結婚式直前から、疲労による発熱で寝込んだナミをいい事に、サプライズ結婚式は成功させられた。その後どっかの島か海賊から貰ったウイルスでも寝込んだナミは、その後回復すると同時に右肩にも刺青を入れて……その翌日からまた数日寝込んだ。
俺としてはそうなるとナミに手を出せなくなる上に、具合が悪い時のナミは無意識で煽ってくるから拷問に等しい日々を送っていた訳で……。なのにナミは回復したと思ったら、時期的にはそろそろなのよねなんてブツブツ言いながら、サッチの傍にいる事が増えちまう。
それにより爆発した俺がナミを拉致するようにしてモビーを離れて、美味しく頂きますしたのは仕方の無い話だろうと思う。なのにナミは、当然のように煽り続けて来るんだ。
「も……む、り……!!」
「まだまだ、足りねェ」
「こわれ、ちゃ……ゃ……はげしっ!」
これで本気で止めてるつもりなのか。だとしたら誰かに正しい止め方を習って来いよと少し思って、何言われても俺は煽られるだけだと思い至る。
だがそんな俺にナミはクシャッとした顔を向けて……泣き出した。ハラハラと落ちるその涙に、うぉぉぉ!?となった俺が慌てて辞めると、ナミに責められる事となる。
「エースは、私なんか、どうでもいいのよ……」
「そんな訳あるかよ!ガキの頃から俺は「なら、ずっと身体だけ目当てだったんだわ。エースなんか……エースなんかぁ!!」」
そう言ってタオルケットにくるまって出て来なくなったナミに、ごめんなさいと謝り、もう何もしないからと言っても返事もない。このまま1眠りしたら温泉入ろうかと、家族風呂のついてる部屋なのを思い出して言えば少し反応を見せてくれた。
「……とりあえず、寝たい。その後、お風呂はいる」
「当然だ!悪かった。やり過ぎたよ」
「1ヶ月位、エースとはもうしない」
「1ヶ月!?やり過ぎたのは謝るから、それは流石にキツイって!!」
俺若いんだぞ!?
そう思って取縋ると、今日の残りと明日はゆっくり過ごし、明後日は1人で買物に行かせて貰えるなら許すと言われて、俺は涙を飲んで了承した。実は昨日から、マルコに電伝虫でそろそろナミを帰せと言われてはいたんだ。
仕事が溜まってるらしい。ナミが居ないと色々滞ると言われて、でも食いたかった俺はその電話をちゃんときる前に行為を再開して……電伝虫が眠る直前に、3日以内に帰らなければ覚悟しろと言っていたのを思い出す。
……明後日、買物が終わり次第即刻帰ろうと心に誓って、いつの間にか寝てるナミの頭を撫でる。その目元に隈があるのに気付けば、泣くよなァと今更ながらに思う。
眠っているナミを横目に電伝虫に手を伸ばして、現状を親父に伝えれば帰ったら殴られる覚悟しとけと言われて、俺は素直に頷いた。
買物は本当にナミが1人でして、変装してついて回ってた俺に気付かないで楽しそうにしてた。買った物は全てモビーに送られるようにしてるのを見て、なんか慣れてるなと思いながら買物の終わったナミとモビーへと帰還する。
到着した俺達を待ち受けていた兄貴達とナースに俺が責められて、殴られたり蹴られたりしていたらナミの顔が赤を超えて紫になっているのに気付く。どうしたのかと全員でナミを見たら、ナミが俺に回し蹴りして来た。
「何すんだよ!?」
「なんで全員に夜の事が筒抜けなのよ!?」
「……俺が話したから?」
素直に思った事というか、考えられる事を口にした俺にナミは身体を震わせる。そしてクワッと言う勢いで俺に攻撃を仕掛けながら、叫ぶように怒鳴るのだから相当な怒りようだろう。
「だ・か・ら!!蹴ったんでしょ!?最低!!エースの馬鹿!!もう許さない!!」
「え!?買物させたら許してくれるんじゃなかったのかよ!?ナミの嘘つき!!」
「それとこれとは話が別よ!!これでも着て、反省してなさい!」
そう言って強制的に着せられたそれは、太巻きの着ぐるみ。どうやら恵方巻きという種類の太巻きらしい。
首から上と、足首から下しか出ないそれで座る事も出来ずに甲板に残された俺は、兄貴達から揶揄われ続けている。なんとナミはその状態で俺を放置して、1人で寝ちまうし……!
