【三次】 みほエリを見たかった俺はこの先生きのこれるのだろうか? 作:米ビーバー
俺が(諜報に)やってきた学園は、それはそれはとんでもない場所でした。(クロ高感)
「わぁぁぁぁぁぁ!!!!」
思わず悲鳴が口から飛び出ていた。至近距離で着弾した砲弾が周囲の地面を抉り取る。炸薬を抜いた模擬砲弾とはいえ戦車から吐き出された砲弾なんぞ食らった日には一般女性より極端にちまっこいこの身体なんぞ一撃でバラバラのミートくんだろう。
「―――大人しく投降なさい!今なら戦車道ルール適用内で“相応の代価”だけで済ませてあげるわ!!」
戦車の上から顔を覗かせ拡声器で声を張り上げているのは―――我らがエリカ!
そしてその後ろで親の仇を見る様な表情でこちらをきっちりとロックオンしているまぽりん。そんでもって
「―――あのっ!やっぱり私が説得を―――」
「聞く相手じゃないから!どう考えても捕まったらラーゲリのプラウダよりやべぇやつだから!!」
逃げ回る俺にお姫様抱っこの形で抱えられ、今なお俺のSAN値と胃壁をガリガリと削り続けている西住みほことみぽりん。
「あぁ畜生!!アッサム!アッサーーーーム!!!応答しろよアッサァァァァム!!!」
耳に装着したインカムに向けて怒鳴りつけるが全く反応がない。状況はさらに混迷していきそうな様相を見せているし、みぽりんをお姫様抱っことか極一等のピロシキ案件なこの状況が刻一刻と俺の罪状を積み上げて行っている。
―――なぜこのようなことになってしまったんだ!!(マン感)
俺は天を仰いでそう叫びたかったが、そんな無駄なことをしていたら確実にスナイプされるか追いつかれるので無言を貫き速度を上げるのだった―――。
―――【悲報】黒森峰の闇は深かった【戦車道】partXX
演習場へと向かう雑木林の中を枝から枝に、幹を蹴って時にぶら下がり、アッサムに用意してもらったフック付きロープを活用してダーマ式ターザンジャンプを駆使して飛び跳ねる。
フック付きロープを使った三次元移動を含めた隠密機動で森の中を突っ切っている最中だった―――ふいに、声が聞こえたのは。
『―――貴女に副隊長がふさわしいとは思えない』
雑木林の奥まった人目が付きにくい木々の密集した場所。そこで一人の女生徒が数人の女生徒(モブ)に囲まれていた。
―――っていうかみぽりんやん()
目標をセンターに捉えたまま頭上の樹の枝を飛び移って近づき、会話を聞き取ってみる。やや聞き取りにくいが、要約すると以下のような感じらしい
・何故貴女が副隊長に選ばれたのかわからない(まぽりんに聞けよ)
・隊長の妹という立場で副隊長に就いて恥ずかしくないのか(だからまぽりんに言えよ)
・貴女の補佐についている逸見さんに悪いと思う気持ちがあるのなら辞退しろ(だからまぽりんにry()でもその辺もう少し詳しく)
本人からの辞退を強い口調で押し込もうとする圧力を感じる。が、そんなもん通るはずがない。
―――まずまぽりんに話を通す前にエリカに話が行くだろ?
→ エリカがまぽりんイエスマン状態なのに「まぽりんが決めた人事を理由もなしに辞退する」などという話聞く耳持つはずが無いだろ?
→ 理由を詰問するだろ?
→ みぽりんが「同級生or上級生に圧力掛けられました」なんて口が裂けても言うはずないだろ?
→ 全部みぽりんの「私がやらない方がいいと思うから」的な意見ってことで独断で通そうとするだろ?
→ 【フェイズエリカ】しちゃうだろ?
→ エリカのみぽりんへの好感度が下がりまくるだろ?
→ それを俺が許せるはずがないだろ?
