あの日、サッチを守ったのに関してはは偉かったと褒めて貰えた。なのにどうしてかしら……皆に物凄く叱られたのは。
酷いわ。私、何も悪い事してないのに。
そう思って溜息を落としたのは、致し方ない事だろうと思います。え、なんか、おかしいって?
そりゃぁ、ここ2ヶ月程、常に誰かが張り付いてるんだもん。1人になれるのはトイレだけなのだから、仕方ないと思わない?
ペンは没収されてないけど、強制的に食事をさせられるし、無視すると点滴入れられながらのお説教タイムだ。皆が……意地悪なのよ。
「ナミ、飯持って来たぞ」
「そんなに、毎日、何回も、沢山食べられないわよ」
「1日3食だろ。何回もって言う程じゃねェって。……食いきれないなら、残りは食ってやるから、な?」
宥めるように言葉を口にするエースに、でも多すぎると思うと小さく言葉を落とす。平安時代は、1日2食だったわよ。
それに現代でも休日とか在宅勤務の人は1日2食が普通じゃない。なのにどうして私は3回食べなきゃなのよ。
「なら、エースが全部食べちゃってよ……」
「ナミがそう言うなら「駄目に決まってるだろぃ」」
私とエースの幸福へと続く会話を遮るパイナップルに、ムスッとした顔をして見せれば苦笑されてしまう。私も本当はわかってるんだけどさ、そろそろ自由が欲しい。
落ち込んでるのを隠せもしない私に、パイナップルは隊長の顔をする。それを見れば甘えていじけていられる筈もない。
「ナミ、エース、二人に話がある。食いながら聞け」
どうやら、食べる事からは逃げられないらしい。……酷い話だわ。
そうは思うけど、食べやすいように海鮮ミルクリゾットと、蜜柑とヨーグルトのかかってるサラダ、レモングラスの入った焙じ茶となっていれば文句なんて言える筈も無い。本気で愛を感じるメニューである。
「サッチに、愛されてるわ」
「そうだねぃ。サッチだけは、ナミに罰を与えるの辞めてくれって最後まで抵抗してたよぃ」
「サッチ……」
「だが、どうして罰があるのか、ナミはわかってるなぃ?」
その言葉には頷くしかない。予見してたのに、サッチを守る事だけを考えて自分を疎かにした事。
そして、その危険性を認識していながら、誰にも連絡せずにいた事。何よりも、戦うのではなく身を呈して庇った事が、本来ならば防げた筈の不必要な治療時間を作りティーチを逃してしまう結果を産んだ。
サッチが悪魔の実を食べた事でティーチは野望を果たせなくはなっただろうけど……あれ、でも待って。ルフィがクロコダイルを倒して七武海に穴が空けば……悪魔の実の能力が無くても、ティーチは本来シャンクスに傷を残せる位には強いのだから……。
「ルフィが危ない!!」
「その話をしに来たんだよぃ。だから、サッチを泣かせない為に食ってくれ」
「待てよ!!どうしてルフィが危なくなるんだよ!?2人だけで納得してないで、俺にも説明してくれ!!」
ルフィが危ない理由については、マルコがエースに話をしてくれてる間に、私は食事を食べ進めて行く。あ、小海老とアサリが入ってる。
隠し味としてなのか、マヨネーズが使われているけど、あまり牛乳の臭みがないのは醤油でも混ぜたのかなと首を傾げた。そんな私にマルコが、サッチが可愛がるのも分かるよぃなんて言うので混乱してしまう。
私が食事を終える頃には、マルコからの大まかな説明を終えていた。それによりルフィが危険な理由を理解したエースが、無作為に飛び出そうとするのを私が即座に飛び付いて引き止めると、マルコがその隙をついて器用にエースだけを蹴り飛ばす事で阻止するのに成功した。
……こんな事で覇気を使わないであげて欲しい。あ、モビーに穴が!!
「エース!大丈夫!?」
「マルコ……何しやがる!!」
「落ち着けよぃ。その弟の為に、エースとナミが飛び出そうとするのは想定内だからねぃ」
「「え?」」
「エースは蹴り飛ばせば良いが、ナミは放置すると隙見て煙のように消えかねねェ。だから、俺も同伴で三人で向かう事に話は纏まってる。安心したかよぃ?」
私とエースが驚きに声を揃えると、マルコはそう言って笑う。それからマルコ、エース、私の三人でルフィを追いかける事についての詳細説明が入った。
つまりはその可能性に思い至ったのが誰なのかは置いとくとしても、そのリスクを考慮してマルコが親父様の許可を得たと言う事である。それはつまり、皆が私の……本来ならば妄想だと言われてもおかしくないそれを、全面的に信用してくれてるという事に繋がる。
そうして私はマルコの背に乗り、エースが三人分の荷物を背負い、まずはドラム王国を目指す事となった。なので途中で休憩と補給で立ち寄った島で、冬物を少し買ってから向かう事にしたんだけど……エースは嫌そうな顔をする。
「どうしたの?」
「俺、火だからいらねェ。荷物増えるし。俺、冬物はナミがくれたのだけでいい」
「でも、持って来てないじゃない。何かあったら嫌だからって言ったのはエースよ」
「色々着ると、動きにくくなるだろ。俺は着たくない」
子供みたいに言うエースに、我儘言わないでと声をかけるより早くマルコが適当な服を選びながら言う。言葉は口にしていても、手が休む事が無い辺りに有能さが見える。
「見てる周りに迷惑だから、何か着ろよぃ。……コレで良いだろ」
「え、こっちのが可愛いと思う」
思わず隣にあったのを手に取り見せれば、マルコが顔を顰める。エースはどっちも嫌ってていを崩してないけど。
なんだろう。気に入らないデザインなのかな?
