朝日が昇ろうとしているのが分かるのに、私はその腕から抜け出す事が出来ない。少しでも動くとまだ大丈夫そうだねと微笑み、イゾウは私を乱そうとして来るから。
切っ掛けは昨夜、私が歌っていた物が宜しくなかった事にある。突然悲恋ソングを思い出して、何の気なしに歌っていて……誰を想っていたのかと問い詰められたのが始まりだった。
でも特に理由なんて無かったから、想ってる相手がいての物じゃないから答えられなくて……結果今、抱き潰されているのだ。もう、何を歌ってたかさえ覚えてはいないのに。
「もっ……しんじ、て……私……」
「信じてるさ」
「な、ら……んで?」
声が掠れる。呼吸が乱れて、息苦しい。
そんな私にイゾウは艶やかに微笑んだ。それは、まるで魔性のようにさえ思える程。
けれども実際の所は、イゾウの方が魅せられていたのかも知れない。熱に浮かされ、涙に潤むナミの瞳は本人に自覚は無いものの、妖艶な色香を放ち続けているのだから。
それ故に朝になろうと言う今も、イゾウはナミを手放す事が……いや、解放してやる事が出来ていないのだから。欲情に突き動かされて、イゾウはつい今し方抜いたばかりである荒ぶる切っ先を、当然今尚濡れているナミの入口に押し当てる。
瞬間、ナミの体をゾクリと全身を甘怠い愉悦の波が駆け抜けて行く。それにより、泣きそうにその表情を歪ませ、余計にイゾウを煽っていた。
「また、挿れても良いかい?」
そんな確認した所で、拒絶なんて聞きやしないのは双方分かっている。狡猾でありながら、律儀なフリをして恥ずかしい台詞を聞き出そうとして来るイゾウに、ナミは声を震わせた。
「そんな、の……!」
どちらにしても言葉になんか出来る筈もないし、もう体力だって残ってはいない。けれどもイゾウは弾けそうな屹立に待ったを掛けて、何処までも意地悪に私からの恥ずかしい言葉を欲しがる。
それを言わなかったから、今もまた抱こうとしてくるのだ。それは分かってるけど……でも……。
「言ってごらん。俺が欲しいと……さァ、ナミ」
再び耳朶を食みながら囁いて来る。愛しい男に、大好きなその声で求められた途端、体が理性を打ち砕く。
飢えて、焦れて、疼いて、より強い快楽を欲する。体はもう、淫らにイゾウを求めている。
既に限界なんて超えているし、朝には航海士としての仕事があるのも分かっているのに……。恐らくマルコが呼びに来てしまうとわかっていても尚、体は耐えられないと悲鳴を上げ、唇からは懇願の叫びが迸る。
「欲しい……!イゾウが、欲しいの……っ」
みっともなくて、情けなくて、悔しくて……。でも、イゾウに抗う術を私は持たない。
ついに望んだ答えを得られたイゾウは、うっとりと微笑む。すると、長い事求めていたものを、そしてこの先も抱き続けて行くと自らに誓ったものを得る為に、入口を押し開きつつじわりと腰を沈めてくる。
今まで入っていたのより確実に巨大化した質量でもって、身の内を引き裂かれる瞬間の恐怖を感じる。それに引き攣った声が出ると、宥めるように優しい口付けが降って来た。
それにより体が弛緩すると、唇を離して優しく微笑むイゾウに少し見惚れてしまう。その隙をつくように、蕩けた粘膜を掻き分けながら傲然と進んで来る熱塊を精一杯の思いで受け止める。
突然キュッと胸の尖りを摘まれ、想定外な所からの刺激に体が弛緩する。その1瞬を狙い、イゾウはグイッと1気に腰を沈めて来た。
暖かくて、心地好くて、互いの気持ちを脈動と共に伝え合える場所を求める。そうしてついに最奥まで達すると、その感触を楽しむように大きく腰を動かした。
「……っ……あぁーっ!」
もうすっかりイゾウの形を覚えている筈なのに、沈み込んできたものの常に無い圧迫感に体が驚く。その細腰がビクッと浮き上がれば、内壁が緊張により1気に締め上げる。
「く……っナミ、締め……過ぎっ……だっ!」
唸ったイゾウが、巻き付いていく粘膜を振りほどくように、乱暴に腰を振るう。いつも以上に巨大な質量が中を縦横無尽に掻き回しては、感じやすい場所を擦り、胸が苦しくなる程の官能を引き出して行く。
「あっ……!やっ、そっ……」
縋るように意外と逞しい肩胛骨の隆起を掌に感じながら、鋼のような皮膚にギリリと爪を立てる。イゾウを傷つける事はしたくないのに、そんな事を考える余裕さえない。
思考が飛びそうになる。与えられる愉悦に溺れて、体は快楽を貪るただの器と化して行く。
「んっ……イゾウッ……!そこ、あ……アァっ!」
甘い……甘ったるい声が自分から発せられるのが情けない気がして涙が滲む。甘い声はねだってるようにしか、自分でも聞こえない。
抵抗してるとは、少しも思えない。それくらい、鼻にかかった甘ったるい声……。
そこに降るのは、誘惑の天使かそれとも魔性の何かか。逃げる事を許さぬと、言外に告げながら問い掛けてくる声は聞き慣れた愛しいもの。
