飯の時間だから連れて来いとの指示を受けてナミを迎えに行くと、ニュースクーと楽しそうにしてるナミが居てこれならほっといても勝手に来たかなと思う。ニュースクーがどこからとも無く取り出した物を受取り、ニュースクーを揶揄っているナミに仲良いよなと眺める。
俺も海賊やるようになってたまにやり取りしてるけどよ、こんなに感情豊かなニュースクーなんて知らねェぞ。そんな事を思いながら、眺めていたら次に受け取った物見て悲しそうに瞳を揺らした。
それに思わず声をかけようとしたら、ナミは明るく笑ってニュースクーを安心させてからその思いを昇華するように歌い出す。でも……なんでだろうな、その歌声が泣いてるように、全てを諦めてるように聞こえちまったのは。
歌が終わるのを待っていたら、寄りかかった壁がギシッと音を立てた。その瞬間振り向いたナミがなんか幼くて、思わず手を広げたら真っ直ぐに飛び込んで来るその身体。
受け止めてみて、細いなと思う。軽いし、このまま消えちまいそうだなと。
「どうした?話すだけでも違ったりするぜ?」
「海賊一番くじが当たったの。重箱に卵焼きとか詰めて、お花見とかどうかしら?……でも、難しいわよね」
そんな事を言いながら勝手に落ち込んでくその姿に、皆でが無理なら2人で行けば良くね?と思う。だからナミの頭を撫でて、笑いかける。
「2人で行けば良いだろ。それなら、その重箱で足りるかも知れねェぞ。足りなきゃ、適当に獣倒すから、その場でなんか作ってくれよ」
「……そうよね、エースなら食べ切れるか、足りないわよね。ごめんね、私普通の人だから感覚がズレてたみたい」
「俺が普通なんだよ。ナミは少食だろ。マルコにも言われてたじゃねェか!」
果物だけで生きようとしてる奴にとやかく言われたくねェ。それに本当にいつもマルコやイゾウ、サッチからもっと食えって叱られてるの知ってんだぞ。
そう思って言った俺に、ナミは姉の顔をする。俺の妻たる自覚が足りてねェぞ!
「エース、食事の1人前って言うのが、大人ひとりが1回で食べる量の事なのよ。それを10人とか20人分食べて足りないエースは、普通じゃないのよ」
「でも、ナミは1人前食べきれねェじゃんかよ!」
「ふふ、確かにね。少食なのは仕方ないから認めてあげるわ」
そう言ってから、小さくありがとうと言って俺の胸に顔を埋めるから、俺は少しだけと自分に言い訳してナミの頭を撫で続けていた。そんな俺を後ろから蹴り飛ばしたのはハルタで、何故か青筋がたってる。
「ナミを呼びに行けって言われて、戻らないと思ったら……なんでイチャついてるのさ!」
「ナミがいた」
「そりゃ呼びに来たんだからいるだろうよ!!エースってそこまで馬鹿だったの!?」
真実を言ったのに何故か怒るハルタに首を傾げる。んーと、なら、他には……。
あァそっか。大切な真実を言ってなかったな。
分かりきった事だからと言わなかった事を反省しつつハルタを見る。その視線を受けて、ハルタはなんか嫌そうな顔をした。
「……ナミが可愛い」
「…………もう、エースにナミを呼びに行かせるの辞めるよ?」
呆れと疲れを隠さずに言うと、ハルタはナミの腕を掴んで連れて行く。俺は酷ェなァと笑いながらついて行こうとして、足を止めた。
……なんか、そういや机にしまってたな。何だったんだろう。
そっと机の中を見れば、入っていた封筒。それを開ければ世界の肉食べ比べが出来るバイキングとか書かれてて、これは行きたいと思う。
……これ、ペアか。だから諦めたんだな。
そうと分かれば真っ直ぐに親父の部屋に行ってナミの分と合わせて休みを貰う。そんな俺に親父はチケットを見せろと言うので、素直に見せると微かに眉が寄った。
「気を付けて行けよ」
「へ?」
「まァ、んな偶然早々起きねェだろうが……その宿がある島は、赤髪の縄張りだ」
「会っても、ナミがいれば戦争にはならねェと思うぞ?それに、あの人良い人だし」
「……能天気め。まァ、楽しんで来い」
呆れた様子で言う親父の言葉に首を傾げつつ、明後日からの休みを貰えた俺はナミに明後日が休みになったから弁当頼むと伝える。それにナミは優しく笑って頷くから、楽しみだなと言ってその唇を奪うとビスタに殴られ、真っ赤になったナミに逃げられた。
