まだ拗ねてんのかと、治安の悪い島だからと行かせない事を決めた俺を無視し続けるナミに手を伸ばしたら、その姿が消えた。これはナミの得意な技だがと思い視線を動かせば本人の姿はなく、あるのはクリマタクトだけ。
こうやってあの日もクルーを騙したのかと、ナミの初めてを買った日の事を少し思い出す。だが今はそれどころじゃねェなと表に出れば、ベックが顔を上げた。
「ナミが脱走した。捕まえに行く」
「……この船で行けば良いだろう。ついでに買出しも済ませられる」
「……ベック、あのな、治安の悪さで有名な島なんだよ。分かるか?」
「…………俺達を害せるレベルなら、治安が悪いじゃすまねェだろ。ナミは性格もあり危険だが、いざとなれば買い戻せばいい」
ベックはそう言うと紫煙を吐き出して余裕の表情で笑い、船を動かすように指示を出し始め……って待て、何でナミの居場所分かってんだよ。おかしいだろ。
「ベック!」
「……買物に行きたいと言っていたからな。お頭に言えば反対されるからと俺の許可を取りに来たが、アンタがダメだと言う事を俺も許可出来ねェとは伝えた」
……となれば次回からはヤソップ辺りに言うな、アイツは。それも言い方変えて巧みに許可取るだろ。
頭だけは無駄に良いナミに、溜息が落ちるのも無理らしからぬ事だろう。そんな俺にベックは笑うと、許してやれよと言う。
「ナミはアンタの為に、買物に行ったんだろうからな」
「あ?」
「バレンタインも近い。それに……あの笑顔はアンタの事を考えてる時専用だ」
……どんな笑顔だよ。そう思っても聞く事も出来ない俺の悲しさ。
ベックは本当にナミの保護者の様相で、いつもナミを見守っている。そんな時にビブルカードを俺に手渡したベックが、当然のように言う。
「それでナミの居場所が分かる。アンタに渡してなかっただろ。残りは俺が保管している」
「色々、おかしいだろ、それ……」
俺の言葉にベックはクッと笑うと去って行った。……ナミのビブルカード、GETだぜ。
そういや、ビブルカードを俺のピジョンブラッドを使って作ったペンダントに入れたとか言ってたな。何故今まで、俺に渡してなかったのかは兎も角として。
ビブルカードを眺めつつ島に降りれば、清楚なお嬢さんに扮したナミを見付けた。ああいうのも似合うなと思いながら様子を見ていれば、確かに買う時の表情から誰の物を選んでいるか分かるなと思う。
楽しげに買っているのは量的に見てもクルーの分で、困ったような顔で選んでいるのはヤソップやルーの分。緊張感を漂わせているのはベックで……照れたような顔で買っているのを見れば、アレが俺のかと思う。
……これは、どうやって叱るべきか。そんな事を考えていたらナミはラッピングの店に入り、出て来た時には俺を見付けて即座に顔色を変えた。
怒られる可能性は理解していたらしいが、俺を誤魔化せると思ったのか素通りしようとした。それを捕まえてやれば、どうしていつも見破るのよー!と騒ぐ。
とりあえず、船長がダメだと言ったら従えと言ってみたが聞いてねェ様子だ。なので口先だけのお説教をしながら、部屋に閉じ込めておく。
「いい子に部屋にいろよ。次に脱走したら、俺が満足するまで抱くからな」
「ねぇシャンクス、それ、私死なない?」
「……死ぬかもな」
「そんな死に方やだ」
「なら、反省してろ」
俺の言葉にナミはじっと俺を見詰めてから、ニンマリと笑った。何か悪戯を思い付いたらしい。
「でも、シャンクスに殺されるのならそれも良いかも知れないわね」
「ん?」
「シャンクスはそうなれば永遠に私を忘れられないわ」
「……どんな変装しても見破れる位には、ナミに惚れてる。余り煽ると、本気で腹上死する事になるぞ。分かったら大人しくしてろ」
真っ赤になったナミは、直後に少し落ち込んだ様子で部屋に残った。だが、夜部屋に戻れば何やら楽しそうに机でラッピング作業をしていて、部屋は甘い匂いに包まれている。
どうやれば俺の部屋がこんな匂いになるのか。キッチンなら分かるが、この部屋に火を起こせるような物はない筈だ。
「おいこら、ナミ」
「ん?あ、お帰りなさい」
「今日はお前の部屋で寝るぞ」
「良いけど、どうしたの?」
「流石に甘過ぎて眠れそうもねェ」
分かりませんって顔で首を傾げるナミに、今夜は換気しておこうと決めつつ部屋に連れて行く。俺はこうしてナミの事は、下手に閉じ込めない方が良いのだと学んだのだった。
それから数日後の朝、ナミが食事の時に全員に箱を配り俺には部屋にあるから適当に食べてねなんて言う。俺にも手渡せと言ったら、ヤダ面倒とかほざいたので後でお仕置きしようと決める。
そんなやり取りをクルーは微笑ましそうに見ていて、直後にナミが顔色を変えると全員が立ち上がる。ナミのこの顔はヤバいのが来る!
