※この作品はR-18です。

【三次】 みほエリを見たかった俺はこの先生きのこれるのだろうか?   作:米ビーバー

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 おかしい。

 何かがおかしい。

 いや、何がおかしいのか全く分からないのだが、何かがおかしいと感じるのだ。

 言いようのない謎の予感が俺に警鐘を鳴らしている。なんだろうかこれは―――


「―――どうかしましたか?先輩」
「―――いや、何でもない、かな?」


 横から声を掛けられて、俺は思考を打ち切って声の方を向いた。

オレンジペコがサーブしてくれた紅茶を一口。


「―――うん、これは、好きだな」
「ありがとうございます」

 柔らかく微笑んでいるオレンジペコに喜びがあふれているのがわかる。

―――今日も平和だ。




【デッドエンド02:フォーエヴァー・ウィズユー】

――月――日

 

 

―――ダージリンが高校に進学していって、俺が三年生となった。

 

 いつも格言と張り合いをやって来る相手がいないだけで何というか、時間がゆっくりに感じられる。

 

―――そういえばダージリンもいねぇんだし俺紅茶の園に居なくてもよくね?と思ったのでオレンジペコ(仮)とニルギリに相談してみたところ

 

 

  ―――ニルギリにおもむろに土下座されました。 何でや工藤?(服部感)

 

 

「どうか!わたしのためとおもってどうか!」とかクッソ切羽詰まった様子で言われても、その……困る。

 

 ニルギリの説明を簡単にかみ砕いたところ、「俺が居なくなると、オレンジペコ(仮)が紅茶の園にいる理由が作れない」らしい。オレンジぺコは生徒会のメンバーではなく「ニルギリの補佐に回っている天翔エミの“冠名下賜候補”」なので居ても問題ない存在なんだそうな。

 

 要するにニルギリ1人だとお仕事がやってられないのでペコが居ないといけないわけで―――でもペコが紅茶の園に入るのには俺がいないといけないと。

 うん、そら俺いないとだめだわ。

 

 

 

 ――月――日

 

 

 今日も平和だ。みほエリの様子を見ることはできないというのが少しだけ残念だが、聖グロ故致し方なし。

 だが冷静に考えると俺が黒森峰でみぽりんとエリカの間を取り持とうとしたとして、それが果たしてきちんと機能するのか?と考えると―――今の聖グロでの自分の立ち位置とかそういうのを振り返ってみると、失敗フラグしか感じない。

適度な立ち位置でペンパル的な存在で居るのが一番いいかもしれないとまで思う様になってきた。そう考えるとむしろ黒森峰落ちて正解だったのかもしれない。

 

 オレンジペコ(仮)のサーブした紅茶を飲む。 うん、これもどっちかというと好きな味だわ。有能だなーあこがれちゃうなー。

「美味しかったよありがとう」というと「光栄です」みたいな返しと一緒に微笑んで嬉しそうにしている。尊い(確信)

 

―――こんななんでもない日常に幸せを感じているというのは俺的にどうなんだろうか?と思ったのでとりあえず小指の爪を一枚ベリった。すげぇ痛かったが気が引き締まった気がする。

 

 

―――翌日目ざとく小指の傷を発見したペコ(仮)にめっちゃ心配されてクッソ心が痛かったので今後は慎むことにした。代わりにノートに書いておこう。後で清算する予定の終末予定表(デスノート)だ。

 

 

 

 ――月――日

 

 

 時間がゆっくりと流れているようで、実際は光陰矢の如しとはよく言ったもので、気が付くと卒業式を迎えていた。振り返ってみるとここ一年、戦車道やってるかオレンジペコの紅茶の味見役しかしてなかった気がする。

 

 それはそれとして、全国中学生戦車道大会ではみぽりんエリカと決勝で相まみえた。―――まぁ負けたんだが(残当)

 パイセンやダージリンというクソチート抜きで戦ってはじめてわかる浸透強襲戦術の弱さ。むしろこの格下をイジメる用途以外で使いどころなんかない戦術で勝ち進めたダージリンの戦術眼と受けの強さ半端なくね?

