※この作品はR-18です。

光源氏シリーズ   作:夢枕 七変化

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オレンジデーイベント(光源氏16)side

 私の剣にはナミから贈られた石がついていて、ナミの右手には、私から贈った指輪が嵌められている。そんな私達であるのに、今は互いに睨み合い剣を向け合っているのだから時の流れとは分からないものだ。

 僅かな期間でナミは恐ろしく成長した。元々〝逃げる〟〝隠れる〟は得意であり、戦いの基礎もしっかりとしているのだからそれはまァ、分からなくはない成長速度ではあるが……。

 舞い踊るように動くそれは、風に舞う花弁のように掴み所は無く、猫のようにしなやかに動くその肢体は私を翻弄する。愛しい女であり、可愛い弟子となってしまった少女は私に剣を使わせる迄に成長を遂げてしまった。

 大将はまだ……難しいか。通常の中将クラスならば、余裕だろうが。

 そう思った時少し力加減を間違えて吹き飛ばしてしまうが、ナミは空中でクルリとその身を回転させて器用に着地すると、その着地した反動を利用して1直線に私へとその刃を向ける。その腕を掴んで動きを止めれば、即座に覇気を纏った足が向けられ、それも抑えつつ声を掛ける。

 

 「ここ迄だ。よく頑張ったな」

 「……レイさんは、強過ぎるわ」

 「無駄に生きている訳でもないからね。さて、少し休もうか」

 

 言いながらその足にそっとキスをすれば、息を詰めてから私を睨む。それは本気で怒ってる様子なので、仕方なく手を離すと顔を赤くして、少しいじけた雰囲気で言葉を紡がれる。

 

 「外とか、人に見られながらとか、そんなのは嫌だって言ってるでしょ。……家出するわよ。そんな事してると」

 「本気で追い掛けるよ、そんな事をしたら」

 

 思わず言い返せば、レイさんなんか、レイさんなんかぁー!と半泣きで言いながら、家の中に逃げ込まれてしまった。だが、反省する気にもなれないのだから、私はダメな奴だろうか。

 そのまま家の前にある蜜柑の木の根を枕に寝ていれば、風が心地よく吹き抜けて本気で寝入ってしまう。この島は比較的安全だと言うのも、理由としては大きいだろう。

 眠っている私にそっと近付き、優しく頭を撫でてくるその指の感触でナミだなと思いながらもまだ寝ていたいと思う私は、枯れているのだろうか。枯れるとナミを悦ばせられても、気にされそうだから枯れたくはないな。

 シャッキーは大爆笑してから、バチが当たったのよとか。人の数倍使ったんだから、お役御免で良いでしょうとか言いそうだな。

 

 「愛しているわ」

 

 先程嫌いと言う事も出来なかったナミの甘い言葉に、私もだと内心で返す。そう……ここ迄深く愛していなければ、ほんの1時手放す事がこんなにもつらい事も無いだろうに。

 勿論愛していなければ、このように守ろうとも思えなかったのだろうが。その時、額に触れたナミの唇。

 それに驚く暇もなく、当然のように私にそっと触れて抱き着いてきたナミは、甘えるように擦り寄り、寂しげに呟く。お休みと、ただ1言だけ。

 そのまま本当に寝てしまったナミに、大将には勝てなくても、大将に勝てる私を負けさせられるのだから、十分かもしれないと思わされるのと同時に楽しいと感じる。そうだ、私はナミと過ごすのが楽しいのだと今更認識を新たにして、眠るナミの髪で遊んでいたら顔に影が落ちた。

 見上げれば美しい妻が居て、珍しいなと思う。そして、シャッキーはやはり寝ているナミに笑いかけるとその頭を撫で始めた。

 

 「可愛いわねェ。……強くなってきたみたいだし、私もこれで少しは安心出来るわ」

 「託せそうな相手が現れたら、貸し出しても良いとは考えているが、まだそんな人物は居ないよ」

 「そうね、ナミちゃんを〝使う〟のでは無く〝仲間〟として求めてくれて、それなりに強い海賊団……それなら赤髪のボー「それは、駄目だよ。見習い坊主は、ナミにお熱のようでね、穴だらけにされてしまう」」

 「それなら、穴を空けられないように、切り落としてから託せば良いんじゃない?」

 

 ニッコリと笑ったシャッキーは、どうやら本気らしい。恋敵になり得る相手だとは言えども、それは同じ男として頷けるものでは無い。

 

