【三次】 みほエリを見たかった俺はこの先生きのこれるのだろうか? 作:米ビーバー
本日何度目かになるかわからない溜息を吐き、少女は空を見上げた。
「―――みほ?何してるの?練習が始まるでしょ、ほら、しっかりしなさいよ!隊長!!」
「―――っ!は、はいっ!!今行きますっ!!」
廊下の向こうで声を上げる逸見エリカに大きな声で返事をして、背を向けて駆け足で集合場所へ向かうエリカの背を大急ぎで追いかけるみほ。しかしそれでもきもそぞろなみほの足取りは千鳥足もかくやの有様で―――
「―――――はぶっ!?」
結構痛そうな“がつんっ”という音ともに、教室の外をタテに走っている排水管にしたたかに頭をぶつけて座り込んでしまう。
頭をさすりながらヨロヨロと立ち上がるみほの前には、さっき走って行ったはずのエリカが佇んでいて―――
「―――全く、鈍くさいわね」
―――仕方ないなと言った表情でそう言って、みほの手を取って引っ張り起こし、そのまま手をつないで引っ張るようにして駆けだしていく。
「ご、ごめんなさいエリカさん」
「――――――」
小声で謝りながら引きずられないように速度を上げるみほにエリカは答えない。
何も言わないエリカの様子に『怒っている』と感じたみほはより小さくなって何も言えなくなってしまう。
代わりにエリカに追従して駆けながら、みほは俯いて小さく呟いた。
「―――エミリーちゃん……もう会えないのかな……」
――月――日
ダージリン、卒業。去り際の卒業生に花束を渡す役目は筆頭の役目ってことで、俺が代表でダージリンに花束を渡す役目を担うことになった。
「先に行って待っています。……ちゃんと卒業できますの?」
とクソ失礼な直球を投げ込まれたりもしたが学年主席取ってるやつから言われるとド正論過ぎて反論もできねぇ……。
実際のとこ俺の成績は決して良いものではない。ギリッギリのギリで赤点取らないようにスレスレの低空飛行で普段生きてる中、ダージリンが「紅茶の園のメンバーである以上、生徒の模範であるべきです」とか言って俺に色々レクチャーしてはそれを必死で一夜漬けモードにして乗り切ってきたという前例がある以上、こいつの心配はもっともだろう。
だが心配をしないでもらいたい。留年なんぞするわけにはいかないのだ。
だってそんなことをしたらみぽりんを救うための大会に参加できないからな!!
それこそ己の命をかけて挑むべきミッションである。確実にこれをものにして、明日へ繋げなくてはいけない。黒森峰の試験に失敗したことは過去の過ちである。その結果聖グロに入学することになり、みほエリの構築を他所からテコ入れせねばならなくなった。距離感も遠くなった。この失敗、二度はない!
――月――日
新隊長『ニルギリ』のもと、俺のポストは『ご意見番』となった。
なんか紅茶の園の外に置いてある『めやすばこ』に投票されていく陳情を解決したり、高度な柔軟性を以て臨機応変に隊長からのヘルプ要請に応えるだけのケツで椅子を磨くポストなのだとか。
―――の割に動く頻度高い……高くない?俺騙されてる?騙されてない?
―――おのれ
――月――日
春になって今年もやってきました【戦車道大会中学生の部】!!