 試合の後でみぽりんとエリカと改めて挨拶を交わし、ついでにアドレスを交換しておいた。「学校外で初めてお友達ができた」とかなんか闇が深くなる台詞を聞いたような気がするが、みぽりんはまず隣の娘に目線を向けるべきじゃないかな?俺はそう思うんだけどぉ?(ねっとり)

 試合やその他の様子を見てわかったが、やはり介入なしにみほエリは進展しないようだ。離れた場所から俺がどの程度介入できるかわからんが、ともかく頑張るしかない。

 

 卒業式が終わり帰る途中でペコ(仮)が出待ちしていた。こういう時にいつもやって来るはずの舎弟の姿がないことに訝しみもしたが、まぁそんな日もあるかなぁとスルーするのが俺である。

 

 

―――いや本当に、なんでこの時スルーしたのだろう?()

 

 

 

 ――月――日

 

 

 高等部に進級してダージリンと再会―――というか高等部の紅茶の園で出待ちしてた件。

「久々の再会だというのに挨拶もなしとは……」とかものすごくウザい絡み方をされたので「うるせぇ珈琲豆投げつけるぞ」と返しておく。若干嬉しそうな顔をしてる件。何コイツ何……何なの?マゾなの?(引き)

 

 自分の椅子に座って所在無くだらだらしている。俺でもハンコ押すだけの書類とかはまだないらしい。

 

―――ふと気づくと左側を軽く空けている自分に気付く。なんだろうか?

 

「―――致命傷、かしらね?」とはダージリンの言。なんかよくわからないが日常に言いしれない違和感がある。

 

 

 

 ――月――日

 

 

 違和感が酷い。なんだろうか?日常のルーティンに大切な何かが欠けている気がする。

 朝の鍛錬は繰り返している。朝鍛錬を終えて寮に戻るとペコ(仮)が出待ちしていてタオルと温かい紅茶で出迎えてくれるという状態にももう慣れた。人間って慣れる生き物だよね―――

 

―――何が足りないのだろうか?

 

 

 

 ――月――日

 

 

 みぽりんから届くメールに返信しつつ、エリカともメールをやり取りすることにも慣れてきた。紅茶の園でのお仕事も余りあるわけではない。むしろダージリンが度々絡んでくるのとパイセンに思いついたように構われる状況に危機感がやばい(やばい)

 

―――それはそれとして妙な喪失感というか、物足りなさがある。

 

 

 

 ――月――日

 

 

 半年が経過し、中等部のペコ(仮)と舎弟ヒップ(仮)がお呼ばれしてきた。

俺の座っている椅子のやや左後ろに控えたペコ(仮)が紅茶をサーブするのに合わせて自然に手が伸びて紅茶を一口。

 

「あぁうん。落ち着くわ」

 

スルッと言葉が出てきた。

 

 

 

 ――月――日

 

 

「よろしいのですね?」

と念を押してくるダージリンに適当に二つ返事でハイハイ言いつつ了承の印をぺったり。

 

 オレンジペコ(仮)がオレンジペコ(真)になった。

―――この瞬間、何かのフラグが音を立てた気がした()

 

ブリュンヒルデこと俺こと天翔エミの推薦からの冠名授与ということで、実質俺の下について働くことになるらしい。

 やってから「あれ?つまりダージリンと一緒にペコが居た原作ってペコがダージリンに冠名授与されたんであって、これ不味くね?」と思ったが、時すでに時間切れ。取り消しが効くものでもなさそうだ。

 とはいえまぁ、紅茶の園にいる間はダージリンと一緒なんだし、特に問題はないだろう(希望的観測)

 

 

 

 ――月――日

 

 

 みぽりんからのメールに返信して、エリカの淡白な反応の返信を受け取るための送信メールをポチポチしていく。紅茶の園での政務は退屈で、戦車道の教導までしばらくの時間がある。

 

「―――お姉様、どうぞ」

 

 オレンジペコがいつものようにやや左後方から紅茶をサーブして、2歩下がる。

 

いつも通り慣れた動きで紅茶を飲み―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――何か決定的な違和感を感じる。

 

「―――お姉様?何かお気に障りましたか?」

「―――え?あ、いや、うん。なんでもない」

 

