※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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猫の日イベント(光源氏18)side

 眠るナミの頭を撫でて、少しばかり無理させちまったなと思う。だが、俺を際限なく甘やかすナミが悪いのだと胸中で言い募り、ベッドの枕元に置いてあるオルゴールを見る。

 その時、何だかんだと言いながら俺はナミに贈物をする事よりも、貰ってる方が多いと気付いた。ならばせめて、用意してあるのに渡しそびれている砂時計を近い内に渡したい。

 でもな……渡す理由も、タイミングも分からないんだよなァ。どうしたも……!?

 その瞬間、突然ナミが飛び起きて俺の腕を掴む。その様子に嫌な予感がした。

 俺は間違いなく、最低でも半日は寝込むレベルで襲ったし、ナミは意識を失っていた筈だ。それが、バネ仕掛けの人形を思わせるような動きで飛び起きたって事は……。

 

 「シャンクス、皆を起こして」

 「はい……」

 

 凛とした声が俺に指示を出す。それに逆らう手段を俺は持たない。 

 俺の可愛い天使は、神業的早さで着替えたと思ったら、戦女神の空気を纏って飛び出して行く。そうして船内を響き渡るのは、ナミの鋭い声。

 

 「総員!持ち場について!サイクロンが来るわ!!」

 

 こうなったナミに逆らえる存在は、この世に1人として居ないだろう。……その後通常ならば、いくらこの海でも有り得ないような自然現象にナミは対処してくれた。

 サイクロンの連続攻撃だ。普通なら、どれ程高性能な船でも沈んでいただろう。

 なのに、普通の嵐にあったのと同じ程度の被害に抑えられたのは、正直ナミの手腕があってのもの。そういった事もあり、ナミは立派な赤髪の幹部なのだが……自覚は無い。

 俺の妻だから……って本気で思ってやがる。ナミは幼少期も見習いや居候だと思ってたみたいだが、正直な話腰掛としてナミを扱った事は1度としてない。

 俺が欲しいと望んで仲間にしたのに、見習いや居候の筈があるかよ。まぁ、仲間に正式になる……とは、言わせられなかったが、それでも俺を〝船長〟と呼んだ時に、ナミは正式な俺の仲間になってる。

 手放して、傍から1時的に離れては居ても仲間は仲間だ。その事をナミは、全く理解してないみたいだがよ。

 

 「お頭、食糧不足は元々だったが、インクと薬品が今回の波でやられた」

 「え……?不味くね?」

 「不味いな」

 

 ベックの言葉に溜息を落として、俺は渋々動き出す。どうやら近くの島を探さないとならないらしい。

 こんな時は、夫婦としての時間は望めなくなる。ナミは、甘やかな空間で俺に守られるだけの女では居てくれないからな。

 

 「ナミ!人のいる島は?」

 「波の状態に寄るけど、二日くらいの所にあるわ。夜も動かすなら明日にはつけるけど、急ぐ?」

 「いや、そこまでじゃ……あー、ベックと相談してくれ」

 

 食糧不足もあるのならば、急いだ方が良いのかも知れない。そう思って言えば、ナミは笑って頷いた。

 打てば響くと言うように、ナミは1度でも見た海図や地図を覚えてる事を利用して、現在位置をちゃんと把握していてそれを伝えてくれる。だが……どうやると分かるんだかな。

 ここは目印らしい物は見当たらない、普通の海である。海の上でどうやればそれを把握できるのか。

 謎過ぎるナミに、だが既に誰もそれを指摘はしない。何せ聞いても、波目がどうだの言われるだけだと皆知っているからな。

 そうしてナミに導かれるままに到着した島の港。そこでナミが船縁から離れなくなる。

 その視線を辿れば、ナミの仲間がわんさかと居た。そうか、仲間に会えて興奮してるのか。

 

 「ナミ、いくら仲間が居たからって浮気はするなよ」

 「へ?」

 

 結構本気で色気を出て言ってみたが、ナミには通じないらしい。悔しいより面白くなって、その髪をひと房手に取り、誘惑するように言葉を紡ぐ。

 

 「雄猫なんかより、俺の方がナミを気持ち良くしてやれる」

 「ほえ?」

 「にゃんにゃんにゃんと鳴くのは、俺の腕の中だけにしておけ。……相手を殺されたくなければ、な」

 「……馬鹿じゃないの!?」

 

 漸く通じたらしいナミは、真っ赤に頬を染めたかと思うと俺の脛を蹴って陸へと降り待つ。呼び止めては見たが、べ~!と言ってから駆け抜けて行くナミに追い付くのは難しいだろう。

 そんな様子が可愛くて仕方ないのだと言ったら、許してくれるだろうか?

