※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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家族(光源氏16)

 いつものように2人で抱き合って寝ていた時、ドアを盛大に叩く音が聞こえて目を覚ます。カタクリが嫌そうに顔を歪めつつ私の頭を撫でて来た事で、何かあるらしいと知った。

 私には言うなとでも言われている何かが起きたのだろうとカタクリの顔を見ればわかったので、そんな顔しないでとその頬に口付けをする。カタクリはそれを受けて額に口付けを返してくれてから、ベッドを出た。

 続いてベッドから降りた私は人前に出られる程度に、身支度を整えていく。私の身支度が整うのを待ってカタクリがドアを開けたのを最後に、私は簀巻きにされてどこかへと連行されたのだった。

 何が起きてるのかと問い掛けても誰も答えはくれなくて、別室に連れて行かれた私は突然衣服を剥がされ風呂に連れて行かれた。そこで待ち受けていたのは、思い出したくもない悲劇。

 全身をくまなく磨きあげられて、マッサージ等も行われ、髪型も衣装も化粧までもが勝手に行われた。それは恥ずかしいなんて可愛いレベルじゃなくて、混乱も相まって泣きそうになりながら弄り倒されたのだ。

 不安になって思わずカタクリと呟けば、微笑ましそうに笑われたけど……誰かこの状況を説明してください。切に願います。

 そんな私に説明してくれる人は居なくて、でもウエディングドレスみたいなそれに多少心は浮き足立つ。だってこれ可愛い。

 何処かに潜入するのかな。でもそれなら白は不味いんじゃないかな?

 そんな事を思いながらも鏡無いかなとキョロキョロしていたら、ブリュレさんが姿を見せたので、鏡があるらしいと理解する。なので咄嗟に肩を掴んで鏡を見せてと言えば、すぐに見せてくれた。

 うん。驚くくらい可愛いわ。

 流石ナミちゃんの肉体!ビバ!

 

 「ナミ、可愛いわね。綺麗になると思ってたから驚いたわ」

 「ブリュレさん、これは何?」

 「見てわからないの?ウエディングドレスだよ!」

 「それはわかるわ。そうじゃなくて……」

 

 私が口篭ると少し考えるような素振りを見せてから、ブリュレさんは頷いた。そしてベールを被せてくれて、似合うよと言う。

 それにありがとうと返して、暫し固まる。ベール素敵だけど、そんな話の流れだった……?

 ……違う!そうじゃない筈よ!

 

 「冗談だよ!今日はお兄ちゃんの結婚式だからだよ」

 

 私の内心の叫びが聞こえたのか、ブリュレさんはそう言ってくれる。でも待って、ブリュレさんがお兄ちゃんって呼ぶのは、カタクリだけだから……?

 

 「カタクリは誰と結婚するの?花嫁以外がウエディングドレス着てたら駄目じゃない。……ハッ!その花嫁狙われてるのね?だから私に身代わりを演じ「ナミは馬鹿なの!?」」

 

 言葉を遮られて肩をガッシリと掴まれてしまえば、逃げる事は出来ない。だから私は真っ直ぐにブリュレさんを見て言う。

 

 「多分、馬鹿じゃない筈よ」

 

 だってナミちゃんの肉体だもの。頭のデキはいい筈!

 それなのに何故かブリュレさんがその場で崩れ落ちて、何かをブツブツと言い始める。……具合、悪いのかな?

 

 「そう言えばお兄ちゃんが、ナミは恋愛関係だけ脳が壊死してるって……。よく口説き落としたわ。流石はお兄ちゃん!」

 「あの、ブリュレさん、大丈夫?」

 「寧ろ、この状況でお兄ちゃんがナミ以外と結婚するって考えたナミが、大丈夫じゃないわよ!」

 

 物凄い勢いで怒られて、私はえ?とブリュレさんを見て……赤面した。

 ……本当に?

 でも、私何も聞いてないし。もしそうなら、カタクリも正装してるのよね。

 ……うわぁぁぁ。見たいな。

 覗きに行ったら駄目かな。よし、聞くだけ聞いてみよう。

 

 「ブリュレさん、私、カタクリの姿を覗きに行きたい」

 「……お兄ちゃんも同じような事言ってたわ。似た者バカップルめ。もう少し大人しく待ってなさい!」

 

 幼子を叱るような勢いで叱られては、黙るしかない。はぁいと言って窓の外を覗けば、準備が進められているのが見えた。

 人も続々と集まっていて、驚く程賑やか。……いいな、楽しそう。

 買い物とかしに行ったら駄目かな?

