※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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正月イベント21(光源氏18)side

 あの大規模な戦争が落ち着いて、次の戦争が差し迫っている。……それを見越して、贈り物をしたが……さて、ア

レにどれ程の効果があるだろうか。

 5万を越すとさえ言われる白髭のそれに、参加する意味は何処にあるのだろう。これに限って言えば、世界に差程の影響は及ぼさないような気もしているのも俺を悩ませる要因だ。

 だからと言って見捨てようものなら、泣かれるだろう事だけは明白。その結果ナミにとって大切な存在が生きてりゃ良いが……死んでしまったとなれば、狂いかねねェ。

 そう考えれば、俺には無視のできない案件となっちまう。明らかにナミは、俺のアキレス腱だ。

 そんな事を考えて夢現に微睡んでいれば、寒い海域なのにナミが1人でベッドから抜け出した。俺の事を日常的に湯たんぽ等の暖房器具として扱うナミにしては、本当に珍しい。

 モコモコとしたものを羽織ってはいたが、恐らく足りないだろう。……風邪ひかれても困るし、異変と言えない程度の違和感が理由で出たのならば起きていた方が安全だろうな。

 サイクロン等の慣れた物ならば即座に判断するが、初めて体験するものについてはどうしたって判断が遅れる。二度目からは完璧な対応をするのだから、誰にも文句は言えねェがな。

 コートをいつものように羽織って表に出れば、潮風に髪を揺らすナミがいた。俺でさえ指先が冷たいと思うような寒さの中、何かに縋るような顔で海とも空ともつかない場所を見詰めるナミの考えが読めない。

 妙に大人で、時に恐ろしく子供なナミは、俺の中に無かった多くの概念と思考を齎してくれる風のような存在だと思っている。声でもかけようかと思った時、登り始めた朝日を見つめながらナミが声を出した。

 それは祈るように静かで、恐ろしく清浄な気を放っているように見える。何処かでナミは、巫女かシスターでもしていたのではないかと疑わせるようなもの。

 

 「あけましておめでとう。今年も1年、平和でありますように」

 「ナミ」

 

 あの戦争を超えたばかりで、ナミは今年〝も〟平和であれと願う。そう言う所が、俺達の心を掴んで離さないのかも知れないな。

 大切な存在が無事であれば、世界がどれ程騒いだとしても無関係と言い切るその思考が、俺には愛しい。そう言う変に身勝手な所が、俺の仲間だと痛感させられちまうからかも知れないが。

 振り向いたナミが俺の胸に飛び込んで来る。その細く小さな身体を震わせながら、寒かった……と泣きそうな声で。

 だから俺はそれを可能な限り優しく抱きしめる形で支えて、コートの中に隠しちまう。これで、少しは違うだろうかと考えながら、同時に弱ったナミの姿を誰にも見せたくなかった為にした行為。

 それを悟らせないように、心配している事を告げれば無邪気に、ありがとうと笑うナミ。だからとりあえず震えが落ち着くまではと、俺はナミを温める事のみに意識を集中していた。

 次第に震えが落ち着いて来たのがわかり、様子を見ようと顔を覗き込んだが、その瞬間に向けられた作り笑顔にこの阿呆がと言う言葉を飲み込む。俺を騙せると思うなよ。

 無言のままナミを抱き上げて部屋に連れ戻せば、その間ナミは抵抗するどころか素直に身を預けてくるのだから可愛いもんだと思う。小動物じゃあるまいし、自分の傷を隠すなよと内心で溜息つきながら部屋に入るとナミが笑った。

 何が可笑しいのかと様子を見ていれば、ナミがその視線に気付いて悪戯に唇を動かした。その動きを読めば〝ナイショ〟と言っているのは、即座に理解出来る。

 ナミの隠し事が大した事では無いとわかっているからこそ、俺もまた他愛無いお仕置をする事を決めてナミを抱きしめる。それに対してナミは、抵抗する素振りさえ見せない。

 お仕置きである筈なのに嬉しそうに笑うナミに、勝てねェなと思う。それと同時に震えが完全に止まり、陰りも消えたと気付けば俺も漸く緊張が解けた。

 

 「もう、寒くないか」

 「うん、ありがとう」

 

 俺がいるなら、他には何も望まないとでも言いそうな穏やかな笑み。長く共にいるからこそ伝わっちまうその本心に、俺は平常心を保てなくなる。

 元々恋愛さえ絡まなければ、心の機微に聡いナミだからこそ俺の情けない心情をも全て知られちまう気がして、腕に力を込めちまった。それにより苦しくない筈もないのに、そのまま受け入れてくれるナミに縋るように甘えたのは俺の方になっちまう。

 結局ルーに邪魔される迄ずっとそうしてナミを抱き締めていたが、その後は1応は船長として宴を開始したり参加したりしていて中々ナミとのんびり過ごす事は難しい。そんな時近くに見えている島で何かが空に浮かんでるのを見付けて首を傾げれば、ナミが懐かしそうにその瞳を細めた。

 

