※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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ハロウィンイベント(光源氏16)side

 部屋に入ろうとしたら鍵が掛けられていた。勿論ドアを破壊するのは簡単な事だし、鍵だって持っているのだが、ドアには手紙を貼り付けられていて、本気で入室を拒んでいるのだと伝わって来る。

 仕方無く貼り付けられているそれを手に取れば、馴染みの無いイベントの事が書かれていて面白そうだなと思う。それと同時に、今朝ナミが今日中に陸につけると言っていたのを思い出した。

 とりあえずベックに話を持って行くかと歩き出し、内容をもう1度確認する。手紙に書かれているのは、レシピやイベントの概要を含めた多くの事。

 金も特にかかりそうにはないし、楽しめるなら良いんじゃねェかと思いながら手紙を確認していれば、ベックに肩を叩かれた。なので、丁度良かったと手紙をそのまま差し出せば、ベックは文字をチラリと見てから無言でそれを受け取る。

 迷いの無い動きで手紙を確認するベックは、いつもながらナミへの信頼が高い。こうなるとどうせ、部屋に引きこもって会ってくれないと話した所で宥められるのが分かっているので、大人しくしているとベックが突然笑った。

 手紙の内容を理解したらしい。頭の良い奴は、これだから助かるが厄介だ。

 ……敵じゃなくて本当に良かったと何度思わされたか。そんな男が可愛がる妹分でもあるナミは、幼さを時折見せる事はあるが基本的には大人として生きている。

 そんなに急いで大人になるなと思った事もあるが、出会った時には既にその大人状態にあったのだからどうにもならない。それでも……俺やベックには時折幼い顔を見せるのだから、それに満足するしか無いのだろうか。

 だがしかし、普段はいらん位大人であるのに何故、恋愛事だけこうも通じないのか。先日も変なのに目を付けられていた上に、助けを求めてはくれたが、何故か名前では無く師匠呼びと来たもんだ。

 ここらで1発、俺を男として認識して欲しいところなんだがなァ……。考えてみた所で、解決案など浮かぶ筈も無い。

 

 「お頭、これならやっても問題無さそうだ。最近コック達も〝宝玉〟が新しいレシピをくれないと嘆いていたから、丁度良いだろう」

 「お前、ナミに甘くないか?」

 「ナミが提案するのは、大概誰かの為だ。今回のコレもこの船の為だと分かっているのに、どうしてそれを拒む必要がある。……寧ろ俺はナミにとってみたら、このイベントは拷問に近く思えるがな」

 

 意味が分からなくてベックを見れば、呆れたように仮装の文言を示される。それにより漸く理解出来た俺は、ニンマリとした笑みが浮かぶのを止められない。

 それをベックは嫌そうに見てから、煙を吐き出した。……お前、俺が船長だって忘れてねェか?

 

 「……やりすぎと判断したら止めるから安心してろ」

 「自分の船長を応援してやろうとは、思わねェのかよ」

 「年齢差を考えろ。ハンデ無しは可哀想だろうが」

 

 やっぱりベックはナミに甘い。そして、最近俺に冷たい。

 俺の心の声が聞こえたのか、ベックは鷹揚に頷いた。それにん?と思って視線を向ける。

 

 「……わかった。俺はナミに甘い、だから今後は常にナミの味方でいよう」

 「はァ!?何だそれ!」

 

 俺が声を上げればベックはクッと喉の奥で笑い、冗談だと言ってくる。完全に遊んでる様子のそれに、俺は負けを潔く認めて陸に着くのと同時に、ベックに後を任せて買い物に向かう。

 途中で見付けた服屋には、娼婦かと言いたくなるような物があり、ふと前に変装の為に着ていた事があったなと思い出せば、あの時に気付かないふりして買ってやれば良かったかと思う。だが……まだ何も知らないナミにそれは不味い事も理解はしている。

 何も分からず、だが何でも知っているナミには、恐らくこれが似合うだろう。そう判断した俺は、小悪魔の衣装を用意して、俺は自分用に1対の耳を購入する。

 ついでだと牙の装飾を購入して帰れば、船は既に祭り状態。明らかにゾンビのようになっている仲間を見れば、妙にリアルだから辞めてくれと少し思う。

 さて……と思って部屋の様子をベックと共に見に行けば、案の定もうすぐ夜も明けると言うのに机に向かっているナミが居てこれをどうしたらいいかと考える。そんな俺達に気付いたのか、怖々と振り向くナミは妙に幼い。

 ……そういやまだ、16歳だったか。

 その大人顔負けのプロポーションと、大人でも太刀打ち出来ないだろう頭脳に加え、考え方も幼い頃から驚く程に大人だった。その為にナミの実年齢を忘れる事が多くある。

 これだから甘えて貰えねェのかもな。むしろ、甘やかされているのかも知れねェと気付いたら、少しばかり情けなくなる。

 とりあえず気持ちを切り替えて、大人として今言うべき言葉を口にする。基本的に真面目な俺に、ナミは逆らわねェ。

 

 「……自覚はあるな?なら、寝ろ」

 「でも……」

 「どうした?」

 

 困ったように俺を見てナミは言葉を詰まらせる。それが弱々しく見えて、思わず頭を撫でていた。

 それを擽ったそうにしながら受け入れるナミに、俺はいつも誤魔化される。だが今日はベックがいる。

 

 「ナミ」

 

 ベックは名を呼んだだけだと言うのに、ベックの方を見たナミは諦めたように溜息を落とした。それからゆっくりと口を動かして紡がれたのは、多分本当の事なのだろう。

 

 「1人で寝るのは、怖くて……。……情けないけど、今もまだ……悪夢を見るのよ。だから、1人の時は寝られないの」

 

 小さく体を震わせるそれにそっと手を伸ばして抱き締めれば、ベックがそのまま少し2人で寝てろと言い捨てて去って行った。あの魚人達もインペルダウンに入ってて良かったなと、心から思う。

 脱獄でもしていたならば、ベックの怒りで何をさせるかわかったものでは無いだろう。本気で怒ってる時のベックとは、関わりたくないのが俺の素直な気持ちだ。

 相変わらず柑橘系の香りがするナミを抱き締めて眠れば、ナミもまた安心したように俺の腕の中で眠る。何かあった時に護ってくれる相手と眠らなければ、悪夢に魘されると言うのならば……必ず護ってやると言う他にいったい何が出来るだろうか。

 余計に手を出しにくくなったなと、小さく自嘲しつつその温もりが傍にある事に感謝して俺もまた深く眠りに落ちて行く。目覚めた時ナミはまだ眠っていて、その額にそっと口付けを落とせば微かに身じろいだ。

 

 「ん……っ?シャンクス?」

 「あァ、起こしたか?」

 

 問いかければ眠そうな顔で俺を見上げて、寝すぎたわなんて言うからその頭を撫でて、着替えて来いと小悪魔の衣装を差し出す。それを受け取ったナミが1人で納得した様子を見せてから姿を消したので、俺もさっさと仮装を済ませる。

 仮装を終えて姿を見せたナミは本当に小悪魔のようで、今はこの小悪魔の為に宴に参加してやるかと手を差し出す。それに小さく笑う小悪魔は、俺に抱き着いて耳元でそっと囁く。

 

 「随分と紳士なオオカミさんもいたものね」

 

 これが赤頭巾ならば迷わず食べていただろうが、相手が小悪魔では手も出せねェ。そう思いながらも、俺は小悪魔に翻弄され続ける。

 狼がいつまでも寝ていてくれる保証はないと、小悪魔は気付いているのか、いないのか。Trick or Treat……さて、悪戯なのは誰でしょう?

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