※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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安否確認(光源氏16/赤)

 バレンタインの時に、最期の賭けとして行った告白で成功した。だからと言って、基本的には忙しいサッチなのでそれ程何か変わった訳ではなかったけど。

 ただ、ホワイトデーにはマタタビ入のチョコ食べておかしくなり、大騒ぎになったのは今でも恥ずかしく思う。マルコに診てもらったら、体質に合わなくて毒物認定した体が異常反応を示してしまったらしい。

 なので、そのホワイトデーでも結果論美味しく食べてもらいまして……オレンジデーも仲良く過ごしまして……!

 でも、サッチはたまにだからなのかいつもでもなのか、それは不明だけど。その……優しいのに意地悪で、激しいから、その後半日は寝込む事になる。

 やっぱり私……体力つけなきゃ、かなぁ?

 そんな事を考えていた時、何だか表が騒がしくなり慌てて様子を見る為に飛び出した。すると見覚えのあり過ぎる船が近付いていて、まだ邂逅するシーンの時間軸じゃないわよねと首を傾げる。

 けれども船が当然のようにつけられれば、皆も緊張感を醸し出す。あの時も戦闘の意思はないと言いながら姿を見せて、僅かな邂逅しかしていない筈だから今回もその程度で終わる筈よね。

 だけどわからない。なんでまだ、その時じゃない筈なのにシャンクスがここに居るのだろう。

 

 「シャンクス……どうして……?」

 

 思わず呟いた私を背後から抱き締めて来た腕。そして、頭上から落ちる声。

 

 「赤髪が来てるから、中に居ろって言いに来たんだが……知り合いなのか?」

 「うん、師匠……なの」

 「は?……誰が?」

 「シャンクスとベックが」

 

 暫し無言になったサッチが何故か驚いた顔で私を見て、それから少し考えるような仕草をする。その直後……そうかと言って頷いた。

 何がわかったのかと首を傾げたら、私を抱き上げたサッチが親父様の元へ向かうから混乱する。そして私に座ってろよと言うから、逆らう意味も見いだせないのもあって私はそれに従った。

 

 「どうしたの?」

 「良いから、待ってろって。……親父、赤髪はナミに会いに来たようだ」

 「ん?」

 

 サッチの言葉に親父様は首を傾げる。それがなんとも可愛く見えた時点で、私は親父様に永遠に勝てないだろう。

 そして、この思考を知られたらサッチがどんな反応をするかと考えたら怖いので、墓まで持って行くつもりの思考でもある。そんな事を考えてた私の傍で、サッチがデキる男の顔で親父様と対峙してた。

 

 「ナミが女神ちゃんだったみたいでな」

 「……成程な。俺のところにいると知って飛んで来たか」

 

 そう言ってグラララララララと笑う親父様を見上げているけど、会話についていけない。直後に慣れ親しんだ声が聞こえれば、無意識でそちらに意識を向けてしまう。

 その時サッチが私の頭を撫でながら、先に話しといてくれよなんて苦笑するから言ってなかった?と思って首を傾げてしまう。その後サッチが話してもいないのに、何故かシャンクスやベックとの関係性を的確に親父様に報告するから驚いてしまう。

 

 「え?なんで、知ってるの?」

 「ナミは赤髪をシャンクスと呼び、その副船長をベックと呼んだ。そして2人を師匠と呼んだからな。そうなれば3人の年齢を考慮して、ナミの身のこなしを考えれば自ずと答えは出る。それで報告したが……何か間違ってる所があったか?」

 「大正解過ぎて……怖かったわ」

 

 思わず笑えばサッチがなら良かったと笑い返してくれたけど……いや、本当に頭いいんだなぁってマジマジと見てしまう。普段おちゃらけてるから、賢いイメージ無かったとか言ったら叱られるかな?

 サッチが白髭海賊団の懐刀と言われるのは、この賢さが理由だろう。でもだとしたら、そんなサッチを殺した黒髭って……。

 実力でそこまで劣るとは思えない。確かにラスボスと目されてた男ではあるけど、だからって……サッチも決して弱くは無いもの。

 どちらにしても、その時が来たら私は命を捨ててでもサッチを守る。それだけは譲るつもりもないし、気付かせるつもりもないわ。

 

 「戦闘の意思は無い。身内の無事を確認に来ただけだ!会わせて貰えないか?」

 「ナミ、顔見せて来い。船に乗せると面倒だ」

 

 親父様の言葉に頷いて立ち上がると、即座に歩き出して……動きを止める。ふと、不安になったのだ。

 そんな私に片眉を上げると、何故か少し嬉しそうに笑ったサッチが近付いてくる。そして肩を抱き寄せられるから、少しそれに甘えてしまう。

 

 「ナミが頼ってくれて嬉しいよ。……行くか」

 「え?」

 

 頼るってなんだろう。私、頼ったの?