 「ナミ、アレ知ってんのか」

 「え?……うん、あれは凧って言うお正月に行われる遊びのひとつよ」

 「ほお~。ここでもできるのか?」

 「船だと狭い上にマストとかが邪魔だから難しいけど、浜辺でなら出来ると思うわ」

 

 そんなナミの言葉を受けて、その〝凧〟を俺達は作る事になった。材料は新聞と木の枝、タコ糸等で金がかからないのも利点だと言える。

 そうして各自が描いたりして作り出した凧を揃って降りた浜辺で、ナミの指導の元空に浮かべてみるとこれが意外と難しい。風に上手く乗れると浮くんだが、場所が悪いのもあり失敗すれば文字通り海の藻屑だ。

 

 「俺の凧飛ばねェな。不思議だ」

 「そりゃァ、ルーは動かないで飛ばそうとしてんだから無理があるだろ。その上片手でやろうってのはキツい」

 「強い潮風が来た時に、それを利用すれば立ったままでも飛ばせるわよ?」

 

 ルーが首を傾げれば、ヤソップが突っ込み、ナミがフォローする。何気無いいつものやり取りが妙に暖かくて、皆楽しそうにそれぞれの凧をあげているのを微笑ましく眺めていた。

 その時島の内陸側で何やら祭囃子が聞こえてくれば、俺の興味はそちらへ向かう。そんな俺に皆は笑うと、俺にナミを押し付けるようにして行って来いと言い出すから、それに甘えて俺はナミの手を引いて歩き出す。

 

 「シャンクス待って!どうしたの?どこ行くの?」

 「なんか、祭囃子が聞こえるからよ」

 「それなら、和服着てくるから待って「バーカ!待てるか。俺は今すぐナミと行きたいんだよ!!」」

 

 新年早々無駄に忙しくて、二人でゆっくりする時間は皆無だったし、ナミは忙しそうにしてたから漸く取り戻せたってのに、衣装なんか何でもいい。寧ろ俺と二人ならナミは何も着てなくても……と、言ったら殴られそうだが。

 

 「お、ナミなんか食うか?」

 「ううん、船で沢山食べたから私は大丈夫」

 「飽きるだろ。似たようなのばっかりだったし」

 「お正月ってそういうものでしょ?」

 

 きょとんとした顔でそんな事を言うナミに、誰だったか……毎日同じメニューでもナミは文句言わないって聞いた事を思い出す。本当にナミは、ガキの頃から我儘言わないよな。

 まァ……トラブルメーカーな上に、たまにされるお願いが世界規模なのは困りものだが……それでも構わないと言いたくなる位には、皆がナミを愛している。とりあえずりんご飴を買ってひと口齧ってからナミに渡してやれば、片手は俺と繋いだまま必死になって食べ始めるのだから見ていて飽きない。

 そうして到着した神社にて、折角だからとお御籤を引いてみる事にしたが……。ナミはまだ、りんご飴を食ってやがる。

 

 「美味いか?」

 「疲れた……」

 「情けねェな。残り寄越せ」

 

 そう言ってりんご飴を貰ってガリガリと食えば、凄い……なんて言われるが、既に何が凄いのか分からねェ。因みにだが、林檎そのものはそれ程美味しくなかった。

 両手が空いた所でお御籤を引こうとしたら、先に手を洗えと言われて袖を引かれちまえば逆らうのもおかしいかとそれに従う。適当にバシャバシャと洗う俺の横で、1杯の杓だけで両手を清めるナミを見れば、不思議な気持ちになる。

 

 「なんだ、その洗い方」

 「神社仏閣と茶道では手の洗い方も作法があるのよ。まァ、私のは癖みたいなものだから気にしなくていいわ」

 

 そんな事を言いながら俺の濡れた手をハンカチで拭いてくれる所は、完全なる母親だろう。ナミに隠し子がいても、俺は驚かない自信がある。

 ……いや、寧ろルフィを育てたからこその行動だろうか。そんな事を考えながらお御籤を引けば、ナミのそれに嫌な事が書かれていた。

 恋愛の所に『身を守れ』と書かれていて、待ち人には『大量に現る』と……。おう、守ってやろうじゃねェか。

 蝿など全て駆逐してやる……。そう思って笑った時、俺の結果を覗き込んだナミが笑う。

 

 「人に迷惑かけないのよ?問題が沸き起こって来るらしいから」

 

 確かに俺のお御籤にはそんな事が書かれてるが、それはナミの結果を見るに当たればナミが何かに狙われるとかの暗示じゃねェのかと心から思う。そんな時に聞こえて来たのは、ベック達の声。

 視線を向ければ大量に買い込んだらしい荷物抱えて近寄って来るのが分かり、それも女物だと気付けばナミに寄越されるのは明白。守る為にとナミを抱き締めれば、可笑しそうに笑うナミと、早速着てみろとか言いながら寄ってくるクルーが俺の周りで人集りとなる。

 そうして俺は、大切な人達に囲まれながら、Happy new year!!と言葉を紡ぐ。愛しい女を他の誰にも触れさせない為に強く抱き締めている。

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