―――『許さない』そんなことになってみろ、みほエリの目が消し飛んでしまう可能性とか『許せるはずがない』、『許せるものか』、モブごときのせいでそんなことが起こるようなら容赦なく『呪ってくれよう』―――
わなわなと震える拳が枝を握りしめ、ミシリと音を立ててそこそこ太かった枝が“ひしゃげて潰れて砕けた”パラパラと落ちる木くずに、モブ女生徒が異変に気付いたのか、俺の方を見上げる。
暴力はいけないことだ、それは分かってる。なので怒りの形相を堪えつつ可能な限り笑顔を作り、木から半分だらりとぶら下がる形のまま、とりあえず若干フレンドリィに挨拶する気持ちでややぎこちない笑顔を取り繕う。
それでも凄味が必要だし、せめても低音を絞り出してみる。
「―――てめーらの顔、覚えたゾ♪月の無い夜は気を付けろYO」
―――絹を裂く悲鳴がハーモニーを奏でながらドップラー効果を起こして消えて行った。
―――なんで?(困惑)
後に残されたのは呆然とこちらを見上げるみぽりんと、どうしたものかと困惑する俺。とりあえずどうしようもないので木の上から飛び降りて着地する。ビクリと身を震わせるみぽりんに、とりあえず身だしなみを整え、パンパンと服の埃を払って聖グロで慣らしたカーテシーで一礼。きょとんと毒気を抜かれた表情を見せるみぽりんに、手を差し出す。
「―――こんにちは。通りすがりの迷子です」
「……は、え???」
「お姉ちゃんと逸れちゃったので、探してくれたら嬉しいです」
もう色々手遅れっぽいが、とりあえずカバーストーリーを垂れ流してみる。
困惑しながらも俺の手を取ってくれるみぽりんマジ天使。これは大天使ミホエルだわ(確信)
****** E for M
―――もう嫌。
そんな思いでいっぱいだった。身に合わない身代に置かれ、一年が経過して―――それでも、私を分不相応だとする意見ばかりで……私自身も、それをわかっていて―――
―――私じゃ、お姉ちゃんにはなれなくて―――
もう何もかも放り出してしまって、逸見さんに投げ出してしまおうかと思った。限界だったし、これ以上続けて、みんなに嫌な思いをさせながら戦車道を続けて居て欲しくなかった。
―――私がいる限りそれがなくならないなら、私は居なくなった方が―――
【―――ユルサナイ】
―――声が、聞こえた。
【―――ユルサナイ……ユルサナァイィィィ……!!】
次いで、ミシリという空気を震わせる音と、ミシミシと何かがへし折れる音。パラパラと木の破片が降ってきた。
【ノロッテクレユゥゥゥ――――】
ボソボソと、風に流されて飛んで来るような声が恐怖をあおる。周囲で私を取り囲んでいた人たちも、ザワザワとあたりを見廻して、降ってきた破片を気にして空を見上げて―――
【―――キサマラノカオ、オボエタゾォォォ……ツキノナイヨルニキヲツケロォォ……!!!】
―――憎しみのこもった目でこちらを見つめる“西洋人形のような小さな人影”、乱れた金髪をだらりと垂れ下がらせて、片手にへし折った木を握り締め、ポタポタと白い肌から血を零れさせている。赤い血の色がひどくリアルで、その強い憎しみを宿した瞳が―――
―――ニィ、と、笑みの形に撓んだ。
『―――ヒッ―――ひぃ……ゃぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!?』
弾かれたように駆け出し、蜘蛛の子を散らす様子の彼女たちと真逆に、私はその場を動かなかった。動けなかったというより、動く必要を感じなかった。
―――この人は敵じゃない。
こちらを見下ろしている瞳に、敵意を感じなかった。普段針の筵のような気分で居続ける私は、他人の悪意に敏感になっていたというのもあるかもしれない。
西洋人形さんは、ふらりと木の上から身を躍らせると空中で態勢を入れ替え、両手両足の4点着地で地面に飛び降りて、手の血を拭いつつ手櫛で髪を適当に整え、パンパンと服のホコリを払ってから、優雅に一礼して見せた。
「―――こんにちは、お嬢さん。通りすがりの迷子です」
「……は、え―――???」
「お姉ちゃんと逸れてしまったので探してます。一緒に探してくれると嬉しいです」
あたかもさっきまでのホラー映画さながらの光景を無視した様な態度で理路整然と語る目の前の女の子に、どうしていいのかわからないまま
「ええと……じゃあ、案内するね?私は西住みほって言います」
「―――天之庄(てんのしょう)エミリーです」
私は、小学生くらいの身長の女の子の手を取って歩き出す。小さな手、子供のころ、お姉ちゃんと一緒に田舎道を走り回った時の記憶が思い出されて―――