 「シャッキー……」

 「ナミちゃんの望まない行為をする奴なら、切り落としても良いと思うわ。……レイさんも、無理矢理何かしたら切り落とすわよ」

 「……肝に銘じておくよ」

 

 本気だと分かるからこそ素直に答えれば、シャッキーは紫煙を見つめながらその唇の形を笑みに変えた。その姿は昔から変わらず、美しい。

 

 「……私に見惚れても駄目よ。ナミちゃんは貰っていくわ」

 「……ん?見惚れても触れさせないとか、そういう話ではなくて、ナミを連れて行くのかい?」

 「そうよ。レイさんは1人で寂しく寝てなさい」

 

 そう言って本当に寝ているナミを私から奪い、シャッキーは問答無用で去って行く。その後暫くシャッキーはこの島に滞在した。

 つまりその間私はナミに触れられないという事で……。しかも、近づく事さえ難しい。

 食事の時は揃って食べるので問題ないが、他の時間はナミの傍に近寄らせて貰えない。……シャッキーと言えども私からナミを奪おうとは、許さないぞ?

 そんな事を思ったが、だからといって何が出来る筈もなし。私は独りで二人の愛しい女を遠巻きに見ている事しか許されなかった。

 そうして数日を過ごしたシャッキーは、突然帰るわと言うと私に近付き、にんまりとした笑みを向けてから耳元で囁いた。それは、悪魔のように。

 

 「今日はオレンジデーなのよ。だから私からは、ナミちゃんをあげるわ」

 「ナミは元々私のモノだよ。シャッキー」

 「欲張りな人ね。世界一のいい女と、世界一可愛い子を独り占めだなんて」

 

 呆れたように言うシャッキーは、けれどもそこに私を責めるような色は無い。そしてナミの元へ戻ると何かを囁き、赤くなったナミの頭を撫でて楽しそうに帰って行く。

 嵐が去ったような気がしていた私は、真っ赤になって硬直しているナミにそっと手を伸ばすと、随分触れていなかったなと思う。シャッキーに何をされたのかと思いながら、同時に漸く取り戻せたその温もりを堪能したくて強く抱き締める。

 

 「レイ、リー……!」

 

 珍しい事もあるものだと思いながら私を呼び捨てにした若き恋人を見詰めると、泣きだしそうな顔でナミが言う。震える声と体で、必死な様子で。

 

 「私を、貰って。今日は、オレンジデーだから」

 「……シャッキーに何を言われたのかな?」

 「下着を……」

 「ん?」

 

 手の甲迄赤く染めて、潤んだ瞳で、泣きそうに顔を歪めて、ナミは言う。全身から私悪い事してないのにー……と無言のままに訴えている様は妙に幼く、背徳感を刺激される。

 

 「私の下着、全部、隠されて……変わりに、紐系の下着を……その、沢山くれて……普通の下着返して欲しかったら、レイさんを誘惑してみろって言われたの。オレンジデーのお祝いに、何かしてあげるべきでしょって。でも、買い物行く暇とか何も無くて、だからっ「ナミ、言われなくても貰うつもりだったから、安心しなさい」」

 

 シャッキーからはナミを、ナミからもナミをとなれば……私は何を返したら良いだろうか。だがどちらにしても、その紐系の下着姿は是非とも見てみたいものだ。

 

 「確かに、ナミは蜜柑だからオレンジデーの条件は満たしているね」

 

 つい笑いながら言葉を口にすると、ナミは茹だりながらも言う。小さ過ぎて常人ならば、聞こえないだろうと言うような小さな声ではあったが。

 

 「美味しく、食べてね」

 「勿論だ。……既に、良い感じに熟しているようだからね」

 

 耳元でそっと囁いて、その耳を唇で挟むようにして刺激すればビクビクとその体を震わせ、縋るように私に腕を回す。だから……それが私を刺激して、これ迄抑えるしかなかったものが1気に吹き出す。

 美味しく食べてあげようと、小さく囁いた私はゆっくりとその身を隠す薄衣に手を掛けた。それに恥じらいを見せるのは、煽るだけだとどうしてナミは分からないのか。

 Happy orange day……欲深き王は、自らの妻に翻弄され、蜜柑の妖精が囀る事もできなくなる程に深く愛する。そうしておきながら、王はまだ足りないと自らの尽きぬ欲望を妖精にぶつけ続けた。

 いつか来る離れる時に怯えるように、1度手にした大切な者を、二度と喪いたくないと嘆きながら。だから男は、孤独な王として存在し、どちらも手放す事が出来ないのだろう。

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