 言いしれない違和感を感じながら、それが何なのかよくわからない。

隔靴掻痒、という四字熟語がある。靴の内側が痒いが靴の外から靴越しに掻いているためかゆみが収まることがないという、なんかもどかしい感覚を指した言葉である。今の心境はこれに非常に近い。何がおかしいのか、わからないことがどうにも居心地が悪い。

 

「―――あの、お姉様?お疲れでしたら、お休みになられては?ダージリン様やアールグレイ様がお越しになられた場合は起こしますので」

「―――あー……うん、そうするわ」

 

 どうにも優れない気分を腹の中に抱えたままというのは精神的にも辛いものがあるけれど、背中に懸けられた毛布にほどよい暖かさと一緒に交じってる柑橘系の香りに、瞬く間に眠りに落ちて行った―――。

 

 

 

******* E for O

 

 

 

 「おやすみなさい。先輩(・・)」

 

 柔らかな微笑みを称えて、毛布の下で安眠に耽る天翔エミ(お姉様)をただ眺めている。

 

 ―――長かった。ここまで本当に長かったと、オレンジペコ(わたし)は振り返る。

 

 

 

*****

 

 

 

 初めて出会った時から、“彼女”の傍にはダージリンが居た。

ダージリンと二人で、或いはアールグレイと二人で、或いは三人で、常に一緒に居た。

 

“彼女”の傍には人が集まる。彼女自身はそれを理解していないけれど、まるで誘蛾灯の様に有象無象が集まっている。

 そんな彼女のために何ができるのだろう?自分はただの背景の一人にすぎないとあきらめていた。

 

 そんな折に、紅茶の園の買い置きの茶葉の品質確認のために紅茶を淹れていたところに彼女がやってきた。そうして仕事に対してねぎらいのお言葉を戴けた。その上―――

 

「エミでいい。むしろそっちの名前で呼んで欲しい」

 

と言われたのだ。この時の胸の高鳴りをどう形容すべきだろうか?

背景の一人にすぎなかった私に分不相応な願いが生まれた。

 

 ―――執務室に入ったエミ様はダージリン様に抱き上げられてそのままダージリン様に抱きしめられながら政務に付き合わされていた。ダージリン様は満足そうな表情だったけれど、エミ様の顔色は終始悪いままだった。

何故あの女は自分が愛されていると勘違いしているのだろう?

 

 

*****

 

 

 「紅茶の園の次期メンバー募集」と書かれた張り紙に、心が揺れる。

 けれど私は候補生として既に紅茶の園に席をもつ身なので、オーディションに参加する権利はない。しかしながら、候補生を差し置いてオーディションで新たな冠名候補を決めるという話は、少々思う所がないわけでもない。

 さりとて、私にできることと言えば、紅茶と詩集への造詣と、少々普通の人よりも庶務のお仕事に慣れている程度。力不足といえばそれまで。

 

―――冠名を授かる人は一体誰になるのだろうか?などと空を見上げて考えを巡らせるだけ―――わたしにはそれしかできない

 

 

 

―――結局、冠名を受ける資格のある人は居なかったらしい。唯一「この人は」と紅茶の園のメンバーの皆様が納得した人物も、「納得ができない」と言って受け取りを拒否したらしい。一体何様のつもりなのだろうか?

 

 少し疲れた様子のエミ様に、疲労回復に効果のあるカモミールのハーブティーに、蜂蜜を少量溶かしてサーブする。

 

「うん、これはいいな。好きな香りだし、私の好みの味かもしれない」

 

 どうやらお口に合った様だ。このフレーバーやこの味付けが好みの範囲らしい。メモを取っておかないと―――

 去り際にまた労いのお言葉を戴けた。こんな端女に過ぎない私にも感謝を忘れない、お優しい方だと思う。

 

 給湯室を出る手前でダージリン様がエミ様を捕まえた。私の目の前で行われるやり取りにふつふつと感情が抑え込めなくなっているのがわかる。

 

 

「こんな言葉を知っていて?【その年齢の知恵を持たない者は、その年齢のすべての困苦を持つ】」

 

 

 答えられない場合、エミ様はダージリン様に抱きぐるみのような扱いを受けてまた顔色を悪くすることだろう。

 答えられないエミ様に、満面の笑みで手を伸ばすダージリン様から

 

 

―――エミ様を、奪い取っていた。

 

 

「―――フランスの哲学者、ヴォルテール……正式にはフランソワ=マリー・アルエの言葉ですね」

 

 私の言葉に次の問題が続く。それを答える。

次の問題、答える。

更に問題―――答える。

 

「なかなかのお手前で」なんて、上から見下ろした賞賛に笑顔で返し、微笑みを向ける。笑顔というのは本来、攻撃的なものである。とは誰の言葉だっただろうか?