「―――ありがとう」
「……どういたしまして」
私は、久しぶりに素直に笑えた気がした。
****** M for E
―――【悲報】やはりみぽりんの闇は深かった【黒森峰】partXX
あどけない少女を演じて某眼鏡ボウズのようにみぽりんの近況を聞き出しつつ、適度に相槌と励ましを交えつつ色々聞いてみたのだが……
―――凡そ、黒森峰の現在の作戦とか布陣とかにおける各車輛とそのメンバーの特性、特筆すべき能力、長所短所などが詳らかに説明された件(畏怖)
みぽりんをナメてたわけではない。大洗に転校して1か月もしない間に同じクラスの生徒全ての誕生日と名前、顔を一致させ、好きなものと嫌いなものを網羅している少女を警戒しない方がどうかしていると言える―――のだが……
―――みぽりんすごすぎない?(称賛)
レギュラーメンバー全員の顔と名前だけでなく車輛に乗った際の癖や動きのパターン、攻撃後の初動や回避運動時にどちらに転身することが多いかなど、事細かに見てファイリングするだけでなく“そのすべてを、脳の中に収めて必要な時に必要な分だけ引っ張り出せる”という異常性。西住の一族は皆化物なのかと言わざるを得ない(確信)
しかしどうするか……アッサムから受けたお仕事であるデータ収集は既に9割くらい完了している。みぽりんから垂れ流された情報は首から下げたアクセサリーに仕込まれたICレコーダーに録音されている。通信機でリアルタイム通信によりアッサムにも送っているがアッサムの反応が薄いため、聞いているかどうかの確信は持てない。
「―――わたしは結局、副隊長なんて向いてないんだと思う」
悩んで居る間も愚痴交じりのお悩み相談が続いていたのか、みぽりんがそこで言葉を区切る。次いで、ぶんぶんと首を振り
「ごめんね。こんなこと言っても困るでしょ?」
「―――吐き出しちゃえばいいと思うよ?」
後退しようとするみぽりんに、俺はそう言って返した。少しだけ驚いた顔のみぽりんを見上げるようにして、目と目を合わせる。
「みほさんは溜め込み過ぎなんだよ。適度にだれかに思ったことぜんぶぶつけなきゃダメ。みほさんをフォローしてくれる人に頼ってもいいんだよ、きっとその人は、みほさんが本音をまっすぐぶつけてくれないから怒ってるんだと思う」
―――そう、みぽりん。君は一人ではない、エリカがいるのだ。まぽりんから正式にフォローを任されている彼女こそ、みぽりんの唯一の味方であり、信頼していい人材なのだ。さぁ!!(内心)
「―――でも、私が副隊長を続けて居ることを、みんなが嫌がっているのなら―――」
「―――それはちがうよ?」
すとん、と。そんな擬音が似合うくらい自然に言葉が出た。思わず出てしまったくらいの自然さに、みぽりんが唖然としている。
「―――大切なのは自分がどうしたいのか。それを置いて誰かの言うままに動くことを自分の意思だと勘違いしてはいけない」
誰が為に、誰が為にと動くだけで自分の意思を失ってしまうなど愚の骨頂。その結果他人のために己をないがしろにするなどあってはならない。
―――え?俺?俺はいいんだよ。二度目の人生みほエリに捧げると最初から決めてたんだから()
「―――私に、務まるのかな……?」
「まほさんは、できると思ったからみほさんを任命したんだと思う。そのためのお手伝いをエリカさんに頼んだんだろうしね」
みぽりんが足を止めて俺を見た。今までと違った、少し強い意志の宿った目で。俺はそんなみぽりんの意思を受けて、真っ直ぐに目を見返して、告げる。
「みほさんが副隊長なのは、隊長のまほさんの補佐をだれよりも上手くできると思われているから、そのための決断を手助けするためにエリカさんがいる。ぶつかり合って、話し合って、『私はこうだ』って言わなきゃ何も始まらない」
「でも……私、エリカさんがどう思っているか、知らない……」
みぽりんの言葉の最後はよく聞き取れなかった。こっちを見ていた視線はうろうろと右往左往している。揺れている心情を示しているかのようだ。
―――これはアレだな。荒療治しかないな。うん。そしてそれを為せるのは……俺しかいない(使命感)
「―――じゃあ、直接聞いてみよう」
「えっ?」
みぽりんに向けて精一杯微笑んでそう言ってから、俺は困惑するみぽりんの手を取ったまま元来た道を逆方向へ―――
―――黒森峰戦車道演習場へと歩き出した。
******
―――以上。
いやぁ、黒森峰舐めてました。諜報員という立場を舐めてました。今から土下座で謝りますから許されませんかね!?無理だろうけど!!
まず俺氏、エリカのとこに行くだろ?