 何となく聞けなくて、でも、久々に会うシャンクス達の言う身内が私で正しいのか不安だった私は、それに素直について行った。すると顔を見せた瞬間に、シャンクスが嬉しそうに声を掛けてくる。

 

 「ナミ!!会いたかった!元気だったか?」

 「シャンクス!ベック!久しぶり!……でも、四皇同士って会うの不味いんじゃ……?」

 「ナミが白髭に誘拐されたんじゃねェかと、お頭が騒ぐんでな。顔見れば落ち着くだろうと考えて会いに来た。……その様子なら、自分の意思だな」

 

 ベックの言葉に素直に頷けば、サッチが私の髪をそっとひと房その指に絡める。何してるんだろうと思いつつ、ベックに答えようと笑った。

 気になる事は確かにある。でも今は、質問に答えるのが第一優先事項だと思うから。

 

 「うん!自分の意思!」

 「……幸せだな?」

 「うん!大切にして貰ってる。ありがとう。誘拐されたんじゃないから、安心して」

 「待て待て!俺が来たのになんでナミはベックとばっかりそんなイチャイチャ話してんだよ!それと、四番隊のだよな、えっと……サッチだったか!?ナミに何してんだお前!?」

 

 シャンクスが混乱してる様子を見せるから、お兄ちゃんとしては許せないらしいと気付き笑ってしまう。なのにサッチが、それを挑発するように言葉を紡いでしまう。

 どうしてそう大人気ない事するかな。まぁ、敵船なのはわかってるけどさぁ……。

 

 「何って……見ての通りナミ(恋人)の髪を弄ってるんだが?」

 「恋人!?ナミ、お前……恋人!?」

 「……?私、独身の若い女だもの。恋人の1人や2人いても問題無いでしょ?」

 

 私に恋人が居るのってそんなにおかしいかな。サッチも結婚して無いし、何も問題ないと思うんだけど。

 そう思って首を傾げる私に、サッチが可笑しそうに笑う。そして何故か、得意気な顔でシャンクスに視線を向け直した。

 

 「そういう事だ。赤髪!ナミは俺の、恋人だ。……だがナミ?」

 「なぁに?」

 

 そう言ってサッチを見上げた時、見上げなきゃ良かったと本気で思った。だって、サッチが……笑顔で怒ってる。

 やだ何これ、怖い。私何かした!?

 

 「俺としちゃ、恋人は1人(・・)が望ましいと思うが……ナミはそう思わないのか?」

 

 それか!そう思いながらも、怒らせるのは何故か良くない気がして、普段怒らないサッチだからこそ身の危険を感じる。

 それにサッチって、元々夜は意地悪なんだもん。怒らせたくなんかないわよ。

 

 「それは言葉のあやであって、私はサッチがいいわよ!?サッチじゃなきゃ嫌よ!?」

 「……なら、良いけどよ。あんまり心配かけんな」

 

 そう言って抱きしめてくれる腕に体を預けると、何故かシャンクスは騒いだけど、ベックは優しく笑ってくれた。そして、ベックが言う。

 

 「結婚式には呼べよ」

 「へ!?ちょっとベック!?そんな話少しも出てないわよ!?それに、海賊だし、難しいと思うのよ!?」

 「……ナミが結婚したくなった時でいい。……サッチ隊長、だったな」

 

 ベックは穏やかに言って、視線をサッチに向ける。そして真剣な空気を纏う。

 

 「あァ、そうだ。ベン・ベックマン?」

 「妹を、宜しく頼む。基本は賢いんだがな、変な所で馬鹿なもんで心配なんだ」

 

 苦笑するベックに誰が馬鹿かと思って睨むと、サッチが知ってるなんて笑うから思わずその足を踏みつけていた。それにより悲鳴を上げたサッチから離れて、べー!と言えば何故か皆が笑い出す。

 それに首を傾げると、シャンクスが妙な事を言い出した。それには流石に呆れてしまう。

 

 「ナミ!俺はナミが帰ってくるの待ってるからな!!」

 「……私の帰る場所は、ここと故郷の2ヶ所だけよ。何言ってるの」

 「ナミはどうして昔から俺の言う事だけ聞かないんだよ!?ベックの言う事は聞くのに!!」

 

 ここで人徳?なんて言えば五月蝿くなりそうよね。でも、何か他に言えそうなものがあるかと言われたら難しい。

 だからと思ってベックに視線を向ける。丸投げしてごめんねと心で謝罪しながら。

 

 「……ベック、シャンクスをお願いね。なんか、昔と全然変わってなくて心配だわ」

 「クッ……!お頭の方がナミよりガキだからな」

 

 笑うベックだけど、髪の毛が黒から白に変わってる時点でどれ程苦労をかけられたのだろうと思えば、言いたくもなる。そもそも、ここに来るのだって大変だったと思うのよ。

 

 「シャンクス、ベックに負担かけないで、我儘は辞めるのよ。わかった?」

 「ナミの中で俺は何歳なんだよ。畜生……」

 

 何故かいじけ始めるシャンクスに、よく分からないわと思っていた。けど、まさか顔を見たいからと言うだけで来たシャンクス達が、海軍の軍艦を20隻近く沈めてきたのだと知った私が頭を抱えたのは当然だろう。

 それでもとりあえず、大切な家族と優しい恋人と共に過ごせる今に、私は感謝している。いつか原作の時間軸に進んだなら、その時は身を呈してでも守ると心に誓いながらサッチの胸に飛び込んだ。

 エースの為だけじゃなくて、喪えないのよ。私はもう、サッチの居ない明日なんて耐えられないから。

 想像するだけで震えそうになる自分を押さえ込んで、私はサッチの胸に頭を預けた。サッチの鼓動は、しっかりと脈打っている。

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