 

「―――天翔エミ、貴女ならこの子にどんな冠名を付けるのかしら?」

 

私はダージリン様のお眼鏡にかなってしまった様だ。エミ様にわざわざ冠名を聞くあたりに意地の悪さが滲み出ている。

 冠名を戴くということは紅茶の園のメンバーとして政務に携わるだけでなく、次期生徒会メンバーの一人であるという証明でもある。無銘の生徒が出入りしていたとしても、それは生徒会への「無償の奉仕」でやってきているだけの存在に過ぎない。今のわたしのように。

 ただし、冠名を戴くということは「名前を下賜する相手の庇護下にある」という意味を持つ。この場合、ダージリン様から名前を下賜された場合、私はダージリン様の庇護下にある生徒会メンバーとして、ダージリン様を支えるために尽力することを良しとすることになるのだ。

 

「え?ああ……オレンジペコで」

 

 エミ様は私を「オレンジペコ」と称した。その名前はすでに高等部に同名の冠名が存在したのでお流れとなってしまったが、同時に私は最大のピンチを凌いだことになる。

 そして同時に、指針ができた。

 

「先輩。私が高等部に昇級したら、オレンジペコ様も卒業します。その時は、私にオレンジペコの冠名をくださいますか?」

 

 エミ様に望まれたのだ。エミ様が望むオレンジペコ(わたし)になろう。エミ様から名前を下賜して頂くためにも努力をしよう。

 

「オッケーだ。約束しよう」

 

 エミ様が私に誓って下さった。もう何も怖くない。

 

 

 

 




***** Others


「―――私がここまでこれたのは、貴女のおかげです」

 眠るエミの頬にそっと、口付けを落とす。
柑橘系の香りがふわりと広がるリップグロスは、毛布と同じ香りなので保護色に溶けて消えるだろう。
 入り口の扉に“只今清掃中”と看板を下げた紅茶の園の中で、オレンジペコはただ静かにエミに寄添い、侍る。

―――ダージリンが居ない一年間が勝負だった。

―――天翔エミはもう【オレンジペコが傍で尽くしてくれる生活】に慣れ親しんでしまっている。今更いない生活に戻ることは難しいだろう。


 オレンジペコにとってエミは『自分の可能性を啓いてくれた存在』である。ただの背景で終わるモブであるという自己認識に、声をかけ、笑いかけて下さり、そして冠名を与える約束をしてくれた。まるで乙女小説の主人公にでもなったかのような気分だった。

 だから努力した。懸けられた期待に応えるように。

 そして努力が実った。それまでの自分が間違っていたと思うほどに―――


―――そうして、ここまで来たのだ。愛しく想う彼女から下賜され『オレンジペコ』と成ったのだ。


 ならばあとは尽くそう。自分の全てを捧げて尽くそう。それが自分にできる全てであるから。

「―――何も心配しなくて良いですよ、お姉様。万難は排します。何を以てでも排します。

 ―――だから私に溺れて下さい。私に頼ってください。頼っていただけたら何でもします。どんなお望みでも叶えてみせます。私に、貴女に尽くさせてください。叶うならば―――卒業したとしても、永久に供に(forever with you)」

愛の重さを感じ取ってか魘されるエミの額に浮かんだ珠のような汗に、誰も見ていないかを確認してからそっと、舌を這わせてちゅると吸い取る。




―――翌日、原因不明の胃痛と吐血で倒れるエミの姿があった。



 天翔エミが聖グロ卒業まで無事であったか、それはまだ不確定の未来であり―――



―――みほエリが為されたかもまた、不定の未来である。







なお寿命()


次回更新(お相手)

  • ダージリン
  • ペッコ
  • アッサム
  • 舎弟ヒップ
  • パイセン
  • 本編やって、やくめでしょ?
  • 聖グロ以外の学園艦
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