「エースに可愛さが必要かよぃ!?」
「え?エースって可愛いじゃない」
「「可愛い!?」」
声を揃える二人に首を傾げつつ、似合いそうな物を探して勝手に購入してからはたと自分のを買ってなかったと気付いて振り向くと、エースとマルコが勝手に選んでた。それを見てありがとうと笑えば、そういう奴だよと笑われてしまうから、それにえへへと言って終えてしまう。
そうしてドラム王国に向かったけど、やはりと言うか……ティーチが破壊した後でありルフィ達の到着はまだだった。この先でルフィがクロコダイルを倒さなければ問題は起きないけど、きっとそんな選択肢はないと思うのよね。
そう言えば、ルフィ達はどうしてアラバスタに向かう途中で、こんな雪国に辿り着いたんだろう。確かアラバスタへ続く
もしそれがナミちゃん関連なら……ここに来る話そのものが消えて、チョッパーを仲間に出来なくなるんじゃないかなと不安になる。覚えてない事、思い出せない事は大概私……というか、ナミちゃんに関わる事だから。
「ルフィは、ここに来るかな……」
「来るのが見えたんだろ」
「うん。でもなんか、その未来に続くそれが、線が細いのよね」
落ち込む私にマルコが優しい声で問い掛けてくる。でも、それにはエースが首を傾げる。
「確実な所で待つかよぃ」
「確実な所なんかあんのかよ」
「……あるわ。アラバスタには、必ずルフィ達が行くのは決まってるから。アラバスタで待てば確実に会える」
クロコダイルを倒さないルフィは想像できないけど、でも……ここにルフィが来なかったら最悪な未来が待ってるのも確かで……。この場にもう少し居て、この島を襲う海賊を始末してあげたいと……その上でチョッパーが残るならそれはそれで仕方ないと思うの。
でも、それはいつまで?
本当にルフィは来ないの?
この島の人達が襲われるとわかってて、それなのに何も言わずにこの場を離れて、私は後悔しない?
「ナミ、何を悩んでるんだ?」
「エース……」
「ガキの頃からずっと見てんだ。ナミの様子から大抵の事は嫌でもわかる。吐いちまえよ」
「エース……。この島は、ルフィが来ても来なくても、襲われるの。この国を捨てた王が海賊になってて、その海賊に襲われるのよ。ルフィが来れば、ルフィが倒すと思うんだけど……」
その先を言葉に出来なくて言い淀めばエースとマルコが顔を見合わせてから、私に優しく笑いかけてくれる。そしてエースが強く私を抱き締めてくれて、マルコがそんな私の頭を撫でてくれた。
甘やかしてくれてるのだとわかるそれに、泣きそうになる。こんだけ寒いのだから、下手に泣いたりしたら良くない事位分かるのに、私……随分弱くなったわ。
「エース……私、見捨てたくない……」
「わかってる。ナミは、見捨てられねェよな。大丈夫だ。俺がいる。マルコもいる。何も心配しなくていい」
「たまに言う我儘やオネダリが、他人の為なんだから困るよなぃ。……て事は、狙いはあの山の上にある城かよぃ?」
「それもだけど……」
そうして私に分かる話を全て伝えると、マルコとエースの力に頼る形で頂上にある城へと向かう。そこで元国王の船がこちらに向かっているのを見掛けたと、マルコが話して暫くの間お世話になると言う話で上手く纏めてくれた。
そうして島で待つこと5日……麓で問題が起きた。雪崩だとか色々……。
「「ルフィか……」」
私とエースの声が重なれば、マルコからどんな弟か会うのが怖くなったよぃなんて言われてしまったけど。そうして様子を見ていれば、どうやらビビが病に倒れたらしいと知り必ず原作の流れに持って行こうとしているかのような、世界の修正力のようなそれに背筋が寒くなる。
ビビが熱で苦しむ姿を見て思い出す。本来ならそれは、ナミちゃんがなるべき状態だった筈。
だとしたら、運命は変えられないのかな。そんな不安を抱えながら、ビビの治療とルフィとサンジ君の治療を見守り、手伝い……それから、ルフィのベッドの横に座るとその頭に手を伸ばした。
相変わらずの髪質に懐かしいなと思ってしまう。案外コレで艶とかあるのよね……。
お風呂だってまともに入らない癖に、なんか憎い。そんな事を半ば本気で思いながら頭を撫でていたら、突然その手首を掴まれて動かせなくなる。
驚いて見ればルフィがゆっくりとその瞳を開いて、私を見詰める。それからへにゃっとした笑顔を私に向けた。
そのまま当然のように擦り寄り、文字通り伸びて来た腕にグルグル巻きにされてしまう。それには流石に困って声を出すけど、離れてくれる気配はない。
「ちょっと、ルフィ!?」
「……ナミ、だよな。夢かと思ったけど、ちゃんとあったかい」
「……久しぶりね、ルフィ。でも、その前に、苦しいから……離し……「エースの匂いがする。エースもいるのか」」
「え?うん。いるけど、離し「会いたかった、ナミ。やっと取り戻せた」」
そう言って当然のように甘えてくるそれに、まずは腕を解いてと泣きそうになった私の代わりにエースがルフィを殴り解決してくれた。その後エースとの再会を喜んで、エース毎仲間に引き込もうとするルフィに声を揃えてお断りしたのは当然だろう。
その騒ぎの中で何故かエースが私と結婚したのだと伝えれば、ルフィは傷が痛み出したのか泣きながら布団に潜ってしまう。心配する私にマルコとエース、更には初対面の筈のサンジ君からまで呆れたような視線を向けられたのは謎過ぎる現実である。
これがルフィとの再会の話。運命の分岐点に立った瞬間の話でもある。