→ 『みほのことが要らないようなので貰っていきますねwwww』って煽るだろ?
→ エリカが怒り心頭で詰め寄って来ると考えていたらそこにまぽりんがおったじゃろ?(予想GUY
→ 静かにオーラが溢れるまぽりんマジ怖ぇだろ?(恐怖
→ 正体を明かしてあらかじめアッサムから預かってた名刺代わりのメッセージカードを手首のスナップだけでテントの柱に刺さるように投げるだろ?
→ なんか
→ 黒森峰戦車道の一団が追っかけてくるだろ?(冒頭部分)
→ 速度無制限のアウトバーンを横切ったりしてどうにかこうにか逃げ切ろうとした矢先に、学園艦の端っこにおいつめられたのが俺だろ?(絶望)
『―――さぁ、観念してウチの副隊長を返して投降なさい!!』
拡声器がハウリングを起こしてキィーーーンと鳴り響いて顔をしかめるエリカ。学園艦の端っこ、手すりに背中を預けるようにして、みぽりんは隣に降ろしている。
「―――アッサム。聞こえてるなら答えなくていい。これから“跳ぶ”から、回収宜しく」
勝利を確信してこっちを見ているエリカと、油断なくこちらを睨んでいるまぽりんから視線を切ることなく、耳のインカムにそれだけ告げて、みぽりんの背中をトンと押してエリカたちの方へ送り出す。
「―――こんな格言を知っているか?
―――【勝利を確信したとき、そいつは既に敗北している】―――!!」
そうして、驚愕する一同の目の前から―――“俺は消えた”。
何のことはない。そのままバックステッポゥ!で学園艦の外に飛び出しただけだ。スクリューの波に呑まれてしまわないようにできる限り遠くへと跳ぶために全力で手すりを蹴ったため、手すりが軽くひしゃげて形状が変わってしまったが、まぁきっと誤差だろう。
手すりから身を乗り出すようにしてこちらを見る黒森峰一同を尻目に、アイルビーバック!な感じで親指をグッと天に向けて突き出して落下していく。
―――突然だが学園艦ってのは学園“艦”というだけあって、でっけぇフネである。その船という構造上、避けては通れないモノが必ずついている。
意図せず海面に落下した人を速やかに救助するために船の側面に配置された落下式の救助ボートと、そこに救助隊が飛び降りるための―――
「パラシュートだッッッ!!!」
こうして俺の潜入ミッションは終わりを告げたのだった―――。
――月――日
ぼくはいま、びょういんにいます。
あの後、黒森峰学園艦の救命ボートからパクったパラシュートで無事海面に着水した俺でしたが、アッサムがタグボートで俺を捜索して引き揚げたのだが―――
夏の大会を過ぎて、現在の季節は11月に入ろうという季節である。水温は……推して知るべし。
結果的にまぁ、発見されたときに俺は割と蟲の息だったらしい。
体温が下がりすぎて意識が朦朧としていた俺をアッサムが応急処置したらしいけど、とくになにもおぼえてません。
思い出そうとするとなんかこう、震えが止まらないんです。
風邪を通り越して肺炎を併発しているらしく、絶対安静だとか言われました。
―――冬季親睦会、今年こそは参加してみぽりんとエリカとご挨拶とかしたかった。アドレス交換とかしたかった……何故俺は(諜報の時に)あんな無駄な時間を……(ミッチー感)
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「―――ですから、何度も申し上げているでしょう?我が校の生徒に“天之庄エミリー”などという生徒は存在しません。並びにGI6に【野良猫】などというコードネームの構成員も居りません。ええ、調べていただいてもよろしくてよ」
通話を終えて、フゥと息を吐くダージリンに、紅茶がサーブされる。
「―――随分としつこい相手でしたね。お疲れさまでした」
「ええ、面倒な相手だわ……まぁ、大会で戦うときにこちらのメンバーも調べて来るでしょうけど―――」
紅茶を一口。にこやかに微笑む。ダージリンの言葉に、エミの代わりに庶務を引き受けている後輩の少女は不安げな顔を見せる。
「エミ様にたどり着くのではないでしょうか……?」
「あの子の今の体調で冬季親睦大会に参加できるはずがないでしょう?居ないものを探したところで見つかるはずがないわ。―――ああ、実に滑稽な話ね」
目を細めてクスクスと嗤うダージリンを後ろから眺める少女は、“うわぁ”というドン引きの表情を見せていた。
次回更新(お相手)
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パイセン
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本編やって、やくめでしょ?
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聖グロ以外の学園艦