 しかし、それから暫くの後にナミが購入したと言う荷物だけが届けば、何故本人は帰らないのかと騒ぎになるのは当然の事だ。いつもなら、先に帰って来て受け取るのだから。

 特に、戦争後は引きこもり率が上がってたってのに……。あの戦争では、随分色々な奴に目を付けられているのだから、どうしたって心配でならねェ。

 白髭海賊団の隊長格や七武海、カイドウも興味を示してやがった。その他に……と思い出せば、叫ばなかっただけ俺は自分を褒めたい。

 

 「おい、シャンクス」

 「ん?」

 「覇気を撒き散らすな。仲間に危害加える前に、さっさと探しに行け。俺はここで待っててやる」

 

 ベックの言葉を受けて、俺は深く息を吐き出してから立ち上がる。これで行き違いにはならねェよな。

 その時ベックが、帰りが遅けりゃ探しに行くがなと言ってたのを聴き逃したのは、大きなミスだろう。それでもこの時は、気付かないで飛び出していた。

 

 「ナミを見なかったか!?」

 「見てません!!」

 「騒ぎが起きてたり、他の海賊船や海軍が近くに居るとか聞いてねェか?」

 「それも、自分は知りません」

 

 通りすがりに発見したクルーに、俺は同じ事を聞いて回る。その途中で愛らしい猫の鳴き声は聞こえたが、今は愛妻の安否が重要なのだ。

 ……人が集まり、騒ぎが起きてもそれが当然の地域と言えば、酒場か。ナミなら歌姫でもやって、金を集めてる可能性もあるな。

 そう思い少し足を進めれば、風に乗ってナミの香りがする。けれどもナミの姿も見えず、声も聞こえない。

 

 「どこだ?……近くにいるのはわかるんだが……」

 「にゃー……」

 「猫……?」

 

 どうしてだか、その鳴き声がナミに感じられた。だからこそ俺は視線を向けて、その姿を見て笑っちまう。

 

 「似てるな。……おいで」

 

 連れ帰れば、ベック達も喜んで受け入れてくれそうだ。知らない間にナミが産んだんじゃねェかって笑う様子さえ、見えるような気がした。

 だが、そうなると相手のオス猫は俺の筈だ。ナミは、俺だけの愛妻だからな。

 そんな事を思ってる間に、甘えるように擦り寄る猫の姿。可愛すぎて顔が溶けそうになるのは、ナミと似てるからだろう。

 それにしても、珍しい毛色だな。そう思い抱き上げても、抵抗しない猫。

 瞳の色も、顔立ちが幼い所も似てる。何より香りがナミそのもの、で……?

 

 「あれ?ナミ?」

 「にゃ!」

 

 おお、猫ってのは、本当にニャンとかニャッって鳴くんだな。……と、現実逃避してみても、猫が頷いた後光り輝き人の形に変わっていく現実は変わらない。

 どうやら俺は、ナミでさえあれば猫でも問題なく愛せるらしい。これでは生涯、俺に勝ち目なんて無いな。

 そんな事を思ってる俺を更に追い詰めるかのように、ナミの身体には耳と尻尾がある。確かに前にも、兎の耳が生えた事あるけどよ……。

 どう考えても、ナミに猫のそれは不味いだろう。少なくとも、俺に僅かにでもあった勝ち目は消え失せたと言える。

 崩れ落ちそうになる身体を必死で支えてる俺の目の前で、ナミは無防備にも耳や尻尾を確認している。寧ろ、俺に確認させろ。

 

 「わかってくれてありがとう。気付いて名前呼んで貰わないと戻れなかったみたいなのよ」

 「……そうか」

 

 戻れなくても、確実に連れ帰ってたぞ。とは、心中で。

 猫でも兎でも人間でも、ナミなら俺は構わねェ。俺の愛妻はどんな姿であれ、愛しい存在だと再認識させられただけだ。

 

 「この耳とかも暫くあるみたいだから、その間この島に停泊して貰える?安全の為に」

 「……わかった」

 

 当然だ。永遠にナミからその耳が取れなかったら、俺は遠くない未来にナミを犯り殺す。

 無事に戻ってもらう必要がある。その為なら、停泊くらいしてやるさ。

 

 「ありがとう!」

 