イジケル俺にマルコが呆れた様子で寄ってきて、頭を小突いて来た。痛くもないそれに視線を向けたら、ナミの立場や気持ちも考えてやれよぃなんて言われちまって……なんか、切なくなる。
「元々そういう事苦手なナミと、行為中のそれを電伝虫で伝えて、その後親父に連絡したろぃ?」
「マルコに連絡したら、怒られると思ってよ……」
怖かったのだ。マルコに叱られる事が。
何よりも叱られる俺を見て、姉の顔に戻っちまうナミが。だから、甘えだとわかっていて親父に連絡を入れたのだ。
そんな俺にマルコは細く息を吐き出すと、俺の頭を軽く撫でてくれる。それから、低い声で、それの方では無く海を見ながら言葉を紡ぐ。
「親父の傍にはいつも他の隊長の誰かとナースがいる。親父が言わなくてもそれにより広がっちまえば、つらい思いをするのはナミだ。男なんてのは単純なもんでよ、家族とは言えどうしたって血の繋がりはねェから、ナミで抜く奴も出る」
「そんなのは!「それを責める権利はエースにはねェ。寧ろ、そう言う目で見られる事になるナミの盾になる覚悟くらいしてやれ」」
マルコの言葉を聞いて、自分のやった事のリスクを初めて知った俺が落ち込んでいたら、そのまま明日もそうしてれば皆の意識は恵方巻きエースに移動するから罰を受けてろぃなんて言ってさって行く。その後ろ姿を眺めながら、それは納得したけど……腹減ったよ……と、小さく呟いた。
翌朝、その姿のまま甲板で転がって寝ていた俺に、ナミが呆れた顔で寄ってきた。その姿に兄弟達がナミをニマニマとした顔で見てるのに気付けば、俺のせいだよなと真面目に反省する。
「その状態で寝てるとは思わなかったわ。とりあえず、大人しくしててよ。夕方には解放してあげるから」
「夕方になんかあるのか?」
「うん。あるの。だから、エースに動き回られると正直邪魔」
ニッコリと笑うナミに、俺も悪かったけど、煽ってたナミも悪いんだぞと少し思う。あんな、色っぽい顔で、蜜柑の香りを強くして誘ってたのはナミじゃねェかよ!!
「ナミさ、結婚してから俺に冷たいよな」
「……本気で、言ってる?」
「…………冗談です!すみませんでした!」
本気でナミが怖くて謝ると、ナミは俺の顔をタオルで拭いて、うがいと歯磨きを強制的にさせて来る。その後で、試食してと言いながら太巻きと豆料理をいくつか食わせてからさって行った。
試食と言いながら、大量にあったのは、名目つけて飯を食わせてくれたんだと気付いて嬉しくなる。その後も姿は見るけど、本当に忙しそうだ。
……それにしても、あの太巻き美味かったな。エロウ巻きだったよな!!
ん、なんか違うな。エロい巻きか?
そうなると、海苔巻きの中身がナミじゃないとおかしくなるか。だとしたらなんだ?
分からねェが、美味かったなァ。よし!少し貰いに行くか!
足首が動くなら、歩けない事も無いだろうと産まれたてのヒヨコのような足取りで歩き、階段を飛び跳ねながら移動して行く。そっとキッチンを覗けば、戦うように料理の指揮をとるサッチや、それに従うコック達の目を盗んで積まれてる太巻きを頭だけ動かして少し摘み食いする。
そして大皿を1つ空にした所で鬼の形相をしたナミとサッチに叱られて、その後は本当にナミに関する話は消え去った。代わりに俺に対する噂は残ったけどな。
ミミズになっても食い意地のはってる食欲の鬼ってな。鬼は外福は内!そう言って払ってみても、食欲の鬼だけは相変わらずモビーで元気に出没している。