※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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防災の日イベント(光源氏18)side

 何処までわかっていたのか。それは今でも不明なままだ。

 それでも、分かっていなくても、予想はしていたのだろう。あの戦争に俺達が……どう考えても間に合わない事を。

 そうじゃなけりゃ、あの場でカイドウを引き連れて戦場へ向かうなんて暴挙に出る筈もない。その関係で、きっと大きく運命は変わった。

 海軍本部は文字通り砂塵となり、俺が戦争を終わらせられたのは結果論であり、奇跡とも言えるだろう。……本当に、厄介な事してくれたよ。

 そうは思うが、結局の所俺は俺の愛妻と俺の仲間が無事ならそれでいいのだから救えない。赤髪海賊団が誇る天才航海士であり女神は、今日も楽しそうに過ごしている。

 追先程まで蜜柑の手入れをしていた筈なのに、当然のようにピアノの音色が聞こえてくれば、足が自然と吸い寄せられる。到着したその場所では、瞳を閉ざして演奏しているナミが居てその腕前に脱帽しそうになるが、直後に歌声が響けば思考が停止しちまう。

 恐らく本来の運命で死ぬべきだった者を救い、生きるべき者が死んだだろうと思うあの戦争のせいなのか……ナミは己を醜いと蔑む。俺の為だけに生きると告げるナミの歌は、何故だか嬉しくはない。

 俺と生きたいと言ってくれた。俺の為ならば何でも出来ると笑ってくれる。

 なのにどうして……己の価値を俺に必要とされるか否かに委ねちまうんだ。どうしたら、お前は自力でも生きようとしてくれるのだろう。

 愛される事が嬉しくて、必要とされる事が幸福だと言うのは喜ばしい。だか……お前は道具じゃないんだと、生きているのだとどうして理解してくれないんだよ。

 泣きそうになる自分を自覚して、そういやまだナミは俺の半分も生きてないんだと気付かされる。まァ……後1,2年もすれば半分になるんだが。

 そう言えば、ルフィは行方不明のままだし、白髭海賊団の面々とも別れちまったばかりだ。不安定になるのも、そう考えたら仕方ないのかもな。

 そう思って胸中に渦巻く感情を霧散させる事に成功する頃、ナミの歌が終わった。余韻を残すように終えた演奏の後、ナミは何かに気づいた様子で声を上げる。

 

 「あ!!防災の日!」

 

 それの直後に立ち上がるナミを逃がすまいと抱き締め、歌の感想も兼ねて俺の想いを伝えておく。ナミがどう思っていたとしても関係無く、俺はナミを……。

 

 「必要としてる」

 「うん、ありがとう。私も防災の日は必要だと思うわ」

 

 笑顔と共に向けられた謎の言語。いや待て何が起きてこうなった?

 脳内整理している間に不思議そうに首を傾げるナミを見て理解した。さっき何か叫んでた関係だなと。

 とりあえず理解はできたが、だからと言って解決はしない。全く……ナミは本当に、困った奥さんだよ。

 

 「それも必要だが……」

 

 今は俺の言葉に耳を傾けてくれと、そっとその唇に己の唇を寄せる。不思議そうに俺を見つめたままのナミに、いい加減こっちも理解できるようになれよと内心で笑いながらその甘さに俺が溺れたのは当然の事。

 身体を小刻みに震わせて、俺の腕で体勢を整えてるナミを抱き上げその耳元で問い掛ける。無論答えなんざわかってるがな。

 

 「このまま、ベッドに行くか?」

 「馬鹿、言わないでよ。私、は……まだ、やる事がある、んだから……!」

 「そんな顔で言われてもな?」

 

 真っ赤な顔で、快楽に蕩けた瞳で、俺を見詰めるナミ。断られるのはわかっちゃいたが、少しくらい虐めても構わないだろう。

 それに少し甘えれば、ナミの事だ〝少しだけなら〟と身体を預けてくれるかもしれない。そう言う甘い所があるのを俺は知って……。

 

 「……シャンクスが虐めるって、ベックに言い付けてやるんだから。仕事させてくれないって、泣きついてやるんだから!!」

 「悪かった!ごめんなさい!!」

 

 思考を巡らせるより早く頭を下げた俺に、ナミは暫く無言でいる。先程よりも赤い顔で黙っているから、怒ってるのかと思ったけどその後俯いて呟くように言われた言葉により理解する。

 

 「…………よる、ね?」

 「……あ、あ……そう、だな」

 

 照れは、伝染する。俺は、うちの嫁は世界一可愛いと言う真理に到達した。

 そのままナミに言われた言葉を無視して部屋へ部屋に運び込もうとした俺は、抵抗するナミの声により現れたベックにより、ライフルで殴り掛かられた事をここに残しておく。因みにナミは立てなかったので逃げられない筈がヤソップに回収されて、仕事へ向かった。

 俺はそうして残され、ベックに散々虐められた後食堂に行くとサンドイッチ片手に仕事してるナミがいて、今度は何してんだろうかと首を傾げる。書類を覗き込めば、本気で防災に着いて考えてるのだと気が付く。

 

 「……ナミ、近い島は何処になる?」

 「ここからだと……」

 

 少し考えるようにしてからナミは島の名前を三つ上げるから、それぞれの島についてどんなところだったかを確認してみる。するとその中のひとつに、商業施設の多い観光に力を入れてる島があると気付く。

 

 「……なら、この島に行ってくれ」

 「ん。分かった。ベック達に伝えて来るわ」

 