「ここかい……ナミ?」
優しげな声で問い掛けられて、私は首を振ったけど、それが縦だったのか横だったのかもよく分からない。ただ、イゾウからの突き上げは激しさを増して、私の鼓動は速まる。
噴き出す汗がシーツを濡らして行く。交合部が立てる淫靡な水音は、外にだって聞こえているんじゃないかと不安になる位だと言うのに、止まれない。
中に居るイゾウを離したくないと体が絞りあげようとすれば、イゾウは悔しそうに片眉を上げた。それにゾクリとしたものが身体中を駆け巡る。
「そんなに煽ったら……止まらなくなるぞ」
止まる気なんてサラサラなかった癖にイゾウはそう言って、更に律動を深めて来るから私は声を抑えようとして呼吸まで止めそうになる。そんな私に獣じみた瞳を燃やし、イゾウは攻撃態勢に入った。
イゾウが私の両足の膝を肩に抱え上げたと思うと、体を折り曲げる勢いで覆い被さって来た。遠慮のない重みを受け止めて、肺の中に溜まっていた熱い熱の空気の塊が、ひゅっと音を立てて飛び出して行く。
自然と浮き上がっているそこに、体重ごと突き落とすような衝撃を受け、その度に直に胸に触れてくる切ない程の熱に翻弄される。そうなればもう、私は情けなくも思考さえままならなくなる。
角度を変えて、緩急を変えて、忙しく抜き差しされるものが与えてくる凄まじい愉悦。声を抑えるとか、そんな事を考える余裕は既に無い。
揺らされ、酔わされ、呑み込まれ、グズグズに溶かされていく。己の存在を刻みこもうとするかのように、限界まで張り詰めたものを埋め込んでは掻き回す。
そんなイゾウの顎から、ポタポタと滴り落ちる汗が胸に降ってくる。そんな微細な感覚さえ拾って、肌がさざめかされる。
「も……こわれ……ちゃ……」
「壊さねェように、大切に抱いてる。安心して、身を任せときな」
耳の後ろの柔らかい皮膚や、指の間に迄も丹念に舌を這わされて、甘ったるい喘ぎ声が室内を満たして行く。そんな中で私はイゾウに、精一杯の優しさで髪を撫でて涙まみれの瞳で笑いかける。
そこからはもはや言葉のなくなった部屋に満ちるのは、ひっきりなしに絶えなく漏れる声と、淫靡に濡れた音だけ。そこに突然イゾウの悔しげな吐息が耳朶を掠めた。
「……くっ……出るっ……!」
絶頂寸前の痙攣を必死に堪えながらも、上下動を続けていたイゾウが唐突に動きを止めたと思うと、グンッと大きく背を仰け反らせた。次の瞬間、身の内の深い所でドクリと大きく脈動したものが、熱い迸りを弾かせた。
「あ……ああ……っん!」
切れ切れの嗚咽で唇を戦慄かせながら、私もまた急激に襲って来たそれに耐え切れず限界を迎える。大きく息を吐き、小刻みに腰を振りながら全てを注ぎ込もうとするイゾウの動きに合わせ、キュッと意識して中を絞ればイゾウに視線で咎められる。
でも、やられっぱなしなんて、嫌だったんだもの。まだ痙攣のおさまらない腕を伸ばして、私にはイゾウだけだよと伝える為に微笑めば、小さくイゾウが笑った。
「ナミはただ何の気なしに歌っていただけと分かってて虐めたんだが……結局甘やかされちまったな。たまには、優しくしようと思うのに、悪いね」
そう言ってイゾウは私に優しく口付けると、優しく髪を撫でて来る。微かに離れた唇の隙間で、このまま寝てなと言ってイゾウがゆっくりと引き抜かれた。
その日、当然のように私は寝込み、マルコにイゾウが叱られたのは言うまでもない。しかし、同時に私も容赦無く叱られたのは理解に苦しむ。
「イゾウを無駄に甘やかすなと言ってるだろぃ!?エースの教育にも良くねェし、俺の仕事も増えて困るんだよぃ。……ナミの事は、頼りにしてるんだから頼むよィ」
「エースの教育って……まぁ、それは置いといて。その……マルコに認めて貰えて、嬉しいです」
「……仕事上では、俺の相棒だと思ってる。ナミがいねェと仕事にならねェから、イゾウの事を拒絶するのも覚えろィ。……冗談抜きで犯り殺されるぞ」
その言葉に小さく身を震わせれば、マルコが軽く頭を撫でながら苦笑して去って行った。でも、その日はその後船内が急激に騒がしくなり、寝ても居られなくなる。
動けない私に情報を持って来たのは、食事を用意してくれたサッチだった。どうやらイゾウの従姉妹と言う人が現れたらしい。
「イゾウに色仕掛けしていてな……その、この部屋にも来るかも知れねェぞ」
心配そうにサッチは言うけど……でも、確かに困るわね。お客様が来るのだとしても、私動けそうにないからお茶も出せないわ。
しかも、初めて会う方にベッドの上で挨拶だなんて……。どうしたらいいかしら。
「まァ……とりあえず、無理はすんなよ。飯も、食えるだけで良いからな」
「片付け……「イゾウにやらせろ、そんくらい」」
そう言ってサッチさんが去って行き、突如訪れた静寂に知らず息がもれる。……イゾウの、従姉妹かぁ。
……だとしたら昆布茶と和菓子の方が喜ぶかしら?
