※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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ホワイトデーイベント(光源氏16)side

 バレンタインの時に虐め倒したからか、ナミは俺が手を伸ばすとビクリと震えるようになった。その甲斐あって今ではちゃんとドフィとも呼ぶが、そんな怯えたような顔をするなよと思えば溜息が出る。

 その怯えた顔に欲情すると言ったら、嫌われるだろうか。いくら甘いナミでも、許さないだろうか。

 そう思いつつ部屋に行ってみるとナミがニュースクーに何やら渡して、ニュースクーがそのまま飛び立つ所だった。残された箱の中身を見て、嬉しそうにしているナミは俺の存在に欠片も気付いていない。

 差出人の名を見ればノジコとあり、あの姉かと思えばそれも仕方ねェかと思う。ナミの世界は姉と母で埋め尽くされていて、そこに後から俺が無理矢理侵入したようなものだ。

 その他は蜜柑と兄弟だが、この兄弟が面倒なんだよなと思う。四皇の赤髪達を兄と慕い、弟は近年白髭に所属したスーパールーキーと、革命軍で実質的No.2と言われている男。

 それと、どこの誰だかよくわからん村の少年と来たものだ。いつか名を轟かせるからなんて笑うナミの表情は姉と言うより母親のようだったから、そういう意味では心配してねェが……不愉快だ。

 そもそも〝俺よりも〟母親と姉を大切にしてる気がしてならねェ所が、また更に気に入らねェ。バレンタインの時、俺にはチョコを寄越したが結局ファミリー全員に何かを渡していたばかりか、この様子では実家にも何か贈っていたらしい。

 苛立ちが頂点に達しそうになった時、甘い物が口の中に入って来た。何してんだと犯人を見れば、特別よなんて言って呑気に笑っている。

 

 「有り難すぎて涙が出そうだ」

 「そうでしょー」

 

 無邪気に、だが同時に少し得意気に笑うナミに珍しく年相応な様子であるそれに苦笑すると、当然のように飲み物を差し出された。甘かったでしょなんて言ってるから、砂糖も何も入ってないのかとそれを口にすると蜜柑の香りがする紅茶だった。

 恐らく日常的に自分が飲んでる物を寄越したんだろう。そう思えば小さく笑みが浮かび、飲み干してから立ち上がる。

 仕事を全て片付けて、ホワイトデーは2人で過ごしてやろうと思い立ったからだ。それから数日後のホワイトデー当日、のんびりとした様子でマシュマロを食べているナミを操り立たせると小さな悲鳴が上がる。

 

 「ノジコのマシュマロ食べてたのにー!」

 「見りゃ分かる。行くぞ」

 

 姉から貰ったんだろうが、姉が作った訳じゃあるまいに騒ぐな。そう思いながらも視線を向ければ不思議そうに俺を見上げてくる。

 

 「どこに?」

 

 フッフッフッと俺が笑えば、それ以上ナミは何も聞かずに着いてくる。だが、部屋を出た瞬間、服とか変えた方が良いわよねなんて言う。

 

 「買ってやるから、今はそのままで着いてこい」

 「ドフィがそう言うなら、うん、分かった」

 

 少しの距離を保って歩くナミをコートの中に抱き込んで、歩き出す。それに対して不思議そうにしているから、余り離れるなと言えば少し緊張したような顔で戦いになるの?なんて聞いてくる。

 ……やはりコイツの恋愛脳は壊死してやがる。少しの緊張感を持ち、ピリッとした空気を纏うナミは凛として綺麗だが……違ェよ。

 国に降りると勝手に道が出来る。それは分かっていたが、ナミはおぉー!とか言ってるからその頭を軽く撫でてやった。

 

 「洋服だったな、行くぞ」

 「何が!?待ってドフィ、話が全く見えないから!」

 「あ?言ってなかったか」

 「うん。どうしたの?」

 「今日はナミとデートだ。服を気にしてただろ。好きな物を買え」

 

 俺の言葉に少し呆れた様子で、同時に少し挑発的に笑ったナミが小首を傾げる。小悪魔や猫を思わせるそれに、可愛いもんだと唇が動くのを待つ。

 

 「お店の物全部って言ったらどうするのよ」

 「店員も含めて買ってやるよ」

 「冗談です。ごめんなさい。私は、動きやすいのが良いかな。……それと、ドフィが好きなタイプの服を教えて」

 

 好きな服?

