舌で征服していく。
ちゅぷちゅぷ、じゅるじゅると啜り上げる水音、艶めかしい鼻にかかった呼吸音が二人だけの室内に反響して、それが実に興奮を煽っている気がする。私はこの時確実に、正気のまま正気を忘れていた。
わずか3秒。それだけで困惑から立ち直ることなく腰砕けになった天翔エミから唇を離す。はぁはぁと荒い呼吸でこちらを見る彼女の唇の端から私の舌までツゥーと唾液が糸を引いて、それが挿し込む日差しにキラキラと光っていて―――
「―――今度は事故でも罰でもありませんわよ―――」
もう一度、まだ混乱するままの彼女とキスを交わした。
後々冷静に考えると事故でも罰でもなかった場合この一回は訴えられたら負ける行為だったのだが―――今私は罪を問われることなく生きているので彼女が問題視していないということである。なのでセーフでしょう。
******
――月――日 晴れ のち 曇り
あの日から合図が決まった。そうあろうと思った時はわざとエチケットガムなどの口臭用品の入ったボックスを空っぽにしておく。
殿方はティッシュボックスの位置で同室の方の行為を察して部屋を出るなどと聞くけれど、所詮は雑誌の受け売りに過ぎない。なんて思っていた時期が、私にもありました。
ボックスの中身の不在に気づいた彼女が私の方を見た時に、私がドロップを口にしていたら……それが合図だと、彼女も察したらしい。三度目で、遅すぎますわよ?これは厳罰ですわね。とびきり熱く差し上げましょう。
追記
ハッカ味も好きになれそうだと思った。嫌いが一つ消えるのは喜ばしいことだと思う。
** D to E
――月――日
全力の謝罪と土下座から泣きじゃくるダージリンに罪悪感から「なんでも言うことを聞く」とのたまった結果、「顔を上げて目を閉じて居なさい」と命令される。
一番マシな方向で平手打ち、最悪はこのまま断頭台だろうか?
聖グロにも首切り役人とかいるんだろうか?みたいなどうでもいい現実逃避を夢想してると、首の裏にそっと手が添えられた。これはもしや……KU・BI・O・RI!?(首の後ろに添えた手をテコの原理の支点にして首を後方に【ペキィ】するSAMURAIの技)
あぁ、短い人生だったなぁ……まだみほエリも成されていないだろうに……と我が身の儚さを嘆いている間に
なんか再びキスされていた件(なんで?)
思わず後ろにのけ反ろうとするが首の後ろを手で押さえられているうえ、腰と背中に腕が回っている。気分はアナコンダか何かにぐるりと絡みつかれて身動きが取れないアニメとかその辺の原住民のようなそれである。余りの出来事に困惑して「どういうことだ」と声を上げようとするも唇を押し付けられていて「んむぅぉをぅ」とかなんかそんな感じの変な声にしかならない。
そうこうしている間にぐちゅぐちゅと口の中に舌が入ってきた。口の中を動き回る異物感とは別に、なんかこう、ヌルヌルした感触に全身に走るむず痒さが力を奪っていく。同時に酸素もなくなっていっているので倍率ドン、さらに倍。酸欠で息も絶え絶えで解放された俺、とりあえず呼吸を整えることを第一にハァハァと乱れたままの呼吸をどうにかこうにか抑え込んでいく
「―――今度は事故でも罰でもありませんわよ―――」
おい馬鹿やめろダウン中追撃は反則だって言われなかったのかおい聞いてんのかブリカスてm――――
一連の行為の後で、
「言っておきますけど、これは「なんでもいう事を聞くから」の対価ですから」
とか言ってきたブリカス。こいつ俺にまだ何か要求する気か(戦慄)
畜生、やっぱりブリカスにフリーハンドなんか持たせるべきではなかったんだ。俺の馬鹿!!1時間前の俺に「考え直せ!」と言ってやりたい!
「あの事故のことを絶対に忘れないように、刻んであげます」
にこやかにそういうダージリンの背中に悪魔の翼のようなものが見えた。幻覚ではないだろう。
――月――日
もう勘弁してくれ(吐血)
俺がその合図に気付いたのは3度目の「罰」の後だった。
ダージリンが俺に「忘れないための罰」と称して飴玉を口移ししてくる“あの日の焼き増し”を強制してくるタイミングには法則性がある。
1:口内エチケット用のガムなどが入ったボックスが空になっていること
2:ダージリンがその時に飴玉を口に入れていること
3:周囲に他の人間が誰もいないこと(ただし後から人払いをする場合もある)
これらが揃った時に「トラップ発動!!」するのだ。
そのたびにピロシキ発動案件が重なっていく上に、精神性のストレスで自室に帰って血を吐く日々を送っているんで鉄分補給が欠かせなくなってきている。
行為を繰り返すうちにコイツ実はそっちの趣味なんじゃね?と勘づくようになったのは進展と呼べるのかどうか……。
何故逃げたり処したりしないのか?決まっている―――「コイツを消したり野放しにしたりしておくと終局的にみほエリが危険だと判断されたからだ」
コイツはこんな状態ではあるがダージリンの端くれである。ダージリンである以上、もしも俺が事象改変に失敗し、原作通りに事故が起きてみぽりんが大洗に転校してしまった場合、一番最初にみぽりんに介入できるのはこいつを置いて他にいない。そのダージリンを排除するような行為を行えば、バタフライエフェクトでどうなるか想像もつかない。
つまるところこいつを「みぽりんやエリカに目移りしないように、どうにかこうにか俺の方に繋ぎ留めつつ、しかしみぽりんのフラグをきちんと踏めるようにダージリンのままで置いておく」ことが肝要なのだ。
俺はそのための精神安定剤のようなものらしい。が、これもみほエリのため、みほエリのため、みほエリのため―――とはいえ、だんだん罰のスパンが短くなってきているのだが
俺は果たしてみほエリを拝める日まで、この先生きのこれるのだろうか……?
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