その時ドアの方から声が聞こえて来た。聞き覚えのない女の人の声と、先程まで聞いていたイゾウの声。
「良いじゃない。イゾウの部屋見せてよ!」
「……俺は、従姉妹なんざ記憶にねェし、居たとしてもいい思い出は双方ねェだろう。どうやって生きてきたか、それなら互いに分かろうってもんだろうが」
「だから何よ。部屋に入れさせない理由が何かあるの?」
ドアの前から話し声が聞こえてくる。寝ていたら不味い、そう思うのに、腰が重くて動けない。
その上……足に、力が入らない。どうしよう、お客様なのに、お茶も用意出来ないなんて……!
確か、寒天ならあったと思うのに、動けなきゃ出せないじゃない。どうにか、体を起こすくらいしないと……。
その時ドアを開けて入って来たのは、イゾウでは無くて……でも、似てるわ。イゾウが女の人ならこんな感じかなと思える姿をしてる。
その人は私を見て、イゾウを見て、コメカミを抑えつつ問い掛けてきた。
「白髭海賊団って……戦闘員の女は乗せないのよね?」
「あァ、ナミは非戦闘員だ。まァ、役職はあるがね」
「役職って?ナースじゃ、ないの?」
「俺の婚約者だ」
「「それ役職じゃないから!!」」
私と従姉妹さんの声が重なる。そしてイゾウはそんな私と従姉妹さんを見て、クツクツと笑う。
「声は、出せるようになったようだね。無理させちまって悪かった」
「誤解、させた私が悪いし……」
「……なら、今夜はナミが俺を好きにしてみるかい?」
「なんで?」
なんでそうなるのか。寧ろ、寝かせて欲しい。
そもそも動けないし。……それにしても、従姉妹さん……綺麗ね……。
そんな思いが伝わったのか、イゾウの頬が微かにヒクついた。どうしたのかな?
「……この状況なら、少しは浮気を疑ってみたり、不安に揺れてみたり、嫉妬とかしてみたりしねェもんかい?」
「……イゾウが、浮気?」
少し考えてみるけど、それは悲しくなるだけで……でもそうなったら、イゾウが私に気付かせるんだから、きっと別れたくなったのよね。なら、ここにいちゃダメだわ。
体に力は入らないけど、頑張らなきゃ。迷惑かけられないもの。
「そっか、なら、私出て「……待て。どうなってそうなった?ここは俺に縋り付いてくれる所だろう?」」
「だって、イゾウならそれが本気の相手じゃなければ、上手く隠すと思うもの。それを教えるって事は、私と別れたくなったって事で「悪かった。俺が悪かったよ」」
そう言ってイゾウが私を強く抱きしめてくれて、そのまま耳元で囁くように懇願して来る。その声に、顔が熱を持つ。
「俺を、捨てないでおくれな……」
「イゾウ!?」
「ナミが居なけりゃ、俺は朝も夜も明けはしねェさ。傍に……居てくれるだろう?」
イゾウに哀願されて、断れる人が居るだろうか。そもそもそんな気、私には無いのに。
寧ろ、イゾウが別れたかったんじゃないの?
ポロリと涙が落ちれば、イゾウが優しく笑って、不安にさせてすまなかったと言いながら唇が重なろうとした所で怒号が響いた。それに驚いて視線を向けると、怒りに震える従姉妹さんが居た。
「女の居る男に、興味なんてないのよ!嗚呼!!もうっ!」
「……白髭海賊団の隊長で、近い関係性があるから女に収まって楽しようとしたって所かい?」
「他に何があるのよ。アテが外れたわー……。もう、どうでもいいから、私のいない所でイチャついてよ」
「なら、出て行きな。ここは俺の部屋で、ナミは俺のお宝だ」
従姉妹さんは私を見て頷くと、肩を竦めて見せた。それから、その美しい顔に笑みを浮かべて言う。
「……ハイハイ、分かりました。海賊から、宝を取ろうとなんてしないわよ」
そう言って去って行った従姉妹さんの姿を私はその後見ていない。そしてその日から暫く、イゾウは私に異様に優しくて、それが逆に不安になったなんて言ったら怒られるだろうか?
そんな訳で私は今も、あの従姉妹さんの正体を知らないまま。ただイゾウはボソボソと、二度と妬かせようなんて無駄な事はしないと呟いていたけれど。
これでも行為描写カットしたんですよ。
1万文字超えてたんです。ヤってるシーンだけで。
なんなのこの人……。