欲しい物があるからと言われて買物に付き合うついでに用事を済ませたのは、至極当然の行動だと自分でも思う。誰かさんのせいで下着のサイズが合わなくなったなんて言われれば、確かに責任も咎もあるのはわかる為、船を出さない訳にもいかないからな。
だが……船に戻るとナミの物としか思えない髪の毛がひと房と手紙が置かれていては、何があったのかと思わなくもない。中将程度なら軽くあしらえる強さを、ナミは既に持っている筈だ。
……人質でも取られたか。ナミは、甘いからな。
悪魔の実の能力者でもないから、海楼石その物では効果など無い。だが……それを武器としている相手ならば覇気が通じなくなる為に負ける可能性も無くはない。
それでもナミもまた短剣を所持している。そうなれば海楼石の武器を使う者同士ならば実力のある側が勝つのは道理であり、ナミが負ける要素は皆無だ。
それでも……子供や女が人質にでも取られれば例えそれが見知らぬ存在でも……ナミはそう言う意味では最弱だ。別行動等しなければ良かったのだろうか。
船に置かれている髪の毛からは蜜柑の香りがして、潮風に晒されても失われないそれに少しだけ笑えて来る。手紙を手にすれば場所と時間が書かれているので、その時間迄に私が帰らねばどうするつもりだったのかと少し考えて……慰み者にされた後売られるナミが容易に思い浮かぶ。
守るべき相手を逃がしていれば、慰み者になる時に、恐らく舌を噛むだろう。ナミはその辺りが、少しばかり潔癖だ。
もし、他の誰かを守る為にと生きて耐えたとして、売られる時には死を選ぶ。そんな気高さを……プライドの高さを、ナミは持ち合わせている。
それは、私が〝必ず助ける〟事を信じていて、無理ならば足手纏いになりたくないという部分も大きいのは理解している。つまり……これが〝確実に守る〟事の出来ない者が恋人ならば違うのだろうなと思えば、その信頼が少し悲しい。
それにしても……私の女に手を出して、生きていられると思うとは……何ともおめでたい事だ。見聞色の覇気で辺りを調べれば、怯えたように縮こまるいくつかの気配を感知してそこへ向かう。
隠れていたのは5人の子供で、成程この子達を庇ったのかと思う。……それも、魚人……人魚タイプの子供だ。
魚人に良い思い出等何1つ無い筈なのに、甘い事だと嘆息しつつ電伝虫でシャッキーに事のあらましを伝える。それによりシャッキーが、子供達を迎えに行って魚人島に帰してくれると言うのでホッと息を吐いた。
「……レイさん、ナミちゃんを拐った馬鹿共だけど……骨も残さないか、私に生きたままプレゼントしてね」
「…………骨も残さないようにしよう」
その方がまだ慈悲深いだろう。シャッキーは何故ナミをこんなにも可愛がるのかと1瞬考えて、それからそっとぼったくりBARを始めた頃のシャッキーとナミが似ていると気付く。
ここは私を奪う泥棒猫として、ナミを虐めたりするのが妻としては正しいのではないだろうかと考えるが、恐らくは似ているからこそ可愛いと思えるのだろう。それに無論、ナミにそんな事をされては困るのだから、今のまま良い関係性でいて欲しいが。
……天然の人誑しとは、ナミの事を言うのかも知れないな。そんな事を思いながら、指定された場所へと向かう事にした。
約束の場所にナミの姿は無い。ただ〝普通ならば〟萎縮しそうな程の数の海賊達が居て、その中には近年名の知れた者も含まれている様子だ。
それでも……私の敵にはなり得ない。おや、人攫いの有名な者達も混ざっているな。
「ほ……本当に、来やがった」
「な、何をビビってんだ!相手はもう年老いたジジイで、それも、1人なんだぞ!!やれ!」
「……ナミは、無事だろうね?」
問い掛けると、男達は1瞬息を飲んだ。ふむ、どうやら殺されては居ないらしい。
「今頃男求めて泣き喚いてる頃だろうぜ!安心しな、俺達が可愛がってから、良いご主人様に引き渡してやるからよ!」
成程……薬を使ったか。ナミにならば、相当強い物を……下手すれば致死量を越えて使いでもしなければ効果は無い。
だとするならば、時間はかけられないな。そっと剣の柄を握れば、ナミから貰った石がキラリと輝いた。
骨も残さず、返り血も浴びずとなると、それなりに手間ではあるな。……仕方ない覇気で気絶させて〝シャッキーに可愛がって〟貰うようにするか。
そうと決まれば話は早い。覇気で気絶させて、取り急ぎナミの元へと向かう。
薬が効いていても、耐えて従わないナミが自我を失う程にもし薬を使われたとしたら、普通に致死量を超えているだろう。早くしなければ、手遅れになる。
私は、ナミを私よりも先に死なせるつもりなど無い。必ず助けると誓い足早に移動する。
血を浴びればナミは気にするだろうと思えばこそ、気絶させるだけで先へと進んでいるがその分この激情をどう扱えばいいのか分からなくなる。だが……今は己の激情等よりもナミの命が優先だ。
