14歳の頃から体を慣らし、16歳になったその日に全てを奪い尽くしたが、それから先もナミが俺に向ける眼差しは変わらずに、俺だけが想っている現状だ。外道だと言われようが、鬼畜だと言われようが構わねェ。
ナミは、俺のモノだ。我儘も言わず、従順でありながら本質的には頑固なナミが買い物に行きたいと言ったその島は、治安の悪さではシャボンディと近いものがある。
俺も1緒なら行かせてやってもいいが、暫く時間が作れねェと言ったらナミは笑顔で分かったと言った。だが……部屋にこもっているナミに違和感があり、ヴァイオレットを呼べばナミはこの国に居ないと言う。
ならば見えてるこれは何だと思って触れれば、その姿は忽然と掻き消え、残ったのはナミの武器1つ。即ちナミは武器も持たずに出掛けた事になる……。
流石に、おいたが過ぎるだろう……?
何時もイイコにしていたから、甘やかしすぎたか?
そう思いながら窓から飛び出せば、ジョーラとベビー5が余り怒らないであげてとかほざくのが聞こえた。怒るなと言うなら、可愛がってやるか……?
そんな事を考えながら向かったその島では、相変わらず人買いが彷徨いているのでそれに声を掛けてナミが商品にされてないかを確認する。ナミを捕らえるのはなかなかに難しいとは言え、女子供で気をひけばそれこそ簡単に捕まえられるのも分かっているからこその不安だ。
俺の視界の端に若草色の髪の女が映る。明らかに歩き方や雰囲気、見た目はナミじゃねェが背格好と匂いがナミで、俺はそれに視線を向ける。
ラッピング用品の店に入ったそれが気になり念の為にと店前で待てば、出てきた瞬間にその女は顔色を変えた。そして、素知らぬ振りで通り過ぎようとしたのを捕らえればなんでわかったの!?等とほざく。
……美味そうな匂いがするからな、お前は。
それに、腕に抱けばその肌質で分かる。それにしても、これは注意しねェと何かあったら見つけるのに苦労するなと、その変装技術に溜息が落ちた。
連れ帰りながら懇々と説教してみたが、ナミは聞いている様子もない。買った物を落とさないように大切そうに抱き締め、そして、どこか満足そうにしている。
……欲しい物があるなら言えばなんでも揃えてやるのに、何故こういう事をするのか。しかも未だに俺を若様としか呼ばねェ。
だが、確かに俺が若様と呼べと言ったんだよなと、過去の自分を殴り飛ばしたくなる。……ナミが俺を想って居なくても、名目だけでは恋人なんだから愛称で呼べと、これ迄に何度言ったか既に分からねェ。
部屋に到着すると、ピーカとヴァイオレットにナミを見張り部屋から出すなと命じてから、ナミにも部屋から出るなと言う。それに少し落ち込んだ様子で頷いたナミだが、俺は大切なものをみすみすなくすつもりはねェんだ。
それから数日、召集等もあり忙しくしていた俺は時折連絡を入れてナミの様子を確認してはいたが、その度に部屋からは1歩もでてないと言われていた。実際帰ったら今度は幻ではないナミがいたが、それは床に倒れている。
その時の俺の心臓の動きを想像してみろ。本気で心臓が止まるかと思った。
抱き起こしてみれば意識を朦朧とさせたナミが、にこりと笑っておかえりなさいと言って……寝た。分かるか、寝たんだぞ。
数日俺が傍に居なかったから、信頼出来る奴が部屋に居なかったから、そんな理由で1睡もせずに動き回っていたと知り、失念していた自分が情けなくなる。1人だと殆ど眠れないのはお互い様だが、ナミは俺とは違い体力がねェし、何よりもナミは体だけでも休めるという事が出来ない。
「悪かったな。せめて、ジョーラかベビー5、もしくはモネでも傍に居させるべきだったか」
体が限界を迎えて、夢も見ない程に深く眠れる状態になるその時迄……倒れる迄動くのだという事を忘れていた俺の責任だ。そっとその頭を撫でれば、寝ている筈なのに嬉しそうに笑うナミに、もう1度悪かったと呟く。
その時少し気遣わし気な様子でモネが話しかけて来た。近くに居続けるその存在を忘れる程、俺はナミしか見えていなかったらしい。
「若様……明日のご予定は、全てキャンセルになさいますか?」
「モネ、珍しいな。お前がそんな事を言うのは」
「ナミは、明日若様が居なければ恐らくは1日中起きてますから」
気遣わしげに言葉を告げるモネを見て、俺は内心で首を傾げる。何かの日だったか?