「サイクロンが来るわ!総員!」
……時々だが、この船の権力者って実はナミなんじゃねェかなって思うんだ。まァ、俺は権力なんざいらねェけどさ。
サイクロンを乗り越えた後は、ナミに部屋のシャワーを提供しつつ俺は軽くタオルで自分の支度を調える。机の上には本当に箱が置かれていて、開けるとチョコがいくつか入っているのが確認出来た。
1つ適当に摘んで食べると、西の海の酒が使われているらしく妙に美味い。……俺の出身があっちだなんて、ナミに話した事あったか?
そんな事を思いつつその隣のチョコを摘むと、中から硬いものが出て来る。なんだろうと見てみれば、ナミに俺がやった指輪と同じ形状のオレンジ色の石。
なんだろうと思いつつ指に嵌めればピッタリで、最近良くナミが俺の手を弄っていたのを思い出す。……これの為だったか。
自分の色を身につけて欲しいと願うのは、どちらも同じかと笑いつつベックに自慢しに行けば指輪を見せた瞬間にカーネリアンかと眉を動かした。幸運を呼び、大切な人との絆を深めるお守り効果の高い石だと教えられれば、ナミの優しい気持ちが伝ってきたような気がしてこの指輪も大切にしようと思わされる。
部屋に戻ればナミが調度出て来た所だったので、髪を拭いてやりながら指輪を見せれば赤くなった。その赤い項にキスをすれば愛らしい声を発するから、止まれなくなりそうだと思う。
「ナミが、欲しい」
「……っ!いつも、好きにしてる、じゃない……」
「何処がだ。加減してるぞ。してなきゃナミが動ける筈ねェだろ」
俺の言葉にナミはアレで加減してるの!?なんて言うが、2度目の時にやり殺されかけたのを忘れたのだろうか。とりあえず、そこまではしないつもりだが、今日は……貪りたい気分だ。
俺は言葉より先にナミの体へと手を動かして、弱い所を狙って撫でつつ素知らぬ顔で問い掛ける。勿論、YESに該当する答えしか受付ねェけどな。
「ナミを、貰ってもいいか?」
「あぁっ!そこ、やァ!」
「どうした?ナミ、貰ってもいいかを答えてくれ」
「んっ……ぁ!意地悪、しないで……!」
ビクビクと体を痙攣させるナミに、だがイかせてはやらない事を続けながら俺は許可が無いからと言って指だけでナミを煽る。切なそうに瞳を揺らして、ナミは俺を見つめて愛らしく喘ぐ。
まだまだ今日は長い。じっくり、ゆっくり、可愛がってやるとその首筋に跡を残した。
Happy Valentine……日も昇りきらぬ時間帯から始まった二人の時間に、女は困惑しつつも受け入れる。愛しい人が望んでくれるのならばと、微笑む女に男が止まれる要素は見付からない。