その時微かな気配を見聞色の覇気が捉える。弱々しいそれにもしやと思いながら足を向ければ、頑丈に施錠された地下倉庫があった。
ここだと思い、ドアを
……殺さない程度に、価値を失わせない程度に行われたであろう拷問に、ナミは恐らく表情を凍らせて、もしくは挑発でもしながら耐え抜いたのだろう。虚ろな瞳が私を捉え、直後戦う意思を漲らせたのが分かる。
気高すぎるその精神が、その優しい心とが鬩ぎ合いナミを苦しめるだろう。そう分かっていて、鍛え上げる私は外道なのかも知れないが。
薬を使われ、意識もほぼない状態で、私を認識できないからと責めるつもりはない。だが、背徳感を刺激し、狩猟本能を目覚めさせるには充分すぎる状態だな。
「意識はあるな。怪我は無いかい?」
問い掛けながらその鎖から解放すれば、即座に体から抜ける力。抱き締めれば微かに震えているのが分かり、トラウマのせいかと気付く。
怪我の有無を確認しておきながら、怪我はないかと問い掛ける己の滑稽さに暴れたくなる。泣いて、私に縋ってくれれば良いのにナミは震える体で、声で自らとは無関係な子供を気遣う。
「助けに来てくれて、ありがとう。でも、早く戻らないと、子供達が、怯えて「シャッキーに連絡を入れた。もう大丈夫だ。今は、休みなさい」」
私の言葉にナミはホッと息を吐き出して、ありがとうと言いながら素直に意識を手放した。熱すぎる体に、どれ程の薬を使われたのかと思えばこのままには出来ないとその軽い体を抱き上げて駆け出す。
クロッカスの元へと船を急がせつつ、シャッキーに電伝虫でナミを救出はしたが犯人は全員生きているので好きにするよう伝えれば、珍しくも「レイさん愛してるわ」なんて帰って来てゲンナリする。シャッキーに可愛がられるであろう男達の末路は考えない事にして、船を進めれば時折ナミが苦しそうに呻く。
「……ナミ」
「レイさ、ん?ここ、は?」
「船だよ。今クロッカスの元へと急いでいるから、待ちなさい」
「だめ、これは、その、イケば抜けるから、大丈夫。慣れてるから、この薬」
聞き逃せないその言葉に動きを止めて、ならばと船を海の真ん中で泊める。それによりナミも何をされるのか理解したようで、その頬を赤く染めるとろくに動けもしない状態で狭い船内を逃げようと蠢くから、出来るだけ優しくその身を抱き締めた。
「レイさん、待って!1人でどうにかするから!」
「私としては、行き場の無かった激情の捌け口になって欲しい所なんだが……嫌か?」
「……壊れ、ちゃう」
どうしてナミはこう平然と私を煽るのか。無意識と分かっていて、それでも尚煽られる。
愛していると囁いて、その体を船内に運び入れるといつもの数倍感度の良くなっているナミを組み敷く。熱いその体に、己の欲望と行き場を無くして渦巻いていた激情をぶつけてやれば、元々弱っていたナミが耐え切れる筈もなく簡単に意識を飛ばしてしまう。
それでも幾度も刺激して意識を戻させ、その熱い身体を貪るように翻弄する。そんな私に縋るような声を出すナミは、異様な色気を孕んでいる。
「あっ……レイリー……!レイリーッ!」
普段なら私に伸ばされる腕が、力が入らないのか力なく体に沿って落ちていて、そんな状態にあるナミを私は容赦無く貫く。恐らく望んでいないだろう快楽を与えて、反射的に動く他はまともに動かせないだろうその体を貪れば、私の心は幾分か落ち着いて行く。
意識を飛ばす度に、新たな快楽で叩き起こせばもう既に薬が抜けているのかどうかすら分からない。喘ぐナミの妖艶な姿に、魅せられ溺れて行く。
「ナミ……私がどれ程心配したと思っているんだい?」
「あっ……ごめ、なさっ!」
「許せないな……もう、二度とこんな事にならないように、しっかりと体に教えこもう」
「やっ!もう、む……りぃ!」
涙を流しながら許してと謝罪を続ける美しい恋人を、必要以上に弄びつつ、次からは己を犠牲にしようと等しないようにと、次があればこんなものでは済まさないと囁きを落とす。それにビクビクと体を震わせながら、ナミは素直に謝るから……私は己の限界までナミを抱き潰して、漸く解放するに至る。
完全に意識の戻らなくなったナミを清めて、簡易ベッドに寝かせてから、恐らくは薬も抜けただろうが念の為にとクロッカス元へと向かう。それにより目覚めたナミが羞恥から泣き出す等とは考えなかったが、それくらいの罰は与えて然るべきだろうと私は考える。
何せ、私はナミにより元々老い先短い人生にも関わらず、更に寿命を縮めるような思いをさせられたのだから。……1刻でも、1秒でも長く、ナミの傍にいる為に生きていたいと、私はそんな詮無い事を願いながら意識のない恋人の額に、そっと口付けを落とした。