 

 「ダメに決まってるでしょ」

 

 声に出してない私の思いに答えたその声は、大好きな人の声で……私は光の速さで振り向いた。だって、ベルメールさんの声だったから……。

 振り向けばベルメールさんとノジコがいて、私は2人が幻かもとか考えたのに、体は勝手に走り出して2人に飛び付いていた。それを見ていた人達が微笑ましそうにしているのを気にする余裕も無い。

 

 「なんで、ここにいるの?会いたかったけど、驚き過ぎて……その」

 「ナミの結婚式やるから来るようにって、迎えが来てくれたのよ。まったく、手紙にはそんな事なんにも書いてなかったのに!」

 「おかげでお祝いの品用意するの大変だったんだよ、馬鹿ナミ!」

 

 2人の言葉を受けて、私も今知ったと言えば成程って笑われた。でも、どうしよう本当に嬉しい。

 

 「エスコートはゲンさんがやるから、新郎に殴りかからないように言っとくのよ」

 「カタクリを殴るのは無理だと思うの。ロギアみたいなものだもの」

 

 思わず口に出せば、2人は首を傾げるから悪魔の実の種類について話して、カタクリの能力の凄さを伝えてみた。そうしたら何故か2人は、ニヤニヤしながら頷いてくれる。

 

 「ベタ惚れなのはわかったわ。大丈夫よ」

 「ベタ、惚れ……?違う!そういう事じゃなくて!本当に強いのよ!」

 

 顔が赤くなって、もうどうしていいか分からない。そんな私を、ベルメールさんとノジコが優しく抱き締めてくれる。

 

 「幸せになんなよ!」

 「何かあったら、いつでも逃げ帰ってきなさい」

 

 優しいその言葉に、私は黙って頷く。声は、出せそうに無かったから。

 この騒動のおかげで崩れた化粧を直されて、私は部屋を出る。そこで待っていたのはクラッカー君で、どうしたのかと首を傾げると手を差し出された。

 無意識的にそれに手を重ねると、小さェ手だなとか言われてしまうけど、手だけ大きかったらちょっと怖いと思うのよ。そんな事を考えながら、私は導かれるままにビッグマムの元へと案内される。

 部屋に入ると楽しそうに笑うビッグマムがいて、この計画はビッグマムの立てたものかとわかる。私はそれに対して驚くべきか、お礼を言うべきかと色々考えて固まる。

 

 「喜んで貰えたみたいだし、驚いてもくれた見たいだねェ。俺もナミが娘になってくれるのが嬉しくて、はしゃぎ過ぎたみたいだ」

 

 そう言ってマンママンマと笑うから、私もつられるように自然と笑が浮かんだ。喜んで貰えるなら、本当にありがたい。

 

 「いつも守って貰ってるから、面倒に思われるかと思ってたわ」

 「ナミは、俺が家族にしたいと言ったんだ!面倒になんか思う筈ねェだろう!」

 

 そう言って笑ってくれるから、私も素直にお礼を口にする。家族を呼んでくれてありがとうと。

 それに対して構わねェよと言ってくれるから、甘やかされてるなぁと思う。それからふと思い出した事を伝える。

 

 「この間海図描いた地域を通ったら、少し波目に変化があったの。海底で何か変わった事が起きたのかもしれないから、ウミウシちゃんに確認してみて」

 「どの地域だい?」

 

 海図の所へ行ってパラパラと捲っていく。その中で変わった事が起きていた地域の物を見付けたので、取り出してそれを差し出す。

 

 「ここよ。この位置に渦潮が発生しやすくなってたの。前に描いた時は、そんな兆候なかったから、海底で何か起きたのかなって」

 「調べさせるよ。ありがとうな!」

 

 本当に、身内には優しいビッグマム海賊団だとしみじみ思う。……私も、家族として認められるのかと思うと、少し嬉しい。

 

 「私こそ、ファミリーネームができて、嬉しいわ」

 「……そうか、ナミはナミって名前しか無かったか。今度からは、シャーロット・ナミだねェ」

 

 それから本当に目出度いと言ってマンママンマと笑う。それを受けて私は幸せだなと思って微笑む。

 そんなやり取りを見ていたクラッカー君が声を掛けてくる。時間だぞと。

 促されて退室して、ゲンさんの待つ部屋に向かう。その途中で何故かクラッカー君の足が止まった。

 

 「どうかした?」

 「……その、本当に結婚するのか?」

 「私の方が年下だから、姉になるのは嫌かも知れないけど……「そうじゃ無ェよ、ナミが納得出来てるのかって話だ」」

 