「……ナミも俺も誕生日じゃなかったと思うがナ?」
「……バレンタインデーですわ。若様」
「あァ、去年辺りに広まったイベントか。……今からお前達で出来る仕事は全て、適当に片付けておけ」
「まァ……今日も全てキャンセルですか?」
クスクスと笑うモネに、仕方ねェだろうと言えば何故か嬉しそうに笑い、それから静かに頭を下げた。そんなモネを見て、使い勝手のいい優秀な人形だなと思う。
その人形がナミには人のような顔をしてみせるのだから違和感は拭えねェ。シュガーもナミには懐いてるしな。
ファミリーの女達と仲良く茶を飲む姿は、他のファミリーからも癒しだと言われている。男の幹部には近付かないが、それは俺が不愉快になるからだろうなと思えば少し笑えてくる。
「ナミ、早く起きろ。俺まで眠くなる」
……俺も、最近まともに寝てなかったなと思ったのがいけなかったのか、眠るナミを守るような形で、ベッドの脇で眠ってしまった。そんな俺達の姿を偶然覗いたベビー5とデリンジャーが見て声を飲み込み、その場を去ると同時に幹部全員に騒いで聞かせた事を知るのは少し経ってからの事だった。
俺が目覚めると俺を包むように毛布が掛けられていて、俺のコートはコート掛けに移動していた。そしてナミは何かを歌いながら料理をしていて、部屋には甘い匂いが立ち込めている。
テーブルには既にサラダ等が並び、時計を見れば日付が変わっている事に気付く。それも窓の外を見るに既に夜に近い。
……どんだけ寝てたんだ。それも、床で……!
「若様……起きたの?」
「だから、いい加減ドフィと呼べ」
「でも、私は最高幹部じゃないもの。そんな事出来ないわ」
昔の事を覚えてないのは分かってるが、こんな時悔しくなる。……覚えてなくても、ナミは俺を甘やかしてくるんだよな。
ガキのように扱う事は流石にねェが、それでもナミは俺に甘い。優しいなんてレベルじゃ既にねェ。
「ナミは俺の〝恋人〟だ。愛称で呼ぶくらいしやがれ」
「やだ」
「そうか、やだ……やだ!?何が嫌なんだ!」
「……なんか、恥ずかしい。だから嫌よ。意地でも若様って呼び続けてやる」
「ナミ……」
なんだ恥ずかしいって。そんな事を思っている間に準備が整ったようで、寝起きで食べられる?なんて聞いてくる。
あァもう、ナミも含めて食べ尽くしてやる。そして、泣こうがどうしようがドフィと呼ぶまで貪ってやると思いながら立ち上がれば、そっとコートを差し出してくる。
「無いと、落ち着かないんでしょ?」
「……いい妻になれそうだな。恋人が嫌ならいっそ妻になるか?」
「……この国の王を若様が辞めてからならね」
スっとその瞳を細めたナミは、そう言って剣呑な気配を纏いつつ笑う。誰に聞いたのかは知らねェが、ナミは俺がこの国の王となった経緯を知っている。
「若様、私からのプレゼント」
「チョコか?」
「ええ、自白剤入の……ね?」
言ってクスクスと笑う姿は大人の女にしか見えず、だが本当は子供だと分かっている。分かっていて、可能な限り抱いてんだから俺も何だかな……。
「あ?本当に入ってたら、ナミへの愛とやらを永遠語るだけだろうぜ」
「嘘ばっかり。悪い人ね」
そう言って笑うナミは、俺の向かいに座ると俺が食べ始めるまでのんびりと過ごす。優しい雰囲気が少しこそばゆい。
貰った箱を開ければ中からは円形のチョコが出て来て、見るからに何かを混ぜてあると分かる。1つ摘めばナッツ類だとわかるが、チョコが強過ぎてナッツの種類迄はわからねェ。
それにしても美味いなと思いながらテーブルに視線を向ければ、何処で仕入れたかは知らないが、ロブスターを使ったグラタン等が並んでいた。量とサイズを考えるに、あの島で買った訳じゃなさそうだがな。
俺が喜ぶならとなんでも学ぶ姿は、ファミリーのそれとあまり変わらねェがやはり、どうしたって他のファミリーとは質が違う。何かを傷付ける事を嫌うナミは、そういう意味では俺に従わねェし、本来戦えるのに自衛さえ満足に出来ねェ。
食事を終えた俺が立ち上がると、不思議そうに俺を見たナミを操りベッドへと移動させる。それにピクリと反応したナミは、困ったような顔で俺を見る。
「若様……あの……」
「ナミがドフィと呼ぶ迄、終わるつもりはねェから、覚悟しろよ」
言いながらナミに自ら脱がせてやれば恥ずかしいと言うが、それはそろそろ慣れてもいい頃だろ。いつまでもウブで可愛いとも思えるがな。
「恥ずかしいのは、これからだ」
自ら足を広げさせればヤダヤダと首を横に振るが、その程度で辞める筈もねェ。弱いところは知り尽くしているからこそ、そこを指先と唇で刺激してやれば愛らしく歌う。
だが……勝手に出掛けた上に、倒れて心配迄かけたナミへのお仕置きも兼ねているこれは、簡単には終わらせねェ。今夜はイかせてやるつもりはねェぞ、ナミ。
「1晩中、啼け」
「や、ぁァァァ!」
身体の弱いところだけを狙い、快楽地獄に落としながらもその身を高めそうになると動きを止める事を繰り返す。そうなれば当然震えるのは、体だけでは無い。
分かっていてそれを繰り返し、意地の張合いのような狂宴の時間が訪れる。俺だけの為に歌えよ、ナミ。
Happy Valentine……反省しろ、そして、俺の名を呼べと男は囁く。女がそれにいつまでも耐えたのかは、2人だけが知っていれば良いことだろう。
女にとっては長過ぎる夜は、そうして始まった。