 そうしてお礼の言葉を告げたナミは、当然のように俺の手を握って笑いかけて来る。その笑顔を守りたいと思って、引き取って……なのに、これ迄に随分虐めちまったなとこれまでの事を思う。

 まァ、改善されるとは思えないが。何せ、俺を諌められる貴重な存在である筈のナミが俺を甘やかすんだからな。

 その詫びも込めて頭を撫でれば、無防備に瞳を閉ざして気持ち良さそうにするナミ。そんなナミにたまにはと思い、握られている手を強く握り返して、声を掛けた。

 

 「このままデートに行くか」

 「え?」

 「部屋着、買って帰ろう」

 「部屋着?」

 

 キョトンとした顔で俺を見上げるナミが可愛い。少しくらい警戒しろよ。

 ……無理か。ナミだもんな。

 

 「寝巻きとかだよ。それがあれば、ナミもちゃんと寝るだろ」

 

 俺の言葉にナミは視線をさ迷わせて、小さく頷いた。なので近くにある部屋着を売ってる店に入ったが……その店は半分が、大人向けな商品の店だったらしい。

 際どい下着や大人のオモチャなんかも扱ってるが、それよりも気になるのは別な物。そっと手にしたナース服はミニスカートだった。

 

 「白髭の所のナースが着てたのと似てるな」

 「あ、確かに似てるわね」

 「着てみてくれ」

 「……いいけど……?」

 

 押し付けるようにして差し出せば、不思議そうにしながらも、素直に頷いて消えていく姿。その隙に店員に言ってカメラを用意させて、俺はナミの着替えが終わるのを待つ。

 着替えが終わったナミは、どう?って言いながら素直に出て来る。うん、似合うぞ!

 

 「可愛いな。よし、買うぞ」

 「ほえ?」

 「そこは〝ニャン〟って言っとけよ」

 「なんで、買うの?」

 

 首を傾げるナミに、本気で分かってないらしいと気づく。だが考えてみてくれ。

 猫耳と尻尾の生えたナミが、ミニスカのナース服を着てるんだぞ。やる事なんざ、ひとつに決まってんだろ。

 

 「白髭の所に侵入しやすくなるだろ」

 「そっか!」

 

 侵入する予定があるのかよとか、侵入したら即座にバレるだろとか、思う。特に、侵入した所で、ナミ程可愛いナースは他に居ないから見付からない理由が寧ろない。

 だいたい侵入してどうすんだよとか、その他諸々の事を思うが……まァ写真撮りやすい無防備な様子は有難い。そのついでにメイド服を差し出す。

 

 「次はコレな」

 「買いに来たのは……部屋着じゃ、無いの?」

 「いつ、何で必要になるか分からないだろ。珍しく色々売ってるから、試着はしてみるべきだと思うぞ」

 「確かに、稼ぐのに使えるかも。変装にも便利だし。着てみるわ!」

 

 だから、ナミは俺に隠れて何するつもりなんだ。とは、心中で。

 まァ、俺の前でしか着させてやるつもりは無いけどな。そう思いつつ、次々と試着させ、それをコッソリ撮影していれば突然叩かれた肩。

 嫌な予感が全身を駆け抜けるのを感じつつ、そっと振り向けば笑顔のベックがいた。……あ、怒って、らっしゃる?

 

 「何してんだ?お頭」

 「……ナミの、仕事着選び?」

 「どんな仕事か……詳しく、聞かせて貰おうか」

 

 俺がベックに捕まりそうになった時、アーミー服からバニーに着替えたばかりのナミが俺に抱き着く形で庇ってくれる。問題は、生えてる耳と尻尾がバニーではなく間違いなくキャットなところだけだろう。

 

 「ベックやめて!シャンクスを責めないで」

 「ナミ」

 「私、買って欲しい」

 「……ナミ、これは助言であり忠告だ。辞めておいた方が身の為だぞ」

 

 よく分からないって顔で首を傾げたナミは、それを俺がどう使う予定なのか本気でわかってないらしい。だが、ナミが望んでくれるならいくらでも貢いでやるさ……とニンマリと笑うのは当然の事だ。

 

 「今日は猫の日だ。詳しい事は後で話してやるから、今は二人にしてくれよ」

 

 俺の言葉に呆れを隠さないベックは、ナミを心配そうに見てから店を出て待機する。その背を見送ってから、俺はナミを強く抱きしめちまう。

 今日が猫の日だと言うのなら、俺は俺の猫を甘やかしたい。俺だけの猫を独占したいと願って、何が可笑しいだろう?

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