 真剣な顔をして居るクラッカー君に、私は自然と浮かぶ笑みをそのまま向ける。優しい人達だと思うし、いつの間にか皆大切な人達になっているから。

 

 「今さっき知ったから、実感は無いわよ。でもね……クラッカー君も含めて、皆と正式に家族になれるのは、嬉しいわ」

 「……っ!そう、か」

 「えぇ、これからも宜しくね。クラッカー君」

 「なら……俺も、歓迎するぜ。……義姉さん」

 

 クラッカー君は何処か苦しそうな様子で笑うから、心配掛けてるんだなと思って笑う。だってここで気にしてもきっと苦しめるだけだから、私は幸せだと前面に押し出す事が今は大切だと思う。

 私は事ある毎に小人みたいな扱いを受けるけど、そんなに小さくない筈なのよね。どう考えても、ここの人達が大き過ぎるのよ。

 そんな事を思いながら、ゲンさんの待つ部屋に入る。クラッカー君にはまた後でねと手を振ってから。

 ドアが閉まる直前に、クラッカー君は何故か鎧に身を包んでしまったけど、それでも手を振り返してくれた。こんなにも気にかけてくれるなんて、クラッカー君は本当に優しいと思う。

 部屋に入るとゲンさんとドクターが居て、私はやっぱり2人に飛び付いてしまう。だって会いたかったんだもん!

 

 「ゲンさん、ドクター、久しぶり!」

 「ナミ……綺麗だな」

 「泣くな、ゲンゾウ。泣くなら儂がエスコートするぞ」

 

 そんな会話をする2人につい笑ってしまう。大好きな家族を呼んでくれて、それもただ呼び付けるのではなく迎えに行ってくれるなんて……なんて高待遇なのか。

 有難いなと思いながら、2人と少し話をして、それから会場に向かう。会場に到着するとカタクリの姿が見えて、肩から力が抜けるのがわかる。

 礼服の襟が口元まで来て全てを覆い隠してる!そっか、マフラーみたいなの使えないから……。

 礼服の襟にある留め具を外せば、正面は兎も角周りから口元は見えないし、一石二鳥よねと思う。そんな私の様子を見ていたゲンさんが、小さくナミが幸せならそれでいいと言ってくれる。

 だから私は新郎の手を取るべき時に、ゲンさんに抱き着く。1瞬ざわめく会場に、けれどそんなもの気全くにならない。

 

 「……お父さん、今までありがとう。カタクリの事は、必ず幸せにしてみせるわ!」

 「……それでこそ、ナミだ」

 

 ゲンさんは私の言葉に半泣きでそう答えてくれたから、笑顔でカタクリの手を取る。カタクリは私を見て、不思議そうにしているからどうしたのかとその顔を見上げる。

 

 「ナミが共にいるだけで、充分幸せ何だが、これ以上どうやって幸せにしてくれるつもりなんだ?」

 

 この人は……天然のタラシですか?

 声が聞こえていたらしい人達と同時に、私の顔が赤くなる。もう、どうしてくれようか。

 

 「……なら、例え数秒でも私が長く生きて、カタクリが死ぬまで傍に居るわよ。それなら、ずっと幸せでしょ?」

 

 問いかければ、少しの間沈黙するからどうしたのかと思う。でも、ヒョイっと私を横抱きにしたカタクリはパレード用の乗り物に乗った後で、囁くように言葉を返してくれる。

 

 「遺して逝くのは、心配だ」

 「馬鹿ね。すぐに、追ってあげるわよ。だから、あの世の入口で待ってなさい!……手を繋いで、あの世とやらに行きましょう」

 

 笑い掛ければカタクリも笑ってくれる。それなら安心だと言って。

 

 「ファミリーネームをくれて、ありがとう」

 「……ナミが喜ぶなら、なんでも用意してやる」

 「甘やかさないで、何も出来なくなりそう」

 「……その方が助かる」

 「へ?」

 「何でもない」

 

 そう言ってカタクリは笑う。パレードなのに互いに見つめ合って、囁き合う2人の姿に当てられると顔を背ける人が多く発生したらしいが、本人達は全く気付いていなかった。

 その為に、シャーロット・カタクリは幼妻を溺愛し片時も傍を離さないらしいと世界に広がる事となる。その情報は瞬く間に広がり、新聞に写ったナミの姿に反応した人達がビッグマムに問合せをして来たとか、来なかったとか……。

 とりあえずシャーロット・カタクリとシャーロット・ナミは式の間、終始見つめ合っていたらしく、2人が正面を向いている写真は1枚も存在しない。

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