今年はダージリンがいないためニルギリを隊長に俺、ルクリリ(予定)、オレンジペコ(予定)+1名がメインメンバーである。
+1名?それは当然―――ローズヒップ(予定)だ。
さて、このメンバーでどこまで戦えるものかな……。
――月――日
くっそしんどい(素)
何なの……この戦術なんなの……?ニルギリの補佐で一緒に運用してはじめて気づく『浸透強襲戦術』の産廃っぷりよ……。
―――本来攻め手の侵攻を防ぐために戦車で壁を作る。その線引きは重要なファクターである。フラッグ戦ではなく殲滅戦である中等部の試合ではそういうの考えないで丸ごと一丸になって吶喊!!ってのがわりと見る光景である以上、例えば、四方全てに均等に分散させて構えたところでどっか1方向に全車輛とかされたら4倍の兵力差でなで斬りにされる。そのため『敵の攻め手の方向と戦力をきっちりと読み切る戦術眼』を必要とする。それが防衛側の必須スキルである。
以上の前提を以て構築された『浸透強襲戦術』という約束された奇跡の戦術は、『攻め手よりも堅牢な壁を作り、壁を押し上げて圧殺する』というモノだ。
マチルダとかチャーチルといった「ただただ硬いだけが取り柄」な戦車ってのがこれを行うのに適任だというのは分かる。非常によくわかる。のだが―――
―――実際運用してわかる『相手の攻めてくる方向を読む』センスと『相手の戦力を正確に把握する』ということの難しさよ。
籠城時における『攻者三倍の法則』に主眼を置くと「なんだ、防御側の方が有利じゃん」となりがちだが、アレの前提は「装備、士気、練度が同じ軍隊がぶつかった場合」である。要するに「ただ硬いだけの英国戦車」と「硬くて早くてつよい独逸戦車」のぶつかり合いの場合、相手の攻撃力とこっちの防御力を拮抗させるための計算が必要になる。
達人が打ち下ろしてくる日本刀を防ぐのにお鍋のフタでどうにかできるのは宮本武蔵ぐらいであって、技量(=練度)と士気の計算を入れないままの防衛陣なんざ紙クズもいいとこなのだ。
―――詰まるところ、ダージリンはこの「敵戦力の把握」「敵練度の把握」「敵の攻撃時の編成予測」「それにおける敵総攻撃力の計算」を事前の情報だけである程度済ませて置いて「どこをどのように進軍してくるか」を予め見通して、チェスか将棋でもやるかのように陣形を構築、壁を作って受け止め、迎撃で相手を削り、隙を見て一網打尽。ということを繰り返して勝利してきたわけである。化け物かな?(雑感)
原作練習試合でノーマークだったみぽりんにほぼほぼ1対5の状況からタイまで並ばれた失態はあれど、ほとんどの勝負に危なげなく勝利している。
こと情報戦と、それを生かした戦術指揮という観点から見ればトップクラスの才能を持っていると言えた。聖グロじゃなきゃもっと生かせたかもしれないけど!しれないけど!!
――月――日
ローズヒップ(予定)が全く言うことを聞いてくれません(諦)
試合が始まると同時に防衛陣を構築しようとする連中から外れていきなり「ヒャッハー!」し始めるの。試合中一度も止まることなく駆け続け敵攻撃隊をガッタガタにすることもあれば、勢い余って即撃破されることもあるバーサーカー枠である。
何なの本当に……何なの……?
「レギュラーから外すべきでは?」という意見もあるが、実際きちんと戦果上げてる上、アールグレイパイセンが「面白いじゃない【あれ】、もっと見たいわね」とかホットラインで連絡してきたとかでニルギリの顔が面白くも笑えねぇことになっている。胃薬の量が限界を超える前にどうにかしてあげたいんだが、どうにもならん。
だ(-じりんた)すけて
――月――日
ダージリンに助言を求めるホットラインを送ってみた。
「貸し1」と等価交換でダージリンが直々にやってきて手ほどきをするらしいので高速でポチった(即決)
******
『それでは、試合―――始め!!』
「ヒャッハァ!!突撃ですわー!!」
試合開始の宣言とともに飛び出そうとしたクルセイダーに―――
「―――――
「はいですの!!」
通信機越しに強い調子の声が響き―――それに従順に従いクルセイダーがその場で旋回運動を行い始める。同じ場所をグルグル回っているその様子は、自分の尻尾を追いかけて遊んでいる犬の様なイメージを周囲に抱かせた。
「―――偵察車輛より報告0900より敵車輛の一団」
ニルギリからの報告に、装填手席に座っている天翔エミは複雑そうな顔で通信機を手に取る。
「―――
「わっかりましたわー!!」
ゴウッ!と地面を蹴立てるような音を立てて全速力で駆け出すクルセイダー。凹凸をものともせず、むしろ飛んだり跳ねたりというデタラメっぷりを発揮している。
「―――Gwyllgi*1、逆だ、逆。0900の地点から来てる敵を叩くの!」
「わっかりましたわー!!」
グィン!!と明らかに慣性を無視したようなドリフト染みた方向転換でターンをキメたクルセイダーが駆け出していく。
その様子を見送ってやれやれと息を吐いたエミは、ニルギリに通信機を返し
「―――じゃあ、防御陣地構築始めちゃって」
ニルギリに向けてそう言って、どっかりと椅子に座り直して疲れたように肩をすくめた。
******
――月――日
ローズヒップ(予定)は「行け」「待て」「伏せ」「お座り」を覚えた!(てーれれってってってー)
モノの数時間で何一つ聞く耳持たねぇ突撃魚雷にスイッチとリード取り付けるとか英国人やべぇな(神奈川県民) 流石ダージリン、口八丁に定評がある!
