【三次】 みほエリを見たかった俺はこの先生きのこれるのだろうか? 作:米ビーバー
―――どこにもコーヒーショップが無い件(呆然)
地味にショックすぎるんだが……いったいどういう事なのか……?
聖グロ……聖グロリアーナはイギリスの特色を強く刻んだ学園艦というのは知っている(原作知識的な意味で)し、ダージリンが常に紅茶を飲んでいるのは知っているんだが……全くないとか考えたことなかったぞこれぇ……(絶望)
そもそもイギリスって紅茶の国ってイメージあるけど普通に珈琲も飲んでるはずなんだよなぁ……どういうことなの……?(困惑)
錠剤とかその辺も含めて手に入らないかと思って半日街を散策してみたが、大通りにドラッグストアがあったのは良いとして、紅茶の葉を専門で置いてる店や、紅茶専門の喫茶店の多いこと多いこと……
悩みに悩んだ結果、大通りを探すことを止めて裏路地に入り、薄暗い路地を選んだ俺は―――
―――そこに、辿り着いたのだ。
店内に居並ぶ宝石の如き珈琲豆の数々。砂漠でようやくたどり着いたオアシスの如く、この出会いはまさに運命であったと、後に俺は(ダミー日記に)記すのだった。
“コーヒーハウス”と呼ばれるこの聖グロ唯一のコーヒーショップ兼喫茶店が学園艦内でどのような立ち位置にあるのか、それを知ったのはここである女生徒と出会ったことがきっかけだったりする。とはいっても、その当時そいつは髪型を学園と外とで使い分けていたので、全く気が付かなかったのだが。
~時は進んで現在~
カランカランと軽快な音を立てる扉に、最初からそこに居たかのようにスッと脇から現れた少女がカーテシーで一礼する。優雅な所作で出迎えるのはオーソドックスなヴィクトリアン・アフター基調の礼装に身を包んだメイドさん。
「―――いらっしゃいませ。まずはお席にどうぞ」
「―――待ち合わせをしているのだけど―――“子猫はどちら”?」
アッサムがそう答えるとメイドさんは「こちらです」と奥へ促し、アッサムはそのまま道路に面した窓際ではなく、壁際の席へ歩く。コーヒーハウスのお客はまばらで本日もまたいつも通り店員としては退屈な一日になるだろう。
「―――待たせたかしら?」
「いいや?それほど遅れてもないでしょ」
アッサムが席に着いて待ち合わせの相手を正面に捉える。湯気を立てる珈琲のカップを片手に小柄な生徒が微笑みを返す。
天翔エミとアッサム。珍しい組み合わせのツーショットがここに存在した。
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コーヒーハウス と呼ばれる珈琲専門店が郊外には存在する。
紅茶とスコーンとフィッシュ&チップスの町と言っても相違ないくらいそれらの店が乱立して競合する聖グロリアーナ学園艦の中で唯一珈琲を取り扱う、大通りから大きく離れ外れた場所に在るお店。表通り―――と呼ぶには寂れている小路に面した側には珈琲喫茶としてのスペースが、裏手路地の方は小規模店舗で豆を販売している複合店舗である。喫茶店の店員は店主と思しきイイ感じの老年紳士を除けばわずか2名。客は固定客のみの隠れた名店風を装うこのお店が―――実はそのまま偽装店舗であることを知る者は一部の人間のみである。
―――コーヒーハウス。それは聖グロリアーナが誇る諜報組織【GI6】の隠れ蓑であり、紅茶の園において聖グロリアーナ学園艦でコーヒーを愛飲していると公にする者は、すべてこの組織に属する諜報員、或いは協力者であるという公的な隠語でもあった―――ただ一人を除いて。
*******
「―――実働率230%……完全なキャパオーバー、だそうよ」
「はぁ……」
“コーヒーハウス”の表側、カフェテラス部分で向かい合って座る二人の少女。片方は微妙な顔のアッサム、もう片方もこれまた微妙な顔の天翔エミである。
「元々あの娘は外部で紅茶の園まで持ち込まれない程度の学内の諸問題を受け持っていたから、この上紅茶の園の案件まで持ち込まれたら手が回らないんですって」
「すんません。それニルギリを隊長に据えたのが間違いだったんじゃないですかね?」
湯気を立てる黒い珈琲にミルクポットからミルクを注ぐ。黒に渦を巻く白が混ざりモノトーンの渦巻きはやがて灰色に変わると見せて乳白色になるだろう。
「元はと言えば……どこかの次期三年生がもっと紅茶の園のお仕事に精力的であってくれたら私たちもニルギリを引っ張り出さずに済んだのですけどねぇ?」
「すいませんねー性に合ってないんでー」
嫌味をたっぷりと乗せたアッサムの言葉に、耳に両手を当てて「アーアーキキタクナーイ」のポーズでテーブルに突っ伏してだらけた態度を見せるエミ。アッサムはそんなエミの様子に苦笑を見せる。
