俺がドジをするのはよくある事で、だがいつも反省はしている。それだけはわかって欲しい。
嵐が近付いてる時に俺が燃えて海に落下して、それをナミが助けに来てくれた。だがそんな事をしていた為に当然のように嵐に巻き込まれて、下手に潜水できる状況ではなくなっちまう。
そうなると、元々海上での荒波に対応出来る船ではなかった為に対応が困難を極めちまう。その結果、2日程全員で不眠不休の対応を余儀なくされた。
その後お詫びにと思い俺がスープと粥を作ったら、それをひっくり返して、俺を含む数人が火傷をすればナミがローと1緒に治療に当たる事となった。その後ナミが全員分の食事等を用意して、ゆっくり休んでねと笑っているのを見ていると、ナミが疲れた様子を隠せなくなってるのに気付かされる。
「ロー……私お風呂入って来るわ」
「分かった。コラさんは押さえとく」
「覗かねェよ!?」
「ごめんね、疲れてるから洗ってあげられそうにないのよ。今日は1人で入らせて」
そう言ってナミが1人で風呂に消えたのを、黙って見送る事となる。その後風呂から出たナミが製図室に入ったのを、確認して俺は後1人で風呂に入った。
その風呂で俺が溺れるとナミが泣きながら怒って……口をきいてくれなくなった。反省してるのだと言っても、涙を溜めた瞳で睨むばかりのナミに、なんでも好きな事させるからと言えばナミが漸く口を開いてくれる。
「今日はこのまま1日休ませて」
「勿論だ!」
間髪入れず答える。もう何もせずに傍に居るぞ!
「もう、私の仕事増やさないで!」
「当然だ!」
大人しくナミの傍で読書してる予定だ!安心しろよ!
「明日は1人で買い物に行かせて」
「応とも……!?」
「じゃぁおやすみ」
……今、なんて?
勢いのままで答えたとは言え、1度応と答えた以上、無かった事には出来ない。だが……。
そう思って、ローに報告に行くと問答無用で殴られつつ、比較的安全で近い島へと船を進める事となる。俺が1人で自己嫌悪に陥りつつ、到着した島を眺めていればベポに肩を叩かれた。
「ナミもたまには気晴らししたいよ。ずっと俺達の誰かの面倒見てくれてるんだからさ」
「だが、狙われてるんだ。心配にもなる」
「でも、ナミって強いし……本当に困ったらちゃんと呼んでくれるよ。大丈夫!!」
「ベポ……!!」
慰めてくれたベポに抱き着いて、そのままベポと戯れていたら起きてきたナミが仲良しねと微笑み、怒りも悲しみも落ち着いたらしいと分かる。それによりホッとして見ていたら、ベポから離れて座った俺の頭を優しく撫でながら苦笑されちまう。
どうしたのかと見ていたら、その視線を俺に真っ直ぐに向けてくれる。それからそっと目尻に指を触れさせて、優しい声を出す。
「買い物くらいで泣かないでよ。そんな何年も会えなくなる訳じゃないんだし、もうすぐ節分だから色々見ておきたいの」
「節分?」
「そうよ。季節が変わる、分かれる日って意味で節分。だから本当は年に4回あるんだけどね。この時期の節分だけは特別で「いや、とりあえず、概要だけでいい!!」」
この調子だと永遠に語られると気付いて止めると、そう?なんて言いながら首を傾げるナミに俺とベポは揃って頷く。そうして要約された話を聞いてみれば、健康長寿を願う験担ぎの縁起物の催し物だと分かり、確かに買い出しとかは何も知らない俺達では難しいなと思わさられる。
翌日、鬼の配役等の話し合いから外された俺はナミが買物に行くのをこっそりついて行く事にした。楽しそうに店先で色々見て、店主と話をしながら買い込んで行くそれの大半が食料では何の為に1人で来てるのかと思わなくもない。
何に使うつもりなのか不明な着ぐるみを買ったのは謎として、他は目的もわかりやすい物を選んでいる。黄色と黒の毛糸を大量に買い込んで、次はと視線を巡らせるそれについ笑っちまう。
表情をコロコロと変えながら楽しそうに笑うそれに、俺まで楽しい気持ちになる。買い物を終えそうなそれを見て、着いてきてたのがバレると不味いと思った俺が1足先に帰ると、それから暫くして見覚えの無い物を抱えて帰って来たナミに内心で首を傾げる。
その直後に、1人で買い物しないと買いにくいと言っていた系統の物だと気付けば、あの後それを買ったのだと気付く。優しいナミは中々怒らないからこそ、あんな顔されると本当に申し訳なく思う。
本当に……わざとじゃ、ねェんだぞ?