―追記―
「命令を聞いた犬」に【よーしよしよし】が必要だということを説明された。
ローズヒップミサイルをぶっ放した試合の後、頭を撫でろとばかりに期待の目で後ろをついて回るわんこ舎弟の姿がある。放置するとこう、捨てられた子犬さながらの落ち込みっぷりを見せるため順調に俺の胃にジレンマからのスリップダメージを刻んでいく。
やはりダージリンは俺を遠回しに仕留めに来ていると確信した(名推理)
*****
そして、中等部決勝戦にて―――運命は交差する
*****
「―――エミリー、ちゃん?」
「いいえ。天翔エミです」
「天乃庄エミリーちゃん……さん、だよね?―――ですよね?」
「いいえ、天翔エミです」
このやり取りも何度目だろうか。と張り付けた笑顔で対応しつつエミは内心で嘆息する。いや、みほの執着がこんなにもひどいとはエミ自身予測していなかったというのが正しいのだが……
「はじめましての天翔エミです。コンゴトモヨロシク」
「―――その強引な誘導……やっぱりエミリーさんだよ」
背にびっしりと冷や汗を浮かべつつ、それでも張り付けた笑顔で応対せねばならないエミは本気で胃が軋む思いをしていた。
西住みほに半端なく固執されているという現状と、スパイが「はいそうです」と認められるわけがない現実と、勢いと罪悪感とその他諸々で認めてしまった場合アッサムが高等部でどんな顔をして出迎えるだろうかという微妙な恐怖と、あとドヤ顔か爆笑で煽って来るであろうダージリンへの若干のムカつきとかそんな感じの感情がグルグルと内面でルービックキューブばりにないまぜになって回転していた。
『私語は慎んでね?試合だから』
「「アッハイ」」
結局このやり取りは審判に止められるまで続き、整列して礼を交わした後もう一度エミのもとへやって来ようとするみほを引きずるようにして自陣へ戻っていくエリカと、エリカに引きずられるみほの距離感に
―――【仰げば尊死】手前の内心を必死に抑え込むエミの姿があった。
******* to Emi
――月――日
我が世の春が来たぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
中等部決勝戦。長い長い遠回りを経てみぽりん及びエリカと正式に挨拶を交わし、試合後にメアドと番号交換できた!
これを!次の作戦の布石とする!!(まぽりん感)
******* Emi to Miho
「仮にアレが前に潜入してきた【野良猫】だかなんだかってのだとして、自分から「はいそうです」なんて言うわけないでしょ?馬鹿じゃないの?」
「うぅ……でもぉ……」
頭ごなしに「馬鹿じゃないの?」と言われて何とか反論しようとするみほではあったが、圧倒的に正論過ぎて反論が見当たらない。そんなみほの様子にエリカは長い長い溜息をついた。
「大体アンタ……確認して、何をしたかったの?」
エリカにそう問われて、みほはパッと表情を笑顔に戻して、こう言った。
「ありがとうって伝えたかったの!エミリーちゃんには色々助けてもらったし!色々気付かせてくれたし!
―――あと、エリカさんともちゃんとわかり合えたし」
「―――最後のは別に、あんなのが居なくてもどうにかなったわ、多分だけど」
みほの言葉にぼそりとそう返して、エリカは背を向ける。表情をみほに見られたくないからなのだが、みほのまだまだネガティブな思考はそれを距離感と捉えてしまう。
けれどみほに不安は無くなっていた。相談できる相手が、頼ることができる相手が学外にできた。学内の人間ならば相談できないようなことも彼女にならば相談ができる。「いつでも頼ってくれていい」と言質も取っている。
「あ、そうだ。学園艦に帰ったよってメール入れよう。エミリーさんじゃなくてエミさんかぁ……エミさんはボコ好きかなぁ?朝ごはんは和食かなぁ、グロリアーナだからやっぱりパン食なのかなぁ?戦車はドイツ?それとも英国?趣味とか、あと好きなものと嫌いなものとか、お誕生日とか―――」
百面相しながら携帯とにらめっこしつつああでもないこうでもないと悩みに悩みながら歩くみほは―――
――――――ゴンッ
「きゃふっ!?」
前方不注意で張り出した学園艦通路内のダクトに盛大に頭をぶつけて涙目で蹲る羽目になった。(歩きスマホダメ、絶対)
―――後に天翔エミにより【怪文書の
第4章の話の間に5章前夜譚が挟まる感じになっているため、時間軸は少しずれています。
さて、まほルートも完成させねーと()
次回更新(お相手)
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ダージリン
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ペッコ
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アッサム
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舎弟ヒップ
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パイセン
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本編やって、やくめでしょ?
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聖グロ以外の学園艦