ダージリンとアッサムが天翔エミの提案で行った候補生オーディション。次期隊長とその補佐を行う候補を選出するその会に於いて、しかし隊長・及び補佐職候補が選出されなかった。そのため、ダージリンから直々に【隊長職を押し付けられた】形になったニルギリはこれまで紅茶の園の外で黙々と庶務に明け暮れていた分の仕事に加え、天翔エミがこれまでダージリンとアッサムに投げっぱなしにしていた分の仕事を来年度以降受け持つことが確定になってしまっている。
一人紅茶の園のテーブルに座り、紅茶を淹れるためのお湯を白湯として胃薬を飲んでいるニルギリの姿は、アッサムをして見るに堪えなかったと、彼女は後に語る。
「私はそういったこまごましたこと考えるより、上から命令されて「やれ」→「はい」の流れのほうが性に合ってるんですよー」
テーブルに突っ伏したままのエミのそっけない言葉に、だがアッサムも納得はしていた。
天翔エミに人を率いる魅力がないわけではない。だが人を“使う”才能は無い。それをアッサムは理解していた。きっとそれはダージリンも同じことだろう。だからこそ天翔エミを後継に指名しなかったのだろうから。
「―――で、結局どうしたらいいと思う?ニルギリは『隊長をやってられないので別の人を選別していただきたいのです』って土下座で泣きついてきたんだけど」
「そう言われても……」
考えるように額に手を当てて俯くエミを見ながらアッサムはマーブル模様のままの珈琲の中に角砂糖を落とす。珈琲の色に染まった角砂糖はいずれ溶けて甘みに変わって消えるだろう。
「―――解決策が無い場合、貴女にニルギリの仕事を手伝ってもらうしかないんだけど……」
「さっきも言いましたけど、向いてないんですよ私」
「大丈夫よ。むしろ貴方にとって適任以外の何物でもないわ。適材適所率で言うと150%、十二分にお釣りがくる適任だから」
確信したようなアッサムの言葉に怪訝そうに顔を上げるエミ。そんなエミの様子を気に留めるでもなく、アッサムはテーブルの上に書類の入った封筒を置く。
「今回のミッションは、“諜報活動”だから。走り回ったりできる人材が欲しかったの」
****** O for E
面倒すぎて断りたかった。だって俺にメリットが何一つないんだもの。
ダージリンが卒業してから聖グロのレギュラーとしてトップを張るってのは並大抵の努力でどうにかなるものでもない。むしろそんな小手先の努力でどうにかなるものだったら紅茶の園なんてもの必要ないんだろうし、中等部だからそれほどでもないけどOG会の突き上げが厳しいこの学園艦で地位を盤石にしたところで中間管理職以外の何物でもないのはニルギリの状態がなにより雄弁に説明してくれている。
「申し訳ないんですけど今回は―――」
「次の大会で早くに黒森峰と当たるから、西住まほや有力な選手のデータを集めておきたいのだけど―――」
「―――やります」
「―――え?あ、うん。ありがとう、ご協力に感謝しますわ?(戸惑い」
それまで気のない返事だった俺が唐突に掌ドリルプレッシャーパンチな方針転換を見せたことにアッサムはやや戸惑いつつも状況を受け入れ、作戦説明を始めた。
*******
そしていまぼくは黒森峰学園艦にいます
アッサム考案の偵察ミッション。シチュエーションは『学園艦に編入のための見学に来て、保護者と逸れてしまった今年中等部の女の子』。それがアッサムの縁者ということでわざわざ金髪のウィッグを被らされて瞳にカラコンまでぶち込まれて淑女の立ち居振る舞いを促成栽培で叩き込まれている。
カツラを被るならと無駄に長い髪をバッサリやろうとした結果、アッサムに小一時間ガチ説教されたりもしたが、ここでは割愛する。
―――さて、(みほエリ)チェックの時間だぁぁぁ!!!
公的(?)な諜報活動という名目で黒森峰に乗り込んで生みほエリを鑑賞できるチケットとかそりゃ乗らなきゃなるまい、むしろ乗らない選択肢などあってはならない。乗るしかないですもんね、このビッグウェーブに。
そんなこんなで黒森峰戦車道の演習場へと足を運んだのだ。現状、中等部で何がどこまで【フェイズエリカ】しているのか?その辺りをきちんと調査しておかなければならないだろう。自分に自信がないみぽりんの態度にブチギレ金剛してるエリカの姿がありありと浮かぶ以上、下手をしないでもみぽりんが孤立してる可能性がある。一応、まぽりんにみぽりんのフォロー枠として抜擢されてる以上、凄まじくビジネスライクなお付き合いくらいはしてるんだろうが……。
いずれにせよ、生みぽりんと生エリカというエサをぶら下げられて、黙っていられるはずがないんだよなぁ……これはそう、天佑神助!最近(ダージリン関連で)SAN値をガリガリすり減らしている俺へのご褒美であると判断する!!(希望)
後半へぇ続く(キートン風)
次回更新(お相手)
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