「今更キス位、いいじゃねェかよ」
「人前でするな。ナミは恥じらいを知ってる乙女だぞ」
「……そうだな、あんな可愛い顔を他の奴には見せたくねェもんな」
「お前は本当に、大物だよ」
そんな事を言って、ビスタは肩を揺らしながら去っていく。そうして迎えた休みの日の朝、ナミが弁当背負って俺の背に抱き着いたのをそのままに、ストライカーでモビーを離れる。
手を振る家族に楽しんでくると笑えば、呑気だななんて声が聞こえた。そうして到着した島でストライカーを岩場に隠してから、2人で花見を楽しみつつ歩いていく。
「綺麗ね」
「あァ、綺麗だな」
「……桜、見てる?」
「おう、ナミの髪についてるの見てる。取ってもすぐつくんだよな」
不満そうに俺に問い掛けてきたナミに、俺は素直に答えたのに何故か嫌そうな顔をされる。そして、何故か言葉を言い直された。
「……桜、綺麗よね」
「おぅ!桜付けたナミが綺麗だ!」
「~!エース!?」
「なんで怒るんだよ!?俺は本当のこ「ナミ!?偶然だな!!」」
突然割り込んで来た声に揃って視線を向けると、シャンクスさんがいて手を振ってる。それに歩み寄ると呑んでけ、食ってけと言われてナミはお花見してたのねと笑う。
そのまま宴に混ぜてもらって笑い合うんだけどよ、気付くとナミが赤髪海賊団の誰かに捕まってるんだ。それを必死で奪い返して隣に居させても、また呼ばれてナミはどこかへ行こうとする。
「ナミ!」
「エース、どうしたの?」
「行くなよ。……弁当、食ってねェし」
「さっき、そこの肉食べてなかった?」
不思議そうに首を傾げるナミに、でも作ってくれたの食いたいと言えばクスクスと笑われちまう。それから頭を撫でて来たナミは、変わらないんだからと言って重箱を取り出すと俺の前に広げてくれた。
俺の好みに合わせて作ってくれたのか、重箱のうち1段はペペロンチーノが入っている。それに驚いて顔を見たら、恥ずかしそうに視線を逸らすナミ。
「エース、好きでしょ?だから、合わないかなと思ったけど……作っちゃったから、その……」
「ありがとう!楽しみだ!」
俺の言葉にナミは笑ってくれて、それを食べていたら横から伸びて来た手が卵焼きを奪って行く。何すんだと見ればシャンクスさんで、美味いなと喜ぶその顔に嫌なものを感じた。
そうだ、この人……ナミに本気なんだった。6歳のナミに手を出そうとしてたっぽい事は、ナミからの話で十分理解してる。
知らぬは当人ばかりなり。俺も、昔は警戒してたってのに、喉元過ぎれば……ってヤツかな。
「人のモン、奪わないでください」
「少し味見する位良いだろ。エースは十分食ったんだろうかなら」
「いや、いくら食っても足りねェんで、駄目です。それに……泣かせていいのは俺だけだから」
俺とシャンクスさんの言葉の意味に気付かずに、少しくらいあげたらと首を傾げるナミは、卵焼きの事だと信じて疑ってねェ。勿論卵焼きも俺のだけど、ナミには触れさせねェぞ。
俺は牽制しつつナミを抱き寄せて、膝に座らせてから重箱の中身を食べ始める。そんな状態でもナミに手を伸ばしてその髪を弄るシャンクスさんは、余裕の笑みを浮かべていた。
「ナミ、今夜はモビーに帰るのか?久々に俺のベッドに来いよ」
「シャンクス?」
「ナミがいると、よく眠れるんだ。最近寝不足でな」
「それで顔色悪かったのね。わか「今夜はナミと温泉に行くから、無理ですね」」
勝手に頷こうとした阿呆な兎の言葉を遮れば、驚いた顔で俺を見て来るので封筒を見せるとその瞳を揺らす。そして、いいの?なんて言うから、親父からその分休み貰って来たと答えるだけでナミは俺に抱き着いてくれる。
それを瞳を細めて見てくるシャンクスさんに、この花は俺だけのもんだと無言で返せばニヤリと笑ってから、重箱から唐揚げを奪って行く。それにあ!と言えばナミが1個くらいあげなさいよと呆れた顔をするけどよ、絶対今の……諦めると思うなって意味だぞ!?
重箱の中身と、その作り手を守りながらの花見では、花なんて楽しむ余裕はない。花より団子な2人の男が、弁当の中身と何も分かってない蜜柑団子を取り合う様を、赤髪海賊団のメンバーは可笑しそうに眺めていた。