それからローと話をして近くの別な島へと船を進め始めたのを見て近付くと、どうしたの?とナミは笑ってくれる。俺に対して警戒心が欠片も無いのは、どういう訳なのだろうか。
嬉しいような悲しいような、微妙な気持ちになる。それに、俺は迷惑掛けまくってんだから、少しは警戒心持つべきだろ。
そう思って抱き締めると、身体から力を抜いちまうナミに勝てねェと思い知らされる。買物に行く為に離れたのが辛かったんだと認識されたらしく、俺に優しく笑うと背伸びして頭を撫でて来るナミに、少し甘やかして貰おうかなと思う。
そのまま抱きしめ合っていたら、邪魔だと言われて部屋に戻った後、2人で大人しく眠りにつく。そんな俺達に皆が笑ってたなんて、知りもしなかったけどな。
翌朝島へと冒険に向かう組と、イベントの為にと準備をする組に別れる。俺は豆を運んだり、卵を運んだりして言われるままに力仕事をこなして行く。
忙しそうにナミは皆に指示を飛ばして、船大工に升を作れと言ったりしている。料理もわからない事があれば、皆がナミに話を聞きに行く。
これだけ頼られて、働いていてナミは自分の必要性なんて無いのだと平然と言うのだから困ったもんだと思う。船にも、俺にも、ここに居る全員にも、ナミは必要で大切な存在なんだと、どうしたらわかってくれるだろうか。
……気持ちを切り替えて働くぞ!そう思って次の大豆を運ぼうとキッチンへ向かう途中、そこから落ちた1粒を見事に踏みすっ転んだ俺は運んでいた豆をぶちまけちまった。
盛大な音がしたからか何人かがかけてきて、その中にはナミの姿もあった。それに申し訳なくて俯くとナミは心配そうに俺に近付き、視線を合わせて来る。
「ロシー、怪我はしてない?」
「あァ、大丈夫だ」
「なら、掃除しましょ」
「だが、大豆が……」
言葉を途中で止めた俺にナミは、優しく穏やかに笑う。そして大丈夫よと言うナミは、相変わらず穏やかな様子だ。
本当にナミは俺よりも歳下なのだろうか。そんな事を本気で考えちまう。
「卵だとどうにもならないけど、大豆なら炒って豆撒き用にしたらいいだけだもの。だからまずは気を付けて立って、この場に散らばった大豆を集めましょう」
そう言うナミに従い動き出せば、皆が手伝うか聞いてくれたけどナミが炒る準備だけお願いと笑うから皆も去って行く。それから髪をポニーテールにしたナミが掃除を始めるから、俺も俯きながら掃除を開始する。
「……ごめんな……俺……」
「ロシーや皆が傷ついたりするようなドジじゃないなら、良いのよ。でもね、ロシーは悪魔の実の能力者なの。それは、自覚して」
真剣な顔で俺を見上げるナミの視線に、俺の心が貫かれる。俺が俯いても、身長差のせいで価値が無かったと気付いても遅い。
こうなって漸く、逃げられないと思い知らされる。真剣なナミのそれに、怒りの色は少しもない。
「お風呂も海も、ロシーは簡単に死んじゃうの。嵐に巻き込まれたら、皆の命が危険になるのよ。……お願いだから、命を脅かすようなドジだけは控えて。他は何しても良いから……」
震えるナミを抱きしめて、ごめんと謝ればナミは俺の腹に頭をつけて小さく頷く。その顔は見えないが、考えてる事はわかる気がするな。
逆なら泣く自信がある。ナミは俺の為に、泣くの我慢してるんだろうけど。
掃除を終えた俺達が運んだ大豆が炒られて、豆撒き用に加工された頃皆が帰って来る。完成した恵方巻きを食べて、鬼役に豆を投げながら笑い合う穏やかな時間。
獲てきた食料は夕飯でバーベキューにでもしようかと笑う皆を眺めながら、燻して保存食も用意しようなんて笑うナミの声を聞く。それに何だか懐かしい気持ちになるのは、若い頃や幼い頃の記憶があるからだろうか。
「よし、豆をまくぞ!」
「まだやるのか!?」
そんな会話をしながら、俺は祈りを込めて豆を投げる。
これで俺のドジが治って、ナミを泣かせなくて済むようになればいい。愛しいナミに、今年も1年笑っていて欲しいと俺は心から願ってる。