 薄手の白い大判のシャツ1枚で、水に濡れてるとか好きだな。何も着てないよりエロいぜ?

 後は、紅い紐も似合うよな。肌が白いと紅い物がよく映える。

 

 「ドフィ!」

 

 真っ赤になったナミが俺を睨んでいるから、どうやら願望を音にしていたらしいと知る。それにしても、怒ってる顔も美しいな。

 

 「お前は何も着ないか、リボンだけ巻いてればいつでも貰ってやるから安心しろ」

 「……その格好で外に出てもいいの?」

 

 低い声で問い掛けるナミにまだまだ甘ェなと思い、笑う。たがまァ……出たいって言うなら、出してやるさ。

 

 「構わねェぞ。外で……人に見られながら俺に抱かれたいんだろ?すぐに実践してやるよ」

 「そんな事言ってない!」

 「お前の痴態を、可愛い声を、披露してやれよ。見たり聞いたりしたやつは全員、その後……玩具にしてやるから安心しろ」

 

 最後だけ囁くように耳元で言えばナミは顔色を変えて、2人の時に抱いてと俺に言う。本当にナミは甘ェ。

 見知らぬどうでもいい人間1人さえ、見殺しに出来ねェ可愛い女だ。さて、あまり虐めても良くねェな。

 そう思いつつ似合いそうなドレスを数枚選び投げ渡す。それを器用に手にしたナミに言葉を向けてやる。

 

 「その辺を着てろ。ナミにはそれらが似合う」

 

 俺の言葉にナミは小さく頷いて更衣室に入るから、ソファに腰掛けて待つ。それに合わせて飲み物等を持って来る店員に構うなと合図して、ナミの手伝いを任せる。

 選ばれなかったドレスと、他に似合いそうなものを適当に選び王宮に届けておけと言えば即座に動き出す。怯える顔には唆られるし、笑った顔には癒される。

 怒った顔は美しく、泣いてる顔は甘やかしたくなる。……結局の所俺はナミでさえあれば、何でもいいのだろう。

 着替えて来たナミに、それに合わせて用意させた小物を身に付けさせるとその腰を抱く。そして、何がしたいかと問いかければ1瞬驚いたような顔をしてから強く抱き着いてきた。

 

 「私、ドフィにダッチワイフか何かみたいに思われてるんだと思ってて……だから、普通に過ごして貰えるなら、それだけでいい」

 

 微かに震えながらそんな言葉を口にするナミに、何故そんな変な勘違いをされたのかと思う。ダッチワイフなら服も与えねェし、鎖で繋いで動けなくした上で、自由なんぞ与えるものか。

 

 「俺は、ナミを恋人だと言ってるだろうが。恋人抱いて何が悪い。いくら抱いても足りねェ程に、溺れてるだけだ」

 「ど、ふぃ?」

 「頑なに俺の事を愛称で呼ばねェから、虐め倒したが……泣かせるのも、まァ趣味だが……ナミの事はこれでも、大切にしてェとは思ってるんだぜ?」

 

 俺の言葉に体を震わせて泣き出した小さな生き物を、その泣き顔を誰にも見せない為に胸に抱き締めて近くのホテルに連れ込む。今日は甘やかしてやるかと、涙を落とし続けるナミに思う。

 ホワイトデーだから何か贈物をと言われるよりも、日常的に足りていなかった言葉を贈られる方が嬉しいとハニカム女に男は白旗をあげる。どう足掻いたところで、惚れた弱みで男は女にかなわない。

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