 そう言って立ち上がったナミは航海士の顔になっていて、こういう時に流石だなと思わされちまう。そうして采配を奮う俺の女神は、今日も美しい。

 急ぐ旅ではないので、夜は睡眠時間だ。見張りは数時間交代で行わせているので、それ程負担にはなってない筈だ。

 まァ……幹部とナミは見張りなんぞ緊迫してる時しかしないけどな。だがそれは、緊迫してる期間は必ず幹部が見張りを行っていた事を意味するのだが、それは割愛する。

 そんな訳で夜はナミを美味しく頂き、昼間は航海する形で向かった島には僅か数日で到着した。到着と同時に食料補給等を指示し始めるベックやルーを横目に、俺はナミに声をかける。

 

 「ほら、ナミ行くぞ」

 「どこに?」

 「防災グッズ揃えんだろ。この島ならある程度揃うだろ」

 

 俺の言葉に嬉しそうに瞳を輝かせるから、ベックに視線だけ向けてからその腰を抱くようにして船を降りる。少し歩くとナミが珍しく仕事が割り振られなかったのだと言い出すから、ベックもわかってたんだなと思う。

 とりあえず何が必要だろうかと辺りを見れば、ナミが何かを見付けてソワソワし始めたので、小さく笑ってからそれに付き合う。到着した先にあったのは笛だった。

 

 「ん?そんなモン、何すんだ?」

 「身動きが取れなくなって助け呼ぶのに、声出し続けると体力の消耗が激しいから笛がいいのよ。人の声って結構聞こえにくいけど、笛の音は聞き取りやすいし……。あ!これ、鳥笛も兼ねてる!!」

 「……鳥が来ても、助けて貰えるのはナミだけだからな?」

 

 嬉しそうに瞳を輝かせるナミを見て、つい呆れを隠せずに言葉を口にしちまう。なのにナミは、不思議そうに首を傾げる。

 

 「クーちゃん優しいわよ?」

 「ナミ限定だ。いい加減学べ」

 

 俺からの言葉を受けて心底不思議そうにしてるが、ニュースクーが人に懐くとか普通に有り得ねェからな?

 その後鳥笛を兼ねてない笛を人数分、赤い物で揃えるナミに小さく笑ってしまう。無論、予備もある程度は購入していた。

 そのまま笛を身に付けられるようにとチェーンを選び、他にはと視線を巡らせるナミに楽しそうだなと思う。だが……そうだな。

 

 「それなら、これはどうだ?」

 

 俺が示したのは、緊急時に使えるサバイバルセットだ。20センチ四方で収まるバッグの中に、ナイフや懐中電灯、紐に簡易応急セットの他、膝掛けやシートも収納されている。

 火打石と火吹きもあるから、どこかに流されたり遭難した時も役立つだろう。そもそも、これだけの物が揃っていればできない事を探す方が難しそうなアイテムが、その鞄の中には揃っている。

 

 「素敵。これも人数分欲しいわ」

 「腰にでも着けとけば役立つだろ」

 「そうね。笛とこれがあれば大丈夫そう。あ!鞄の色選べるみたい!鞄に赤髪のマーク入れて貰えるか、交渉してくるわね!!」

 

 嬉しそうに笑うナミだが、聞き捨てならない単語があった。なので思わずのそ腕を掴む。

 そうだ、気付いてない可能性もある。だが、心から思うが、その場合赤い笛は不要だろう。

 

 「……待て。この中にも笛はあるぞ」

 「腕が使えない状態の時とか、何も見えない位暗い所に閉じ込められた時、首から下げて無かったら無意味だもん」

 「見聞色使えば見えるだろ」

 「全員が使えるものじゃないからね!?」

 

 クワッと怒るナミに、けど、ナミも使えるし……。何よりもナミは俺の奥さんで、今は俺とデート中だぞ。

 明らかにナミにその自覚は無いけど。その事は嫌という程分かるけども!!

 

 「……オッサン達を甘やかすなよ。甘やかすのは……俺だけにしてくれ」

 

 つい零れた俺の本音に、ナミは頬を染める。その破壊力は何とも高い。

 だと言うのに、ナミは追い打ちをかけるように小さく頷くから、思わずその腰を抱いていた。そうして色々追加で依頼もした面倒な物を、完成したら数を揃えて届けて貰うように依頼した俺達は、近くの喫茶店に入る。

 そろそろ疲れてる筈だからなと思うが、ナミは言えば気にするので喉が渇いたんだと伝えておいた。椅子に座りメニューを眺めつつ、俺が注文を少し考えてる間にナミは唸り出す。

 

 「……どれで悩んでんだ」

 「ケーキ食べるか、食べないか」

 「食え。ついでに何か昼飯も食え」

 「……あ、フルーツの盛合せが「それは飯じゃねェよ」」

 

 そんな事を言い合いながら適当に頼んだ物を並べてもらえば、ナミが食べきれないよ……と、嘆く。それを無視してパスタをフォークに巻き付けて、口元に運んでやれば餌付けタイムだ。

 それを恥ずかしそうにしながらも食べるナミに、いい子だと頭を撫でてやればナミもまた俺にフォークを差し出すから、気が付けば互いに食べさせ合っていた。今日もやっぱり、俺の周りは笑顔と愛で満ちてる。




余談ですが、作中に出て来るサバイバルセットはこちらの世界でも販売されています。興味のある方は、調べてみてください。
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